IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ― 八話 |
鈴が転校してきてから数日……
いまだに解決策を見つけられずにいた俺に授業の内容など聞こえているはずもなかった
どうするかなー
あれから、鈴と話す機会はあった
が、どこかよそよそしくなってしまう
気まずさ抜けない
どうしたらいい!?
焦りが……募っていく
「ではここを……神谷、答えろ」
「どうすればいい……」
「私の質問に答えればいい」
パシコーン!
いった!痛い!
何だ?
おおっと……織斑先生
相変わらず凛々しいお姿で
「体調が優れないならグランドでも走ってくるか?」
鬼か?あんたは
なんで体調優れないやつにグランド走らせるんだよ……
「ふん、重症だな……おい、今日はもう帰れ」
「ちょっと、織斑先生!」
「セシリア!……いいんだ
先生、失礼します」
乱暴に鞄を掴み立ち上がり、ドア付近の使われていない椅子を苛立ちに身を任せるように蹴り上げながら教室を出る
くそっ!
セシリアside-
士が出て行ったあとも授業は進んでいた
しかし、彼女も代表候補生授業など復習の範囲でしかない
授業を聞いていなくても並以上に理解している
「(士さん)」
出会って間もないがあんな士は見たことがない
彼には笑っていてほしい……
あんな怒気の含んだ表情なんかより優しく暖かい笑顔が見たい
そう思ったと同時にチャイムが鳴る
織斑先生が出て行くと共に決意を固めた……
今夜、彼の部屋に行くことを……
箒side-
食堂で夕飯を取りながら箒は静かに怒りを感じていた
士にではない……あの鈴とかいう転校生にだ
彼女が来てから士は―大好きな彼は変わってしまった
なぜか……確かに彼女だけが悪いのではないだろう
しかし、それでもだ……
アイツには常に笑っていてほしいのに……
昔から―アイツの優しさを知ったときから、転校する前から、転校した後も、再会した時も
一時もアイツの笑顔を忘れることができなかった……
そんな士をあの転校生は
私の次の幼馴染だとかそんなものは関係ない
茶碗の米がなくなると同時に決意を固めた……
今から、彼女の部屋に行くことを……
千冬side-
「はあー」
「お疲れ様です織斑せんせ―――うわわっと!」
コーヒーを危なげに持ってきてくれた山田先生に一言礼を言い
口に運ぶ
「それにしてもどうしたんでしょうねー士君は……」
「あの、馬鹿者が……好きにさせておいても問題はないでしょう」
「そう言いながらも実は心配してますよね?先生?」
「ほ、ほう……訳を言ってみろ」
「コーヒー……こぼれてますよ?」
自分のスーツを見下ろす
確かに……少しこぼれていた
「山田君……喜びたまえ。アラスカ南部に永久転勤だ」
「ひどい!?」
涙目で講義してくる山田先生を尻目に決意を固めた……
今から、馬鹿者の部屋に行く
士side-
「ん……?寝てたか……」
目が覚めると午後7時30分
どうやら早退した11時からずっと寝ていたらしい
「寝すぎたな……とりあえず飯食うか
カップラーメンでいいや」
ミニキッチンにある棚からラーメンを取り出し湯を沸かす
どうする?
本気でやばいぞ……
あれから何ひとつ解決策は見つかっていない
悩みに悩んでも解決策一つ浮かびやしない
ただ、気にしてないよって言えばい問題ではない気がするから……
やかんから湯気がおびただしく吹き出る
「あちっ!」
熱さに耐えながら容器に湯を注ぐ
あとは3分待つだけ
はあベッドに腰掛けようとした時……
コンコン
と、ドアがノックされる
ん?誰だ?
ドアまで行き、開けるとそこには金髪が輝かしい少女が立っていた
「で?どうしたんだ?セシリア」
「い、いえ……その」
セシリアにはとりあえずベッドに腰掛けてもらい俺は正面の椅子に座っている
「単刀直入に聞きますわ……士さん。何を抱えてらっしゃるのですか?」
ドクン!
心臓が跳ね上がる
鼓動も早くなるのを感じる
「な、なんだ?急にどうした?」
「ここ最近、士さんの様子がずっとおかしいままですわ……あの鈴さんと言う転校生のことですか?」
全て、分かってるらしい
いや、普通分かるか
観念した俺は静かに語りだす
「---って事なんだわ」
セシリアに一通り話し終わる
神様伝えられた事を一通り話した
「そうだったのですか……」
「ああ……」
「で?士さんはいつまで落ち込んでいるつもりですか?」
セシリアが「今度はどこに行きますか?」みたいなノリで聞いてくる
「お前……俺の話聞いてなかったのか……」
思わず睨むように彼女を見てしまう
しかし……
「ええ、聞いておりました
それで?いつごろからいつも通りの士さんに戻っていただけるのかしら?」
「おまえ!!」
「甘えるのもいい加減にしてください!!」
そう、言った
とても貴族が放ちそうにないような大きな声で
そう言い放った
「甘える?俺が?」
「そうです!甘えているんです!
自分自身にも鈴さんにも甘えているのです!
いつもの士さんならこんなこと、なんでもないように解決するじゃありませんか
引き目を感じて言い寄って来ない、あまり話さない鈴さんにも
その気になればすぐに解決できるのにできるだけ綺麗に解決しようと少しも行動に移さずただただ
悩んでいるふりをしている士さん
あなた自身にも甘えているんですよ」
っ!
はは……確かにそうかもな
でも……でもな……セシリア
「俺は……確かにセシリアの言う通り甘えてたのかもな……
でも、俺は……俺は
やっぱり怖いんだよ……」
自分が実際に遭わされてない―――そう、まさに設定のようにできている過去のことをあたかも本当にあったかのようにして鈴を慰めるなんて
そんなの……そんなのって……
そして暖かい何かが俺を包む
その正体は……
「セシ、……リア?」
セシリアだった
彼女が俺を抱きしめていたのだ
「何か……理由があるのですね……
でも大丈夫ですわよ」
優しく諭すようにセシリアが俺に話しかける
「え?」
「だって……士さんですもの……
私が負けた男性「神谷 士」さんですもの
私の理想の男になるとおっしゃってくれた士さんですもの……
だから―――
何も心配なんていりませんわ
貴方はただただ貴方がいいと思ったことをいいと思うようにすればいいんですわ
もし、一人でできないときは
私がサポートしてあげますから」
あれ?目から汗……いや、もういい!涙が!
涙が止まらない!
セシリアの言葉で全て吹っ切れた!
なにを今まで悩んでたんだ俺は!
馬鹿馬鹿しい!
「ありがとな……セシリア」
涙を拭きながら言う
「ええ……問題無いですわ」
「今度、お礼に日本の超うまいお菓子食べさせてやるよ」
「楽しみにしてますわ!」
その笑顔は夜だとか関係なく太陽のように明るかった
千冬side-
そんな士とセシリアのやり取りを部屋の前で聞いていた一つの影
「ふん……イギリスの代表候補生風情がやってくれる……」
「私の出番は……また持ち越しか……」
さて、山田先生と酒でも飲もう
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