第二十六話 自販機での出会い |
アニスサイド
「にっしっしっし」
どうも、アニスたんだお
いやぁ、今日はアンクがバイトで居ないのだわさ。
だから思い切って俺のアイデンティティであるスパッツを穿いて外に出ようと思うんだ。
だから先ずは、はやてを振り切らないと駄目なのだわさ……。
さて、今日の格好だが。
まんまクド。あ、ちゃんとマントの下はスパッツだおー。
いやさ、最近めっきりこの服の存在価値と言う物がね、無くなってと感じているのだよ。
だから思い切って完璧クド使用にしてみました。はい拍手!
でも女装では無いので悪しからず。
「さて、行きますか」
俺はそう呟き、動き出す。
ガサッ、ズズズズズ〜。
ん?何の音だって?
はっはっはっ、段ボールが床に擦れてる音に決まっているじゃなイカ。
まぁ、そんな訳で……摩擦でケツが痛い。つうか熱い。
「ん?何でこんな所に段ボールが……」
あっ……この声はシグナム……。
開始早々見つかるとか、俺にはスネークの素質は無かったのか……残念だ。
まぁ、そんな事思ってたら段ボール持ち上げられたよ。
そりゃ当たり前だ。
「……主、何をしているんですか?」
「あはは、見つかっちゃいましたか……わふー……」
さてと、まぁシグナムにばれちゃった事なので、全速力で逃げるとしますか。
ふはは!全速前進DA!!
「あっ、主!」
「ちょっち出かけてくるおー!!」
俺はシグナムの声を無視して靴を急いで履き、勢いよく飛び出していく。
それをシグナムは、少し苦笑しながらやれやれと言いたげな感じでため息をつき、段ボールを畳む。
シュールにも程があるだろ。
「いっえーい!!無事に家から出られたって、アニスはアニスは綻んでみたり!って、俺のキャラじゃねーや」
某打ち止めの真似をしてみたが、俺のキャラに似合わず敢え無く断念。
いやぁ、無理だわ。俺にあんな純真無垢な子供の真似をするとか、俺の心は薄汚れてますしね。
「いやぁ、それにしても……補導とかされないよね?今日平日やし」
まぁ、大丈夫。このナリだし、何とか誤魔化せば行ける行ける。
それにしても、俺ってニートじゃね?
学校にも通ってないしね……いや、学校に通ったら通ったで、結構大変な気がする。
主に男子の目線的な意味で。
それにしても、道行く大人共の視線が痛い。
何だよい!そんなにマントと帽子が気になるのかよい!
「まぁ、仕方ないか……さて、何処に行こうかね〜」
今日は無計画で出て来たから、これと言ってやる事も行く所も無い。
だからと言って、速効家に帰るのもあれなので、徘徊する事に。
「それにしても暑いな〜。やっぱマントはまずかったかな?」
流石にもう夏だしね。中はスパッツと半袖だから良い物の……マントで蒸れるわ。
でも着ないともったいないやん。
まぁ、クドわふでじゃ夏にも限らずクドは羽織ってたのでおk。
「でも、喉乾いたな〜。何か自販機で飲み物でも買おうかね……」
俺は辺りを見渡して自販機を探す。
えっと……何処かに自販機は〜……っと……おっ、あったあった。
俺は自販機を見つけて、すぐさま駆け出す。
いや、喉乾いてるなら走んなよってな……。
「おっ、色々売ってる〜♪でもこのどろり濃厚ピーチ味って……何なんだ……」
そんな物が置いてあるとか……パネェな……。
さて、まぁここは無難ファンタとかだね。
って、ガラナもあるのか……あれは北海道限定ではないのか……。
気にしないで良いか……さて、お金お金って……。
「……届かない……だと……」
ここで問題発生!
自販機のボタンは愚か、お金を入れる所までもが届かないのです!
これは由々しき事態なんだよ!くそ!これではジュースが飲めないではないか!
「ん〜!んん〜!!と〜ど〜か〜な〜い〜!!うなーーーー!!!」
ピョンピョンピョンピョン!!
くそ!届け!俺のコスモ!ってちゃうわい!!
届かない……あ〜、何処かに何か乗っかるものねぇかな〜。
とか思ってたら。
トントン……。
「キャッ!?」
いきなり肩を叩かれた。
いや、びっくりして悲鳴あげちゃったよ。
「あ、びっくりさせちゃったかな……」
俺は後ろを振り向き、声の主の顔を見る。
うむ、金髪でサイドツインで可愛いのう。それに、何か水樹さんの声に似てるね。
……ってフェイトじゃん!
「あの……何でしょうか……?」
「いや……君がさっきから何かやってたから、気になっちゃって。どうしたのかな?」
「はぅ……大変お恥ずかしながら、この自販機の、お金を入れる部分に手が届かないのですよ……あはは……はぁっ……」
いきなりのフェイトの登場に驚いたものの、そこは俺。
何とかポーカーフェイスを保ったよ。いやぁ、生フェイトは可愛いね。
あれだよ、大人になったのムチムチフェイトよりも、今の方が俺的には好きだ。
……ロリコンではない。
「……ここに入れるだけで良いのかな?」
「……入れてくれるのですか?」
俺はたぶん、目がキラキラしてると思う。
いやぁ、世の中捨てた物じゃないね。こんな優しい子が居るとは……もう精神年齢が成人してるので、こう……来るものがあるね。
「うん、私が代わりに入れてあげるよ」
「すいません……お願いします」
俺はフェイト二小銭を渡して入れてもらう。
あぁ、何て優しいのだろうフェイト……こんなフェイトを人形扱いするかプレシア……許すまじ……。
でも無印に介入するのは……まだ検討中。
「はい、入れたよ」
「ありがとうございます……さって〜……って……ボタンも届かねぇorz」
もう、何なんだよ……俺。
確かに小さくって頼んだが、ホントあの神極端だよね……。
「あはは……ボタンも押してあげようか?」
「あうあう……みぃー……お願いしますなのです……」
もう……どうでもいいや……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
フェイトサイド
「えっと……何処だったっけ……」
私はこの世界に来てすぐに、サーチャーを飛ばしていました。
それを終えたので、マンションに戻ろうとしたのですが……まだ場所を把握しきれていなくて、迷ってしまいました……。どうしよう……。
「こんな事になるんだったら、もう少し地図とか見て道を覚えるんだった……」
照るつける太陽が、ジリジリと地面を熱し、その暑さが私の足などに襲い掛かる。
暑い……。黒系統の服を着ているので、熱を吸収しているのだろう……。
そんな時……。
「……届かない……だと……」
不意に、近くから声が聞こえた。
声の高さからして、女の子だろう……。
何故かその声は、凄く驚いてる声に近かった。
「ん〜!んん〜!!と〜ど〜か〜な〜い〜!!うなーーーー!!!」
ピョンピョンピョンピョン!!
少し歩いて角を曲がったら、マントを羽織り、帽子を被った子が、ピョンピョンと飛んで何かをしている……。
……あの機械みたいのは何なんだろうか?
そしてあの子の飛び跳ねてる姿……可愛い。
私はその子の近くまで行き、少し屈んでからその子の肩を叩く。
トントン……。
「キャッ!?」
いきなり肩を叩かれてびっくりしてしまったのか、女の子は短い悲鳴を上げる。
……びくっとなったところも可愛い……はっ、いけない、私ったら……。
「あ、びっくりさせちゃったかな……」
女の子はこっちを振り向き、私の顔を見る。
その子は、とても肌が白くて、目がパッチリとしていて、顔も整っていた。
そして、人形の様に可愛らしい唇……いや、もう全てが人形みたいに綺麗だった……。
その子は一瞬驚いたような顔になったが、すぐに元の整った顔に戻り。
「あの……何でしょうか……?」
そう聞いてきた。
やっぱり初対面だし、いきなり肩を叩かれたんだもんね、しょうがないか。
「いや……君がさっきから何かやってたから、気になっちゃって。どうしたのかな?」
「はぅ……大変お恥ずかしながら、この自販機の、お金を入れる部分に手が届かないのですよ……あはは……はぁっ……」
そう聞いた私に、女の子は顔を赤らめて、恥ずかしそうに訳を話してくれた。
あぁ、可愛い……すごく可愛い……こう、ぎゅってしたくなるような小ささに加え、そのあどけない笑み……本当に人形が生きているみたい……。
そしてその子はため息をつき、項垂れてしまう。
私はこの子が見ていた機械を見る……。
見たところ、ジュースを売っている様だけど……。
あっちとは全然形も違うので、分からなかった。
そして、私は声を上げる。
「……ここに入れるだけで良いのかな?」
そう言った瞬間、女の子がバッと顔を上げる。
その目はキラキラしていた、とても期待に満ち溢れてる目をしていた。
「……入れてくれるのですか?」
……お預けをされて、ようやく良いと言えわれた犬みたい……。
愛くるしい……今すぐにでも頭を撫でてみたい……。
でもその感情をグッとこらえ、言葉を紡ぐ。
「うん、私が代わりに入れてあげるよ」
「すいません……お願いします」
女の子は私に何かを手渡してくれた。
あぁ、手も小さい……にぎにぎしたい……。
それにしても……これをその隙間みたいな金属口になっている所に入れれば良いのかな?
私は機械に近づき、三枚のコインを投入する。
三枚目が入れ終わったら、いきなりボタンが光りだす。
「はい、入れたよ」
「ありがとうございます……さって〜……って……ボタンも届かねぇorz」
お礼を言ってから、クルッ機械に向かい、ボタンを押そうとするが。
コインを投入する所よりも上にあるボタンを、この子が押せるわけも無く。
それに気づいた女の子はまた落胆する。
私は苦笑交じりの笑い声を出す……。
「あはは……ボタンも押してあげようか?」
「あうあう……みぃー……お願いしますなのです……」
……み……みぃーって……。
それに……あうあうって……っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
可愛い……抱きしめたい、頭を撫でたい、プニプニしたい……。
今この子、鳴いたよ!
「どれを押せば良いかな?」
私は顔に出さないように必死に堪える。
お母さんのお仕置きよりも、ずっと苦しい……何でだろう……。
「あ、その紫色のをお願いしますです……」
「これだね」
ピッ、ガコン!
女の子が指を差していたボタンを押す。
そしたら下からジュースが出て来た。
女の子はそのジュースを取り出して……。
「ありがとう♪」
満面の笑みで、お礼を言ってくれた……。
……もう死んだも良いかもしれない……。
はっ、いけない……死んじゃったらお母さんのお願いが……。
私は首を横に振り、正気を保つ。
危なかった……。
「それじゃあ、俺は行くね?」
ん……俺?
「君、女の子が俺とか言っちゃ駄目だよ?」
ここはお姉さんとして言っておかないと。
この子の将来が……。
「あはは……俺、男何だけど……」
「………………えっ?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アニスサイド
ですよねー。
まぁ、仕方ないからさー。
つか、フェイトがすっごい変な視線をさっきから俺に浴びせてたのは何で?
すっごい寒気を感じたんだけど……。
「えぇぇぇぇ!!嘘……嘘だよね?」
「ホントだよ?良く間違われるから仕方ないですよ。そして、このナリで九歳なんですよねー」
「……私と同い年……は、反則だよ……」
ですよねー。
頑張れフェイト、驚いた分だけ良い事あるさ。
「大丈夫ですか?」
「……あ、うん……大丈夫……」
フェイトはまだ驚きが取れてないので、まだちょっと顔が引きつっている。
まぁ、ドンマイだね。
「何か知らないですけど……ごめんなさい……」
一応謝っとこう……紳士の嗜みです。
「あ、全然気にしてないから大丈夫だよ。こっちこそ、女の子って間違えちゃってごめんね……」
「いえいえ、さっきも言った通り、何時もの事なんで気にしないでください」
うむ、埒が明かないねこれ。
でも、フェイトってこんなに喋ったっけ?
まぁ、良いか。
「……所で……名前聞いても良いかな?」
「あ、良いですよ。俺はアニス・クロイツベル。みんなからはアニスって呼ばれてるから」
「……クロイツベル?」
その名を聞いた瞬間、少しだけどフェイトの顔色が変わる。
……どないしたん?
「……もしかして……アニスは……魔導師……?」
そう……フェイトが口にする。
その目は、少し戸惑いの目をしている……半信半疑か……。
「……どうして俺が魔導師って、分かったんですか?」
「私の住んでる世界では、クロイツベルの名は絶対。そして、この世界でその名前の人間は居ない……だからです」
「……ふぇ〜、知らなかった……俺の一族って……そんな有名だったんだ」
「あらっ……」
フェイトが転びそうになる。
あはは、キャラじゃねえって。
「……もしかして、知らなかったの?」
「うん、全然。俺一切自分の家の事とか把握してませんでしたし。して、貴女は何なのでしょうか?魔導師を知っているのなら、貴女も魔導師なのですか?」
「うん、私もそう……もしかして……アニスもこの世界に落ちたジュエルシードが狙いなの?」
「ジュエルシード?……知らないですよそんなの。第一俺がこの世界に来たのは、家が襲撃されたからこの世界に逃げて来ただけであり、そんなジュエルペット何ぞ知りませんよ」
家が襲撃された、その台詞を聞いた瞬間、またフェイトの顔色が変わる。
何これ、面白い。
「……ごめんなさい……聞いちゃいけない事聞いちゃったね……」
「いえいえ、気にしないでください。これで疑いが晴れるのならば、安いものですよ。ところで、貴女の名前、まだ聞いてませんのですが……」
「あ、そうだったね。私はフェイト・テスタロッサ。フェイトって呼んで」
「はい、分かりましたフェイトちゃん。それで、疑いは晴れました?」
「……まだちょっと……半信半疑かな……」
「ですよねー。まぁ、信じるか信じないかは貴女次第です。でも、これだけは聞いてください。俺はそのジュエルなんたら何て物、この世界に落ちて来た事すら知りませんでした。今こうして貴女に言われても、ホントにそんな物がこの世界に?って思っていますし、どんな物かも分からない物に興味を持つなんてあり得ません。ですので、俺は白とでも言っておきます」
「……ホントに、信じても良いのかな?」
「だから、信じるか信じいかは、フェイトちゃん次第です……」
俺は真っ直ぐにフェイトを見つめて言う。
……何故かフェイトは少し顔を赤らめているが、気のせいだろう。
「うん、じゃあ信じるよ」
「やけにあっさりですね……」
「だって、初対面でそんなに面と向かって言えるものかな?こっちが嘘って思っても、私は何も分からない。それは裏を返せば本当かもしれない……だから、私は信じてみようって思ったの」
「……oh……純粋……痛い、心が汚い俺にとっては痛い……orz」
もう、フェイトにたんの称号を授けようと思う。
これからフェイトたんと名乗るがいい。
あ、嫌だ……さーせん……。
「それじゃあ、私は行くね」
「うん、また何処かでね〜」
俺はフェイトに手を振り、俺も歩き出す。
さって〜、何処に行こうかな〜。
とか思ってたら……。
トントン。
「わふっ!?……フェ、フェイトちゃん……またなの?」
またフェイトが俺の肩を叩いてきた。
いや、お前あっちに行ったんじゃねぇのかよ……。
「あの……マンション何処にあるか……分かるかな?」
「……はい?」
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