ゲイム業界へようこそ!その16 |
店内に入るとそこは女性限定と言うだけあり、外とは比べられない程甘い空気が流れていた。
「キャキャウフフ」と女性の和気藹々とした声が店を埋め尽くしてる。変身しているとは言え、俺一人だけ男性(内面だけ)なのは少し気が引けてしまう。
「こちらになります〜。それでは規定時間までごゆるりとお召し上がり下さい〜〜。」
席に辿り着き、俺達はとりあえず座ることに。さっきの店員がチラチラとこちらを窺っているようなんだが気のせいか?
「レン、時間は有限よ。さっそくケーキを取って来て食べましょうか。」
「そうだな。とりあえずノワールから好きなものを取って来るといいよ。」
「分かったわ。ケーキを少しずつ持ってきて食べ終わる度に立ち歩くのも面倒だから、一度でたくさん持ってきた方がいいかしら?」
「その方がいいだろうな。それでも程ほどに持ってくるんだぞ?」
「そのくらい分かってるわよ。じゃあ行ってくるわ。」
ブラックハートはそう言うと席を立った。俺もこの機会だ、限界まで食べてみよう!
………………
少ししてブラックハートが戻って来た。こりゃ確かにたくさん持って来たな。彼女がこれを全部食べれるのだろうか?
「随分と多く取って来たな。それ一人で食べれるのか?」
「…あのね、私が大食いと言うわけでは無いのよ?目の前に美味しそうケーキがいくつもあって、あれもこれもと取って行く内にこうなっちゃったのよ…。」
「典型的な話だな…。」
「うっ、うるさいわね!食べればいいでしょ?食べれば…。」
ブラックハートはそう言って目の前の膨大な量のケーキを見据える。うわっ、今コイツ目を逸らしたぞ?一人じゃ絶対食べれないだろコレ…。
「無理しなくてもいいだぞ?多いなら俺が食べるの手伝ってやるし。」
「ふっ…無用な心配よ!このくらい全然平気だわ!!」
「まぁそう言うなら別に構わないが。太るぞ…。」
「!!!」
「俺はノワールの太っている姿は見たくないんだがな…。」
「うううぅ…。」
ブラックハートは俺の言葉に相当うろたえている。もう少しで崩せるか?
「別にどんな姿であろうと俺はノワールのことを嫌わないよ。でもどうせなら可愛い姿のままの君でいて欲しいな。」
「あっ、あの〜レン?」
「うん?どうした?」
「オネガイシマス、タベルノテツダッテクダサイ…。」
「はい、了解。」
こうしてブラックハートが持って来たケーキを二人で食べることに。
一人ではキツイだろうが、二人で食べれば大したことの無い量だ。たくさんあったケーキもスムーズに消えていった。
「それにしてもこのケーキ美味しいな。甘さも程よく控えめだから手がどんどん進むよ。」
「そうよね、このショートケーキなんて中に果物がたくさん入っているし。」
「ふむ、どれどれ…。おお〜随分入ってるな?」
「そうでしょ…ってレンちょっと?」
「どうした?」
そう言って俺は彼女に顔を向ける。そうすると彼女の指が俺の顔へと向かってくるではないか。
そのまま動かないでいるとブラックハートは俺の口元に付いていたクリームを指で取ってくれたようだ。有り難いのだが、どうも何かを忘れている気が…。
「レンもおっちょこちょいね。口元にクリームが付いていたわよ。」
「おお〜悪いね。助かったよ。」
「別に大したことじゃないから気にしなくていいわよ。」
そう言って彼女はその取ったクリームを自分の口の方へ……。
そこで俺は理解した。この流れはどう考えても最後にそうなると決まってるだろう!止めることに間に合うのか!?
「ノワール!待て!!」
「ん?何よ?」
パクッ。
ハイ、間に合いませんでしたよ。ウワアアア〜やっちまった〜〜〜。
彼女は全く気にしていないようだが、自分のしたことに気付いてないのだろうか?それとも俺が極度に気にし過ぎているのか?
「なぁ、ノワール?」
「ん?何よレン、こっちのケーキが食べたいの?仕方が無いわね〜、少しだけよ?」
「いやそうじゃないんだ。今君がやったことに疑問を持ってだな?」
「別にケーキを食べているだけじゃない?何を疑問に持つというの?」
クソ〜〜このお方は全く理解していないではないか!ケーキを口含んではモキュモキュしてらっしゃる!だがそれが可愛い!!
しかし意地でも自分のしたことに気付いてもらいたい。
「それじゃなくてだな。今俺の口からクリームを取っただろ?」
「ああ、そのクリームを私が食べたってこと?別に大したことでは無いでしょ、女の子同士だったらよくある話じゃない?」
「君の言葉で真相が分かったよ。いくつか質問させてくれ、俺の名前は?」
「そんな決まってるじゃない!あなたの名前はレン、井上 煉よ。」
「そうだな。では次の質問だ。俺の性別は男性と女性どっちだい?」
「何を馬鹿なこと聞いてるの?男性でしょ?」
「そうだよな。ああ、もちろんそうだ。」
「結局この質問でレンは何を言いたいのよ?」
ブラックハートは俺の質問の意図を理解出来ずに少し怒り気味のようだ。しかしこの質問は最も必要とされるべきこと。これで彼女は自分のしたことが理解出来るだろう。
「なら改めて考えてみてくれ。ノワールはこの俺にさっき何をしたかな?」
「何度も言わせないでよ。さっき私はあなたの口元に付いていたケーキを取って、それを食べて…。」
「理解出来たか?」
「……。」
ブラックハートの沈黙が続く。自分のしたことと俺の質問から結果を導こうとしているようだ。
そしてこの空気が変動する。どうやら彼女も自分のしたことに理解出来たようだ。彼女の顔がみるみる赤くなっていく。
「あっ、えっええと、その〜〜私はなんてことをして…。」
「どうやら理解出来たようで良かったよ。」
「〜〜〜!!!」
言葉に出来ない憤りを感じてらっしゃります。口をパクパク、体は変なジェスチャーを取っている。おっ、急に席を立ったぞ。
「なんであんたはそんな格好をしているのよ〜〜〜!!」
彼女は声を荒げて俺を捲くし立てる。他の客達も驚いてこっちを見ている。これは恥ずかしい・・・。
「そりゃ最初にお前が言ったんだろ?店に入るために女性に変身しろって。」
「それはそうだけど〜〜!!うううううぅ〜〜!!」
彼女のボルテージがどんどん上がっていく。顔もまるでトマトのように真っ赤になっていった。
「……忘れなさい。」
「へっ?」
「忘れなさいって言ってるのよ!さっき私があなたに取った行動を全て!!」
「そんな無茶苦茶な…。」
「そうでないと私…恥ずかしくて死んじゃう…。」
「いや大げさ過ぎるだろ。」
そう言うと彼女を席を離れようとする。どこに行く気なんだろうか?
「まだケーキが残ってるぞ。どこに行こうとしているんだ?」
「レンが忘れてくれないから、今からちょっと死んでくるわ…。」
「わあああああ〜〜、待て待て早まるな!!分かったから、さっきのことは全力で忘れるから!!だから頼むから席に戻ってくれ〜〜!!」
「本当にちゃんと忘れてくれる…?」
「もちろんだとも!(キリッ!)」
決め顔でブラックハートの瞳を見つめる。実際忘れることは不可能だろうが、この話題を持ち出すことは禁忌としよう。そうしないと彼女が突如として死んでしまいかねない。
「なら分かったわ…。席に戻る…。」
そうして彼女はまた席に着いた。本当に寿命が縮んだ心地がしたぜ…。実際彼女が俺のせいで死んだらおそらく世界に消されるだろうし。自分の言動にも気をつけなければ…。
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