叫 |
*
雨に打たれた竹林は、とても澄んだ音がした。パラパラと軽快に音が鳴る様は、一種の楽器のようにも感じる。不安定な音程。規則性の無いビートが私を包んだ。土砂降りという程ではないが、小雨程の雨の振る中、私は傘をさしてはいなかった。別に雨に打たれたくて傘を忘れたわけではない。唯、出かける前に自宅から空を見上げたときは青空が広がっていて、それでいらないと思って出かけたのだ。夏場の通り雨と言う奴だろう。私の背丈より倍もある竹の所為で、空が見えないが、きっとしばらく待てば止むと思った。
グニャリ。と、靴の先端が地面にめり込む。あまりの軟らかさに、一瞬足をすくわれそうな感覚がした。足元を見ると、黄土色をした土が左靴の先端を覆っている。土臭い苦い匂いが鼻を突く。竹の蒼い匂いの中で、苦い匂いが際立って私の鼻を突いた。だが、その匂いは私にとって雨と同じ澄んだ匂いに感じた。再度、土の上を踏みしめる。またグニャリと一瞬靴の先端が地面にめり込んだ。踏みつけた場所、くぼんだ所から水がジワリと、躊躇うように泥水が染み出る。濁り水。茶色い、腐ったような水。その水に、右眼が写る。
私はまた、その地面を踏みつけた。水飛沫が上がる。私の両足と赤色のモンペを華麗に汚した。水滴が魅せる水玉が茶色く模様をつけた。
雨が一瞬弱くなった気がした。ふと見上げると、先ほどまで水滴と感じていた雨が、霧のような細かい物へと変わった。
「あぁ・・・」
ため息のような声が漏れる。睫毛に水滴が溜まり、それが眼に入った。
― 冷たい ―
眼を閉じる。水滴は、私の眼から零れると目頭から頬、足元へと静かに落ちて行く。彼女ならなんて言うだろう。私には、彼女のように象徴的な表現はできない。私は感覚的な、不躾な表現しかできない。この気持ちを表現するのなら、一体何だろう。
「なぁ・・・慧音・・・」
鼻で笑いながら、最愛の人の名前を呼んだ。
*
「やぁ、妹紅。元気そうだな」
障子の向こう側から覗き込むようにして部屋に入った私に、彼女はそう言った。とても軽快に、うれしそうだったのを覚えている。本格的な夏に入る前、五月の下旬。まだ春の余韻が残る季節だった。
「へへっ、そう?」
私は笑いながら彼女の元へと歩み寄った。彼女は白い布団の上で、横になっていた。布団を首元までかけていたのもあるが、彼女が体を起こすと何時も着ている群青の服ではなく、寝巻きなのか白い着物を羽織っていた。何時もとは違う格好の為か一瞬誰か判らなかった。
「何時もすまないな、私のために毎日来てくれるなんて」
布団の脇に座った所で、照れながら彼女はそう言う。
「いや、慧音の為ならこれくらい良いさ」
私も彼女に釣られて、照れながら言った。彼女の様子を見ると、何時もよりも体の調子がよさそうだ。最近はめっきり布団から起きることも無く、寝たきりの状態だったが、今日は珍しく体を起こした。顔色も悪くは無い。
「体の調子はどう?」
彼女の顔色を伺いながら聞いてみた。
「んっ、今日は結構いいかな・・・これなら外を散歩するくらいは行けそうだ」
少し背伸びをしながら彼女は答えた。また見せた笑顔に、私は少し安心した。
「ははっ、じゃあ久々に学校にでも行ってみようか?」
「それはいいな、皆話しに来てはくれるんだが、やはり実際に行ってみたくてな。校庭の桜の木はもう散ってしまったか?」
「もう夏近いし、葉桜になってたよ」
「それは残念だな。今年も満開に咲く桜を見たかったんだが・・・」
そう言って、彼女は縁側の方を向く。縁側の障子が一箇所、少しばかり開いているスペースがあった。人一人がやっと通れるくらいの隙間。私も彼女と同じく、そこから見える景色を見る。
小さい障子の隙間。小さな空間ではあったが、縁側がどのような世界になっているのか手に取るように判った。縁側は綺麗に整えられているが、草木も生えていない砂利があるだけ。縁側の反対には漆喰の壁。外の風景は殆ど白い壁に覆われ、空はほんの少し見えるだけだった。
「今度、湖にでも行こうか。これから暑くなるし」
「それはいい避暑だな。あぁ、清清しい風の香りがしてきた」
丁度、縁側からの風が部屋を渡った。少しばかり湿気た、夏らしい香りがした気がする。白髪混じりの彼女の髪の毛が風に揺れた。長く伸びた前髪が、眼に入ったのか彼女は顔を手で払うそぶりをする。
「ははっ、そろそろ髪の毛も切らないとな」
彼女の顔にかかった神を指で拭ってやる。
少し眼を摩りながら彼女は困ったように言う。
「うぅむ・・・散髪もしてないな・・・色々身の回りのこともやらなくては・・・」
「安心してよ、私がやってあげるからさ」
「いや・・・しかし・・・」
「いいからいいから、休んでてくれ」
彼女の肩をつかみ、私は布団に寝かしつけようとゆっくり体を倒した。困惑しながらも、なされるがまま彼女は布団の中へと倒れていく。
「ほら、ゆっくり休んでくれよ」
ポンッと、布団の上を叩いた。彼女は不満そうにブツブツと何か言っているようだが、何だか子供が駄々をこねているように見え、私は安心してと笑顔で語りかけた。彼女の身の世話くらいなら、日常茶飯事でやっていることもあり別に苦でも何でもない。むしろ私が望んでやりたいほどだ。昔から彼女に世話になっていた事もある。今までの分を返すように私は彼女の世話をしているのだろう。
とりあえず何をしようかと部屋を見渡すが、彼女らしく整然とした部屋だ。物自体少ないこともあるが、よく掃除が行き渡っており、埃と言ったものが見当たらない。普段からきっちりとしている彼女らしい。自分の身の回りの事に関しては、できる限り片付けているようだ。
「相変わらず綺麗な部屋だな」
「皆に任せてばかりでは悪いからな。少しくらい自分の身の回りのこともやらなければ・・・」
「病人なんだから少しは皆に頼っても良いんじゃないか?」
「いやいや、そうやって甘えているのでは駄目だ。皆に頼りっきりだとずっと甘えてしまうよ。自分のことくらい少しでもやれるようにしなければ・・・」
「ははっ、だが頑張り過ぎるのも良くないぞ。体を壊したら元も子もないからな・・・よっと」
私は立ち上がり、少し開いていた縁側の障子を大きく開けた。風がヒュッと部屋に吸い込まれる。
やはり殺風景な縁側だ。何度も見ているが、この季節は一番寂しい。花が咲いた後、散ってしまった花弁が砂利に染みこんでいる。夏に向けて緑の葉が生い茂る。春と比べると色が少なく寂しい。
「・・・あれ?」
その縁側に一本だけ。やけに目立って見える木があった。この庭を何度も見ているつもりだが、何の木だったか、思い出せない。
「なぁ、この木って何の木だっけ?」
縁側に一本凛々しく立っている木を指して私は聞いた。背丈は私と同じくらいだろうか。細身で、わさわさとした緑の葉が茂った木だ。何時も名前を聞いているはずなのだが、何時も忘れてしまう。
「んっ、その木は金木犀だ。秋になると山吹色の花を咲かせるんだ」
「あぁ、去年一緒に匂いを嗅いでいたな。思い出したよ」
そういえばと、彼女と一緒に縁側でこの金木犀の匂いを嗅いだことを思い出した。甘い、包容感のある匂い。だが、春の時期にも緑の葉を出している所為で、私の中では他の植物と比べて陰に隠れている感じだ。確か華が咲くのは秋だったか。秋に花を咲かせるのは珍しいのかもしれないが、私は金木犀の華よりも秋の紅葉のほうに眼が行ってしまう。
「そういえば良い匂いだったな・・・慧音は金木犀が好きだったか?」
「好きだぞ。あの香りがたまらなく秋を感じさせる匂いなんだ。夏が終わって、これから冬に入る合図のような匂いに感じるからな」
「また慧音と一緒に縁側であの匂いを嗅ぎたいな・・・秋まで後半月もあるのか、まだ大分先だなぁ」
鼻から少し空気を吸うと、金木犀の香りが漂ってくるようだった。彼女もあの匂いを思い出したのか、少し眠そうな表情であの木を見つめている。
「なぁ・・・妹紅」
「んっ?」
彼女が私に問いかけてきた。視線はそのまま、金木犀を見つめたまま。
「私は、もう・・・・・・そろそろだと思うんだ・・・」
「・・・」
彼女は笑っていた。清清しい笑顔で。金木犀を見つめたまま彼女は話した。
「最近判るんだ。そろそろなんだって。なんとも馬鹿らしい事を言っていると思うよ。自分でも判らないが感覚的に、私の体が教えてくれるんだ。もう近いんだなって」
私も、彼女も、私は何もいえなかった。何か言おうと思ったが、言葉が出ない。外の金木犀を見つめたまま、何も言わない。静かな時が少し過ぎた。
判っている。判ってるさ。言わなくてもいいと思いながら、何かを返そうと考えたが、何も出なかった。
「判ってるさ・・・」
つい口から言葉が毀れた。小さな声だったが、きっと彼女には聞こえてしまっただろう。聞きたくなかった。その台詞を、正直聞きたくはなかった。
もう時間が無いことぐらい判ってるさ。彼女の容姿を毎日見ていれば手に取るように判った。彼女はもう、あの頃の面影は無い。体は窶れ、私と学校に行っていた頃の半分程度の体重しかない。骨に皮膚が付いただけのような腕と首元を見るだけで相当やつれている。肌も青白い。青い血管が浮き出ているのが良く判る。
だけど・・・それでも・・・。
「なぁ・・・」
私は生きて欲しいと願っていた。
「慧音、生きたいと思わないのか?」
「生きたいさ。できるならずっと・・・」
「じゃあ・・・さ、」
唐突に、あのことが浮かんだ。普段なら絶対に聞かない。その理由は私が一番知っているからだ。だが・・・、いや、しかし・・・。彼女を見る。一瞬、唾を飲み込んだ。
「・・・・・・」
いや、何を自分は考えているんだ。あの薬を飲まないかと聞くなんて。馬鹿らしい。自分で何を言おうと思ったんだ。駄目だ。絶対に駄目だ。何を言いそうになってるんだ私は。馬鹿だ。大馬鹿者だ私は。
「いや・・・何でもない・・・」
「・・・すまないが薬は飲まないよ」
予想はしていたようだ。私の考えがわかっていたのだろう。彼女はわかったように答えた。
そうだ。だからこそ、今まで言わなかった。不老不死になった所で、この肉体の牢獄に縛られる苦痛。私自身がそうであるから、言わなかった。会話が止まった。彼女の息遣いが、少し荒くなったような気がする。息の吐く音だけが耳に付いた。
「正直、私は死ぬことが怖い」
彼女はそう切り出した。
「お前にとっては全く考えることも無いとは思うが、私は死ぬことがここ最近すごい怖く感じてしまったんだ。まだ、お前と出会った時、あの頃はずっとずっと先のことだと思っていた。だけど・・・こうして間近に迫ってくると・・・何だろう、言い表せない不安がすごい来るんだ。それは・・・死と言うものがとても意味の判らない物だから怖いんじゃないかと思う。死という物に意味があるのか、私が生きていることに意味があったのか、そのことを考えると・・・頭の中が不安で、とても恐ろしい恐怖になって来る・・・んだっ」
彼女が布団から体を起こす。そして、ヨロヨロと立ち上がり始めた。私は、とっさに彼女の肩を持った。彼女の体を触った瞬間、冷たいと一瞬思った。
「あぁ・・・すまない」
小さな声で彼女がつぶやく。着物から見える足は、白い棒のようだった。
「縁側に座らせてくれ・・・」
「・・・判った」
抱きかかえるように運ぶ。軽かった。こんなにも、彼女は軽かったのかと思った。彼女一人の命の重さが、こんなにも。昔背負っていた竹籠よりも軽いのではと思えるほどだ。
彼女を支えるように縁側に座らせた。私も縁側に座ると、彼女は寄りかかるように私に体を預けてきた。彼女の荒い息が耳元でそよ風のように聞こえる。
「妹紅を置いていくのは・・・とてもすまないと思ってる。私だって不安だ。できれば寄り添って・・・生きていたい・・・」
できる限り息を整えて、彼女は話す。彼女を見られなかった。こんなにも近くに、私の肩に寄りかかっているのに、彼女がいるのに、私は足元に散らばる砂利をじっと眺めていた。
「こんな気持ちになるのなら、いっそのこと生まれてこなければ良かった。こんな体に生まれてこなければ良かったと思う。世界が憎い。そう考えたらきりがなかったよ・・・。怨むだけ怨んでも、何も見えなかった。だけど、私はこうして生まれて・・・生きている。では、何故生きているんだろう。願っても無いのに、生まれてきてしまった。私が生まれてきた意味は一体なんだろう?こんなにも無意味に感じる世界で何かを見つけたとしたら・・・・・・妹紅。お前に会うために生まれてきたんじゃないかと思えるんだ」
「え・・・」
「なんとも可笑しいと思うよ。でも、やっぱり結論としてそれしか出なかった。私がこの世界に生を受けたのは、不老不死となった少女を助けて欲しい。守って欲しいとどこかの誰かが願って、私が生まれてきたんじゃないかと思う。そう考えたら、死ぬことが怖くなくなったんだ。だから・・・こうして死ぬことは、もう怖くない。むしろ誇らしいよ。妹紅に会えて・・・世界に生まれて・・・とても嬉しいよ。絶望して、本当に人生は無意味なものだと思った。だけど、私はこの人生がとても意味のあるもだと判った。お前と出会わなければ、こんな気持ちにならなかった。お前といなければこんな風に笑うことも無かった。お前といなければ、今こうして生きることができなかった。だから・・・私は、この世界が好きだ。どうしようもなく理不尽で、意味不明。そんなこの世界がとても愛おしく、輝いて見える。私の知らないことで埋め尽くされたこの世界。この体も、空も、土も、水も、何もかも。この世界が、私がここにいるということを証明してくれる」
風が吹いた。金木犀がざわめく。
彼女が、私の肩に手を回した。
「この世界が無かったら、きっと妹紅にも会うことも無かった。妹紅を好きになることも無かっただから、妹紅とこうして別れるのも、きっとこれがいいことだからだと思う」
彼女の回した細い、冷たい手が一層私を強く引き寄せた。私も、彼女の細い体に手を回す。彼女を暖めるようにして。
「温かいな・・・妹紅は・・・」
私の腕に、彼女は顔を埋める。少しむず痒くなった。
「あぁ・・・慧音の為に温かいんだ」
彼女の頭をやさしく撫でた。
「んっ・・・」
気持ちよさそうに小さい声を上げる。額の髪の毛がまた払ってほしいと彼女の顔にかかった。
この一瞬。この一瞬だけ、 この世界が、私たちだけのもののように思えた。
私たちは、お互いがいなければいなかったかもしれない。私達二人がいるから、世界がこうして出来ている。
馬鹿らしいな。いや、まさしくそうだろう。私も、彼女もいなかったら、こんな世界は無かった。
この世界は、きっと・・・。
*
それから数日後、慧音は静かに息を引き取った。彼女の最期は、とてもあっけないものだった。何時にも無く荒い呼吸をしていたのに、何時の間にかそれが消えて、そして、彼女は消えた。気がついた時には、もう彼女はいなかった。私が呆然としている間に葬式も勝手に執り行われ、綺麗にあの部屋も、彼女の忘れていった物も消えていた。やったのは学校の生徒と近隣の方だそうだ。
私は葬式に出たが、焼香を簡単に済ますと葬式を後にした。呆然としていたのだろう。この辺りの記憶が曖昧だ。フラフラと何かに出て、呆然とまた何処かへ行ってしまった。家に帰っていたのは覚えているが、部屋の中で天井ばかりを見上げていたと思う。意識がたゆたい何処にも行けなかったのだろう。
彼女の体は里から離れた丘の上に運ばれたらしい。これは彼女の家、今では元だがそこに言った際、近所の方から聞いた。近所の方は少し不思議そうだった。なんでも何故そんな場所に墓を立てるのか。村人は皆、不思議に思ったそうだ。確かにそうだ。普通なら近くの墓地に建てる物なのに、何故か人里離れた所にわざわざ運んだのか。私は何も言っていない。恐らくだが、彼女がそうしてくれと言ったのだろう。何故あんなところに?
私は今、彼女を目指して丘を登る。葬式以来だと思う。彼女に会うのは。
『そんなこの世界がとても愛おしく、輝いて感じる』
度々、彼女の言葉を思い出す。限りない躍動が、私の中で繰り返されている。なぜ私は生きているのだ。なぜこうして生きているのか。何かが私を縛り付けている。蓬莱の薬だけではない。何かが、そう、この肉体だけではなく、心もこうして縛りつけている。心が縛り付けられた私は、こうしてまだこちらの世界に生きている。何とも不思議だ。良く判らない。答えなど出ないな、そう思った。生きていたいとは思う。が、もしだ。仮に私が別の生き物で、不老不死であったとしたら、生きていたいと考えただろうか。私が彼女であったとしたら、生きていたいと思っただろうか。これはこの世界と言うものが私をそうさせたからだろうか。判らない。判らないが、彼女の言ったことが合っているようで、私が生まれてきた理由も、きっと何かあると考えてしまう。
草木の茂みを抜け、丘の上に出る。そこには小さな墓石が一つ。何とも整然としていた。綺麗な墓石に萎れた花が一輪供えられている。ここまで彼女らしいとは、そう感じる程整然とした墓だった。
「やあ、慧音」
私は愛おしい友人に声をかける。ザラザラとした墓石を撫でる。
「なんでこんなとこに墓石建ててくれって言ったのか、ようやく判ったよ」
何事にも理由がある。村人が不思議がった事。私も不思議と思ったこと。それを考えたとき、彼女がここに墓石を立ててくれと言った理由もわかった。
「ここなら、あっちの方も見えるしな」
丘から見える景色。山の向こう側、きっと今、彼女がいる場所。霧がかすみ、上手く見えることは無いが、ここからなら幻想卿を一望できた。私は息を思いっきり吸う。
「 」
最愛の人の名前を叫ぶ。
「 」
自分の声が頭の中で響く。鼓膜が痺れ、びりびりとした自分の声が聞こえる。
もう一度叫ぶ。声の限り、私は叫ぶ。力の限り叫ぶ。
私がこうしてこちらの世界で生きている理由は判らない。だけど、何かを見つけられるような気がする。ここに来て、またそれが判った。あの時教えてもらった事をもう一度思い出し、精一杯の感謝を込めて叫ぶ。
だからこの声よ、響け!
「 」
何処までも響けっ!あの人に届くように。
何処までも、何処までも、響けっ!
何処までも越えて、届くように響けっ!
「 」
喉がガラガラに渇く。喉も、口も、ひりひりと燃える様だ。辛くて涙も出てきた。今まで泣かなかったのに、今泣いている。私の頬を、水滴が伝う。私の声で水滴も震える。あの人に声が届くようにと願いを込めて。
私はここにいる。貴女の愛するこの世界に、私もいる。あの時触れた右手も、頬も、その温もりも、全ては貴女がいたから・・・。
名前を叫ぶ。精一杯。
忘れない。ありがとう。私は決して忘れない。
貴女にこうして教えてもらったことが、きっと意味のある事だと判るから。
さぁ、この声よ。
何処までも
響けっ!
説明 | ||
そろそろ半年が経過しようとしているのと、pixivばかりでこちらでは全然上げてなかったのでこちらでも上げようと思います。 2011年度第七回紅楼夢で配布した物を一度リテイクさせた東方二次創作SS、藤原妹紅×上白沢慧音の話になります。結構てきとうにやんわり仕上げたので、ありきたりなお話ですが楽しんで頂けたら幸いです。 | ||
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