インフィニット・スピリッツ
[全1ページ]

 ‘インフィニット・ストラトス’。通称ISと呼ばれる、宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツ。だが、宇宙進出はいっこうに進まず、スペックを持て余したISは兵器となった。が、各国の思惑からスポーツに落ち着いた、言ってしまえば飛行パワードスーツだ。

 しかし、このISには大きな欠陥がある。

 

『女性にしか使えない』

 

 うん、女の人しか使えない。女の人以外には、ISは全く反応しない。だから、男にとっては何もできないただの物体だ。

 

 そのISの操縦者を教育するための機関が、日本にある。

 

「ここが、IS学園か」

 

 オレは目の前にそびえ立つ建物を見上げる。

 IS学園とは、ISの操縦者育成を目的とした教育機関で、運営資金は原則日本で行い、学園で得られた技術などは協定参加国に公開することを義務づけらられている。また協定参加国の国籍を持つものには無条件で入学させる。

 という学園だ。

 

 そんな学園の校庭に入り、職員室へと向かう。

 

『IS学園ならちーちゃんもいるし、良い暇潰しになるんじゃないかな? 転入手続きもしといてあげるよー』

 

 幼馴染みに言われた通り、オレはIS学園に転入するためIS学園へと訪れた。

 

「んー、職員室はどっちかなぁーっと」

 

 校内に入ったら今度はどこに行けば良いんだ? 

 

「適当に行ってみるか」

 

 それで目的地まで行けたためしはないんだけどな。

 オレは廊下を適当に歩き出した。そこへ、反対側の廊下からオレの後ろ姿に気づき駆け寄ってくる。

 

「ちょっと、キミキミー。職員室はこっちだよ」

 

 声のした方を振り返る。そこには肩より上で切り揃った水色の髪の女子生徒がいた。学園の制服と手には扇子を持っている。

 

「あ、そっちか。どうもありがとう」

 

 オレはその女子生徒にお礼を言って、その横を通り抜けようとする。

 が、その女子生徒はオレの腕を掴んで止める。

 

「…何か?」

 

 オレは訝しげにその女子生徒を見る。

 

「まぁまぁ、そんな顔しないで。案内したげるからおねーさんについて来なさいな」

 

 そう言って、オレの腕を引っ張って歩き始める。

 

「おお? 何? 職員室に向かってるの?」

 

 オレは引きずられるようにして歩く。

 

「そーだよ。迷子になられても困るからねぇ」

 

 オレにニッと笑いかける女子生徒。

 

「困るって、何で? 君生徒でしょ?」

 

 IS学園の制服を着てるから生徒で合ってるよな? 

 

「おねーさん、生徒会長なんだ。だから、今日の転入手続きを手伝えって言われてるんだよ」

 

 嫌そうな素振りを微塵も見せずに言う生徒会長。

 

「何で生徒会長が転入手続きを手伝うんだ?」

 

 生徒会長でも生徒が転入手続きを手伝うもんか? 生徒会とか入ったことないからわからんけど、そういうもんなのかな?

 

「すぐわかるよ。」

 

 詳しく答えずにそのまま歩いていく。

 

 そして、職員室と書かれたプレートの付いた扉の前に到着した。

 

「職員室とーちゃく!」

 

 そう言って、職員室のドアを開け中へと誘導する。

 

 オレは、しつれーしまーすと言って職員室に入る。

 それを迎えてくれたのは、身長やや低めで、ダボッとした服にやや大きめの黒縁眼鏡をかけた女性と、すらっとした長身に黒のスーツにタイトスカート、少しつり目の腕組をした見覚えのある女性。

 

「は、初めまして! 麻倉くんですね? 私は山田真耶です」

 

 オドオドした様な、というよりオドオドした眼鏡の女性がペコッと頭を下げる。その反動で眼鏡がズレる。それを慌てて直す山田先生。

 山田真耶、か。とっても覚えやすい名前でいいと思います。

 

「久しぶりだな。俊貴」

 

 ニッと笑うつり目の女性。

 

「お久しぶりです、千冬さん」

 

 ニッと微笑む。

 彼女は織斑千冬。幼馴染みである。千冬さんにはオレと同い年の弟の織斑一夏がいて、オレは一夏とよく遊んでいた。と言っても、小学生の時までで、オレは家の都合で中学は一夏と別々となっていた。3年の間、全く会ってなかったためわからないかも、と思っていたが案外見ただけでわかった。千冬さんはその頃とあんまり変わってなかったこともある。

 

「転入手続きは済んでる。だが、試験を受けてもらおう」

 

「試験?」

 

「そうだ。ここではできんから、場所をうつそう」

 

 そう言って、千冬さんは山田先生と一緒に職員室から出ていく。

 

「ほら、行くよ」

 

 生徒会長がオレの腕を引っ張り、千冬さん達の後を追う。

 

*********************************************

 

 アリーナ中央に立つオレと、生徒会長。相変わらず、扇子を片手に微笑んでいる。

 

「これからお前は、更識と模擬戦をしてもらう」

 

 腕組みをしたまま千冬さんが言う。

 更識って、この生徒会長のことか?

 

「模擬戦? それが試験か。」

 

 ISで戦闘か。試験なら、勝ったほうがいいんだろうな。

 とりあえず展開しとくか。

 

「来い」

 

 オレの専用機を取り出すために、左手人差し指にはめられた黒い指輪に軽く触れる。

 その瞬間にまばゆい光がオレを包み、黒いアーマーをまとう。

 背中、胸、脚、腕の部分に黒いアーマーをまとう。

 

「おおー、それが君の専用機かぁ。んじゃ、私も」

 

 更識生徒会長もISを展開する。

 アーマーの面積は全体的に狭く小さい。その薄いアーマーをカバーするように透明の液状のフィールドが形成されている。そして一番目につくのが左右一対の状態で浮いているクリスタルのようなパーツ。更に、手に持っている大型のランスの表面にも水の螺旋が流れている。

 

「お互いアーマーは薄いね」

 

 そういってクスッと笑う更識生徒会長。

 

「みたいですね」

 

 オレは右手に1本の日本刀を取り出す。

 

「お2人とも準備はいいですか?」

 

 ISを展開したオレと更識生徒会長に聞く山田先生。

 

「大丈夫です」

「だいじょーぶでーす」

 

「では、模擬戦開始してください!」

 

 山田先生が手を振り上げる。

 

 それと同時に、更識生徒会長がオレへと突撃してくる。

 右手のランスをオレへと向けて、突きを繰り出す。

 

「うおっつ」

 

 ランスを刀で受け流し、そのまま追撃にでるため刀を振り上げる。

 そして、ガラ空きの背中に向けて刀を振り下ろす。

 

「ふふっ、甘いわ」

 

 更識生徒会長は振り向くことなく、オレの刀を受け止める。

 

「!?」

 

 更識生徒会長とオレの間に水の塊が顕れて、オレの刀を取り込んでいた。

 しかも、刀を抜くことができない。

 

「ふふっ、隙あり♪」

 

 更識生徒会長は微笑み、ランスで突き刺そうとする。

 

「っ!」

 

 オレは刀を手放し、地面を思い切り蹴って空へと上昇しランスをかわす。

 

「おおー」

 

 生徒会長は素早く身体を翻し、オレへと軌道修正して再び攻撃に転じる。

 

 オレはその場でいったん急停止し、向かってくる更識生徒会長に向かう。

 

「! ふふっ」

 

 微笑み、生徒会長はスピードを上げる。

 オレもスピードを上げる。

 

 ランスがオレに当たる刹那、身体をねじり無理やりランスをかわして生徒会長の横を通り過ぎ、落ちているオレの刀を拾う。

 その勢いを脚で無理やり止めて、オレはすぐに攻めに転じる。

 

「おお、素早い」

 

 生徒会長も素早く身を翻す。

 

 今度は攻守が入れ替わり、オレが攻撃に転じる。

 刀を振り、生徒会長のエネルギーを削ろうとする。

 

 だが、生徒会長はオレの攻撃をランスや脚を使ってうまく防ぐ。

 

「……」

 

 おおお、この人つええ。普通につええ。勝つのむずいな。

 ま、負ける気もないけど。

 

 オレは素早く刀を逆手に持ち、生徒会長へと振る。

 

「!」

 

 生徒会長は笑顔を少しだけ曇らせて、オレの刀を防ぐ。

 

 刀を持ち直し、逆手にしたりと攻撃を不規則に変え予測させない。

 

「こ、これはちょっと…」

 

 オレのトリッキーな攻撃に戸惑いつつも冷静に防ぐ生徒会長。

 

 全然攻撃が通らない…。どうすっかな。とりあえず奥の手はここぞって時にして、外したら意味ないし。

 

「はあぁ!」

 

 オレはエネルギーを刀にまわし、思い切り横に振りぬく。それにより、1筋の斬撃が放たれる。

 

「おお! 飛ぶ斬撃!!」

 

 生徒会長は目の前に水のカーテンを出現させ、オレの斬撃を防ぐ。

 

 驚いてるのにしっかり対処するんだな。さすがは、生徒会長だ。

 だけど、大技は確実に防がれるってのがわかった。ますます奥の手は決めてにしないとな。

 

「ん? なんか視界が悪いような…」

 

 ふと、目の前がぼやけたような感じがした。

 が、すぐに元に戻る。

 

 ISが補正してくれたのかな。

 

 ふとISから、後方から攻撃が来ていると警告が鳴る。

 

「っと」

 

 オレはいつの間にか後ろに回り込んでいた生徒会長を確認し、振りかえり様に刀を振る。

 

「おわわ」

 

 ぎりぎり生徒会長の前を刀が通り過ぎる。

 あれ? 当たるはずだったのに…

 

「おかしいなぁ」

 

 なんとなくだけど違和感を感じる。

 

「ふふっ、ごめんね。」

 

「!?」

 

 違和感は気のせいじゃなかった。それに気付くのが遅すぎた。

 いつのまにか、オレの周りには霧ができていた。

 

 生徒会長はパチンと指を鳴らした。その瞬間に、オレの周りの空間ごと爆発が起こる。

 

「ごめんね、麻倉くん。思った以上に強かったから、この大技をつかわせてもらったよ」

 

 微笑み爆発の起こる場所を見る。

 

「…まだだ」

 

「!?」

 

 爆発のした煙から急にオレが飛び出す。

 それに驚き、次の手が遅れる生徒会長。

 

 その隙を逃さない。

 

 オレは、ほぼすべてのエネルギーを刀に集中させて生徒会長に振りぬく。刀身の周りに白いオーラのようなものが顕れ、生徒会長のISへと引き寄せられる。

 

「っつ……。あらら」

 

 生徒会長のアーマーを破壊する。

 そして、生徒会長は自機の様子の違いに気付く。

 

 シールドエネルギーが0。まだ300近く残っていたのが、根こそぎ持ってかれていた。

 

「ISのSE0を確認。麻倉俊貴の勝利」

 

 と、アリーナに声が響き渡る。

 

 ふう、とため息をつきオレは地面に降りる。

 

「あんなにあったエネルギーを一気に持ってくってことは、さっきの攻撃はエネルギー消失の物だったの?」

 

 ISをしまい、生徒会長が話しかけてくる。

 

「んー、まぁそうだね。当たった相手のシールドエネルギーを消滅させる。オレのワン・オフ。オレのエネルギーもかなり食うんだけどね」

 

 オレもISをしまい、伸びをする。

 

「なるほどね。それを狙っていたわけね」

 

「おっと、ばれてた…」

 

 苦笑いするオレ。さすがは生徒会長だ。

 

「ふむ、俊貴。ISをまだまだ使いこなせてはいないようだな」

 

 千冬さんが山田先生を連れて模擬戦の感想を言う。

 

「無駄が多いし、ブースターの使い方も雑だ」

 

「…返す言葉もありません」

 

 それは、束さんにも言われたし。何よりまだISを使うの1週間だけなんだよなぁ。

 これから慣れていけばいいんだけど。

 

「でも、模擬戦で勝利した1年生はこれで3人目ですね!」

 

 山田先生が嬉しそうに言う。

 

説明
女性のみが操縦できる兵器、通称インフィニット・ストラトス。それを唯一男で操れる織斑一夏。だが、一夏以外にも男で使える存在がいた。織斑一夏とその姉千冬と幼馴染、麻倉俊貴。彼もIS学園に入学し、一夏とともにどたばたに巻き込まれる。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
668 645 1
タグ
インフィニット・ストラトス

けやきさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com