第二十一話 はやてを祝おう
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アニスサイド

 

 

「今日ははやてちゃんの誕生日だ!」

 

 

罪袋『おぉぉぉぉ!!』

 

 

「貴様らにはこれから飾りつけをしてもらう!拒否権は無い!良いか!このヒッキー共!これは年に一回の大イベントである!貴様らみたいな訓練されてない非国民を使うのは心もとないが!多少の失敗は俺が許す!構わん!だが貴様らがそこで力尽きようが果てようが!それは一切俺は関与しない!分かったか!このフニャマラ共!」

 

 

罪袋『おぉぉぉぉぉ!!』

 

 

「それでは、者ども掛かれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

罪袋『サーイエッサー!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……不思議なー、夢だったなー……」

 

 

おはようございます、アニスです……。

何か壮大な夢を見た気がします……いや、そうでもないか……。

何か疲れてます、夢見ただけなのに、体が疲れてます……どうしてでしょう?

はい、と言う訳で、今日ははやてちゃんの誕生日でございます。

 

 

「盛大な出落ち乙」

 

 

とりあえず、これだけは言いたかった。

 

 

「さて、どうしたものか……」

 

 

朝、いつもなら思考が定まらず、口調が覚束ない状態なんだが。

何故か今日は思考が纏まってるし、口調も普通だ。

 

 

(神は言っている……はやてを祝えと……)

 

 

誰だよお前、あれか、シャダイに出てくる奴か?

つか出てくんなコノヤロー。

 

 

コンコン。

 

 

「失礼します」

 

 

あう、考え事の途中で誰かが来てしまいましたね。

まぁ、声からしてシグナムだろうな。

 

 

「あ、主。起きておられましたか」

 

 

「おはおはー。いや〜、何か壮大な様で壮大でない夢を見て」

 

 

「?」

 

 

あら、シグナムが頭の上にはてなを浮かべて首を傾げちゃったよ。

まぁ、俺も首傾げそうな程なので、分かる。

 

 

「まぁ、気にしないで。さって〜、今日は少し出かけるし、さっさと朝ご飯食べますかにゃ〜っと」

 

 

俺はベッドから降りて、そのままドアを開ける。

勿論、背的に背伸びしてなのは、もう慣れた事。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「はい、朝早くからみんなに集まってもらってのは他でもありません。今日ははやてちゃんの誕生日なのです」

 

 

あれから朝ご飯を食べてすぐ、シグナム達とアンクを俺の部屋に呼び、作戦会議。

とにかくはやてには聞かれたくないので、少しだけ魔法で小細工を施す。

当然、魔力なんぞは感知されないようにしてる。

 

 

「まぁ、それは知ってるだろう。昨日、あいつ小さい声で呟いてたしな」

 

 

「そだねー。まぁ、それは置いといて。今からはやてちゃんを祝う為に作戦会議をしたいと思います。先ずはアンク」

 

 

「何だ?」

 

 

「何か良い案無い?」

 

 

「いきなり丸投げかよ!」

 

 

「まぁ、俺としてはプレゼントに。自分にリボンを巻いて「俺がプレゼントだよ♪」何てを思いついたんだけど、はやてちゃんにそれをやると、信じられないくらい食いつきが凄いと思い、敢え無く断念」

 

 

「……それを考えるお前の思考が、俺にとって恐怖だ……」

 

 

「あはは、まぁやろうとは思わないけどね。冗談だよ冗談」

 

 

「……ちっ」

 

 

「誰だ!今小さく舌打ちした奴!」

 

 

何かアンクがいきなり叫びだしたんだが、どうした?

まぁ、アンクはさて置き。

 

 

「これから役割分担をしたいと思います。先ずははやてちゃんをこの家に踏み入れさせない係。ヴィータちゃん」

 

 

「私か?」

 

 

「うん、ヴィータちゃん。ヴィータちゃんならはやてちゃんと外に出て、町の事を知りたいから一緒に行こうとか言っても問題ないかと。もちろん、シグナムさんやシャマルお姉ちゃん、ザフィーラさんでも良かったんだけど、ここはヴィータちゃんが適任かなって思ったから、できれば夕方まで引きつけて。次に飾りつけ、これはシグナムとお姉ちゃんに任せたいんだけど……」

 

 

「主のご命令とあらば、喜んで」

 

 

「はい、任されました」

 

 

「うん。次に買い出し、これはザフィーラさんとアンクに任せるよ」

 

 

「分かりました」

 

 

「了解だ」

 

 

「そして俺は、プレゼントを作ってくるので翠屋に行ってきます」

 

 

「?ケーキでも作るのか?」

 

 

「Exactly。桃子さんにケーキの作り方を教わりに行くのよ。まぁ、前からやってみないって誘われてたからさ、お願いしてみようかと」

 

 

「そうか……まぁ、良いか。あいつの腕は確かだしな」

 

 

「うん、そうだね。さて、それじゃあそれぞれ、今の役割で行動をお願いね!」

 

 

「「「「「了解(把握した)!」」」」」

 

 

こうして、俺達ははやての誕生日を祝う為に行動を開始した。

あ、そうそう。今日の晩御飯を作るのは俺だよ。

シャマルにをキッチンに立たせたらそれはそれはとても大変な事になっちゃうのは目に見えてるからね。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「と、言う訳なので、ケーキ作りを教えてください!」

 

 

へ?展開が早い?

気にしてたら人生損するよ?

 

 

「あらあら、もしかしてアニス君の彼女さんかしら?その人」

 

 

ピクッ……。

 

 

近くに居るなのはの耳が動く。

うむ、気のせいだろう……きっと、メイビー。

 

 

「あはは、違いますよ。ただの友達なのです。その子に、俺が作ったケーキをプレゼントしてあげたいな〜って思って、来ちゃいました☆」

 

 

「ふふふ、それだったら大歓迎よ。それじゃあ、厨房に行きましょうか」

 

 

「ありがとうございます!でも、お仕事の方は……」

 

 

「大丈夫よ。今日は美由紀も手伝ってくれてるし、ちょっとくらいなら。ね」

 

 

「あはは、すいません」

 

 

「謝らなくても良いのよ?それじゃ、行きましょうか」

 

 

そう言って桃子さんは厨房の方へ向かう。

俺もそれに後ろから着いて行く。

なのはの視線を無視しながら……。

 

 

「それじゃ、始めましょうか」

 

 

「はい!それより質問があります!」

 

 

「何かしら?」

 

 

「何故ウェイトレスの格好をする必要があるんですか!」

 

 

「需要があるからよ」

 

 

誰にだよ……と思ったのは、許されるはず。

それにしても……。

 

 

[壁]ω・)ジーッ

 

 

あのこっちをジト目でジーッと見てるなのはを何とかしてほしいのですがね。

俺としては、このままでも良いんだけど、気になって仕方ないんだよ。

 

 

「それじゃあ先ずはスポンジ作りから。最初はバターを湯煎で溶かすの」

 

 

「はーい」

 

 

俺はお湯の入ったボウルの上に小さめのボウルを入れ、その中にバターを入れる。

それを木べらで動かしながら徐々に溶かしていく。

 

 

「……ん、全部溶けたわね。それじゃ次は、薄力粉をふるいに入れて、だまにならないように塊を粉にする作業よ」

 

 

「はーい」

 

 

次に薄力粉をふるいに入れ、下にボウルを置く。

トントンと小刻みにふるいを叩きながら、粉を振るって行く。

 

 

 

「よし、これで良いわ。さて次は、方にさっき溶かしたのと違うバターを型に縫って良くわ」

 

 

俺は型にバターを塗って行く。

……何だろう、ホントに視線が気になって来たんだけど……俺はそう思い、後ろを向く。

 

 

[調理台の下]ω・)ジーッ

 

 

うわっ!近づいてきてる!?

こわっ!?ていうか仕事どうした!?なのは仕事しろ。

 

 

「……なのは、一緒にやりたいなら素直に言いなさい?」

 

 

「にゃっ!?お、お母さん!」

 

 

何故かなのはは動揺してる。

何でだ?あ、首にレイハさん発見。俺の魔力を感じてなのはに告げ口しないと良いけど。

まぁ、分からないように細工してるから良いけど。

案外ユーノとかに名前知られてたら一発かも。

あいつ、スクライア一族だしね。

 

 

そんなこんなで、スポンジ生地をを型に入れ、オーブンに入れるとこまで終わらせ、今度は生クリームづくりとイチゴの下準備をする事に。

 

 

先ずはイチゴのシロップ用の水を温め、その中にグラニュー糖を加え、火を止めて冷ます。

そして、冷ましてる間に今度は生クリームを作る。

これがまた大変、と思ってたけど、そこはやはり現代。ハンドミキサーなる物があるので、それを使い角が立つまで泡立てる。

 

 

チンッ!

 

 

「あ、スポンジが出来たの」

 

 

そしてちゃっかりケーキ作りに混ざってるなのは……パネェっす。

 

 

そしてスポンジが出来たと言う事なので、急ピッチで生クリームを仕上げます。

まぁ、ハンドミキサーだから速いんだけどね。

生クリームが出来たら、スポンジを横に半分切り、下段部分に生クリームを塗る。

全体に滞り無く塗ったら、さっき冷ましていたシロップに漬けていた、半分に切ったイチゴを乗せていく。

 

 

最後に、上段部分を下段部分とドッキングし、上段部分に生クリームを塗る。

そして、余っている生クリームを絞り袋に入れ、デコレーションしていく。

後はイチゴを乗せて……。

 

 

「出来た―!!」

 

 

完成!!

うん!初めてにしては上出来だね!

 

 

「あらー、上手くできたわね。初めての人はスポンジで躓いちゃう人とか多いのに、アニス君はスポンジも完璧だったわ」

 

 

「ありがとうございます、桃子さん。なのはちゃんも、ありがとうね」

 

 

「ううん、私が無理言っちゃったんだし……」

 

 

「俺は気にしてないから全然良いよ。桃子さん、箱に詰めるの手伝ってもらって良いですか?最後の最後で失敗したらもう目も当てられないので」

 

 

「それだったら私がしてあげる。アニス君はそれが終わるまで休んでて良いよ」

 

 

「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて……」

 

 

俺は厨房に置いてある椅子に腰かける。

いやー、疲れた。ケーキ一ホール作んのも、大変なんだなー。

桃子さん達は凄いな〜、それをほぼ毎日やってるとか、考えられん。

 

 

「お疲れ様、アニス君」

 

 

「ありがとう……あー、疲れた……あ、これから家に帰って今日の晩御飯作らないといけないんだった……まぁ、良いか……何作ろうかな〜」

 

 

「……ねぇ、アニス君……」

 

 

「何?なのはちゃん」

 

 

「アニス君がプレゼントしたい人って……大切な人?」

 

 

唐突に、なのはが聞いてくる。

愚問だね……。

 

 

「うん、大切な人だよ」

 

 

「……そうなんだ……アニス君は、その人の事が、好きなの?」

 

 

「……大好きだよ……」

 

 

「……そう……」

 

 

なのはは顔を暗くして俯いてしまう。

?一体どうしたんだろうか?

 

 

「まぁ、大好きって言っても、友達で言う大好きだからね。恋とかでは無いよ」

 

 

それを聞いたなのはは、いきなり顔をバッと上げる。

その表情は、さっきの暗い顔と打って変わって、キラキラしている。

 

 

「ホントに!?」

 

 

「う、うん……本当だよ……」

 

 

一体どうしたんだ?

今と良い、さっきと良い……あ、桃子さんが来たみたい。

 

 

「はい、アニス君」

 

 

「ありがとうございます、桃子さん。それじゃ、俺はこれで」

 

 

「あら、もう少しゆっくりしていけば?」

 

 

「いえ、これから晩御飯の支度もありますし、少しケーキ作りに没頭しちゃったんで……それじゃ、また来ます。バイバーイ、なのはちゃん」

 

 

俺はなのはに手を振り、店を出る。

さて、今日は何を作ろう……一応買い出しは頼んだけど……買ってくる物、教えとけばよかったかな?

 

 

 

 

 

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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「たっだいま〜!!」

 

 

どもども、翠屋から無事帰還したアニスなのです☆

いやいや、それにしても初っ端から女装させられるとか、流石に思ってもみなかったよ。

 

 

「おっ、帰って来たか」

 

 

「お疲れ様です、主」

 

 

リビングに入ったら、既にアンクとザフィーラが居たのだよ。

あぁ、買い出しだけだしね。それに、結構な時間翠屋に居たし。

 

 

そして、飾り付けも結構良いね。

綺麗だわ。

 

 

「お帰りなさいませ、主」

 

 

「あ、シグナムさん。ただいま。それにしても、だいぶ飾りつけ進んでるね」

 

 

「はい、主よりも先に帰ってきたアンクとザフィーラも手伝ってくれたので」

 

 

「そうだったんだ。ありがと、アンク、ザフィーラさん」

 

 

「気にするな」

 

 

「これも主の為」

 

 

固い、固いぞザフィーラ。

まぁ、本編でもこんな感じだったし、仕方ないか。

 

 

「所で、お姉ちゃんは?」

 

 

「……シャマルなら、あそこに……」

 

 

俺はシグナムの指を指した方を向く。

そこには縄で縛られ、気絶しているシャマルの姿が。

 

 

「どうしてこうなった」

 

 

「シャマルがキッチンに立とうとしたので、止む無く……」

 

 

oh……それはそれは、いい仕事をしましたなシグナム……。

俺は親指を立てて、サムズアップする。

 

 

さて、それよりも料理を作らないといけないわけだ

そしてこの私、何を隠そう。転生してから一回も料理を作っていないのだ。

前世では作ってたんだけどね、それにこのナリだし。やり難いかもしれないし、なまってるかもな。

 

 

「みー、困った困ったのです……」

 

 

最近、梨花の口調が定着しつつある。

まぁ、可愛いから良いんだけど、狙いすぎとか言われそうなのです。

あぁ、言ってる傍からいきなり。いや、どっちかって言うと羽入かもな。

 

 

所で、アンクとザフィーラは何を買って来たんだ?

俺はキッチンにある買い物袋を覗き込む。

 

 

うむうむ……ほうほう、この材料だったら結構多めに出来るね。

まぁ、良いかこれで。

 

 

「うん、じゃあ俺は晩御飯作るから、みんなははやてちゃんが帰ってこないか見張っておいて!」

 

 

「「「了解!(把握)」」」」

 

 

さて、取りかかりますか!

 

 

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はやてサイド

 

 

「はやて、次こっち!」

 

 

「はいはい、しゃあないなヴィータは」

 

 

いや〜、今日の朝、ヴィータが町を案内してほしいって言って来たのは嬉しかったでホンマ。

こうして車いすも押してもらいながら町を案内するのも、結構えぇもんやな。

せやけど、何でヴィータだけ何やろか?

シグナムやシャマル、ザフィーラも町の案内をした方がえぇのに……なーんか気になるなぁ……。

 

 

「なぁヴィータ、何か隠してへんか?」

 

 

「うっ……は、はやて、いきなり何言ってるんだよ。わ、私が隠し事なんて……」

 

 

「じゃあ、何でどもっとるのかな〜?ヴィータちゃ〜ん?」

 

 

「あ……あはは……」

 

 

さぁ、キッチリ問い詰めたるでヴィータ。

ウチは手をわきわきさせながらヴィータに寄る。

 

 

「あ、アイス屋さんだ!はやて行こう!」

 

 

「えっ、ちょっ、ヴィータ!?」

 

 

ヴィータは突然車いすの後ろに回り込んだと思ったら、いきなり車いすを押し始める。

ちょっ!?何処に行く気やヴィータ!?

そう思っとったら、着いたのは公園やった。

 

 

「はやてはやて!アイス食べたい!」

 

 

ヴィータははしゃぎながら言う。

……ふふ、しゃーないなぁ。ほなら……これを食べ終わってからでも問い詰めたる。

ウチはそう心の中で呟き、アイスを買う。

 

 

まぁ、たまにはこんなのんびりな日があってもえぇか。

 

 

 

「おじちゃん、バニラ二つください!」

 

 

「はいよ!ちょっと待っててくれ、すぐに出来るからよ。それと俺はまだ20代だ!」

 

 

「あはは、それはすいませんでした」

 

 

結構愛想がある人で良かったで。

まぁ、そうじゃないと接客業とか出来へんもんな〜。

そう考えとったら、いつの間にかアイスが出来ていた。

 

 

「はいお待ち。二つ合わせて300円ね」

 

 

「よいしょ……はい、300円」

 

 

「毎度!また来てくれな〜」

 

 

さて、話も聞きたいし、そこのベンチにでも座って食べるとしますか。

 

 

「ヴィータ、そこのベンチで座って食べよか」

 

 

「うん!」

 

 

ふふふ……お楽しみはこれからやでヴィータ……。

ウチはにやけそうな顔を必死に抑え、ベンチに移動する。

まぁ、ウチは車いすなんやけどもな。

 

 

さて、どう聞き出したろか。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

アニスサイド

 

 

ピキーン!

 

 

「はっ、ヴィータちゃんがピンチだ!?」

 

 

「……お前、頭大丈夫か?」

 

 

「……あれ、何で俺そんな事言ったんだろう?」

 

 

何かいきなり、そんな予感がしたんだよね。

はっ、これがニュータイプか!?え?違う?ですよねーwww

 

 

「まぁ、気にしないで……それよりも、はい、出来たよ〜」

 

 

俺は焼き上がったハンバーグを皿に盛り付けアンクに渡す。

うん、少し手順を思い出すのに時間かかったけど、うまくできてる。

 

 

「シグナムさん、唐揚げはどう?」

 

 

「はい、もういい頃だと思います」

 

 

「どれどれ……うん、そうだね。それじゃ、もう油から出して、油を切らないと」

 

 

うむ、良い匂いだ。

体が覚えてるんだね、こう言うのは……まぁ、体自体リセットされてるから分からないけどね。

 

 

「ザフィーラさーん、そっちはどう?」

 

 

「もう皿に盛りつけました」

 

 

そう言って、俺に見せてくるザフィーラ。

うん、これも良くできてるね。やっぱオードブルには欠かせないよね、エビチリ。

後はエビフライもそうだし、アスパラのベーコン巻とかも作ってます。

 

 

これで抜かりは無いはずだ……。

後は色々作っているので、足りると思う。

 

 

「ねぇねぇアンク、やっぱり出迎えるときって裸エプロンの方が良いかな?」

 

 

「……………」

 

 

ガスッ!

 

 

「ひぅっ!?……ったー……」

 

 

「目が覚めたか?寝言は寝て言え」

 

 

「あうあう……はぅ〜……やっぱり痛い〜……」

 

 

こいつ、絶対軽く本気だしたろ。

一瞬グリード化してなかったか?右腕。……気のせいで合ってほしい。

 

 

「いい加減俺の頭をグーで殴るのは止めなさい!脳細胞が死ぬだろうが!馬鹿になっちゃうんだよ!?脳細胞が減ったら!」

 

 

「あの発言をする時点で既に馬鹿だ」

 

 

「あーうー、言わないでよー……」

 

 

だって、なんとなく行ってみたかったんだもん。

それにしても、もうこんな時間か……そろそろはやてとヴィータが帰ってくる頃かな?

 

 

「さてみんな、そろそろ配置に付きましょうか。はい、クラッカー持って」

 

 

俺は四人にクラッカーを渡す。シャマルはまだ気絶してるけど、無理やり手に握らせておくわ。

勿論、自分の分も確保しておく。

それにしても、やはり百均クオリティー、絵とか柄が安っぽい……まぁ、仕方ないけどね。

 

 

さて、早く帰って来ないかな〜。

 

 

「ねぇねぇシグナムさん。やっぱりこう言う時ってコスプレした方が良いのかな?猫耳とか猫尻尾とかつけて、やっぱりひげも必要かな?そんで語尾ににゃん♪とかつけてみたり」

 

 

「……………っ!?」

 

 

シグナムは急に後ろを体ごと振り向いた……。

一体どうしたんだ?何か体プルプル震えてますけど……しかも鼻押さえてる……どうして?

 

 

「変態がまた一人……か……」

 

 

「なっ、アンク!貴様は私を変態とでも言いたいのか!!」

 

 

「どうせ想像して鼻血でも出してんだろ?その手を退けて見せてみろよ?」

 

 

「い……良いだろう……私が変態ではないと証明してやる!」

 

 

そう言い放って、シグナムは鼻から手をどける。

……あ、鼻血……。

 

 

「……ほらな」

 

 

アンクはにやっとしながらシグナムに言う。

しかもその顔は、何故か勝ち誇っている……状況がつかめないのだが……。

誰か説明してくれない?三行以内で。

 

 

「主、これを……」

 

 

「ん?ザフィーラさん?」

 

 

何かザフィーラに犬耳と犬尻尾とひげを受け取ったのだが……付けれと?

あ、アンクがぶん殴った……ありゃりゃ、ズルズル引きづられて行っちゃったよ……。

まぁ、付けとくか仕方ない。

 

 

「……わふー!!」

 

 

取り敢えず付けてみた。

そして言ってみたかっただけ、気にしないで。

 

 

「いやぁ、猫も良いけど、犬も良いね」

 

 

さて、このままの状態で待っておくかな……。

それよりシグナムお願いだから、鼻を抑えるのは止めて……そろそろ血を止めようか……。

 

 

っと、その時。

 

 

ガチャッ。

 

 

「ただいま〜」

 

 

「…………」

 

 

玄関からはやての声が聞こえた。

帰って来たか……それにしても、ヴィータがやけに静かだな……どうした?

 

 

「みんな、準備は良い?」

 

 

「俺は大丈夫だ」

 

 

「私もです」

 

 

「「……………(チーン)」」

 

 

約二名、物言わぬ者に変わり果てたが……気にしない方向で。

それにしても、アンクは何時の間に戻って来たんだ……恐ろしい。

 

 

「て言うか、それ取れよ!」

 

 

「もう時間が無いから無理!諦めろ!」

 

 

アンクは俺が着けてる犬耳と犬尻尾とひげを取ろうとする。

でも時間が無いので諦めさせる。

 

 

そして……。

 

 

ガチャッ。

 

 

リビングのドアが開かれる……。

 

 

パンパンパン!!

 

 

「「「はやて(ちゃん)!誕生日おめでとう!!」」」

 

 

部屋にクラッカーの破裂音が響き、三人のハモる声が部屋を包む。

そして、それにあっけに取られているはやての顔が飛び込んでくる。

 

 

「…………へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

はやてサイド

 

 

えっ、ちょお……待ってえな……。

うわ、ウチ……今絶対顔が変になっとる……。

ヴィータから聞いとったけど……まさかこない盛大にしてくれるとわ思わへんかったは……。

 

 

「あ……えと……アニス君……?」

 

 

「何?はやてちゃん?」

 

 

「……盛大過ぎや無いか?」

 

 

「そうかな?これが普通だと思うよ……でも、イマイチ驚きが足りないな〜……もしかしてヴィータちゃんから聞き出したりして……あはは」

 

 

「………あ、あはは……ごめん……聞き出してもうた」

 

 

「……なん……だと……。ま、まぁ良いや。やる事は変わりないしね。それより、どうしてヴィータちゃんはそんなに疲れ切ってる?」

 

 

アニス君は疲れ切っているヴィータを見て言う。

あはは、聞き出す為にくすぐまくったとは言えヘンな……。

 

 

「ま、まぁ気にせんといて……。それよりも、ありがとうなアニス君。ウチ、とっても嬉しい!」

 

 

「あはは、お礼ならアンクやシグナムさん、ヴィータちゃんやお姉ちゃんやザフィーラさんに言ってよ。ほとんどやってくれたのはこの五人なんだから」

 

 

「良く言うぜ。メインは自分がほとんどやってたくせに」

 

 

「そうですよ。料理もほとんど主一人がやっていた様なものですし」

 

 

「……アニス君、料理で来たんか?」

 

 

「いや……作る機会が無かったと言うか……出し惜しみしてました……みたいな……あはは……はぅ〜」

 

 

そう言って恥ずかしそうに鼻のてっぺんを掻きはじめるアニス君。

あ〜、もう……何やってもアニス君はかわぇぇなぁ……。

 

 

「そか……ほなら、ちょっと早いけどご飯にしよか。アニス君の手料理、食べてみたい」

 

 

「うん、分かった。それじゃあ椅子に座って待ってて?すぐ用意するから。アンクとシグナムさんは、そこで気絶してる二人を起こしておいて?」

 

 

「分かった」

 

 

「了解しました」

 

 

な……何で二人が気絶してんねん……。

て言うか今気づいたわ……アニス君、犬耳つけとるやん、しかも大層に尻尾とひげも……。

あぁ、アニス君……モフモフしたいわ……いや、ぺろぺろしたい……アニス君ぺろぺろ……。

はっ、今危ない事考えてた……自重せなな。

 

 

そう思いながら、ウチは席に付く。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

アニスサイド

 

 

何故か悪寒が走ったのは気のせいだと思いたい。

さて、料理運んじゃいますか。

 

 

俺は、既に皿に盛りつけてあった料理をテーブルに運ぶ。

それと、ケーキも用意しないとね。

 

 

はやてちゃん、喜んでくれるかな?

 

 

「はい、これで全部だよ」

 

 

「うわぁ……アニス君、料理上手なんやね〜……綺麗に出来てるわ……」

 

 

「ありがとう。さ、皆も席に着いて?」

 

 

俺の一言で、皆も座る。

既にシャマルとザフィーラは復活していた。しかも、すっごい笑顔なのだが……。

 

 

「さて、ここではやてちゃんにプレゼントがあります!」

 

 

「プレゼントまであるんか?何か、ホンマに悪い気になってきてもうた」

 

 

「気にしない気にしない。さて、問題のプレゼント何だけど……ジャジャーン!何とこのケーキ!俺の手作りです!」

 

 

「……な……なんやってぇ!?この店で売っとる様な綺麗なケーキがかいな!」

 

 

「そうだよ。今日は翠屋で桃子さんに教わりながら作ったんだ。はやてちゃんの誕生日プレゼント……どうせなら形がある物でもよかったんだけど……それはまた今度で良いかな?はやてちゃんには日頃お世話になりっぱなしだから、そのお礼も兼ねて」

 

 

「……ホンマに……もう何て言ったらえぇんか分からんけど……みんな……ありがとうな……」

 

 

はやてはとうとう泣き出してしまった。

まぁ、そうだろうね……両親が亡くなってから、いつも一人で誕生日を祝ってたんだもんね……。

俺ははやての背中を撫でながら、落ち着かせる。

 

 

「大丈夫?」

 

 

「グスッ……大丈夫……ありがとうな、アニス君。それに、皆も。ウチ、皆と家族になれてとっても幸せや……」

 

 

「はやてちゃん……」

 

 

「八神……」

 

 

「「「「………………」」」」

 

 

「………さっ!辛気臭い空気はここまでにして、いただこうか!」

 

 

はやては笑みを浮かべながら俺達に言う。

その笑顔は決して無理をしながら笑っている笑顔ではなく、心の底から……純粋に喜んでくれている笑顔だった……。

うん、やっぱり、はやてには笑顔が一番だよ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「そして、どうしてこうなった……」

 

 

「アニスく〜ん……」

 

 

どうも、ただ今寝る時間で、俺のベッドの中にはやてが居ます。

何か……あれからみんなでご飯を食べ終わって、しばらくしてから。

 

 

「アニス君……今日だけ、我がまま言ってもえぇやろうか?」

 

 

「何?はやてちゃん」

 

 

「……あんな……今日……アニス君と一緒に、寝てもえぇかな?」

 

 

って、もじもじしながら言われたので、速効オーケーしました。

だけど、何で抱き着いてくるのが分からない……。

 

 

「……アニス君……もう可愛すぎや……それに、暖かい……」

 

 

「もうすぐ夏になるけど、暑くなっちゃわないかな?」

 

 

「大丈夫や、ウチにはちょうどえぇから……」

 

 

ギュッ……。

 

 

「はぅ……はやてちゃん……そんなに強く……抱き着かれたら……」

 

 

「ふふふ……離さへんで?」

 

 

あうあうあう、はやてちゃんが悪い笑みを浮かべてるのです……。

どうしたら良いものか……。

 

 

「こうしてアニス君と寝るのは、別荘以来やね」

 

 

「そうだね……あの時も確かこんな状態だったよね」

 

 

「あはは……そやったなぁ。アニス君、抱き心地最高やもん……あぁ、それにシャンプーの香りが良くて……ついついな……」

 

 

「だ、だからって……俺を胸に押し付けちゃ駄目なのです……俺だって男の子、変な気分になっちゃいますですよ?」

 

 

「ふふふ、アニス君の軽さやったら、簡単にまるみこまれるとおもうけどなぁ……」

 

 

「あうあう……それは言わないでよ……」

 

 

全く、確かにはやてでも全力で俺を抑え込めば俺は動けないけどね。

やろうとしないでよ?

 

 

「……アカン……眠くなってきた……」

 

 

「フゥハハハ、では早く眠るが良い……かく言う俺も眠いたいけどね……」

 

 

「それじゃ、寝ようか……お休み、アニス君」

 

 

「うん、お休み、はやてちゃん……」

 

 

こうして、俺とはやては眠る事にした。

この幸せが、長く続きますように……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アニス君……寝てる?」

 

 

「スー……スー……」

 

 

よし、よぉ眠っとるな……。

全く、無防備過ぎやでアニス君。ウチがそう簡単に眠るとでも?

 

 

「……ふふふ、可愛い寝顔や……」

 

 

ウチはアニス君の顔を覗き込んで、ニヤニヤする。

あぁ、これが至福の時みたいになりそうや……。

 

 

「………アニス君………」

 

 

ウチはアニス君の名前を呟き、徐々に徐々に、顔を近づかせていく。

 

 

「……アニス君が悪いんやからね……」

 

 

そして、ウチは……アニス君にキスをする……でも……。

 

 

チュッ……。

 

 

「……まだウチのファーストキスは上げへんで?やっぱり、起きてる時じゃないと損やもんね……でも……ふふ、アニス君にチュウしてもうた……幸せすぎてウチ死にそうや……」

 

 

あぁ、テンション上がってもうて来て……どうないしよう……。

もうこれは、アニス君のお腹をモフモフしながら寝るしかあらへんな。

ウチはアニス君のお腹に顔を蹲らせ、そのまま目を閉じる……。

 

 

今度こそ本当にお休みや、アニス君……。

 

 

「おやすみ……」

 

 

こうして、ウチの幸せな一日が終わった……。

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ハッピーバースディ!八神はやて!
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