仮面ライダーディージェント
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ディバイド・ゴーストフォームはエターナルへ次々と剣戟を浴びせていた。

エターナルは手に持ったナイフで何とか防ごうとするもリーチが違い過ぎて対処がままならない。

 

『ホイホイホイホイホイッとぉ〜』

「グッ!中々素早いですね……!」

 

あまりにもやる気のなさそうな掛け声であるにも関わらず、その剣捌きは鋭く的確なもので、エターナルをどんどん劣勢に追い込んで行く。

しかしエターナルもこの程度で負けるわけがない。

 

「ならば、これならどうですか!?」

『ぁん?おおおぉう!?』

 

エターナルはクロックアップを発動させて超スピードでの連撃を仕掛け、その勢いに押されてダメージが通るわけではないにも関わらずに思わず仰け反ってしまう。

 

「気を付けて、彼の正体はワーム。クロックアップのスピードでの行動が可能だから」

『それ、言うの遅くねぇ?』

「貴方達、漫才なんてやってる場合ですか?」

 

ディージェントの遅過ぎる警告に軽くツッコミを入れていると、ナイフの連撃が止んでエターナルがこちらと距離を取って溜め息を吐いた。

 

「ですがまぁ、どうやら貴方の身体は無防備になってしまうようですね。今の状態で攻撃を受けると、果たしてどうなるんでしょうねぇ?」

『あ、ヤッベ…!』

 

ディバイドはエターナルに言われてようやくこの能力の欠点に気付いた。

自分の身体が今の状態でダメージを受けたらどうなるか分かった物じゃない。

そう思いエターナルが再びクロックアップをする前に斬りかかろうとするが、流石に向こうの方が断然速く、一瞬でディバイドの背後回り込んでその奥に居るヴァンへと迫って来た。

 

「貰いましたよ!」

「それはこちらの台詞です」

 

だがそこに控えていたディージェントがエターナルの振りかざしたナイフを持った手を掴んで止めた。

如何に速かろうがその行動が単調であれば、ディージェントの反射神経で対処可能だ。

 

「何っ!?」

「それでは止めの一発、受けて来て下さい」

 

そう感情の籠っていない声色で言い放つと、今丁度ディージェントドライバーが即席で作成したカードをクラインの壺から取り出し、ドライバーに装填した。

 

[アタックライド…リジェクション!]

 

そして電子音声が鳴るよりも早く相手の鳩尾に掌底を放ち、淡々と宣言した。

 

「物理干渉、拒絶」

「ぬっ…!?あぁぁっ!」

 

ディージェントが言い放った刹那、エターナルは弾き飛ばされる様に後ろへ吹き飛ばされてしまった。

 

「リジェクション」のカードは本来、特殊周波を放つディジェクトでなければ使う事は出来ないのだが、前の世界で何度か接触し、ある程度ディジェクトの情報がディージェントドライバーに流れて来た為に、シックスエレメントでの擬似再現が可能になったのだ。

ただし無理矢理に特殊周波を再現している為、一度しか宣言できない上にその反動は従来の物よりも高い。

 

「クッ…!またも変わった能力ですねぇ…!!」

『あぁ〜そうだなぁ〜』

 

[ファイナルアタックライド…ディディディディバイド!]

 

受け身を取ってアスファルトを四肢で削りながら減速して止まると、忌々しげな声色を漏らしていると、背後には「ファイナルアタック」のカードを装填しているディバイドの姿があり、エターナルとディバイドの間には十枚のビジョンが展開・ロックオンされている。

 

『ワームってんなら、別に問題ねぇよなぁ?代行者ぁ』

「構わないよ。イレギュラーを完全に消し去るのが、Dシリーズの役目だからね」

『フゥ〜ン、随分と真面目なこってぇ〜』

 

そう返すとディバイドは剣を両手で持って剣先を下に向け、肩の力を抜いた状態で構えた。

 

『さてっとぉ〜、エターナルだったかその姿?アンタはここで、その名の通り永久に眠っとけぇ〜』

「私に指図するとは…十年早いですよ!」

 

[エターナル!マキシマムドライブ!]

 

エターナルはドライバーからメモリを抜き、エターナルエッジに設けられているスロットへ挿入すると、その付近に着いたスイッチを押してマキシマムドライブを発動させて構えた。

どうやらヴァン本体を狙うのを諦め、ディバイドの方を撃退する事に決めたようだ。

 

『行くぜぇ〜?お前はここで、グッスリと寝かし付けてやんよぉ〜』

「アッハッハ、果たしてそれはどちらになるんでしょうねぇ」

 

互いに軽口を叩き合った所で、ディバイドがビジョンを潜り抜けながらエターナルへと猛スピードで駆け抜ける。

対してエターナルはナイフを構えたままじっとしており、攻撃のチャンスを窺っているようだ。

 

そして遂に互いの攻撃範囲内に入り、眼前に捉えた敵に向かってほぼ同時に自身の獲物を振り抜き、激しい爆煙が吹き荒れた。

 

 

 

 

 

麗奈と楓が屋外まで登り詰めると、そこには槍を持った青黒い仮面ライダーと、漆黒に染め上げた身体の仮面ライダーが戦闘を繰り広げていた。

 

しかし戦闘と言っても漆黒の仮面ライダー…ジョーカーの防戦一方で、槍を持った仮面ライダー…ディボルグが繰り出す槍による連撃をかわすのがやっとの様だった。

 

「駆!!」

「楓!?お前、何で来てんだよ!?待ってろって言っただろうが!!」

 

楓の悲鳴にも似た叫びに気が付いジョーカーはディボルグとある程度距離を離してからこちらを向くと、その眼前に捉えた二人の女性を見て怒号を放った。

 

「う…それは悪かったと思ってるけど、でも心配だったんだから仕方ないでしょ!!」

「ケンカしてる場合じゃありませんよ二人とも!次が来ます!」

「え…うおっと!?」

 

麗奈の号令と同時にディボルグが無言でジョーカーへと駆け出し、渾身の突きを放って来るが、麗奈の警告のおかげでジョーカーは寸での所でかわす事に成功した。

 

(バーサーカーシステムが作動してる…と言う事は克也さんはもう…いや、完全に人格を消すにはまだ時間が掛かる筈。何とか変身を解除させれば或いは……)

 

ディボルグを見た感じ、どうやらバーサーカーシステムが作動している事は明確なようで、ああなるともうこの世界を破壊するか倒されない限り止まらない。

 

今の自分にアレを止める手立てはない。そうなるとこの二人に任せるしかないだろう。

そんな不甲斐ない自分に少なからず憤りを感じるが、今はこれしかない。この世界のライダーに任せるしか……。

 

「楓さん、お願いがあるんですけどいいでしょうか?」

「ん?何よ急に改まって」

「アレを、止めて下さい。アレに関してはある程度知識も持ってるので、それなりにアドバイスができると思います」

 

それを聞いた楓は軽く溜め息を吐くと、麗奈の顔に片手を近づけそして……

 

「ていっ」

「イタッ!?」

 

鋭い痛みの走るデコピンをかました。

麗奈は涙目になって額を擦りながらもデコピンをかました張本人である楓を見た。

彼女は呆れた様な顔でこちらを見ている。何か変な事でも言っただろうか?

 

「な、何を……」

「別に貴女にそんな事言われなくてもそうするつもりよ。アレをこのままにしておいたら、絶対に被害が広がっちゃうだろうし、それに……」

 

そこで区切ると、ジョーカーを見た。

ジョーカーはディボルグの繰り出して来た薙ぎ払いを避けながら更に楓の後に続けて来た。

 

「ああ、こんなレディからの依頼だ。断るわけにはいかねぇだろう…なっ!」

 

再び迫って来た頭部への突きを、今度は頬が擦れるくらいにギリギリの所でかわし、ディボルグブッカーを両手でガッシリと掴んだ。

 

「………」

「うおっ!?とっとぉ!」

 

しかしディボルグは無言で槍を無理矢理振り回してジョーカーを引き剥がし、それによってジョーカーは宙を舞うが、空中でクルリと一回転するとそのまま華麗に着地を決めた。

 

「そういうわけよ。彼も貴女の事を必要としてる。貴女もアレを何とかしたいって言うのはもう分かってるんだから、態々そんな事言わなくてもいいのよ。アドバイス、よろしく頼むわね?」

「……!はいっ!」

 

麗奈が思っていたよりも二人がアッサリと自分の頼みを聞いてくれた事に思わずキョトンとしていると、彼女はそう言ってはにかみ、麗奈もそれにつられる様に微笑んだ。

 

そうだ。何も自分一人でしなければならないわけじゃない。

現にこの二人もきっと、協力し合って来た筈だ。その絆は、何にも勝る力だ!

 

「よしっ!それじゃあまず、どうすればいい?」

「まずは彼にある程度ダメージを与えて下さい!そうすれば、ドライバーのセキュリティーが一瞬緩んでその隙にベルトをはずせるようになる筈です!」

「意外と力押しだな…でもその方が分かり易い!」

 

[メタル!]

 

ジョーカーに指示を出すと、彼は銀色のガイアメモリを取り出しスイッチを押して起動させると、そのまま流れる様な手際でドライバーに刺さった黒いガイアメモリを抜き取って銀色のガイアメモリを挿し込んだ。

 

[メタル!]

 

 

するとジョーカーの漆黒のボディが銀色に染まり、仮面ライダーメタルへとフォームチェンジを果たされて背中にマウントされたスティックを手に取って軽く一回転させると、ディボルグに向かって突っ込んで行った。

 

 

 

 

 

ディバイドとエターナルが激突した際に吹き荒れた爆煙が風に乗って消え去ると、変身が強制解除された運河と、全くの無傷な状態で立っているディバイドが立っていた。

流石はゴーストと言うだけあって、どんな攻撃も受け付けていない。

 

「まさか、エターナルが敗れるとは……!」

 

対する運河の方は苦悶の表情に歪めており、立っているのがやっとと言った感じだ。

 

「止めを刺すなら今だね」

『あぁそうだなぁ』

「クッ!拙い…!!」

 

ヴァンを庇うために待機していたディージェントの言葉を皮切りに、二人は一斉に運河へと駆け出してそれぞれ拳と剣を振るってワームへと姿を戻した。

しかし受けたダメージが大きい為に、すぐさまクロックアップへ移行する事が出来ずに未だに狼狽している。

その隙にグラスホッパーワームへと最後の一撃を放とうとしたが……

 

「おっと、これ以上はやらせねぇよ」

 

そんな声が何処からともなく聞こえたかと思うと、二人と運河の間に次元断裂が展開されて、攻撃を妨げられてしまった。

 

「ッ!?」

『アレ?何で壊せねぇんだぁ?』

 

ディージェントの漏らした驚嘆の理由を、ディバイドが代わりに口にした。

Dシリーズであれば、こんな次元断裂の一つや二つなど簡単に破壊できる筈なのに、この次元断裂には罅一つ入らないのだ。

 

「今の声…そして、Dシリーズでも破壊できない次元断裂…もしかして……」

 

しかし、ディージェントにはこんな事が出来る人物には心当たりがある。

そしてその人物はすぐに次元断裂越しにその姿を現した。

 

「コイツはまだ使えるからな。ここでやられてもらっちゃあ困るんだよ」

『ぁん?誰だぁ〜オッサン?』

「……また貴方ですか、神童さん」

 

グラスホッパーワームの横に並び立つように現れた神童に、二人が各々(おのおの)の反応を示していると、神童はディバイドを品定めでもするかのような目で見たのち、「フンッ」と鼻を鳴らした。

 

「成程な。“アビリティディバイディングシステム”・ディバイドか。しかも独自に機能が追加されてやがる。こりゃあぶっ壊しがいがありそうだ」

『…ッ!テメ……』

 

まるで物の様な言われ方をされたディバイドは、運河とは別の意味でカチンと来る神童の言い草に反論しようとしたが、見事に流して今度はグラスホッパーワームに指示を出し始めた。

 

「お前はまだ役に立つ。とりあえずコイツの連れを攫って自分の世界に帰りな。コイツも絶対に来るだろうからな」

「ッ!?まさか、亜由美を……!?」

『ホォ、亜由美と言うのですねあのお嬢さんは。随分と素敵なお名前で』

 

ディージェントの何時もとは違った感情の籠った狼狽の意思が窺える言葉を聞いたグラスホッパーワームは、納得した声色でそう呟くと、その場を後にする為に自分の後ろに次元断裂を展開させた。

 

『それでは私は彼女を連れて一足先にパーティ会場へ行ってお待ちしておりますよ、藍色の仮面ライダー殿。アッハッハッハッハ』

 

グラスホッパーワームはそう挑発的な態度でディージェントに招待と言う名の宣戦布告を告げると、高笑いを上げながら次元の狭間へと消えていった。

 

「チィッ…!急がないと…ウ…ッ!」

 

急いでその場を後にしようとしたが、そこでようやく「リジェクション」の反動が出たのか、ディージェントドライバーから一瞬だけ電流が流れると、そのまま変身が強制解除され、膝をついて倒れてしまった。

 

(思ってたより、反動が大きい……。これだと空間移動もできないか…チッ!)

『オイオイ、大丈夫かよぉ?』

 

息を荒げながら自分の状態を推察する歩にディバイドが声を掛けていると、神童は見下したような目付きでこちらを見据えながら静かに問い掛けてきた。

 

「行くのは良いが、こっちの方は放っといてもいいのか?人形」

『ぁん?どういうこ……』

 

――――ドゴオオオ…ン……!!――――

 

ディバイドが聞き返すよりも先に、今近くにある建物の真上から轟音が轟いてきた。

その轟音に二人が上を見上げると、その内の一人である歩が再び小さく舌打ちをした後に呟いた。

 

「……チッ、ディボルグが暴走してる」

「言っとくが、お前が頭に血が上ってた時から暴走してたぞ?一応あの死体人形に保険を掛けておいて正解だったぜ」

『保険?何の事だぁ〜?』

 

神童の気になる発言にディバイドがそう訊ねると、彼は凶悪な笑みを浮かべながら非人道的な事を言ってのけた。

 

「なぁに、奴がマキシマムドライブを受けても身体が消えない様にちょっくら細工をな。そうすりゃディボルグドライバーも身体が手に入って、好き放題暴れて自滅してくれるだろうからな」

『……反吐が出るくらいイケすかねぇ野郎だな、テメェ』

 

ディバイドは怒りの感情を隠す事なくぶちまけると、当の本人はどこ吹く風で「何とでも思え」と言って背を向け、更にもう一つ次元断裂を展開させてその中へと歩き始めた。

 

「俺はな、お前らみたいに何も知らねぇで世界を好き勝手にイジってく奴等が大っ嫌いなんだよ。お前等を全部ぶち壊せりゃあ、世界の一つや二つが消えようがどうって事ねぇよ」

 

それだけ吐き捨てる様に言うと完全にその姿を消し、それと同時に展開されていた二つの次元断裂も消えた。

 

『何なんだよ今のオッサン、ワールドウォーカーだったみてぇだが……』

「僕にもあの人が何者なのかは分からないけど、Dシリーズを敵視してる事は確かだね……。でもまずはディボルグの暴走を…クッ……」

『オイオイ無理すんなっつうの。フラフラじゃねえかぁ〜』

 

歩は何とか立ち上がろうとするもその足取りは覚束無いもので、今にも糸が切れた人形の様に倒れてしまいそうだ。

しかしそんな歩に肩を貸そうと手を触れるが、今のディバイドの状態ではすり抜けてしまって掴む事が出来ない。

 

『あぁ〜やっぱ一旦元に戻った方がいいかもなぁ〜』

 

そう後頭部を掻きながらぼやくと、ディバイドライバーの鍔部分に設けられたコンパクトなレバーを一回押し倒した後に剣を振るった。

するとディバイドのホログラム体とディバイドライバーが消えてヴァンの意識が回復した。

だがヴァンは重要な事を忘れていた。それは……

 

「イッダダダダダダ!?しまった、怪我してたの忘れてたぜぇ…!」

 

今現在ヴァンの背中にはアノマロカリスドーパントが打ち込んだ牙の弾丸が深く刺さっているのだ。

これは流石に病院に行った方が良さそうだ。

 

「君はここで待ってて。すぐにカタを付けて戻って来る」

「まぁ待てっつうの代行者ぁ」

 

歩は都合上、携帯電話など持ち合わせていない。ヴァンには悪いがしばらくここに居てもらう事になるだろう。

ヴァンにその旨だけを伝えてもう一度ディージェントに変身しようとした時、ヴァンが待ったの声を掛けると、更に問い掛けてきた。

 

「お前、何そんなに焦ってんだぁ〜?今行っても役に立たねぇぞぉ〜?」

「……僕にはそれくらいしかできる事がない。それが今の僕の存在意義だから」

 

確かに、今の自分が言っても無力かもしれない。それでも行くしかないのだ。

そうでもしないと、自分と言う存在が保てないから。

 

「お前…なんつうかさっきのオッサンの言ってた通りだなぁ。なんっつうか、誰かに動かしてもらわなきゃ役に立たねぇ操り人形…って感じだぜぇ?」

「………」

 

歩は無言でヴァンに振り返り、その金髪の下に隠された瞳を見据えた。

 

操り人形……確かにオリジナルの指示に従っているのだから、その表現も言い得て妙だ。

自分でもそんな事を自覚している節もあるが、それほど気にしてはいない。今までそうして生きてきたのだから……。

 

「ま、そこまで言うんだったら別に止めるつもりはねぇさ」

 

「メンドクセェしなぁ」などと付け加えながら彼は暢気に欠伸をすると、ある一点を指差した。

そこには先程まで運河が使っていたロストドライバーとエターナルメモリが転がっていた。

 

「あのチビ探偵の相棒のドライバー、壊されてるらしいからついでにそれも届けに行ってやったらどうだぁ?今のお前でも、それくらいの役には立つだろぉ」

「……分かったよ」

 

それだけ小さく返すと、歩はドライバーと一応の為にエターナルメモリを拾い上げて懐にしまい、既に装着しているディージェントドライバーへカードを装填して音声認証を唱えた。

 

「変身」

 

[カメンライド…ディージェント!]

 

ディージェントへの変身を果たすと、もう一度ヴァンに目配せをして、何かを小さく囁いてから最上部まで行く為に駆け出し始めた。

 

 

 

 

 

「……ったく、以外と世話の掛かるヤツだなぁ〜アイツ。ありゃあ心配で見てらんねぇっつうのぉ〜」

 

それを見届けながらヴァンは軽く苦笑しながら呟き、同時に“声”が聞こえなかった原因にも気が付いた。

 

ヴァンは二年前なら世話を焼く性分だった。しかしディバイドライバーを手に入れた頃からそんな事に気が回らなくなり、何時しか自分の事しか考えなくなっていた。

しかし今、そんな自分と平等に接し、それでいて自分を気に掛けない様な奴がいる。あんなのが傍に居ては、こちらはオチオチ夢を見る暇もない。

 

そしてディージェントが零した囁きは、ヴァンにはハッキリと聞こえた。その言葉は……

 

「“ありがとう”…かぁ……その言葉を聞くのは随分と久しぶりだなぁ……。こりゃ久しぶりにぐっすり眠れそうだぜぇ……」

 

それだけ誰にでも無く呟くと、ヴァンは静かに寝息を立て始めた。

今度こそ、最高の眠りへと誘われる為に……。

説明
第43話:逆転の鍵はG/幽体離脱形態!
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