ミリアム：あなた達がここに来る前に現実世界に戻って確認してきました。まだ意識は戻ってません。メールも特に入ってません。もしかすると、犯人はあなた達が協力者になった事を知って、娘を・・・・

　ミリアムは泣きじゃくっていた。

レオン：ミリアム・・・・

ローラ：はい、これ毛布よ

アン：落ち着いてね

アル：大丈夫だ、僕たちもいるから

ルカ：・・・・・たぶん娘さんの精神は無事だと思います。警察への連絡がない事もすぐに確認しているはずだから、まだ切り札である“人質の精神”を消滅させる事はしてないはず

海斗：だが、なんらかのアクションをここに送ってくるはずだな。現実世界のメールで連絡すれば、記録がついてしまう。キノコネットの秘密場所なら、問題ないだろう

RIN：キノコネットに関与しているなら、ここに犯人の精神体が出来るはず。ノコノコ出てくるか解らないけど、もし会えたら、私、ぶちギレるかも

LEN：RIN！！！　それは絶対ダメだ！！！　ソニカさんの安全の事を考えろ！

ルカ：そうね。私も心では煮えくり返っているんだけど、早まった行動はしないわ。とにかく連絡があったら、冷静に対処します

海斗：私だって我が社管理のキノコネットでリアル犯罪行為を行っている事実で、怒りに震えているが、我慢しているのだ

GUMI：世の中にはサイテーの人間って、いるんだね

GAKU：“人間”って種別に置く必要もないような連中がな

MEIKO：・・・・シメる！

JIM：No・・・・・・・

＊＊＊

　そのとき、御前の人形が動き出し、口が開いた。

ミリアム：わ、私じゃないわ！　誰！　動かしているの！

御前：ズイブン、オオジョタイニ　ナッタモノダナ　ミリアム

　その声は電子音を組み合わせて造った合成声だった。しかし、それは１種類の声ではなかった。

御前：ヒャヒャヒャ　氏ネ！

御前：(　ﾟ∀ﾟ)アヒャヒャヒャヒャヒャ

御前：オイオマエラ　ワライ杉

　ネット世界で使われる侮辱用語が混じっていた。声は少なくても十数人分だと判断できた。ルカは拳を握りしめて我慢していた。RINはLENとJIMに暴れる体を捕まれていた。GUMIとGAKUとMEIKOは戦慄を覚えて、呆然と立ちすくんでいた。戦隊の４人は全員御前の人形を睨んでいた。ミクはガタガタ震えていた。

　間違いなく、こいつらが、真犯人である。

　海斗がこの世界の責任者として切り出した。

海斗：キノコネットの管理者として、君たちのハンドルを教えて貰おう。言いなさい

御前：ソレハ　イエナイネ　シャチョーデ　カンリシャニ　ツタエタラ　デモト　ワカルカラネ

御前：コイツダメダ　ハヤク　ナントカシナイト

御前：ヒャヒャヒャ

海斗：つまり否定はしないんだな。“君たち”、つまり複数犯であること、この世界に“ハンドル”を持っていること。情報さえ入手すれば、根幹が解ること

御前：・・・・警察に連絡してないからといって、やたらな詮索したら、ソニカの精神、ぶっこわすぞ！

御前：氏ね！　氏ね！　氏ね！　氏ね！　氏ね！

海斗：おまえ達は自分たちが“重大犯罪人”である事を理解しているのか？　ソニカさんという一人の女性を殺そうとし、さらにミリアムさんを恐喝までしているんだぞ？

御前：俺達はスナイパーウェアを作って、ソニカをお前達と同じ方法で精神だけ、こっちの世界に飛ばしただけだぜ？　それを犯罪というなら、シャチョーさんよ、あんたも犯罪人だよ。あ？　違うか？

御前：ヒャヒャヒャ、同じだよなぁ、あ？

御前：それとよー、俺達にも一応集合名、あるんだよ、、そっちで呼んでくれねーか？

御前：ネットに繋いでいる沢山の俺達、書き込みいいか？　せーの、

　御前からもの凄い数の合成声が聞こえてきた。

御前：レギオン！

JIM：Legion・・・

海斗：レギオン・・・・つまり“軍団、多数”

GUMI：この場合、悪魔の名前の方を取るべきだわ。“邪悪の集合体”よ

御前：ヒャヒャヒャ　それは最高の誉め言葉だね

海斗：・・・レギオンの代表者だけと、ネゴシエイト、つまり交渉したい

御前：レギオンにはなぁ、代表者はいないんだよぉぉぉ。全員が同じ分量の“協力者”ぁぁぁぁ

御前：お前が配布した“ライフウェア”を紹介するフォーラムの参加者、つまり俺達がな、元のフォーラムから独立して、全員で少しずつ、ちょちょっとライフウェアを“改良してやって”だな、素敵なスナイパーウェアにして、こういう知的な使い方をしてやっているんだよなぁ

御前：元のフォーラムの代表者が、そこの方向性を危険に思ったのか、閉鎖しちまいやがってな。仕方なく独立して、無料レンタル掲示板１つを使って、再度、寄り集まったってわけだ。それが、俺達“レギオン”なんだよぉぉぉ！

御前：ちなみにそのフォーラムの管理者がどうなったかは、俺達でもしらねーけどな

ルカ：こいつら、狂っているわ・・・・

海斗：“改良”だと・・・・、ちなみにそういうのを“ソフトウェアの改竄”といって、犯罪行為だということを知っているか？

御前：俺達、“営利目的”じゃねーからな。それに改良中のファイルは、ファイル共有ソフトの中に入れてあるだよな。だから、“持っていったヤツが悪い”って、方式だからな、それがウィルスみたいに感染していって、今のスナイパーウェアがあるんだよな

海斗：我が社の許可無くして、ライフウェアをいじっていた事実は曲げられないのだぞ！！

ルカ：しかも、自分が入るのではなく、ターゲットをスナイプできるソフトウェアにしてしまうなんて。被害が無かったとしても、それだけで犯罪です！

御前：“個人利用のカスタマイズ化”の連鎖なんじゃねーか？　改良の連続で“そういう機能が付与された”ってヤツだ

御前：まぁ俺達がやったのは、１回だけコレを使って、ソニカの精神をここに飛ばしただけだ。あとの被害は、そのミリアムとその協力者がやったことだぜ

御前：まぁ、どうせ俺達を見つけだすなんて、できねーがな。ひゃひゃ

海斗：こ・・・この卑怯者どもが・・・

御前：それよりもよ、ミリアムよ、こういう重要な連中まで来ちまったし、お前のテスト結果はレギオンの共有データに全部取り込んだし、もういいわ、おまえ。寛大なレギオン様はな、ソニカの精神を返してやるわ

ミリアム：え！

御前：この世界に来ている以上、オマエラの様な姿で彷徨っているわけだが、ここに連れてきてやるわ

御前：・・・・ほい！　これで涙のご対めーーーーーん！　ひゃひゃひゃ！

　突然、御前の後ろが光った後に、緑髪の外人の女性が立っていた。

ミリアム：ソ・・・・・ソニカ！！！！！

　ミリアムは涙をボロボロ流しながら、ソニカに近づいていった。ソニカの腕が抱きしめるように横に広がった。

ルカ：・・・！！！！　だめ！　ミリアムさん！　離れて！

　ガス！！！！！！

ミリアム：グフッ・・・・・・・

　ソニカは両手を空手チョップのような形にして、ミリアムの首筋に横からダブルの手刀を浴びせた。ショックでミリアムは倒れて気絶してしまった。

御前：ひゃっひゃっひゃ！　話は最後まで聞くもんだぜ！　この世界に、ソニカの精神を元のまま連れてきたとは言ってねーぜ？

御前：記憶を変えて、戦闘民族“ヤサイ人”みたいなヒロイン戦闘力を付けて、連れてきたんだよな〜。ここさ、ある意味サバイバル世界だからよ、元のままの“ひ弱なソニカ”じゃ、すぐ消えちまうから、強くしておいたんだよな！　ヒャヒャ

御前：随分、立派に育って（笑）

GUMI：ゲスどもが・・・・・・

御前：はぁ？

GUMI：最低のゲスって言ってるのよ！！！！！！

　GUMIは我慢の限界を超えてしまった！　RINが飛び込む前に、御前に飛びかかった！！！　しかし、御前の体は宙に浮き上がった！！

御前：もう何とでも言えよ。これでこの“じじい人形“もお役ご免だし、俺達もキノコネットからおさらばだしな

御前：あ、そうそう、ソニカには、もっとステキな装備を整えて、まさに、オマエラの相手をしてやれるようにしておいたわ

御前：せいぜい、そいつと遊んでなよ。殺されるまでな！。じゃあな。

テト：そうはいかない

御前：はぁ？

テト：お前達はこの闘技場の“観客”になっていろ！

　テトが両腕を前に突きだすと、御前の上に、底が空いている鳥かごが現れた。テトが下に両腕を振り下ろすと、御前の体は鳥かごに囲まれてしまった。

御前：アホかおまえ！　俺達はLOG OUTするだけだっつーの

御前：ひゃっひゃっひゃ！、じゃぁな・・・・・な！　LOG OUTできん！

御前：おい、こっちもだぞ！

　御前の口からもの凄い数のレギオン構成メンバーの声が聞こえてきた。

テト：プリマ博士ごめんなさい、私はこの体を貸して貰っている“キノコネットガーディアン”。人間の力では監視しきれない、もしくは、監視不可能な事項を管理する、言ってみれば、超法規システム。繋がっているユーザーの精神を強制束縛し、使っているＰＣのLOG IN、LOG OUTすら制御できます

ネル：テ、テトが喋った・・・・

ハク：秘められた力・・・なの？

御前：こ、この女・・・・

御前：マジ、氏ね！

テト：その状態では、ここから抜け出すことは出来ません。まぁ気楽に、最後の戦いでも見て行きなさいな

御前：ふっ・・・まぁいいだろう。ソニカに装備させた力は、オマエラの変身後の更に上だ。ここから、オマエラが血しぶきを上げて精神が死んでいくのを、見てやろうじゃないか。面白い余興だし、掲示板経由のblogのネタになるしな

御前：ひゃっひゃっひゃ、まぁ頑張れや！

RIN：絶対・・・絶対、こいつらだけは・・・・・