IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ |
ティエリアからバグ消滅の報告を聞いて、俺は一息つく。
なんにせよ、乱れた息を整えて整えてからだ。
「終わったか……。少し休憩して―――」
『!? 拓神、戦闘準備を! こちらに高速で接近するバグ、一機を確認した!』
「終わったんじゃなかったのかよ! キュリオス!」
だが、装甲がすぐに変わることは無かった。
『だめだ、エクシアのサポートに集中するために解除してしまった。すまない』
「わかった。このままエクシアで迎撃する」
『僕としたことが……』
「気にするなよ。……目標の到達まであとどのくらいだ?」
『あと――五秒で接触する。方角は南東、すでに視認可能』
ティエリアに言われた方角を向くと、かなりのスピードでこちらに突進してくる黒い機体。
「なっ、あれは……GNフラッグ!?」
◇
拓神が、ジンクスとスローネを撃破した直後。
「玖蘭君、アンノウン十機……撃墜しました。玖蘭君は健在です」
信じられない、といった感じの真耶がそう言う。
「ふっ……アイツには流石、という言葉を送ってやろう」
千冬は、あのトランザムとやらを使ったのだろう。と予想する。
レーダーでもわかるくらい一気に動きが良くなり、一分ほどで十機のアンノウンを撃墜してしまったのだ。
ちなみに一夏と箒が撃墜されてから、専用機持ちにも自室待機の命令が出て大広間から追い出されている。
「……織斑先生、定時報告です。織斑君と篠ノ乃さんを撃墜した福音はいまだ発見できません。ステルスモードに入ったようです。ですが、光学迷彩の類は搭載されていないので、監視衛星での捜索を続けています」
「そうか……」
安堵の表情だった千冬の顔が少し歪む。
もしも彼女の手元に専用機があったなら、千冬自身が出撃して福音を捜索していただろう。
しかし、無いものねだりをしても仕方が無い。だから、千冬はここで司令塔としての役割を果たそうとしていた。
「……玖蘭は?」
「いまだその空域に滞在中」
「わかった。……引き続き福音の捜索を」
「了解」
千冬個人としては、今すぐにでも重傷を負った一夏のところに行きたい。
なぜなら、一夏は千冬のたった一人の家族だから。
でも、今は教師だ。プライベートとは分け、((仕事|やること))は全うする。それが織斑千冬という人物だった。
「―――織斑先生!」
「どうした?」
「レーダーに新たなアンノウン反応!」
「なに?! 行き先は?」
「それが、かなりのスピードで玖蘭君のところに向けてです!」
「集中力が切れたところでも狙うつもりか……!」
◇
突如現れたGNフラッグ。
それは、俺に到達する前に左手でビームサーベルを持った。
「まだ終わってなかったのかよ……!」
さっきので集中力はほとんど使い果たした。
そのまま集中していればまだ持ったのかもしれないけれど、一度途切れさせた集中力は戻ってこない。
「それでも―――やるしかないよな」
粒子残量がほとんど無く、重い機体を動かす。
GNソードをソードモードにして、GNフラッグが速度をそのままに振り下ろしてくるビームサーベルを受け止めた。
が、それまでの速度が追加された重い一撃。衝撃に押され、体勢を崩す。
「ぐっ……!」
ソードを腕ごと弾かれた形の、隙だらけの俺。
GNフラッグは俺の左肩にビームサーベルを振り下ろした。
―――ズザンッ!
「ぐっ―――がぁぁっ!?」
あるはずの絶対防御を抜いて、俺の左腕は肩口から切り落とされる。流れ落ちるおびただしい量の血。
気が狂いそうな痛みを何とか我慢してGNフラッグを蹴り飛ばし、ティエリアに指示を出す。
「ぐぅぁぁ――はぁ、はぁ……セファー展開」
『了解、すぐ展開できるのは二基だけだ。それより早く止血を!』
「い、いいからっ、俺の腕を回収してきてくれっ……!」
『――了解』
GNソードをライフルモードに変えて、近づかれないように牽制する。
痛みで狙いが定まらないが、牽制になればいい。とにかく撃つ。
それはうまく牽制になったようで、GNフラッグは迂闊に近づいてこなかった。
その間にティエリアが、GNプロトビットで挟むようにして腕を回収してきた。
少し朦朧とするが、切り落とされた腕とそれに付いたままの装甲との間に神力を流し込んで、外側に力を加えるようにしてエクシアの腕部装甲を破壊。
その間にも、そこから下のエクシアの装甲は血塗れていった。
「くっそ、目がかすんで来やがった。ぐぅっ―――……腕を、くっつけてくれ。切られた、とこを、合わせてくれれば、いい」
その間もライフルの連射は止めない。
ティエリアが指示した通りにする。俺のほうの切断口に腕のほうが触れて、激痛をもたらした。
「ぅあぁぁぁ――っ! はぁっ、再生、をっ……」
また神力を行使。そこに再生の変化をした神力を流して、切れた腕を繋ぐ再生をする。
本来なら切られた方は無くても再生できるけど、あったほうが早くて使う神力の量も少ない。
痛みは消えたが、不快な痺れや、痛みの錯覚は残った。
左手を開いたり閉じたりして、腕に不調は無いか確かめる。
痺れて反応が遅かったりでおかしいが、動かすことに問題は無い。
それでも今の戦闘中は使い物にならないと考えていい。
どちらにせよ、装甲がない腕ではビームサーベルも何も持てないしな。
もう少しで神力行使者保護の自動再生が始まるところだった。
自動再生すると、腕は無くても元に戻る。でもその代わり多くの神力を消費して、ただでさえ疲れのある俺に追い討ちを掛けることになるから良かった。
「ちっ、ふらつくなぁオイ。何やってくれてんだよ、テメェ……」
極限状態に一度なったせいで、ちっとおかしくなったみたいだな。
「この借り……いま返すぜ?」
GNソードをソードモードに。
自分の体のことは無視で急加速を掛ける。
どぉやら、さっきのトランザムで粒子を使い果たしたせいで、絶対防御とかPICとかが消えてるらしい。
さっき絶対防御は発動しなかったんじゃなくて、絶対防御が無かった。
急加速で肉薄すると、GNフラッグはビームサーベルを横に薙いで来る。
それをGNソードで受け止めて、弾き飛ばし、無防備なGNフラッグの下半身にGNソードの横薙ぎを当てる。
それでGNフラッグの両足を付け根から切り払った。
するとGNフラッグは空いている右手で、俺の胴にパンチ。
「ぐふぅっ!」
絶対防御も何もない今、衝撃は直に俺本体に伝わった。
そしてそのパンチで俺は吹っ飛ばされる。
GNフラッグが突進しつつの突きをしてきた。狙いは俺の頭。
それを頭を左に傾けてかわす。っても、右頬らへんの装甲は焼かれて、右肩付け根のグラビカルアンテナは中ほどから無い。
「く……ぉ、らよ!」
GNソードでGNフラッグの首を刎ねる。
それが確認できたと同時に蹴りも入れて、吹き飛ばしてやった。
だが吹き飛ばされている途中でGNフラッグは体勢を建て直して、ビームサーベルの切っ先を俺に向けて構えて特攻してきた。
頭が無いってのに、まだ動くのかよ!
「でも――その程度で、やられる俺じゃねぇんだよ!!」
無理やり気味に右半身を下げてその特攻をやり過ごす―――と見せかけて。
「なんてな」
GNフラッグの軌道上でGNソードを横にする。
つまり、自分からGNソードの刃にGNフラッグは突っ込んでいく。
自分から刃に切り裂かれ、GNフラッグはやっとその姿を黒い霧に変えて消えた。
「はっ、あっけねぇな。……ちっ、体が限界かよ」
すでに意識も限界。さっきの一撃だって上手くいったのはたまたまだった。
「ティエ、リア……この状態で帰ったら、どのくらい掛かる?」
『機体を変えれば五分くらいだ。だが、その体では……』
「まぁ、5分も無理だろうな。死なないとはいえ、意識がぷっつりいけば、海へ真っ逆さまだ。でもさ―――」
「帰んなきゃ、いけねぇんだよ」
『わかっているさ。―――しまった……!』
「どした?」
何があったってんだ。こちとら、意識保ってるだけで精一杯だってのに。
『ここの現在位置は、もうすぐ福音の通るルートだ! まさか―――バグに誘導されていたのか!?』
はっ、オイオイオイ、ここまでボロボロで((福音|あれ))とやりあえとでも?
ってか、福音の通るルートなんで知ってんだよ、ティエリア。
ん? あれは―――
「―――もう来ちまったみてぇだぞ?」
ハイパーセンサーにアップで表示された、こちらに向かってくる『((銀の福音|シルバリオ・ゴスペル))』。
「((天使|ふくいん))に、墜とされる((天使|ガンダム))……はっ、皮肉だな」
次の瞬間、俺は福音の放ったエネルギー弾の嵐に飲み込まれ―――意識がブラックアウトした。
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第46話『墜ちる天使 〜フォーリン・エンジェル〜』 | ||
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