超次元ゲイムネプテューヌmk2 Reborn 第二話 異界
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現在魔界。

 

 

そこには何もない。

人はおろか生物の生きる気配を感じさせるものが皆無と言っていいほど存在しなかった。

静寂に包まれる漆黒の大地にギョウカイ墓場とまったく同じ作りをした黒いボールのみがあった。

静寂は突如としたレーザーの照射音にかき消された。

レーザーはゆっくりとではあるが人の頭を形成した後、胴体、腕、足を順々に形成していった。

GANTZに転送された氷室は視線をやや下に落とし、両手をポケットに突っ込んで「都」に向けてその足取りを進め始めた。

重くはないがどこか気だるさを感じさせる歩き方だった。

 

 

 

 

 

「都」に着くまでにはも10分と掛かりはしなかった。

足取りは一向に変わる気配を見せない。

だが視界に捉える景色は刻一刻と変化を見せた。

 

 

 

ここ魔界はゲイムギョウ界と平行して存在する、いわばパラレルワールドである。

大陸には窮極の科学技術の産物たる完全自動管制都市「都」を中心に、超高速ハイウェイが縦横に走っていた。しかし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ては夢でしかない。

 

壮大な都を見てみる。

クリスタルで構成された建物の壁面にはうっすらと埃が積もり、

ところどころに、爆破物や超高熱による大小の破壊口が生々しい。

磁力ハイウェイもほとんどが半ばで崩れ落ち、行き交う車など一つも存在しない。

つまりこの世界は一度確かに滅びたのだ。

今の「都」で機能しているのは、中世の面影が残る建物だけである。

超高性能機械を尻目にこの世界で発達したのは「魔法」なのだから。

 

 

 

 

 

氷室はただ黙って都を歩き続ける。

すれ違うたびに氷室の視界に移るものはイレギュラーとしか言いようがないだろう。

((人狼|ワーウルフ))、虎男、蛇人間、、((屍肉食い|グール))、((羅刹|らせつ))

サラマンダー、グリフォン……

この世界の住民たちは"人間"では無かった。

魔界とは"悪魔"を住人として迎え入れた世界なのだ。

 

 

 

歩き続けること20分弱。

辺り一帯を見回してもおそらく最上の高さを誇るであろうビルを氷室は視界に捕らえていた。

このビルにも爆破の後がある。

破壊された自動ドアを無理やり手でこじ開けて中へ入り、すでに動く気配の無いエレベーターを尻目に氷室は階段を上り始めた。

一言もしゃべらずにただ黙って氷室は階段を上り続けた。

50階へ到着すると同時に階段は終わりを告げ、氷室は視線を前に向けた。

 

???「遅かったな。」

 

突然声がした。

重々しく、どこか邪気を帯びた声だ。

荘重な声の主は推定50歳ぐらいの男の姿を持ち、玉座に似た椅子の横に立って氷室を睨んでいる。

その唇からは二本の発達した白い牙が白光を放っていた。

 

声の主マグナスはそのまま続けた。

 

マグナス「何をしていた?」

 

重々しい声は変わらず氷室に問いかけた。

その疑いの中には何処か皮肉がこもっていた。

 

氷室「こいつを取りに。」

 

態度1つ変えずに氷室は右手から黒い炎を放出させた。

徐々にそれは細長く伸びてゆき、一本の剣を生成した。

刀身を紫色に底光りさせるそれは刀と言うよりは1つの生き物としても捉えられそうであった。

 

マグナス「この剣が、か。ごくろうだったな。」

氷室「…でもそいつだけじゃまだ足りないでしょう。」

 

マグナスの礼にすかさず氷室は口を挟んだ。

感情のこもっていない口調は恐ろしく冷たさを帯びていた。

 

マグナス「そのとおりだ。あの方の復活には奴らの肉体も必要不可欠だ。」

氷室「生死は問わないんですか?」

マグナス「肉体さえ完全ならば良い。」

 

マグナスの言葉に初めて氷室の頬が微かではあるが吊り上った。

だがそれは決して良いことを象徴する微笑ではなかった。

不気味な微笑みは氷室の深層心理の闇をはっきりと映し出していた。

 

マグナス「何処へ行く。」

氷室「少し休んだ後に残りの仕事を終えに行きます。」

 

マグナスの問いに氷室は淡々と答えた。

敬語を使ってはいるが、その口調は先ほどから一切の敬意を感じられない。

 

マグナス「くれぐれもカタストロフィが終わるまで奴らに手は出すなよ。お前がどんなに奴らを殺したくてもだ。」

氷室「…わかってますが、あいつ等がカタストロフィを生きられると思っているのですか?」

 

氷室の問いにはどこか邪気がこもっていた。

 

マグナス「駄目な場合は仕方ない。家畜が減るのは残念だが…。」

氷室「承知しました。」

 

会話の終了と同時に氷室は反転してマグナスに背を向け、歩みを始めた。

だが直後のマグナスの言葉に歩みを止めた。

 

マグナス「……最後に聞かせろ。おぬしは{貴族}か、それとも{人間}か?」

 

あざける様な問いは中世趣味の部屋に響き渡った。

 

氷室「おれは{ダンピール}ですよ。」

 

氷室は別の答えで応じた。

そういい残して氷室は部屋を出た。

 

 

 

マグナス「あと一週間だ。あと一週間で世界は再び1つになる。ククク……。」

 

 

 

 

ビル30階。氷室は大広間の前にいた。

ドアの前に立つと同時に無意識にかため息をついた。

やや大きめのドアに手を掛け、おもむろに開いた。

 

???「遅えぞ!!」

???「おせーでさァ。」

???「何か不手際でもあったのか?」

 

順に黒髪、茶髪、青髪にスーツ姿の男達が同時に怒鳴った(一人を除く)。

3人とも何をするわけでもなく、退屈気にソファーに腰掛けている。

 

氷室「そう遅くもねえだろ。それに順調に進んでる。」

 

氷室は3人の男達、レオン、エスター、ライに向かって言い放った。

氷室は3人に近づき、傍にあるソファーに「ふっ」と軽くため息をついて腰掛けた。

 

レオン「13時間も何してたんだよ!」

氷室「魔剣の回収と点数稼ぎ。」

エスター「今何点たまってんですかい?」

氷室「652点。」

ライ「カタストロフィまで後どれくらい?」

氷室「一週間と少し。」

レオン「これからどうするつもりだ?」

氷室「少し休んでまた点数稼ぐさ。」

 

質問一つ一つに淡々と答えてゆく氷室。

だが3人は「ふーん」と興味なさ気に聞き流した。

 

エスター「世も末でさァ。貴族がこんな地味なことするなんて。」

 

エスターはからかう様に氷室に喋り掛ける。

言葉を聴いた瞬間に氷室は眉をひそめた。

 

氷室「俺は没落貴族な。あとお前らがやんねーから俺がやってんじゃねーか!」

 

エスターの言葉に氷室は珍しく感情的になった。

表情は無感情から一気に怒りへと姿を変えた。

 

エスター「まあまあそうカッカせずに。」

 

半分からかうようにエスターがなだめるが氷室の表情は一向に良くはならない。

むしろ額に血管が見えるぐらいに氷室は怒りを募らせた。

 

ライ「にしてもあんなこと本当に信じるわけ?」

 

エスターと氷室の会話にライが口を挟む。

ライの言葉に反応して2人とも会話をやめ、ライに視線を注いだ。

 

レオン「あの100点取ると…ってやつか?」

 

レオンがさらに言葉を被せる。

いつの間にかレオンもライに視線を向けていた。

 

ライ「俺はいまだに信用できねーんだよな。」

 

ライは腕を組んで重い口調で話した。

 

氷室「試した後で俺が確認する。駄目ならほかの方法を考えるさ。」

エスター「正直俺はどうでもいいでさァ。」

 

3人が真剣な雰囲気で話す中、エスターは何処か緊張感が無かった。

話が終わると氷室はソファーから立ち上がり、無言のまま3人に背を向けて大広間から立ち去ろうとした。

 

レオン「何処行くんだ?」

 

とっさにレオンは氷室に問いかける。

 

氷室「自分の部屋いって休む。ここんとこ寝てないからな。」

 

氷室は答えた後に手を口に当ててあくびをした。

軽く目を潤ませながら氷室は足取りを再び進めようとした。

 

ライ「最近ぶっ続けだけど大丈夫か? 昼夜逆転をやり過ぎると……まあわかってるだろうけど。」

氷室「今のところは大丈夫だ。それよりお前らも一週間後に備えとけよ。」

 

が、ライの言葉に足を止め、3人に忠告した。

 

エスター「別に大丈夫じゃないですかい?俺達なら。」

 

エスターは軽く笑いながら氷室に返した。

氷室は後頭部をぐしゃぐしゃと掻いて目を細めながらエスターにさらに返した。

 

氷室「念には念をだ。じゃ、うるさくすんなよ。」

エスター「保障ゼロ。」

 

立ち去る前に氷室は軽く舌打ちをして大広間を出た。

二十歩と掛からずに同じ階にある自室の前にたどり着き、ドアに手をかけて押し開けた。

部屋にはベッド以外に特に何も無かった。

氷室は真っ直ぐにベッドに向かい、仰向けに倒れこんで寝息を立て始めた。

 

説明
一応この話はダークですが、バッドエンドではない(はず)です。

まあダークになりすぎていつの間にかフラグが立たないように
頑張ります。
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