IP〜インフィニット・ストラトス・パラドックス〜 第一話 |
「全員そろってますねー。それじゃあSHRはじめますよー」
俺、織斑一夏は今とてつもなく気まずい空気のする教室にいる。普通ならここで緊張などで固まるだろうが俺はそんな失態は見せない。・・・・うん、でもキツイなこれ・・・・・
先ほど言葉を述べたのは小柄でメガネを掛けた1年1組副担任山田真耶先生。この人本当に先生なのか? と思ってしまうような容姿をしている。もっと言うなら・・・・子どもっぽい。
「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」
「・・・・・・・」
・・沈黙・・・・妙な緊張感のためか誰からも反応がない。
「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」
何か反応すればよかったのだろう、だが今の俺にそんな事は不可能に近い。
まあ、なぜ俺がこんな状況に陥っているかというと・・・・・・俺以外のクラスメイトが全員女子だからだっ!!
・・・そこリア充爆死しろとか言っただろ?そんな風に考えられる君たちがスゴイと俺は思う。実際こんな状況になってみろ。マジできついから。(ちなみに作者は似たような経験があります。マジでキツイです。女って怖いって思いました)
・・・・って誰に言ってるんだ俺?まあ、とりあえず回想どうぞ。
?数ヶ月前?
「・・眠い・・・・」
丁度二ヶ月程前、俺は中学3年生で受験真っ只中だった。
「なんで俺だけが別会場なんだ・・・他の皆全員同じ会場だったのに・・・まさか良太郎さんの不幸が移ったのか・・?」
ふこ?だ?、とそんなこと言いながら俺は受験会場へと行く電車の中に立っていた。
去年起こったカンニング事件とやらのせいで受験会場のお達しが二日前というとんでもハードスケジュールのせいで俺はてっきり本校で受けると思っていたのを4駅先の所まで行くことが急に決まり、かなり精神的ショックを受けた。
まあ、何を言ったとしても無駄なのは先刻承知、大人しく行くことにしたのだが・・・・
「・・・・・寒すぎる・・・」
寒さの所為で早速挫けそうだ。でも、受けるしかない。というか受けなきゃいけない。
俺が受けようとしている私立藍越学園は私立でありながら『自宅から近い・学費が超安い・就職決まったも同然』の三拍子揃った、俺にとってヒジョーに魅力的な学園なのだ。
何故魅力的かというとウチには両親がいない。年の離れた姉である織斑千冬に養ってもらっているのが現状だ。俺はそれがひどく悔しかった。なので中学を卒業したら働こうと思っていたが、姉さんによる鉄拳制裁で止められた。だったらせめて・・・という理由で金銭的負担の少ないこの藍越学園に行こうと思ったわけだ。うん、あれはマジで痛かった・・・・
まあ、中学はやんちゃしながらも成績はソコソコ優秀。そのおかげか、ついこの前の模試では判定はA評価。まあ、模試の評価なんてアテにならないのは知ってるから油断は禁物。なのでエリート刑事である『照井竜』さんに満を持して勉強を教わったわけだ。
まあ、それはさておき・・この学校に受かれば就職したも同然なのだ。これで少しでも千冬姉さんの心労を減らせることが出来ればいいんだが・・・・
「まあ、それは受かってから考えるとするか」
そんな事を言ってるうちに会場に到着。結構人が多いな・・迷いそうだ。
「さてと・・・・確か二階だったな・・」
俺は受験票に書かれている場所をチェックしその場所を目指す。が・・・・・
「・・・・迷ったか・・」
というかこの会場が非常に分かりにくい構造をしていて何が何だかワケがわからん。なんでこんな場所にしたんだよ。絶対に迷うじゃねぇか。
「・・・はぁ・・」
仕方ない。次にあったドア開けて中にいる人に場所聞くか・・・
そう思い近くにあった扉を適当に開ける。するとそこにあったのは・・・・・
「・・・・IS?・・」
IS・・・正式名称は『インフィニット・ストラトス』。現代最強と言われてる兵器だ。
なんでこんなモノが・・・って考えたら分かるか。
「ここでIS学園の入試があるわけか・・・」
この兵器には致命的な欠陥が存在する。それは『女しか使えないこと』。これはもう世界一般常識として知られている。
「そういえば、こんなに間近で見たのは初めてか・・・まあ、それはそうか。男には関係の無いシロモノなわけだし」
なので、俺はそれを無用心に触ってしまった。
キンッ!!
「ッ!?」
すると、突然意識の中に高い金属音が響いた。そしてすぐ、電撃のような感覚と共にISに関する様々な莫大な情報が俺の意識の中に流れ込んできた。それらは全て、初めて見るもののはずだった。しかし、それが全て理解、把握できるっ!
そして俺はそのまま導かれる様にISのコックピットと思われる場所に移る。身体にISのアーマーが装着される。ISと一体になるのが解る。
??皮膜装甲(スキンバリアー)展開・・・・完了
??推進機(スラスター)正常作動・・・・確認
??近接ブレード・・・・展開
??ハイパーセンサー最適化・・・・終了
そして俺は理解した。
??これが一体なんなのか
??なんのためにあるのか
・・・・ッ!?マズイッ!!こんなトコロ誰かに見られたら・・・・っ!!
そこまで理解した瞬間、俺は慌てて冷静になる。が、時既に遅く、
「君っ!!そこで何を・・・・・えっ!?なんでISがっ!?」
「嘘っ?起動してるっ!?男なのになんでっ!?」
おそらくIS関係者であろう人たちが入ってくる。最悪だ・・・っ!!逃げようがないっ!!
その瞬間、俺の進学先は確定した。
回想終了。
いまさらながら自分の運の無さに呆れるしかない。で、しかもその後はトントン拍子に進んでいき、いつの間にかここにいたって感じだ。まあ、その間に出来ることはやっといたが・・・・
「・・・くん。織斑一夏くんっ」
「ん?」
・・・・・あ、しまった。
ふと顔を上げると山田先生が涙目で俺のことを見ていた。
「あ、あうっ!ご、ごめんなさいっ!!え、えとっ!で、でもねっ!あのねっ自己紹介、『あ』から始まって今『お』なんだよねっ!だからね、ご、ゴメンねっ!? 自己紹介してくれるかな?」
涙目というか若干泣きかけな状態の山田先生がペコペコ頭を下げながら話しかけてくる。な、なんかいじめてるみたいで非常に罪悪感が・・・っ!!
「あぁと、すいません。ちょっと考え事してたので・・・」
「ほ、本当ですかっ?怒ってませんかっ?」
「ええ。ついいつもの癖で・・・・。こちらこそ本当にすみません」
「あ、あのっじゃあ自己紹介お願いしていいかなっ?」
「はい。分かりました」
そして自己紹介のために後ろに振り返った瞬間、俺以外の全てのクラスメイトの視線が俺に突き刺さっていることを改めて実感し、顔を引きつらせた。
「・・・・織斑一夏です。史上初の男のIS操縦者ということですが、ISについてはほとんど知りません。学園でたった一人の男と言うことでいろいろ迷惑をかけることもあると思いますが、よろしくお願いします」
取りあえず、無難に済ませたと思う。が、なんだろう。この『もっともっとっ!!』言いたげな視線は・・・・。
・・・・・・どうしたものか・・・・
そう考えこんでた時、タイミングよくドアが開いた。
「なんだ、まだ終わっていないのか」
その声を聞いたとたん、頭の中にダースベーダーのテーマが流れる。・・・・この声はまさかっ!!
「まさかっ!!白い魔王っ!?」
そう言った次の瞬間、パァンっと頭を叩かれた。この痛み間違いないっ!
「誰が19歳でありながら魔法少女を名乗る頭がパーなヤツだ。この大馬鹿者が」
マテマテマテ。何で千冬姉さんがここにいるんだっ!?職業不詳で月に一、二度しか帰ってこない絶対性格や眼つきで損してる24歳・未婚・彼氏いない歴イコール年齢がっ!
パアンッ!
「なんでまた叩くっ!?」
「何か馬鹿にされたような気がしてな」
「心を読まれたっ!?」
パァンッ!!!
「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」
「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押しつけてすまなかったな」
「い、いえっ。副担任ですから、これくらいはしないと……」
再び叩かれて突っ伏してる俺の聞いた事もない優しい声。魔王はどこに行った?あれか?過去さかのぼってなのちゃんにでもなったのか?え?あれは世界が違う?・・・・嘘だっ!!
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠一五才を一六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」
・・・・さすが鬼教官。言ってることが理不尽気回りない。でもこんな言葉を言ってもこの人のカリスマ性は半端ない。その証拠に・・・・
「キャァァァァァァァッ! 千冬様、本物の千冬様よっ!」
「ずっとファンでしたっ!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんですっ! 北九州からっ!!」
「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいですっ!」
「私、お姉様のためなら死ねますっ!」
これだ。我が姉ながらあっぱれだな、うん。そしてこれが所謂女子高生パワーというヤツか・・・・凄まじい・・・
そんな女子達の言葉を千冬姉さんはうっとうしそうな顔で見る。
「・・・・毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」
案外そうかもね。それかここに入学してくる人の殆どはこれとか?・・・・うわ、想像したくねぇ・・・
「きゃあああああああああっ! お姉様っ! もっと叱ってっ! 罵ってっ!!」
「でも時には優しくしてっ!」
「そしてつけあがらないように躾をして?っ!」
千冬姉さんは額に手を当ててため息をつく。それすら見とれてしまっている人がいる。ダメダコイツラナントカシナイト・・・・・・
千冬姉さんの視線が今度は俺に向けられる。その貫く様な視線に俺も否応なしに現実逃避から帰ることに。
「で?何をしてるんだお前は、緊張で挨拶が出来んという性格でもないだろう?」
「それより千冬姉さん、聞きたいことが一つ。なんでここで教員やってることを」
パアンッ!・・・・言い切る前に4度目の出席簿アタックが俺に炸裂。何故っ!?
「織斑先生と呼べ」
「・・・・はい、織斑先生」
ああ、公私を分けろと言うことね。
そしてこのやりとりにより教室中に俺と千冬姉さんが姉弟であることがバレた。
「えっ・・・・織斑くんって、あの千冬様の弟・・・?」
「それじゃあ、世界で唯一男でISが使えるっていうのもそれが関係して・・・・」
「ああっ、いいなぁっ。代わってほしいなぁ」
随分好き勝手言ってくれるなぁ、オイ。
というわけで俺はここ、IS学園に通うことになってしまったのだ。実際に藍越学園の試験はそこで行われていたものの2階ではなく1階だったというオチだ。・・・・・おっかしいなぁ。受験票はちゃんとチェックしたのに・・・・・
「さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だか、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ。私の言葉には返事をしろ」
さすが鬼教官。言ってることが理不尽気回りない。・・・・・このセリフ二回目な気がする・・・。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「やれやれ・・・・何とかついていける感じか・・」
現在、一時間目のIS基礎理論の授業が終わった休み時間だ。ぶっちゃけてキツイ。どうにかこうにか理解は出来てるが本当にギリギリだ。3月中に頑張っといてよかった・・・・
まあ、それは置いといてこの状況はどうにかできないものか。俺は客寄せパンダかっ!・・っていうくらいな状況です。
廊下には他のクラスの娘や2年、3年生が詰めかけている。が遠回りに俺を見てはひそひそと話していて誰も俺に話しかけようとはしない。が、『話しかけてっ!!』オーラを大量に放出していて、妙な緊張感が満ちている。
・・・・ダメ。俺こういうの苦手。・・外には出さないけどキツイわ?。
内心そう思いつつ、外では真面目な顔で次の授業の準備をしているとき、俺の前に誰かが来るのを感じた。おお、あの空気から抜けだした猛者がいたか・・・っ!!
「・・・・ちょっといいか?」
「ん?」
あれ?どっかで聞いたことのある声だな?と思いつつ、顔を上げるとそこには・・・・・・・・どこか見覚えのあるポニーテール美人がいました。
「・・・お前、箒か?」
「・・・・」
シカトかコラ。
そこにいたのは幼馴染の篠ノ之箒だった。・・・・と思う。いやだって返事返してくれないし。
「お前・・・篠ノ之箒だよな?」
「・・・ああ。・・廊下でいいか?」
「ああ」
そのまま廊下にいこうとするとザァーと道が開けた。・・・・俺はモーゼかっ!?
そして廊下にでると野次馬が俺たちをある一定の距離を保ちながら囲った。
「・・・・」
「・・・・」
・・・・そして何も話さない。・・・・・そっちから呼び出しておいて何も話さないのはずるいと思うんだ。皆もそう思うだろう?・・・って俺は誰に言ってるんだ?
仕方がないのでこちらから話しかける。
「・・・そういえばこの前剣道の大会で全国優勝したそうだな。おめでとう」
「なっ・・・!? 何でそんな事を知っているんだっ!?」
すると、顔を真っ赤にして怒鳴られた。・・・・え?なんで?俺褒めたよね?
「・・・新聞に載ってた。お前の名前を久しぶりに見たからな・・良く覚えてる」
「なっなんで新聞なんか読んでるんだっ!?」
君は俺から新聞を読む権利をはく奪する気かね?新聞ぐらい自由に読ませてくれ。新聞を読みながら飲むコーヒーは最高なのだ。
「俺だって新聞ぐらいは読むさ。・・・それと・・」
「こ、今度はなんだっ!?」
また、怒鳴られました。相変わらず怖いです。小さいころもこんな感じだったなぁ?・・・・
「久しぶりだな、箒。相変わらずそうで何よりだ」
昔を思い出しつつ箒に笑いかけると、箒は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
あれ?なんでまた怒ってんの?俺何かまずいこと言った?
俺がどう対応していいのか分からずじまいになったとき、丁度チャイムがなった。
それに合わせて野次馬たちも散っていく。
「時間か・・・俺たちも戻るとしよう」
「あ、ああ・・そうだな・・」
やれやれ・・・次の授業も一杯一杯になりそうだね。
説明 | ||
にじファンで投稿していました。仮面ライダー要素あり。一夏性格改変モノです。 |
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コメント | ||
ご指摘ありがとうございます。最新話にて減らしてみました。よろしければそちらも見ていただいて再びご指摘いただければ幸いです。(サンダイオンっぽい人) 無駄な改行が、多過ぎで疲れます。(匿名希望) |
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