ゲイム業界へようこそ!その9 |
「ここがこの世界の俺の家になるのか…。」
「一人にしては少し大きすぎるんじゃない?」
モブキャラ様に貰った家に到着した。大きさはなんと言うか家族で住めるんじゃね?という感じのレベルだ。ブラックハートが言ったように少々大きすぎる気がする。
「まずは家内を探索だな。」
「そうね、何か使える物が残ってればいいけど。」
俺達は鍵を使って家の中へと入った。彼が言っていたようにある程度は片付いていたが、何処と無く生活が残っているようだった。
目ぼしい物は無いものかと探索していると、どうやら武器庫に辿り着いた。
「使えそうな武器は……っと。おっ?」
こっこれは、ハンターナイフ!?あのモンスターを狩るために誰もが通ると言われる武器が何故ここに?
「そんな武器見て何してるの?」
「これは誰もがこよなく愛するハンターの武器の一つだ。」
「ふ〜ん、大したものなのね。」
「ああ、大した武器なんだ。」
そう言って俺は装備してみる。思わず回転斬りしてしまいそうだ。攻撃力も8アップしたようだし、これをそのまま携帯しておこう。包丁は台所にでも置いておけばいいし。
武器庫を出て奥の方に進むと寝室を発見。なんて豪華なんだ…、前世の薄い毛布なんかと比べ物にならない。めっちゃフカフカしている。
「というかベッドが二つもあるんだな?」
「そうみたいね。誰かと一緒に住んでたのかしら?」
「まぁ俺達の知ることでは無いな。しかしベッドは二つもいらないな、どうしたものか。」
「……。」
そこでブラックハートが黙ってしまう。何か変なことでも言っただろうか?話の流れからして特に問題は無かったはずなのだが。
「どうした?具合でも悪いのか?」
「いっ、いえいえいえ全然大丈夫よ!まぁ今はこの家に来たばかりだし、後々対処していけばいいでしょ?」
「?それもそうだな。」
ブラックハートは手をブンブン振って元気さをアピールしている。本当に大丈夫なのかな?
とりあえず気になる所はいくつかあったが、家の中はある程度探索し終えた。ふと外を見ると、もう日はすっかり落ちている。
「もう夜遅いし、そっちの家まで送っていくか?」
「え?ああ大丈夫よ。ここからそんなに遠くないし。それに誰かに襲われても私の方が圧倒的に強いから怖くないわ。」
「それもそうだが…女性一人を家へ帰させるってどうかという、男としての沽券があってな?ここは俺を立てるつもりで送らせてくれないか?」
「別にそこまで言うならいいけどさ…。そういえばあなたはご飯とかどうするの?」
そこで俺は重要なことに気付かされた。確かにきょうの夕飯はどうしたらよいのだろうか?お金はもちろん持ってないし…。
「とりあえずキッチンの方にでも行ってみましょう?もしかしたら冷蔵庫の中に何か食べれるものがあるかもしれないし。」
そう言うと彼女はキッチンの方へと向かっていき、それに俺も倣ってついていく。
キッチンに到着して冷蔵庫の中をさっそく見てみる。中を覗くと空っぽ……ということは無かったようだ、助かった〜〜。
「食べれそうな物が結構残ってるわね。これならちょっとした料理が作れそうだわ。」
「そうみたいだな。これはあの騎士に感謝しないと。」
本当にこれは助かった。実際この世界に来て一日に経っておらず、生活面のことなんて少しも考えていなかったのだ。
今は冷蔵庫の中にある物を調理して食べれば問題無い。しかし、中にある物には限りがある。どうやらお金を貯める必要があるようだ。
そうこう考えていると彼女が冷蔵庫から食材を取り出していく。そして戸棚から包丁やまな板を引っ張り出し、「よし!」の一声…。
「まさか・・・夕食を作ってくれるのか?」
「え?そのつもりだったけど。」
その言葉に俺は深く感動しましたよ。ましてや夢にまで見たゲームキャラのリアル手料理!このシチュエーションに興奮しない方がおかしいです。
「君が女神様に見えてきたよ…。」
「あはは……(まぁ合ってるんだけどね。)」
………………
そして数十分後、テーブルの上にいくつかの料理が並べられていく。決して豪華な料理とは言えないかもしれないが、今の俺には本当に嬉しかった。
「さぁ座って…、ってどうしたあなたは泣いてるのよ?」
「いや、何でもないさ。」
「言いなさいよ、気になるじゃない?」
「大したことではないんだ…。俺は最近まで一人で暮らしていた。それで料理も出来上がった質素な物ばかりで、いつも一人で食べて暮らしていた。そしてゲームばかりして遊び、毎日を過ごしていた。そんな生活が俺にとって普通なんだと思ってさ。」
「……。」
「それでさ、いざ知らない場所に来て君に出会い、君と会話しているうちに、ふと感じたんだよ。あぁ…、楽しいなって……。」
彼女は黙って話を聞いてくれている。俺は話を続けた。
「そこで気付いたんだ、俺はおそらく寂しかったんだと…。ゲームばかりしていたのも、実際はゲームのキャラクター達と触れ合うことで寂しさを紛らわしていたのかもな。」
そう言って俺は彼女の瞳を見つめる。
「それで君はまだ会って間もない俺とここまで仲良くしてくれて、料理まで作ってくれた。」
「それはあなたが私に優しくしてくれたからよ…。私の夢を馬鹿にしないでくれたから…。」
「どんな形だったにしろ、君は一人で寂しがり屋な俺に手を差し出してくれたんだ。こんなに嬉しいことはないよ。」
ここで俺は気付かされた。思い出したくも無いが、事故にあった時のことを。
俺は死ぬ直前にどういうわけか涙を流していた。あの時は痛みによる体の悲鳴から、自然と涙が出ていたのだと思ったのだがどうやら違ったらしい。
寂しかったのだ。
大学生活の中で交友関係を深めず、一人で平然と暮らしていたくせに、いざ死ぬ時になって誰にも心から悲しんでくれる人がいないことが…。
辛かったのだ。
俺の存在が大事だと思ってくれている人がいないことが…。
「あなたはもう一人じゃないわよ?前に言ったでしょ、私達はパーティーだって。」
「そうだったな。すっかり忘れていたよ。」
「もう、大事なことなんだからね!忘れては駄目よ!!」
「了解、もう忘れないよ。」
そして俺は涙を拭き取る。彼女は俺にとって大事な人だ。これからは彼女を支えて生きていこう。こうして俺は決心を固めたのだ。
「それと前から気になってたんだけど。」
「どうした?」
「私のこと呼ぶ時、『君』って言ってるけど、ちゃんと名前で呼んでよね?なんか他人行儀みたいで嫌だわ。」
名前で呼ぶのが少し恥ずかしかったので『君』呼ばわりして逃げていたのだが、どうやらここまでのようだ。
「そうだったか。だったらなんて呼べばいいかな?」
「普通にブラックハートでいいわよ。他に何か呼びたい名前があるならいいけど。」
「じゃあノワールとでも呼ばせてもらおうかな。」
「そう。まぁ別にいいけどね。」
「ノワール?」
「何よ?」
「改めて言わせてもらうよ、これからよろしくな。」
「こっちこそ、よろしく頼むわ」
そうして俺はささやかながら二人で食事を楽しんだんだ。こんな生活がいつまでも続けばいいのにと神様に願って。
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