IP?インフィニット・ストラトス・パラドックス? 第九話 |
「待ってたわよ、一夏っ!!」
昼休みになり、食堂に行くとドンッ、と擬音が出てくる感じで鈴が立っていた。
「・・・・邪魔になるからとっとと食券を取るぞ」
「うっ・・・分かったわよ」
俺は日替わり定食、鈴はラーメンを選ぶ。それを受け取ったあと、テーブルに座る。
「お前、先に行ってたのか。迎えにいこうしたら既にいなかったからどこに行ったのかと思ったんだが・・・・」
「えっ!?そ、それってあたしに会いに来たってことっ!?」
「ああ」
急にテンションが上がった鈴。・・・ふむ、ではここで地獄を見てもらう・・・・は大げさかな?ま、いいや。
「説教をしにな」
「・・・・・・・・・・え?」
「もう一回言おうか?この1年間まったく連絡せずに連絡先も教えずに俺だけでなく愛理さん、良太郎さん、風都の皆、デンライナーの皆、ゼロライナーの二人に心配かけた大馬鹿者に説教をしにな」
「あ・・・・うぅ・・・」
鈴がうめき声をあげるが、無視してジィ?っと見つめる。
「ご、ごめんなさい・・・」
「許さん」
「えぇっ!?」
「・・・・・今度一緒に挨拶しに行くぞ。盛大に怒られて来い」
「は、はいぃ・・・」
皆からの説教を想像したのか、意気消沈しながら鈴はラーメンを食べ始めた。俺はそんな鈴の頭を撫でる。
「まあそれは置いておいて・・・・・久しぶりだな鈴。元気そうで何よりだ」
「う、うん・・・・あんたも元気そうでよかったわ」
鈴は顔を赤くしながら返事を返す。
「そういえば、あんた・・あれから色々巻き込まれてないわよね?」
「・・・・まあな。去年はなんとか落ち着いてたな」
うん、去年は事件は・・・・ああ、一個あったっけ?
「いや一つだけならあった。まあ、残ったガイアメモリを使った集団の壊滅、ぐらいだったけどな」
「ああ、そうなんだ。・・・・ねぇ、翔太郎さんは・・・?」
鈴がかなり心配そうな眼で俺を見てくる。・・・ああ、そういえば知らなかったっけ?
「その件だが、フィリップさんは戻ってきた」
「えっ!?ほ、本当っ!?」
「ああ。詳しいことは省くがちゃんと戻ってきた」
「そっかぁ・・・・よかったぁ・・」
本当に安心したように息を吐き出す。それと同時に鈴はラーメンを食べ終える。・・・・相変わらず食べるの早いな?。
「ああ、そうだ。もうひとつ、言うことがあった」
「ん?今度は何?」
「所長が結婚する」
鈴は思わず口に含んでた水を吹き出してしまった。・・・やっぱり驚くよね?。
「・・・・・マジ?」
「大マジだ」
「・・相手は?」
「照井刑事」
「うっそっ!?」
「嘘じゃない」
そう言うと鈴は手を顔に当てて、俯いた。
「・・信じられない。まさかあの二人が・・・」
「俺も聞いたときは驚いたな。まあ、何気に相性はよさそうだったからな。大丈夫だろう」
「・・・それもそうね」
俺も日替わり定食を食べ終わりひと段落したとき、何故かいままで別の席で座っていた箒とセシリアがこっちに詰め寄ってきた。
「一夏、そろそろどういう関係か説明して欲しいのだが」
「そうですわ、一夏さんっ! まさかこちらの方と付き合ってらっしゃるのっ!?」
机をたたきながら問い詰めてくる二人。・・・・・滅茶苦茶怖いんですけど・・・
「べ、べべ、別に私は付き合ってる訳じゃ・・・」
「そうだな。そういう関係ではない。こいつは幼馴染でパートナーだった」
俺がそういうと、鈴は何故かジト目でこっちを見てきた。
「幼馴染・・・?」
「ああ、そうか。箒とは面識無かったな。箒が引っ越していったのは小四の終わり頃だったな? 鈴が転校してきたのは小五の頭で、ちょうど入れ違いになるように来たんだ。・・それで鈴・・前に話したな?小学生からの幼なじみで俺が通ってた剣術道場の娘の篠ノ之箒だ」
「ふうん、そうなんだ」
まじまじと箒を見る鈴。箒も負けじと見返している。
睨み合う二人・・・・なんか怖いんですけど。だれか救済を求む・・・・っ!
「初めまして。これからよろしくね」
「ああ、こちらこそ」
??バチィ!
おい、今火花散ったよっ!?ただ挨拶を交わしただけなのに何で火花が散るの?この短時間で一体何があったんのさっ!?
「一夏さん、それでパートナーというのは?」
「ん?ああ、前に俺はとある探偵に弟子入りしてな」
「探偵に?」
鈴とのにらみ合いを止めた箒とセシリアがキョトンとする。
「で色々省くが、その時の相棒が鈴だったんだ。まあ、鈴を選んだ理由はあの当時俺を一番理解してた人物だったからな」
「そうっ!あたしが一番、一夏を理解してるわけっ!」
「ぬう???」
「む???」
鈴が胸を張って宣言すると、箒とセシリアがうなり始めた。
「一夏」
「ん?」
そんな二人を見てボ?っとしてるといきなり鈴から声がかかった。
「アンタ、クラス代表なんだって?」
「成り行きでな」
売り言葉に買い言葉だったのさ・・・・今思えばあの時喧嘩売ってなければ平穏だったろうに・・・・・
「ふーん・・・・」
「それがどうかしたか?」
「・・・ISの操縦、見てあげてもいいけど?」
顔を俺から逸らし、視線だけをこっちに向けて言ってきた。言葉にしても歯切れが悪い。鈴らしくないな。
珍しいこともあるもんだね?。
「ほら、アンタ普通に戦えはするけどISでの戦闘は慣れてないでしょ?」
「・・・・・まあ、そうだな。一応セシリアや先生には見てもらったが」
慣れてるとは言い難いもんね?。
「ちょっと待て一夏っ!私も教えたぞっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだったな」
「なんだその長い沈黙はっ!!」
いや、あれは教えるとは言い難いような・・・・。
「とにかくっ、あたしが教えようか?」
「・・・・そうだな。お前の方が付き合いも長いしな。頼め????」
バァンッ!
テーブルが叩かれ、その勢いで箒とセシリアが立ち上がった。ちょっ、顔恐ッ!
「一夏に教えるのは私の役目だ。頼まれたのは私だ」
「あなたは二組でしょうっ!? 敵の施しは受けませんわ」
「あたしは一夏に言ってんの。関係ない人は引っ込んでよ」
「か、関係ならあるぞ。私が一夏にどうしてもと頼まれているのだ」
だから頼んでないって。人の話を聞いてくれ。
「箒。何かあったときはとは言ったが、どうしてもとは言ってないぞ」
「うっ!・・・」
「何だぁ、嘘じゃない」
「・・・」
箒、沈黙。
「一組の代表ですから、一組の人間が教えるのは当然ですわ。あなたこそ、後から出てきて何を図々しいことを??」
「後からじゃないけどね。あたしの方が付き合いは長いんだし」
「それを言うなら私の方が早いぞっ! それに、一夏は何度もうちで食事をしている間柄だ。付き合いはそれなりに深い」
箒、復活。
「付き合いの深さで言ったら鈴の方が深いだろうな。なんせパートナーだからな」
「一夏っ!?」
「一夏さんっ!?」
俺が思ったことを素直に言ったら何故かセシリアと箒が悲鳴を上げた。ついでに周りのクラスメートも。
・・・・・なんで?俺なんか変なこと言った?
「あったり前でしょっ。それにうちで食事ならあたしもあったし」
再び悲鳴を上げる二人+クラスメート。そして勝ち誇ってる鈴。まじで意味分からんし。
「それはそうだろう。お前の家は中華料理屋だったんだからな」
とありのままを喋ると勝ち誇ってた表情をしていた鈴が途端にふてくされた。
そんな鈴に対して箒とセシリア、さらにいえばこの話を聞いていたクラスメイトの皆が何処かほっとしたようだった。
「み、店なのか?」
「あら、そうでしたの。お店なら別に不自然なことは何一つありませんわね」
クラスメイト全員で緊張と緩和を繰り返している。意味分かんない。だれか助けてくれ・・・・・
あ、そうだ。聞きたいことがあったんだ。
「そういえば聞きたかったんだが、何故急に帰国した?」
「あっ・・・・えっと・・それは・・・・」
ほんの少し、本当に一瞬だったが鈴の表情に陰りが差したのを、俺は確かに見た。
・・・・・俺にも言えないことか・・なら仕方ないね。
俺の視線から何かを感じ取ったのか、鈴はやや無理矢理気に調子を戻した。
「そ、それよりさ、今日の放課後って時間空いてる? あるよね。久しぶりだし、どこか行かない? 駅前のファミレスとかさ」
「あそこなら去年閉まった。それならミルクディッパーの方が・・・・いや、そこまで時間はないか」
「そ、そう。・・・じゃ、じゃあさ、学食でもいいからさ。積もる話もあるでしょ?」
「俺からは特にないな。基本受験勉強漬けだったからな。まあ、鈴からあるなら??」
「生憎だが、一夏は私とISの特訓をするのだ。放課後は埋まっている」
・・・・・・・何故に箒が俺の放課後のスケジュールを決めてる?
「そうですわ。クラス対抗戦に向けて特訓が必要ですもの。特にわたくしは専用機持ちですから? ええ、一夏さんの訓練には欠かせない存在なのです」
これを期にとばかりに俺の特訓を持ち出し畳み掛けてきた。
・・・・・おかしい。俺のことのはずなのに、俺をそっちのけで話が進んでいる。おーい、無視しないでくれ?。
「じゃあそれが終わったら行くから、空けといてね。じゃあね、一夏っ!」
俺の返答を待たずに鈴は『ピュー』という効果音が出そうな勢いで片付けに行ってしまった。
・・・・よくあったな?、こんなシチュエーション。
鈴が俺の返答を訊かずに、あたかもそれで約束が成立したようにさっさと行ってしまう、なんてことが。
まあ、俺に迷惑がかかる範囲じゃないからよかったけどね。
「一夏、当然特訓が優先だぞ」
「一夏さん、わたくしたちの有意義な時間も使っているということをお忘れなく」
「・・・・・・頼むから、俺のスケジュールを勝手に決めないでくれるか?」
・・・・だれか助けて・・・・・このセリフ何回目だろ?
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