IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 コラボ小説 第四話〜唯の涙
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[唯君の実力は中々だったな。かなりの実力者だ]

「私もそう思います。いきなり気絶したのは気になりますが……」

 

 模擬戦も終わって昼食後(と言っても僕は何も食べてはいないが……)千冬の誘いもあり会話をしていた。光輝と一緒に唯君の看病に着きたかったのだが光輝に断られてしまった。そして今に至っているわけだ。

 

[そうだな。本当なら警戒すべき人間なのに光輝と二人きりにするのはよろしくない気がするな]

「それはそうですが、この一週間何も光輝には起こってないなしですし大丈夫でしょう。友達ができるのはあいつにとっては幸せですからね」

[それはそうだ。それにしてもあの模擬戦は光輝や一夏、専用機持ちのメンバーにも良い経験にもなるだろうな]

 

 唯君の状況判断、射撃テクニック、接近センス、反応速度、どれもレベルが高い。唯君と戦ってギリギリ光輝が勝てるぐらいだと思う。他のみんなはまだまだレベルが低いが、臨海学校が終わってからはちょっとずつ成長しているのが分かる。

 

「そうですね。ISもですが一夏と光輝には女の気持ちが分かるようになってもらいたいですね」

[君がそんなことを言うなんて意外だな。恋愛には興味がないと思っていたんだが……]

「失礼な! 私にだってそういう時期はありました。今はそれどころじゃないですから」

[それはすまなかった。でもたまには家族でどこかに行ってリラックスするのも良いと思うよ]

「時間があればそうします。話は変わりますがアムロさんは恋人なんかは?」

[いたよ。同じ軍のメカニックの子でνガンダムの開発の主導者でもあった]

「じゃあνガンダムはアムロさんとその人の想いが詰まっているんですね」

[そうかもしれないな。でも今は光輝がそれを引き継いでくれている。安心だよ]

 

 チェーン、あの戦闘中に君を感じた。今君はどうしているんだろうか? 

 

――っ! この狂気は……光輝が危ない!

 

[千冬! 今すぐ光輝の部屋に行くぞ! このままだと光輝が危ない!]

「なっ! 分かりました!」

 

 急いで光輝の部屋に向かおうとする僕達の前にエリスが勢いよく扉を開けて来た。

 

「アムロさん、織斑先生! 光輝くんが、光輝くんが……!」

[今から俺達も向かおうとしていた所だ。一緒に行こう!]

 

 エリスは頷き、千冬とエリスは走って光輝の部屋へと向かう。間違いない、この狂気はもう一人の――

 

 

 

「くはっ……ぐぅぅ」

「もう十分頑張ったよ。だからさ……早く脅えた顔を見せてよ!」

 

 光輝を壁にすがらせた状態でユリが首に手をかけ光輝を持ち上げる。ユリ自身の力はずば抜けている。こんなことを普通の人間はなかなかできない。

 

「は、離し……て」

「嫌だよ。少しずつ苛めて脅えた顔が見たかったのに君はずっと強気なんだもん。このまま一気に殺しちゃうね♪」

「ぐがぁぁぁ……」

 

 光輝はジタバタと抵抗するがユリは動じない。それどころかその行為に腹を立てたユリは更に力を強める。

 

「ふふん♪ その命の光が消えそうになる瞳――ボクは好きだよ♪ もっと見せて♪」

「……ぁぅ……」

 

 光輝は次第に抵抗を弱め、身体から力が抜けていく。目も虚ろになっていき――

 

 部屋の扉が勢いよく開かれユリはそっちを見る。エリスに千冬、アムロの三人? だった。

 

「お前、始めから光輝を狙っていたのか!?」

「違うよ。この子の光が唯に勇気を与えてる。そしたらボクはこの身体を支配することが出来ないんだ。だからこの子を殺すことにしたの♪」

「そんなの、そんなのないよ! 今まで仲良くしてたのはなんだったの!? 唯くん!」

 

 その名前にユリがエリスを睨む。唯なのに唯とは違う、憎しみの籠った闇の瞳。それにエリスはたじろぐ。

 

「勘違いしてほしくないね。ボクは唯の中に眠るもう一人の唯――ユリだよ。まぁこのことを知っているのはそのアクセサリーの中の人間だけだから無理ないか」

「アムロさん、まさかユリの事を?」

[……あぁ。唯君が話してくれた。唯君との約束で君達には離すことが出来なかった。まさかこんなことになるなんて……すまない]

「謝ることじゃありません。ユリとやら今すぐ光輝を解放しろ」

 

 千冬の用件をすぐに断ろうとしたユリだが、少し考えて答える。そしてユリの手から力が無くなり光輝が落ちる。

 

「光輝くん!」

 

 エリスはすぐさま光輝に駆けよりそっと抱きしめる。

 

「いろいろ殴ったりしたから身体のダメージは結構あると思うよ。まぁ命に別状ないから安心して」

「誰がそんなことを信じるもんか! 絶対に許さない!」

 

 エリスはユリを睨む。その瞳は先ほどのユリにも勝るとも劣らない程の憎しみの籠った瞳だった。ユリはその瞳を少し見て、視線を千冬に向ける。

 

「解放した代わりに、明日の14時から第一アリーナでボクと勝負しようよ♪ いつもの専用機メンバーも呼んでね♪」

「……何が目的だ?」

「目的? そうだね……唯の仲間を片っ端から壊すことかな♪ そしたら唯も完全に唯の心は壊れるだろうからね♪」

「そんなこと誰もしないよ!」

「そんなこと言ってもいいの? 今のボクなら君や光輝なんてすぐにでも殺してあげれるよ」

 

 エリスはユリから感じるプレッシャーを感じてそれが嘘でないことを悟る。それでもなお憎しみの瞳をエリスは向け続けた。

 

「どうするの? 織斑先生♪? 早く答えを出してくれないとこの子達を殺すよ?」

 

 ユリの手から出ている紫のオーラをエリスと抱きしめられている光輝に向けられる。

 

「……分かった。その要求を飲もう……」

「やった♪ じゃあそういうことだからまた明日ね♪ 明日は本気で殺しに行くから♪」

 

 ユリはそう言い残して唯から狂気が消えていく。

 

「……俺は……俺は!」

 

 どうやら元に戻ったらしいが唯は泣き崩れた。ユリを通じて今までのことを見ていたのだろう。自分のやったことに整理がつかなくなっている。

 

「……さて、これからが大変だな」

 

 

 

 光輝の部屋で専用機持ちを集め明日の作戦会議をした。その際に専用機持ちや姉さんに俺の秘密を話した。全員、どういう反応をしていいのか分からないのか戸惑っていた。俺は仲間を傷つけたそれはどんな理由があっても許されることじゃない……俺は……。

 

 作戦会議も終わり、光輝の部屋に姉さんとベットで眠っている光輝といる。晩飯も済まし、姉さんと光輝の看病をしていた。俺はこの人の家族を傷つけた。なのになんで俺と一緒に看病を?

 

「君がどんな運命を背負ったとしても君はれっきとした人間だ。それは間違いない」

「でも俺は――」

「ん、唯さんにお母さん?」

 

 光輝が目を覚ましてくれた! でも素直に喜べない……だって俺は――

 

「大丈夫か?」

「うん、身体中が痛いけどなんとかね」

「そうか……唯、光輝に話さないのか?」

「…………」

 

 俺は怖くて目を背けてしまう。言わないといけない。でも言ったら――

 

「唯さん、僕は何があっても唯さんを裏切らないよ。だから……話してみてくれないかな? 無理にとは言わないけど……ね」

「光輝……これからいうことは本当の事なんだ。だから――」

「いいよ。僕は唯さんの事信じてるから」

 

 俺は勇気を振り絞って秘密を話す。親に捨てられ、人体実験にされ、瞳が変わって、そしてユリが生まれて、いつのまにか人間じゃ無くいなってたことに絶望して――声を絞りながら光輝に話した……。

 

「唯さん、僕の傍まで来て?」

 

 俺はその言葉通りに光輝の傍まで近寄って光輝の上体に背を向けて座る。すると光輝は後ろから俺を抱きしめた。暖かくて、優しさに満ち溢れている。それに俺は涙を流してしまう。

 

「ねぇ、僕の心感じる?」

「あぁ、暖かくて優しい光。俺にはないものだ……」

「そんなことないよ。眠っているだけで唯さんの心にも光はあるんだ」

「眠っている……でも俺は人間じゃない。光があったって――」

「ううん。唯さんは人間だよ。だって僕の心を感じてくれたでしょ?」

「そ、それはそうだが……でも俺は君を傷つけた。それは許されること、じゃないよ……」

「あれはユリさんでしょ? ユリさんはもう一人の唯さんだけど、でも今僕が抱きついてるのは唯さんだよ。唯は唯。ユリはユリだよ。 ね?」

 

 俺は俺……? 

 

「僕は唯さんを信じる。人間だろうがそうじゃなくても――唯さんは唯さんだもん」

「うぅぅ……あ、あり、が、とう。お、おれは……おれは……!」

「いいんだよ。僕は気にしてないから。今は思いっきり泣いてもいいんだよ」

 

 その言葉に俺は思いっきり泣いた。俺を真向から受け止めてくれる存在。こんな俺を認めてくれる人がいる。そう思うだけで俺は――!

 

 俺は姉さんに静かに見守られないがら思いっきり泣き続けた。光輝が頭を撫でてくれる度に俺はこいつの暖かみを感じていった。

 

説明
唯のもう一つの人格--ユリが光輝を襲う。その目的とは? そして唯は?
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