IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・
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「『((紅椿|あかつばき))』! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」

 

 

 現行の中には、たぶん『マイスターズ』も入ってるんだろうなぁ。

 といっても各ガンダムの得意分野での負けは無いと思う。

 エクシア限定であっちも近接戦に重点があるから同程度、だけども瞬発的な機動性はとかは恐らくあっちが上。

 デュナメスでの射撃戦ならこっちは負けない。キュリオスの高機動、ヴァーチェの高火力でもこっちが勝てるだろうな。

 ……性能のイメージとしては、近接戦中心のジンクスってところか。

 

 というか、すごいことをさらっと言いすぎな気もするぜい。

 

 

「さあ! 箒ちゃん、今からフッティングとパーソナライズを始めようか! 私が補佐するからすぐに終わるよん♪」

 

「……それでは、頼みます」

 

「堅いよ〜。実の姉妹なんだし、こうもっとキャッチーな呼び方で―――」

 

「はやく、始めましょう」

 

 なんだろ、こうしてると束さんがかわいそうに見えてきた。

 ……まあ、その原因を作ったのもこの人なんだけどもさ。

 

「ん〜。まあ、そうだね。じゃあはじめようか」

 

 束さんがなにやら手元のボタンを操作すると、紅椿の装甲が開き操縦者を受け入れる体勢に。紅椿が少しかがんで乗りやすくなるおまけつき。芸が細かいな。

 

「箒ちゃんのデータはある程度先行して入れてあるから、後は最新データに更新するだけだね。さて、ぴ、ぽ、ぱ♪」

 

 開いたコンソールに指を走らせる束さん。……うわっ、タイピング神早えぇ。

 追加で空中投影ディスプレイを六枚展開。同時進行で同じく空中投影のキーボードにも指を走らせる。

 

「近接戦闘を主体に万能型に調整してあるから、すぐに馴染むと思うよ。後は自動支援装備も付けておいたからね! おねえちゃんが!」

 

 束さん、『おねえちゃんが!』ってかなり強調した。

 

「それは、どうも」

 

 ん〜、近接戦闘主体の万能型……ダブルオーライザーと同じ感じか。だとしてもダブルオーライザーのほうが性能は上だろうけど。

 それと、模擬戦のとき紅椿を1対1で相手するときはキュリオスで戦ったほうがよさそうだ。

 

「ん〜、ふ、ふ、ふふ〜♪ 箒ちゃん、また剣の腕あがったねぇ。筋肉の付き方を見ればわかるよ。やあやあ、お姉ちゃんは鼻が高いなぁ」

 

「………………」

 

「えへへ、無視されちった。―――はい、フッティング終了〜。超早いね。さすが私」

 

 口を動かしてても、手は止まらない。

 パッ、パッ、とかなりのスピードで変化する画面のデータにも全て目を通しいく。

 

 

 ………あー、なんか悪いけど、見てるだけってかなり詰まんないな。―――ッ! 消えたと思ってたのに、またこのノイズかよ……

 

 ジジジジ……というテレビの砂嵐のようなノイズが、俺のこめかみの辺りで暴れだす。

 それと同時に、嫌な予感が脳裏をよぎった。

 くっそ、イライラする。なんなんだよ……。

 

 

 ――ティエリア、今何かこの付近で起きてるでかい問題・事件は無いか?

 

 ――どうした、急に。

 

 ――嫌な予感がしてね。ああ、福音じゃないぞ。

 

 ――少し待ってくれ……リンク、条件指定………なにも無い。小さなものならともかく、大きな事件などは発生してない。

 

 ――その検索半径は?

 

 ――五十キロといったところだ。

 

 ――充分だな。……わかった、福音はともかく何かあったら報告を。

 

 ――了解。

 

 

 意識を目の前に戻す。

 紅椿の方は終了したらしく、一夏が白式を展開して束さんがそれにケーブルを繋いでフラグメントマップを見ていた。

 そして一夏と束さんはなにやら言い合っている。

 

「いいです! おお、許可が下りたよ! じゃあ早速―――」

 

「だあっ! わざと意味を間違えないでください! ノーです、ノー! ノーサンキュー!」

 

「む! じゃあ私はノーザンライツだ!」

 

 なんじゃこの争い。……言えることは不毛の一言だぞ?

 

「じゃあじゃあ、女の子になるなんてどうかな! いっくんが!」

 

「なんなんですか、それは!」

 

「ん? 最近読んだマンガにそういうのがあったんだよー」

 

 あー、男が女になるやつ? あれだろ? コレのアニメと某緋弾の間にやったアニメ。

 

 

「あー……ごほんごほん」

 

 本当に不毛な争いを止めたのは箒だった。咳払いして一夏と束さんの話に入る。

 

「こっちはまだ終わらないのですか?」

 

「んー、もう終わるよー。はい、三分経った〜。あ、今の時間でカップラーメンができたね、惜しい」

 

 たとえの基準が……まあ、カップ○ードルだ。

 でも最近のカップラーメンって五分のが多々あるよな。

 

「んじゃ、試運転もかねて飛んでみてよ。箒ちゃんのイメージどおりに動くはずだよ」

 

「ええ。それでは試してみます」

 

 プシュッ、プシュッ……と空気の抜けるような音で、紅椿に接続されていたケーブルの類が全て外れる。

 そして箒が目を閉じて集中すると、紅椿が目の前から消えるような急加速で飛翔した。

 

「おわっ!?」

 

 その急加速の衝撃波で砂浜の砂が舞い上がる。

 顔を上に上げると、二百メートルくらいの上空で静止する紅椿が見えた。

 何で見えるのかって? 神力使ったけど?

 ちなみに上を向いてるから、周りからは目の色が変わったことに気づかれない。箒は俺のほうなんか見ないだろうしな。

 

 それと一夏……ISつけてるんだからそのくらい驚くなよ。

 

 

「どうどう? 箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」

 

 ISのプライベートチャンネルを使ってるのか、箒の口は動いてても音声はこっちに聞こえない。

 

「じゃあ刀使ってみてよー。右のが『((雨月|あまづき))』で左のが『((空裂|からわれ))』ね。武器特性のデータ送るよん」

 

 束さんが送ったデータを受け取った箒は、しゅらん……とさすがの身のこなしで左右の腰にある日本刀型ブレードを抜く。

 

「親切丁寧な束おねーちゃんの解説付き〜♪ 雨月は対単一仕様の武器で打突にあわせて刃部分からエネルギー刃を放出、連続して敵を蜂の巣に! するぶきだよ〜」

 

 ……言い回しが物騒なのは気にしないでおこう。

 箒は試しとばかりに突きを放つ。右腕を左肩まで持っていって構え、そこから突きが放たれる。

 それと同時に周りの空間に赤色のレーザー球がいくつもの球体して出現、そして順番に弾丸になって雲を文字通り蜂の巣にした。

 

「次は空裂ねー。こっちは対集団仕様の武器だよん。斬撃に合わせて帯状の攻勢エネルギーをぶつけるんだよー。振った範囲に自動で展開するから超便利。そいじゃこれ撃ち落してみてね、ほーいっと」

 

 いきなり十六連装ミサイルポッドを呼び出す。

 一体どこから出したんだか。

 まぁ、製作者なんだ。未発表のISコアをいくつ持ってても不思議は無い。

 それが量子から物体を構築すると、一斉発射。十六のミサイルが箒に向かう。

 

「箒!」

 

「―――やれる! この、紅椿なら!」

 

 一夏の心配は無用。

 右脇下に構えた空裂を一回転するように凪ぐ箒。さっきの赤いレーザーが今度は弾丸ではなく帯状の刃になって広がり、全てをミサイルを切り裂いた。

 

 ミサイルの爆煙がゆったりと消え去る中で、あの真紅のISは悠々と空に浮いている。

 その場に居る一部の者を除く全員がそのスペックに驚愕し、言葉を失う。

 

 全員が黙る中、束さんはうんうんと満足そうに笑顔でうなずく。

 そして織斑先生は厳しく、鋭い目線でそれを見ていた。

 

 

「たっ、た、大変です! お、おお、織斑先生っ!」

 

 そこにいつもより二倍はあわてた山田先生が来る。

 その焦りように紅椿に唖然としていた生徒は元に戻った。

 俺も力を解除して先生を見る。

 

「どうした?」

 

「こ、こっ、これを!」

 

 山田先生から織斑先生に渡される小型端末。その画面を見て、織斑先生の顔は曇った。

 

「特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし……」

 

「そ、それが、その、ハワイ沖で試験稼働をしていた―――」

 

「しっ。機密事項を口にするな。生徒たちに聞こえる」

 

「す、すみませんっ……」

 

「専用機持ちは?」

 

「ひ、一人欠席していますが、それ以外は」

 

 今日欠席してるのは四組の専用機の無い専用機持ち。そして楯無の妹の『((更識簪|さらしきかんざし))』。

 確かまだ専用機がなくて、こういった行事は休んでるって話だったはずだ。

 

 小声で喋っていた先生二人は、それを見ている生徒の視線に気づいて手話に……しかも軍用のに切り替えた。

 

「そ、それでは、私は他の先生にも連絡してきますのでっ」

 

 山田先生はそういうと、この場を走り去る。

 

「了解した。―――全員、注目!」

 

 そして織斑先生が手を叩いて全員を振り向かせる。

 

「現時刻をもって、IS学園教員は特殊任務行動に移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館にもどれ。連絡があるまで室内待機すること。以上だ!」

 

 

「え……?」

 

「ちゅ、中止? なんで? 特殊任務行動って……」

 

「状況がぜんぜんわかんないんだけど……」

 

 突然のことに女子の間でざわざわと騒がしくなった。

 

「とっとと戻れ! 以後、許可無く室外に出たものは我々で身柄を拘束する! いいな!!」

 

「「「は、はいっ!」」」

 

 織斑先生の一喝で、全員が大慌てで動き始める。そして織斑先生は言葉を続けた。

 

「専用機持ちは全員集合しろ! 織斑、玖蘭、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰! ―――それと、篠ノ乃も来い」

 

「はい!」

 

 

 

 妙に元気な返事を返したのは、つい今さっき一夏の隣に降りてきた箒だった。

 

 ……やっぱり、((IS|力))を貰って浮かれてるのか。

説明
第42話『悲劇への序章』
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