仮面ライダーディージェント 第14話:龍騎士の影 |
「さあ来い、“破壊の代行者”。その力を見せてみろ」
「ね、ねえ歩!真司さんどうなっちゃったの!?あのライダー何!?」
「『歪み』と融合している…しかも『基点』と融合したせいで更に『歪み』が強くなってる。そしてあのライダーがこの世界の『歪み』そのものだよ……」
歩には分かる。最初にこの世界に来た時に見た、蜘蛛型ミラーモンスターと戦っていた時よりも更に強くなっている事が。
しかも「基点」である城戸真司と融合してしまった為、この世界の「基点」となるライダーが消えてしまっている。この世界が「ライダーサークル」から除外されるのも時間の問題だろう。
そもそもサークルと言っても距離的な概念ではなく、分類上の概念であり、そのカテゴリーの中にライダーが含まれている世界の総称を「ライダーサークル」と呼ぶのだ。
「さあどうした!?俺にその力を見せてみろぉ!!」
「チッ、一旦逃げるよ」
「ウ、ウン!」
歩はこの狭い場所で戦うのは不利だと判断して、次元断裂に亜由美を連れて逃げ込んだ。これで自分達以外を入れない様に演算すればリュウガは追ってこれない……筈だった。
「逃げるなぁ!!」
「な……!?」
「キャアァ!?」
何とリュウガは次元断裂を殴って強制的に破壊してきたのだ。ワールドウォーカーかDシリーズでなければそんなことは不可能な筈なのにどうして……!?
そこでふと思い出した。王蛇がベノスネーカーを突進させて次元断裂にダメージを与えた事に。
次元断裂を発生させるにはその空間を演算しなければ不可能だ。しかもその演算法はかなり困難。つまり現実世界とミラーワールドの空間を同時に演算するのは不可能なのだ。
更に目の前のライダーは現実世界の住人とミラーワールドの住人のハイブリッド。その攻撃が空間そのものにズレを生じさせて当然なのだ。
次元断裂を破壊された衝撃で別の世界との道が出来てしまい、亜由美がその中に吹き飛ばされてしまった。
「キャアァァァァ!!」
「亜由美っ!?」
必死に手を伸ばすがそこで次元断裂空間が消えてしまい、噴水のある夜のオフィス街へと飛ばされた。
雑踏や車の音がしない事から、どうやらここはミラーワールドの様だ。
歩は空間演算を行えば変身せずともミラーワールドで活動できる。上手く空間演算の出来ない亜由美がここに来なかったのは不幸中の幸いだろう。
もし亜由美もミラーワールドへ来てしまっていたら、すぐに粒子化して消滅していただろう。
「さっきの小娘は別の場所へ飛ばされた様だな。まあいい、これで邪魔者はいなくなったわけだ。さあ、早く変身しろ」
如何やらリュウガも次元断裂を破壊した衝撃でここまで飛ばされて来たようだ。
こちらも変身してこの「歪み」を修正したいのだが、そうはいかない。
今のリュウガは「歪み」であると同時に「基点」でもあるのだ。
もしリュウガを倒せばこの世界が消滅してしまう。
「アンチ・キル」のカードがあるものの、あのカードは自動的にディージェントのスペックを抑えてしまう。目の前の相手にそんな手加減をしながら勝てるかどうかも怪しいので使えない。
だが、一つだけ方法がある。真司をリュウガから引き剥がすのだ。
真司は決して死んだわけではない。あくまで身体を乗っ取られただけで、リュウガに意識を抑えつけられているだけだ。
それを何らかの方法で取り戻させれば「基点」を消さずに済む。
「ま、方法は戦いながら考えるか……変身」
[カメンライド…ディージェント!]
歩はそう呟くと覚悟を決めてディージェントに変身すると、グローブを強く嵌める仕草の後、リュウガに特攻した。
「ハァッ!」
「そうだ、それでいい」
リュウガがそう呟きディージェントのパンチを受け止め、ディージェントの腹に蹴りを入れようとするが、当たる直前で後退し、その攻撃をかわす。
更にディージェントドライバーの持ち手部分を引いてカード挿入口を展開させると、一枚のカードをクラインの壺から取り出して装填した。
[アタックライド…ブラスト!]
「…ハッ!」
「フン、そんなもの、このカードで十分だな」
ディージェントは藍色のエネルギー弾を放つが、リュウガはそれを軽々と避けながらカードデッキから一枚のカードを引き抜いて左腕に備え付けられた黒い龍の頭を模した籠手型の召喚機・ブラックドラグバイザーに装填した。
[ガードベント]
その通常の電子音声よりくぐもった声が聞こえると。龍の腹部を模した大型の黒い盾、ドラグシールドがリュウガの左手に現れ、それでエネルギー弾を防ぎながら突っ込んできた。
「らああぁぁぁ!!」
「クッ……!」
その突進をブラストを中断して側転して避けるが、リュウガはそれを予測していたのか既に一枚のカードを引き抜いており、それをブラックドラグバイザーに装填した。
[ソードベント]
「フンッ!」
「ハッ!」
リュウガの右手に片刃の黒い剣が現れ、それでディージェントに斬りかかるが、ディージェントはそれを白羽取りして何とか抑える。
抑えて身動きが取れなくなった隙に足払いをして態勢を崩され、腹を踏みつけられ剣を連続で叩きつけてきた。
「おらぁ!らぁ!らあぁぁぁ!!」
「うっ!ぐっ!ぐぁっ!」
剣を叩きつける毎にディージェントの身体から激しく火花が飛び散り、徐々に装甲を削っていく。
「くぅっ!」
「何!?」
「ハァッ!」
その状況を打破するために剣を素手で掴み取ると、その剣ごとリュウガを投げ飛ばした。伊達にディージェントのパワーは低くない。
その代償として手からは血が流れてしまっていたが、装甲を次元移動能力の潜在意識演算によって自動修復させる。
あくまで装甲だけなので生身である歩の手からは未だに血が出ているのだろうがそんな事は後回しだ。
「チッ!」
[ストライクベント]
リュウガは剣と盾を投げ捨てると、新たにカードを引き抜きいてそのカードを発動させ、右腕に腕全体を包む形状をした籠手・ドラグクローを装着した。
それと同時にリュウガの背後からリュウガの契約モンスター・ドラグブラッカーが水面から出てくる様に、アスファルトの中から出てきた。
リュウガはドラグクローを後ろに引く様に構えると、それに合わせる様にドラグブラッカーが口の中に黒炎を溜め始める。
ディージェントはその黒炎が吐き出される前に一枚のカードを発動させた。
[アタックライド…キャンセル!]
「ハァァ……ッ!?何だと!?」
その電子音声が鳴り響くと同時にドラグブラッカーと右腕に備え付けられたドラグクローが一瞬で黒い粒子の塊になり散っていった。
「フン…成程、『コンファインベント』か……随分と舐めた事をしてくれるじゃないか」
「それはどうも。ところで、今真司君はどうなってるんだい?」
リュウガの挑発を適当に返すと、気になる事を聞いてみた。
「そんな事を聞いてどうする?アイツは最早、俺の身体の一部だ。奴の意識が消えるのも時間の問題だろう」
「そうなる前に、真司君の意識を取り戻させてもらうよ」
「フハハハ!出来るものなら…やってみろぉ!!」
[ソードベント]
リュウガはもう一度「ソードベント」を発動させて手元に出現させた。
リュウガは最早その存在自体がライダーである為、同じカードをディージェントと同じように何度でも復元させて使う事が出来るのだ。
[アタックライド…ダッシュ!]
「チイィッ!逃げるなぁ!!」
「真司君、聞こえるかい?」
ディージェントは「ダッシュ」の効果を発動させ、一瞬でリュウガの背後に回り真司に語りかける様に呟いた。
「君はあの時言ったよね?“人を守る為にライダーとして戦う”って。だったら何で『ライダーバトル』を続けようとしてるんだい?」
「とらあぁ!!」
「君のあの時の言葉は嘘なんかじゃないんでしょ?だったら、目を覚ませ……!」
ディージェントは抑揚のない淡々とした声ではあるものの、語気を強めて言い放った。この世界の本当のライダーの名を……。
「仮面ライダー龍騎・城戸真司……!」
「ハアァァ……ッ!?が、ぐぁ……!な、何だ!?身体が…!?うあぁっ!!」
突如リュウガが動きを止め、身体を抑えながら苦しみ出し、更にリュウガの体に異変が起こった。
リュウガの胸から人の手が飛び出して来たのだ。その手は、更に出ようと動き始め、腕全体を出し始める。
「ま、まさか…俺から離れようと言うのか…!?この力を捨ててまで…!!」
リュウガが苦しみながら言葉を発している内に、胸から人の頭が出てきた。そしてその顔は、正真正銘、城戸真司だった。
「俺から……離れろ!!」
真司がそう叫ぶと、まるで磁石の様に真司とリュウガが弾き飛ばされた。
弾き出された真司をディージェントはキャッチすると一目散に近くの噴水に飛び込んでミラーワールドから脱出した。
「ぐうぅぅぅ…クッソオォォォ……」
リュウガは悔しそうに唸るが、身体が思うように動かず真司とディージェントが逃げて行った噴水を睨んでいた。
「大丈夫?真司君?」
「あ、あぁ…何とかな……」
真司達は変身を解除して人目の付かない廃ビルへと逃げ込んでいた。
真司の身体を倦怠感が襲い、上手く動かなかった為、歩が真司を担いでここまで運んできたが流石にここまでくれば人を巻き込む事もないだろう。
「お前の声…聞こえたぞ……」
「……ウン」
真司の独白に歩は相槌を打って続きを促した。
「俺、やっぱり間違ってた。あんなヤツの口車に乗せられて、『ライダーバトル』を続けそうになっていた……」
『見つけたぞぉ…!』
廃ビルの窓から声が聞こえて来てそちらを向くと、丁度リュウガがミラーワールドから出て来ている所だった。
しかし、その装甲は解除されず、ライダーのままだ。と言う事は、「基点」と分離してしまっても力はそのまま受け継いでいると言う事だ。
「貴様…何故俺から離れる…!?この力で『ライダーバトル』に勝てば、蓮を生き返らせる事が出来るんだぞ!?」
「もう、お前には騙されない…!」
真司はそう言ってリュウガを睨みつけた。
「お前のやってる事は、ただ自分の為にしかならない事だろ…!俺は人を守る為に戦うんだ!それが、蓮の代わりに見つけた答えなんだよ!!」
「……フン、馬鹿め」
「何…?ガッ!?」
「真司君!?」
そうリュウガが呟くと、一瞬で距離を縮め真司の首を掴んで持ち上げた。
その一瞬の出来事に、歩は追い付けなかった。
「もうお前は必要ない…ここで死ね……」
「ウ…ガッ……ッ!」
リュウガは真司の首を強く絞めつけ始めた。間違いなく殺す気なのだろう。
「チッ…変身」
[カメンライド…ディージェント!]
「ハッ!」
「ぐあっ!」
歩はすぐさまディージェントに変身し、リュウガの顔面を殴り飛ばして真司から引き剥がした。
真司は気管が絞まって咽ていたが、何とか無事なようだ。
「大丈夫?」
「ゲホッ、ゲホッ…あぁ、助かった…!」
「貴様ぁ……」
[アドベント]
リュウガは「アドベント」を発動させてドラグブラッカーを呼び出し、その禍々しく光る赤い複眼でディージェントを睨みつけた。
「お前も一緒にこの世界から消してやろう…ここがお前の死に場所だ……!」
「悪いけど、ここで死ぬ予定は全くないよ。代わりにここが君の死に場所だよ」
「またお前物騒な……いや、もういい。何か一々ツッコムのも疲れてきた……」
リュウガの死刑宣告を何ともせずに危ない発言で言い返すディージェントにまたもツッコミそうになったが、最早諦めた。
とにかく今は、この目の前の敵を倒すことが先決だ。
早速ポケットからカードデッキを取り出すと、そのカードデッキが変わっている事に気付いた。
その施された意匠が蝙蝠から本来持っていた龍の意匠…龍騎のカードデッキに変わっていたのだ。
「あれ…何で?」
「多分リュウガと一時的に融合したからだろうね。君が本来持つべきカードデッキに変わったんだと思うよ」
「じゃあ、ナイトはもうないのか…?」
「まあ、そうなるね。でもその龍騎のカードデッキが元はナイトだったのは間違いないよ」
真司は蓮の形見が無くなってしまったのかと不安になるが、ナイトが完全にこの世界から消えたわけじゃないと分かると、少しだけ安心した。形が変わろうと、ナイトが…蓮が存在していた事に変わりないのだ。
(まだ、一緒に戦ってくれるよな…蓮……)
カードデッキを両手で握りしめながら今は亡き友に思いを馳せた。
自分が龍騎だろうとナイトだろうと、やるべき事は一つだ。
「いくぜ、歩。アイツ倒すぞ」
「初めから僕の目的はそれだよ」
真司に淡々といつも通りに答える歩に苦笑しながらもすぐに気持ちを切り替え、目の前の脅威を見据えた。
歩の話によると、あれがこの世界を壊す原因となる物なのだそうだ。
絶対に壊させない。この世界の人と…ライダーを守るためにも…!
真司はリュウガが出てきた窓ガラスにカードデッキを翳してVバックルを装着した。
そして右腕を左上に真っ直ぐ伸ばして構え、戦う「覚悟」を示した言葉を口にした。
「変身!!」
そう叫んでカードデッキをXバックルに装填すると、真司の身体に鏡像が重なり、その姿を西洋の騎士を彷彿とさせる仮面を付けた赤い龍の意匠を施されたライダーへと変えた。
これこそが「城戸真司」と言う人間が本来変身すべき姿…仮面ライダー龍騎である。
その瞬間、ディージェントの中でこの世界の情報が再び書き換えられた。
「基点」となるライダーが変わった事でこの世界は「龍騎の世界」に戻ったのだ。
そして龍騎は右手を仮面の前で握りしめ、「っしゃ!」と気合を入れてディージェントの横に並んだ。
それに合わせる様にディージェントもグローブを強く嵌め直す仕草をしてから、龍騎と目を合わせて互いに頷くと、ともにリュウガに特攻を仕掛けた。
この世界の「歪み」を、正すために……。
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ディージェントVSリュウガの戦闘回です。 | ||
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