IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 コラボ小説 第三話〜狂喜が牙を剥いたとき…… |
この世界に来て一週間がたった。俺の世界にも居る専用機持ちのメンツもこの間に全員返って来ている。そいつらには俺の事情を話したが特に始めは驚いていたが、アムロさんの事を考えるとそうあってもおかしくない、みたいなノリになっている。
「まぁしかし、織斑兄弟は鈍感にも程があるなぁ」
アリーナに続く道を歩きながら考える。
そう。一夏、光輝共に彼女たちの好意に気付いていないのだ。彼女達は一生懸命なのだがあの兄弟ときたら……。俺も彼女達のようにいろいろアプローチをされているし、彼女達の好意も気づいているさ。だが、彼女達の気持ちには答えれないんだ……。
「おーい! 唯さんってば!」
俺を呼ぶ声に振り向けば光輝がこっちに叫びながら走って来ている。俺の所に着いたころにはハァハァ、と肩で息をしている。全力で走りすぎだよ、全く。
「おいおい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫……! それよりさっき……ハァハァ……から呼んでたのに、何で……ハァハァ、こっち向いてくれなかったのさ?」
「悪い! ちょっと考え事してたからさ……気付かなかったんだよ」
「それな、らいいけど、単に無視してたとか、だったら怒るからね!」
そう言って頬を膨らます光輝。相変わらず可愛い奴だ。
「分かった分かった。ちょっと歩くペースを落として行くか」
光輝も苦しそうだしその方がいいだろう。光輝とはこの一週間でけっこう仲が深まったと思う。こいつと一緒に居たら、なぜか安心するんだよな。これも光輝の力なのか? まぁどちらにせよ光輝の影響を受けているのは間違いないな。悪くない、むしろ嬉しいぐらいだよ、ホントに。
「あれ? どうしたの唯さん? そんな暗そうな顔しちゃって?」
「うん? そんな顔してたのか? 強いて言うならお前と一夏のことだな」
「え? 僕と夏兄のこと? どんなことなの!?」
「それはだな……秘密だ」
「むぅ……唯さんのケチ」
そう言ってふてくさる光輝。あ、やっぱりこいつは可愛いって思ってしまう。本当に男子なのかねぇ、こいつは。
「全身装甲に角が一つ。見たことのないタイプだね。でもカッコいい! また黒なのもいい!」
「そ、そうなのか? そんなこと言ったのはお前が始めてだよ」
第一アリーナにて。専用機持ちと千冬は光輝と唯の模擬戦を見学している。唯のIS――黒百合は全身装甲であり、黒である。背中の大型ブースターの恩恵でそのスピードは従来のISの速度を軽く越え、機動力はHI-νガンダムにも劣らない。武装の種類もバランスが良く、火力はHI-νより高い。
『二人とも用意はいいな? それでは、模擬戦、始め!』
千冬のその言葉に二人同時に接近し合う。光輝はファンネルラックからビームサーベルを、唯は腰にマウントしてあるビームサーバルを抜刀し、鍔迫り合いが始める。お互いのサーベルがぶつかり合い紫電が走る。
「背中のブースターは伊達じゃないんだね。凄いスピードだ」
「それはどうも♪」
唯は鍔迫り合いの状態から光輝の体勢を崩してヒートロッドで追撃を行うが、光輝はそれをギリギリの距離で回避していく。ヒートロッドは高熱の鞭であり、その軌道を読むのは難しいがそれを光輝は回避しているのである。
――確かにアムロさんの言う通りだ。こいつの反応速度は尋常じゃない……! だが!
唯は一旦距離を置き――
「こいつでどうだ!?」
唯はハイパーバスーカとシールドに内蔵されているビームガトリングで光輝の周りに弾幕を張る。バズーカは拡散弾で更にビームガトリングの驚異的な連射力で光輝を押していた。
「甘いよ! フィンファンネル!」
光輝のその掛け声と共に背中のラックから6基のフィンファンネルが射出され、その特異な移動音を発しながら唯を狙う。
「ブルーティアーズと同系の武装か!? 移動速度が速い!」
唯は攻撃を中断し、フィンファンネルからの攻撃を回避するのに専念した。更に光輝はさっきのお返しと言わんばかりにビームライフルとハイパーバズーカで追撃する。これは……酷い。しかし、唯は笑っていた。
「ははっ、これを使って終わろうか!」
突如、黒百合の装甲が展開され消える。刹那、全てのフィンファンネルが破壊され光輝の目の前に現れ、おもいっきり蹴りを喰らわす。光輝はぶっ飛び、アリーナの壁にぶつかる。そして変化した黒百合を見る。
「あ、あれって……」
[ガンダム……なのか?]
展開された装甲の隙間からは血のように赤い光が照らされている。そして驚くのは額の角が割れ、その姿はまさしくガンダムタイプそのものだ。二人は驚きを隠せない。
「ガンダムってのは分からないが、これが黒百合の単一仕様能力――IS−Dだ。まぁ身体の負担が大きいからすぐに終わらすぜ?」
「なら僕も使うよ。サイコバースト……!」
光輝から鮮やかな緑の光が発せられ包む。単一仕様能力――サイコバースト。性能が著しく上がるが身体の負担もあるが、精神的な負担がなくなったので安全性が上がったのである。
「お前も同じような能力か! いいぜ、決着だ!」
二人は最高スピードで戦闘を行う。緑と赤の光が交錯し、衝撃が走る。二人ともダメージが蓄積し、戦闘は終局に向かっていた。だが唯に異変が――それを感じた光輝は攻撃を止めた。
「ぐぅ!?」
IS−Dを解除させてISも解除された唯は空中から落ちる。光輝がすかさず唯を追う。
「唯さん! 間に合うか!?」
落下していく唯をなんとか抱きかかえる光輝だが唯の様子が明らかにおかしい。光輝はISを解除させ、唯に声をかける。
「どうしたんだよ唯さん!?」
「うあぁぁぁ! 出てくるなぁ! 俺は……俺はまだ――」
頭を抱えて暴れていた唯はいきなり気絶した。その様子を見ていた専用機持ちと千冬はアリーナへと向かったのだった。唯に一体なにが……?
「唯さん、唯さん……」
模擬戦は中止になって、僕の部屋には唯さんと僕の二人だけだ。
あれから一向に目を覚まさないんだ……。医療室で見てもらっても原因不明でそのまま休んで貰った方が良かったのだろうけど、今の唯さんを一人にするのは嫌だったから無理いって僕の部屋に移動させてもらったんだ。
ちなみにアムロさんはお母さんの所に居る。今は僕一人で唯さんを看病したかったから……他のみんなにも一人で看病するって言って気を使ってくれた。アムロさん、みんな、わがまま言ってごめんなさい……。
最後に見た唯さんの目、何かに脅えているような目だった。誰かに助けを求めて、何かに脅えて……それは辛くて悲しい闇に等しい。一体唯さんは何に……?
「うぅん……」
「唯さん!?」
良かった! 唯さんが目を覚ましてくれた! 僕は思いっきり唯さんを抱きしめた。
「悪い、光輝。俺から今すぐに離れろ……! 俺は……お前を」
「え? ど、どうしたの!?」
「いいから! 俺からに、げろ……はや、く――うわぁぁぁ!」
突き飛ばされた僕は壁に当たり一瞬、息が止まる。一体どうした――
そう叫ぼうとしたのにいつの間にか僕はみぞおちに一発喰らっていた。
「ぐあ……ゆ、いさん? ど、して……」
笑っていた。唯さんが殺意を持って――いや、唯さんじゃない? 今の唯さんからは狂気しか感じない……。一体何が?
「唯? 唯ならボクの中で大人しくしてるよ?」
「だ、だれ? 誰なの君は?」
「ボク? 唯から聞いてないかな? ボクはユリ。もう一人の唯って言ったら分かるのかな?」
唯さんって二重人格!? いや、このプレッシャーは全くの別人だ……まさか本当にもう一人の唯さん?
「あんな光を見せられたらさ、唯を乗っ取れないじゃん。あれを見て唯は勇気を出し始めている。ボクが唯を乗っ取るのに邪魔なんだよね。だから君を殺すことにしたの♪」
笑顔からは想像できない言葉を吐くユリさん。僕は顔を上げ思いっきり睨むがユリさんは全く動じない。
「それで睨んでるつもり? アハハ! 可愛いねキミ。唯がそう思うのもわかるよ。大丈夫、じっくり痛ぶって殺してあげるから♪」
今度は横腹に蹴りを入れられた。唯さんがやっているようで僕は考えがめちゃくちゃになっていた。
「あぐ! 痛いよぅ……唯さん……たす、けて」
「ハハッ! 言ってるじゃん、唯はボクの中で大人しくしてるって! さてどうやって痛ぶろうかな? 先に精神的に殺してやろうかな?」
説明 | ||
唯は徐々に光輝に心を開いていく。模擬戦を行う二人だが唯が……。 | ||
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インフィニット・ストラトス HI-νガンダムVS黒百合 | ||
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