高みを目指して 第8話
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兎、必要悪、巨像

side 零樹

 

 

いつも通りアニエスから連絡が入り犯人を追いかけようとしたんだが、生憎探偵業の報告中だったために出遅れてしまった。そして、ブルーローズが産み出した氷の上でタイガーが見たことのないヒーロースーツを着ている男にお姫様抱っこをされていた。

 

「おっさんがお姫様抱っこって屈辱だろうなぁ〜」

 

そんなことを思いつつ犯人を追いかける。なんせ今日でシーズンは終わりで、この後開かれるセレモニーでオレも正式にヒーローに認められる。たぶんあそこに居る男もそうだろう。

予想通りあの男、バーナビー・ブルックス・ジュニアも正式にヒーローとして活躍するみたいだな。明日からランキングに参加することだし、荒れているタイガーの様子でも見に行くか。

 

 

 

 

 

数日後、タイガーの所属がアポロンメディアに変更したり等があったがオレたちは平和に探偵業を営んでいた。

そして、それを偶々目にする。

一人の少年がもう一人の少年に罵声を浴びせかけている。その後罵声を浴びせていた方の少年が去っていくと浴びせられていた方の少年が何処かに走り出す。気にはなったが探偵の仕事を優先してその場を離れる。10分程経った頃アニエスからの連絡が入る。

現場からほとんど離れていない位置だったので路地裏で素早く変身しビルの上に跳躍する。

 

「アレか、でかいな」

 

ビルから目標地点を見ると巨像が動いていた。

 

「昔、巨像を破壊するゲームがあったが今回は壊すと不味いらしいな」

 

賠償金がシャレにならないらしい。

 

「人形などを動かす能力みたいだが、まさかあのサイズも動かせるとは凄いな。さて、とりあえずはこの距離をキープしておくか」

 

付かず離れずで巨像を追跡しているとようやくアニエスから連絡が入る。

 

『ボンジュール、ヒーロー。本番スタート。今日もよろしく』

 

行くか。

戦いの歌を発動させ、一気に巨像の頭を目指して跳躍する。

 

「まずは動きを封じさせてもらうぞ」

 

スパイダーショックを大量に取り出し、それを用い巨像をワイヤーで固定する。しかし固定している周囲のビルが壊れ始めるのでどうするか悩む。そんな時、視界にタイガーの姿が入ったので利用するしか無い。

 

「タイガー、ワイヤーをそれからハンドレットパワー」

 

大声を出すとこれから何をするのか気付いたのかすぐにワイヤーを飛ばしてくれたのでそれをキャッチしようとして、バーナビーが上から降ってきているのが目に入る。こいつも利用するか。巨人に着地させずにそのまま足下に突き落とす。

 

「左足を刈れ」

 

マスクの下では嫌そうな顔をしていそうだが素直に動いてくれるだろう。タイガーのワイヤーをスパイダーショックに連結させて固定する。

 

「今だ」

 

合図と同時にタイガーとバーナビーの二人がハンドレットパワーを発動させ見事に巨像を転ばせる。もちろん巨像や道路が壊れない様に、尚かつ不自然に思われない程度に魔法で保護する。

巨像は転んでから動く様子を見せないことから動かしていたネクストが逃げ出したんだろう。

 

「いきなり何するんですか貴方は」

 

「不注意にも程があるぞ。ああしなければタイガーのワイヤーがお前に命中する所だったぞ。カメラに集中するのも構わんが少しは周りを見ることだな」

 

それからスタッグフォンを取り出しアニエスに連絡を入れる。

 

「今回はこれだけで良いのか?それとも犯人の捜索に乗り出すのか?」

 

『もしアレ以外にも動かされると困るから犯人の方はスカイハイとファイヤーエンブレム、折紙サイクロンが探してるわ。ブルーローズとドラゴンキッドは民間人の避難誘導。貴方達はその場で待機、像が再び動くようなら拘束して』

 

「了解だ」

 

バーナビー達にも先程の会話が届いていたのか何も言わずに待機を続けます。

30分程で解散することになり、とりあえず事務所に戻ることにします。

 

「今戻った」

 

「お帰りなさい。刹那とフェイトは探偵の仕事が入ったから出ているわ」

 

「そう。それで姉さん、ウロボロスについて何か分かった?」

 

「全容が把握出来た位かしら。中々厄介な組織みたいよ」

 

そう言って一枚の紙幣を取り出し水に付けた。すると絵柄が代わりウロボロスのマークが現れる。

 

「紙幣の3分の1位がこれと同じ物よ。しかもシュテルンビルトドルだけでなく世界中の紙幣がこれと似た様な物が使われているの。更に言えば殆どの国の暗部が繋がりを持っていることも分かったわ」

 

「……もしかして必要悪の組織なのか?」

 

「おそらくはね。これは潰すと厄介なことになるわよ。この組織があるからこそ世界大戦が起こっていないとすら言える位に重要な組織ね。それに内部でやりすぎると粛正部隊が動くみたいだから上層部はまだまともみたいね。おそらく指揮系統は蜘蛛の巣型の頂点が無いタイプね。これなら腐敗してもすぐに代えが入るから上層部の人間でも下手に行動出来ないから」

 

「となると調査はここまでだね。さすがにこれは潰せない」

 

「それでもある程度、末端から中堅位なら問題は無いでしょうから接敵した場合は潰しましょう。それで、今日の活躍で一位になった気分はどう?」

 

「活躍してたっけ、オレ?」

 

「見事に他のヒーローを指揮して迅速に巨像を拘束。100ポイントだそうよ。タイガーとバーナビーも100ポイントずつ」

 

「そんなのでもポイントが入るんだな。まあ、このまま首位独走ってのも面白そうだな」

 

その後はお茶を入れたりしてゆっくりと過ごそうとしている時にアニエスからのコールが入る。

 

「どうした」

 

『今度は文化遺産のライオン像が動き出したわ。今度はネクスト自らが操作しているの。至急現場に向かって頂戴』

 

「了解だ」

 

『ちなみにネクストは子供よ』

 

「子供だと?なら動機は私怨か」

 

『おそらくわね』

 

「すぐに向かう」

 

通信を切りすぐに準備を整える。

現場まで転移してみると獅子型の像が街を走っていた。

すぐに追いかけて像に乗っている少年を見る。

 

「何!?あの少年は確か」

 

それは今日、罵声を浴びせられていた少年だった。

これで私怨であることは確定した。ならば後はそれを止めるだけだ。

 

「少年よ、止まりたまえ」

 

並走しながら声をかけるもこちらを無視する様に速度を上げ始めます。無論、こちらも速度を上げて再び並走します。

 

「もう一度だけ言うぞ少年。止まれ、止まらないなら無理矢理にでも止めるぞ」

 

これまた無視されたのでバットショットをライブモードで飛ばし、目の前で強烈なフラッシュを浴びせる。怯んだ隙に像に飛び乗りスパイダーショックのワイヤーで拘束し、像から引き離します。

 

「放せよ」

 

「断る。お前は自分が何をしたのか分かっているのか」

 

「うるさい。どうせ僕は化け物なんだ」

 

「化け物か、ならば排除されてみるか」

 

スカルマグナムを額に押し付けて脅す。

 

「ひぃ」

 

「自分が化け物だというなら化け物也の誇りを持て。そうすれば、その誇りに魅了される者は自ずと現れる。オレたちヒーローの様にな」

 

「誇り?」

 

「そうだ。誰かに虐げられようとも誇りを胸に抱いて生き続ける限り、悪であろうと化け物であろうと、そいつは誰かのヒーローに成れる」

 

「誰かのヒーロー、じゃあスカルは誰のヒーローなの」

 

「オレか?オレは……もう死んでしまったオレの妻と娘だけのヒーローで在りたかった」

 

「ごめん」

 

「気にするな。もう昔の話だ。今は娘との約束で誰かの為のヒーローで在り続けている」

 

「だったら僕のヒーローになってよ」

 

少年が泣きながらオレに言ってくる。

 

「こんな力があるせいで周りからは化け物扱い。両親にだって変な目で見られる。誰も助けてくれない。僕にどうしろって言うんだよ」

 

「甘えるな。その答えを出せるのは自分だけだ」

 

その時、突如として近くのビルが爆発を起こす。

 

「アニエス、何があった」

 

『分からないわ。とりあえず救助に向かって』

 

通信の向こう側もある程度の混乱が見られるがすぐに気持ちを切り替えてどうすれば視聴率が取れるか考えているようだ。

 

「ここを動くなよ少年」

 

姉さんに少年を回収する様に連絡を入れ、倒れてきているビルの一部を支える。中にはまだ市民がいるため余計に重く、足場も魔力で作った物にしなければ支えることは不可能だった。

 

『もう少しだけ耐えて頂戴。他のヒーロー達も間もなく到着するから』

 

「普通のレスキューも呼べ、中に市民が大量に取り残されてる」

 

『そちらはまだ時間がかかるみたいよ。とりあえず局のヘリも利用したり出来る限りはするつもりよ』

 

「急いでくれ。さすがに一人じゃいつまでも持たんぞ」

 

現在進行形でヤバい。さすがにスカルの能力だけでは何時まで耐えれるか分からない。最悪、咸卦法を使って何とかするが出来ればしたくはない。

 

「少年、お前の拘束を解く。逃げろ」

 

もしものときの為に少年を逃がしておくことにする。

少年は一度だけこちらを見るとどこかに走り去っていく。

これで後は支え続けるだけなんだが、ヤバいな。どれだけ耐えれるやら。

数分が何時間にも感じられる中、急に支えていたビルが軽くなった。

 

「すまん遅くなった」

 

「全くだ、タイガー」

 

「僕もいますよ」

 

「一旦ここを任せるぞ。上の市民が退避出来る様にしてくる」

 

ビルを支えるのを二人に任せスパイダーショックで出入りが出来る様な所に移動する。

 

「ここから5人ずつ下に降りれる様にする。ケガ人、女子供を優先する。慌てる必要は無い」

 

スパイダーショックを5つ取り出し、それの使い方を簡単に説明しながらケガ人を降ろし始める。途中からスカイハイとブルーローズが加わったことによって更にペースを上げることも出来た。

 

「今更ながら思ったんだが、こいつどうすりゃ良いんだ?」

 

再びビルを支えていてふと思った。このビルの一部ってどうするんだ。

誰も答えてくれないのでアニエスに連絡を入れる。

 

「アニエス」

 

『ちょっと待ちなさい。今確認を取ってるわ』

 

「遅いわ。もう市民は逃げ終わったんだから投げ捨てるぞ」

 

『そんなことしたら賠償よ』

 

「知らん。とりあえず周囲の住民は退避してるんだろ。なら隣の河に投げ込む。おら、最後の一踏ん張りだ。せえので投げるぞ。せえの」

 

合図と同時にヒーロー全員で河にビルの一部を投げこむ。これにてこの事件は終了だろう。

 

『スカル、石像を動かしていた犯人はどうしたの?』

 

「逃がしたよ」

 

『はぁ?』

 

「救助の邪魔になったんでな。今頃は家にいるんじゃないか」

 

『あなたねえ』

 

「減点したいなら好きにしろ。オレはオレのやりたい様にやる」

 

『待ちなs』

 

通信を切り、帰る為にスパイダーショックを回収する。

 

「じゃあな、仕事が入った」

 

屋上から跳躍してそのまま影のゲートを使い事務所まで戻る。

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

side other

 

後日、石像を動かしていた少年は自首したそうだ。

そんな少年の元には一通の手紙とソフト帽が送られていたそうだ。

 

 

side out

説明
誰かの為のヒーローか。
オレは誰の為のヒーローになりたいんだ?
by零樹
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仮面ライダー 魔法先生ネギま! オリジナル TIGER&BUNNY 

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