ダンボール戦機 in DOG DAYS 第三章 戦が終わって
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「実に久しぶりとなるビスコッティ軍の勝利で終わった今回の戦、ここでビスコッティ軍のロラン騎士団長をお呼びして今回の戦についてお伺いしたいのですが」

 

「ロラン殿、いかがかな?」

 

「はい」

 

戦も完全に終わり、ロランはアナウンサーにインタビューを受けていた

 

「それから団長、できれば今回華々しいデビューを果たされました勇者さんと今回の戦に貢献した方々にもお話を伺いたいんですが・・・」

 

「え、あぁ・・・彼等については追々明かしていくということで・・・」

 

シンクやバン達のことを聞かれ慌ててお茶を濁すロラン

 

「まだ謎だと? あぁ、分かりました、ではその分、団長からたっぷりとお話を伺いましょう」

 

「・・・ナイス判断です兄上」

 

ロランの返答に胸をなでおろすエクレール、そして物陰に座り込んでいる約二名の方を向く

 

「帰れない・・・僕はここから帰れない・・・」

 

「あぁ・・・明日Lマガの発売日なのに・・・」

 

シンクは元の世界に帰れないという絶望からなぜか五七五の川柳を作っており、バンは明日発売のLBXマガジンを買えないことに頭を抱えていた

 

「はぁ、情けない・・・こんなヤツ等がレオ閣下を倒したとは・・・」

 

エクレールはそんなひどい有様のシンクとバンに呆れていた

 

「というかお前は随分落ち着いているな」

 

そしてエクレールはフロニャルドから帰れないという状況に陥ってもいまだ毅然としているジンに問う

 

「僕だって驚いてはいる、だがあそこまでではないだけさ」

 

それにジンは腕を組みながら答えた

 

「はぁ、あいつ等もお前のように落ち着いてほしいものだ・・・」

 

エクレールは本日何度目か判らない溜め息をついた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、インタビュー等が終わり、シンク達はエクレールの案内で城下町へと足を運んでいた

 

「はぁ、やっぱりだめか・・・」

 

シンクは携帯を頭上に掲げ左右に振ってアンテナを立たせようとしていたがディスプレイに移るのは県外の二文字だった

 

「まぁ異世界だからね」

 

「まったく、覚悟もないのに召喚に応じたりするからだ」

 

「覚悟っ、覚悟も何もこのワンコが! 踊り場から降りようとしたら、落とし穴を仕掛けて!」

 

エクレールがそう言うとシンクは思い出したようにここまで付いてきた犬を指差して叫んだ

 

「落とし穴?タツマキが?」

 

「というか踊り場から降りたのか」

 

バンがシンクの仰天行動に軽く呆れているとタツマキと呼ばれた犬が地面に紋章を出現させる

 

「なになに・・・注意、これは勇者召喚です、召喚されると帰れません。 拒否する場合はこの紋章を踏まないで下さい」

 

エクレールがそれを読みそれを聞いたシンクはフルフルと振るえ

 

「こんなん判るかーい!」

 

エクレールに叫びながら言い寄った

 

「知るか!私に言うな!」

 

「これは詐欺の部類に入るな・・・」

 

ジンは地面の紋章を見てそう呟いていた

 

「まぁ、お前達を元の世界に帰す方法は学院組が調査中だ、直に判明する」

 

「それならいいけど・・・」

 

エクレールの言葉にシンクは渋々納得した

 

「とりあえず・・・まぁその、なんだ、仮にも貴様らは賓客扱いだ、ここでの暮らしに不自由はさせん」

 

そう言うとエクレールはシンク達に袋を手渡す、その中には硬貨が入っていた

 

「これお金?いや、流石にお金は・・・」

 

シンクはそう言って袋を返そうとするが

 

「これは戦場での活躍報奨金だ、受け取りを拒否すれば財務の担当者が青ざめる」

 

「う、わかったよ」

 

「ありがとな、エクレール」

 

「礼には及ばん」

 

「あれ?バンの量、僕より多くない?」

 

「言っただろう、活躍報奨金だと、こいつは手加減していただいたとはいえレオ閣下を倒したんだ、その分量も多くなるのも当たり前だ」

 

「ふぅん・・・僕も結構活躍したと思うんだけどなぁ・・・」

 

シンクは少し不満そうに呟いた

 

「兵士たちも楽しいから戦に参加しているものも多いだろうが報奨金の金額は自分がどれだけ戦に貢献できたかの大切な目安だ。 少なくとも参加費分は取り戻したいと言うのが本音だろうしな」

 

「え!? 参加費?」

 

「そんなの必要なんだ」

 

それからエクレールによるこの世界の戦についての説明が始まった

 

フロニャルドの戦は言わば国と国とのイベントのようなもので戦の興行を行う際、興行者が参加者から参加費用を集めそれを両国がそれぞれに計上し、戦を行った結果戦勝国が約六割、敗戦国が残りの約四割を受け取るという仕組みになっている

これは大陸協定で決められた基本の割り当てで、分配した費用のうち最低でも半分は参加した兵士の交渉金に当てられ、残り半分が戦興行の国益に当てられる

病院を建てたり、砦を作ったり、公務のために働くものを養ったりなど国を守るために使われるようだ

そして戦によって怪我等が無いのは戦場指定地に眠る戦災守護のフロニャ力のおかげで元々、守護力の強いところに国や街、砦ができている

逆に街道や山野は危険な場所が多く、大型野生動物の危険度も高い

しかし戦のために移動する隊列に加われば逆に安全な旅ができると言う利点もあるようだ

 

「・・・とまぁこんなところだ」

 

「なるほど・・・」

 

「すごいんだな、フロニャルドって」

 

エクレールの説明が終わりシンクとバンは関心していた

 

「一通り説明したところでとりあえずリコのところへ向かうぞ」

 

「リコ?」

 

「学院組の者だ、案外なにか進展があったかもしれない」

 

「判った、それじゃあそのリコって人の所に行こう」

 

そしてシンク達は再びエクレールの案内で歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ないであります!」

 

シンク達がビスコッティ城内の図書室のような場所に訪れるや否やオレンジ色の髪をした少女が頭を下げてきた

 

「このリコッタ・エルマール、勇者様たちがご帰還できる方法を誠心誠意探していたでありますが力及ばず未だなんとも、どうにもこうにも・・・」

 

「落ち着け、リコ。 私もこいつ等もそんなに早く見つかるとは思ってない」

 

「そうだよ、俺達が元の世界に帰る方法を探してくれるだけでありがたいから」

 

何度も頭を下げるリコッタを宥めるエクレールとバン

 

「ほんとうでありますか・・・?」

 

「あぁ、二人もそうだろ?」

 

「うん、探してくれるだけでうれしいよ」

 

シンクの言葉にジンも頷いた

 

「そういえば期限についてなにか言ってたな、いつまでだ?」

 

話が落ち着いたところでエクレールがシンクに問う

 

「えぇっと、期限で言うと春休み残り三日の前日には家にいないといけないから・・・あと16日かな」

 

「俺もそのぐらいだな」

 

「僕もそれで構わない」

 

「16日・・・それなら希望が湧いてきたであります!」

 

シンク達の言葉にパァっと明るくなるリコッタ

 

「それじゃあよろしくな、俺は山野バン」

 

「はい、私はリコッタ・エルマールであります!よろしくであります!」

 

バンとリコッタはお互い名乗って握手をした

 

「あ、ねぇ、召喚された穴のところ行ったら電波通ったりしないかな?」

 

そこにシンクが携帯を見せながらリコッタに尋ねる

 

「電波・・・?」

 

その言葉にリコッタは首を傾げ、シンクは電波について説明した

するとなんとかなりそうだという答えが返ってきた為、彼等はシンクが召喚され、バン達が倒れていた場所へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だめです、二人のCCM反応見つかりません」

 

ここはタイニーオービット社の地下に設立されたかつてのシーカー本部、そこでは消えたバンとジンの行方を研究員達が必死に追っていた

 

「もう一度調べるんだ、なんとしてでも見つけ出してくれ」

 

「はい!」

 

「拓也さん!」

 

そこに二人の少年がやってきた

 

「郷田、仙道!」

 

アミがやってきた少年達の名を呼ぶ

 

「聞いたぜ、バンがいなくなったって」

 

長ランに下駄という昭和の番長を連想させる格好をしているこの少年は「郷田ハンゾウ」、かつてバン達と共にシーカーとして戦った仲間である

 

「何で俺が・・・」

 

その郷田に無理やり連れてこられたこの少年は「仙道ダイキ」、郷田と同じく共に戦った仲間だ

 

「仲間が消えたんだ、当たり前だろうが!」

 

「ふん、俺は仲間なんて一度も思ったことないがな」

 

「なんだと!?」

 

・・・本人は仲間とは認めていないが

 

「もう、二人とも喧嘩してる場合じゃないでしょ!」

 

「こいつ等は相変わらずだな」

 

言い争いを始める二人をアミが止め、カズは呆れていた

 

「・・・!社長!バン君とジン君のCCM反応キャッチしました!」

 

「なに、どこだ!?」

 

そこに研究員の一人、「結城研介」が二人のCCM反応を見つけそう言う、それに拓也だけでなくその場にいた者全てが反応した

 

「場所は・・・だめです、特定できません」

 

「でも反応があったってことは二人とも無事ってことね、よかった」

 

アミの言葉で歓喜の声を上げる一同

 

「結城君、連絡は取れるか?」

 

「やってみます・・・」

 

結城が二人に連絡を取ろうとしているとアミのCCMに着信が入る

 

「もうっ、なによこんな時に・・・バン!?」

 

アミのCCMに電話してきたのは絶賛捜索中であったバンだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさーん、準備できたでありますよ」

 

時間は少し戻ってフロニャルド、バン達はバンとジンが倒れていてシンクが召喚された浮遊島へとやってきた

 

「そういえばリコッタ、それなに?」

 

バンはリコが持ってきたでかいアンテナが付いている機械を見てそう聞いた

 

「放送で使うフロニャ周波を増強する機会であります、自分が五歳のときに発明したものでありますが今は大陸中で使われているのでありますよ」

 

「ご、五歳で作ったの!?」

 

「はいであります!」

 

バンはもちろんシンクやジンもその事実に驚きを隠せなかった

 

「すごいよ!リコッタって天才なんだ!」

 

「そ、そんな〜、照れるでありますよ」

 

バンにそう言われたリコッタは頬を指で掻きながら答えた

 

「それでは、起動であります!」

 

リコッタはレバーを動かす、すると機械のアンテナが光りだす

 

「では、皆さん」

 

「うん・・・」

 

そう言ってシンクは携帯電話、バンとジンはCCMを開く

 

「お?おぉ!アンテナが立ってる!」

 

「ホントだ、すげぇ!」

 

シンクとバンはアンテナが立ったことに感激した

 

「すごい、すごいよリコ!」

 

「うん!ありがとうリコッタ!」

 

「ありがとうであります、感激であります!」

 

興奮するシンクとバンにリコッタは敬礼して答えた

 

「それじゃあ早速・・・」

 

シンクは早速携帯のアドレス帳を開き電話をかける

 

「あ、ベッキー?僕、シンクだけど・・・」

 

「じゃあ俺も・・・」

 

バンもCCMのアドレス帳を開く

 

「うーん、誰にかければいいんだ?」

 

「まずはアミさんじゃないかな、突然いなくなったから」

 

「そうだな、よし・・・」

 

バンはアドレス帳からアミの名前を選び電話をかける

 

「・・・・・・・」

 

バンはCCMを耳に当て呼び出し音を聞きながらアミが出るのを待つ、すると

 

『バン?バンなの!?』

 

CCMの向こうから慌てたアミの声が聞こえた

 

「うん、俺だよ」

 

『良かった、みんな!バンと繋がったわ!』

 

アミがそう言うとその向こうで大勢の喜びの声が聞こえた

 

『バン!無事か!?』

 

「カズもそこにいるのか」

 

『バン、少し待ってて』

 

「あ、あぁ」

 

アミにそう言われしばらく待機するバン、すると

 

『バン、聞こえるか?』

 

「拓也さん!?」

 

CCMから聞こえた拓也の声に驚くバン

 

『俺達もいるぜ!』

 

『ふん・・・』

 

「郷田!仙道!」

 

更に郷田と仙道の声まで聞こえてまた驚くバン

 

『バン、ジンは一緒にいるか?』

 

「はい」

 

拓也に聞かれバンはジンにCCMを渡す

 

「ジンです」

 

『よかった、二人とも一緒か。 ジン、二人に話したいからハンズフリーモードにしてくれ』

 

そう言われたジンはバンにCCMを渡し、ハンズフリーモードにするよう促した

 

「やりました」

 

『よし、それじゃあまず二人は今どこにいるか教えてくれ』

 

「えぇっと、その・・・」

 

その質問に二人は顔を合わせる

 

『どうしたの?』

 

「・・・信じられないかもしれませんが僕達、異世界に来てしまったようです」

 

『・・・・・え?』

 

そんなことを言われ、もちろんCCMの向こうは唖然とする

 

「本当なんです、俺達、気が付いたら全然知らない場所にいて、そこの人達に話を聞いたらここはフロニャルドっていう地球とは別の世界みたいなんです」

 

『まぁこんな状況で冗談を言うわけないし、信じてみましょう』

 

アミ達は半信半疑ではあるがバン達の言っていることを信じることにした

 

『それで、帰れる方法はあるのか?』

 

「それが帰る方法は無いみたいなんです」

 

『なに!?』

 

その返事に郷田が驚きの声を上げる

 

「で、でもこっちの人達が帰る方法を探してくれるからきっと大丈夫だよ」

 

『・・・判った、二人をこちらに戻す方法はこちらでも探してみる、二人もなにかあったらまた連絡してくれ』

 

「はい」

 

「判りました」

 

『それじゃあ気をつけるんだぞ』

 

そう言って拓也は電話を切った

 

「ふぅ、それじゃあ母さんにも連絡しとかないと」

 

そしてバンは次に母親に電話をかけた

 

『はい、山野です』

 

「あ、母さん?」

 

『バン?どうしたの』

 

「それが・・・しばらく家に帰れなくなっちゃって」

 

『え?どういうこと』

 

「それは・・・」

 

流石に母親に異世界にいるから帰れないとは言えずどうするべきか考えていると

 

「お久しぶりです、お母様」

 

ジンがバンのCCMに話しかける

 

『あらジン君、お久しぶり。 バンと一緒なの?』

 

「はい、実はバン君には僕の別荘に招待させてもらってるんです」

 

『あら、そうなの?』

 

「う、うんそうなんだ。 それでその場所は電波が通りにくい場所だからしばらく連絡取れないかもしれないんだ」

 

『ふーん、判ったわ、バン、あんまりジン君のお家に迷惑かけちゃだめよ』

 

「わかってるよ」

 

『それじゃあお母さんこれから出かけるから切るわよ』

 

「うん、それじゃあ」

 

そう言ってバンは電話を切った

 

「ジン、ありがとうな」

 

「いや、気にしないでくれ。 爺の方には僕が話をつけておく」

 

そしてジンは執事に電話をかける

 

「・・・爺」

 

『坊ちゃま、どうかしましたか?』

 

「しばらく帰れなくなった、留守を頼む」

 

『かしこまりました』

 

「それと、バン君のお母様から電話があったらバン君がそっちに行っているということにしてくれないか」

 

『はい、かしこまりました』

 

「すまないな」

 

『いえ、爺はいつでも坊ちゃまの味方です』

 

「ありがとう、それでは頼んだぞ」

 

そう言ってジンも電話を切った

 

「これでひとまずは安心だな」

 

「あぁ」

 

電話が終わって一息付いていると

 

「だからだめだってー!」

 

「お願いします勇者様ー!」

 

リコッタがシンクを追いかけていた

 

「・・・なにやってるんだろ」

 

「さぁ」

 

気になり二人はそちらに向かう

 

「あ、バン助けて!」

 

そう言いながらシンクはバンの後ろに隠れる

 

「わっ、どうしたんだ?」

 

「それがリコが僕の携帯を分解させてくれって」

 

「ちゃんと元に戻すであります、だから貸して下さいであります!」

 

「だからだめだって」

 

そんな二人のやり取り見ていたバンは

 

「じゃあ俺のCCMを貸してあげるよ」

 

その言葉にリコッタは目を輝かせた

 

「本当でありますか!?」

 

「あぁ、その代わりちゃんと俺達が帰る方法ちゃんと見つけてくれよ」

 

「もちろんであります!」

 

そしてバンは自分のCCMをリコッタに渡す、受け取ったリコッタは尻尾を大きく振って喜んでいた

 

「良いのかい、バン君」

 

「あぁ、拓也さんにはジンのを使わせてもらえばいいし、この世界じゃLBXも動かせないみたいだしな」

 

バンはイプシロンを取り出しそう言った

 

「そういえばLBXのこといろいろ聞きたいんだけどいいかな?」

 

そこにシンクがたずねてきた

 

「えるびーえっくす?それってなんでありますか?」

 

リコッタも話しに食いつき聞いてくる

 

「あぁ、それじゃあリコッタにも教えるよ、エクレールは・・・電話中か」

 

エクレールの方を見ると誰かと通話していた

 

「じゃあまずLBXについて教えるな」

 

そこからバンのLBXの説明が始まった

 

LBX、それはホビー用小型ロボットでCCMで操作することで動かすことの出来る画期的なおもちゃである

しかし、その性能の高さから危険なおもちゃとして販売中止に追い込まれてしまった

そんなとき強化ダンボールが開発され、その中で戦わせることで安全に遊ぶことが出来るようになり再び発売され、子供達に大ブームとなっていた

ちなみにLBXの正式名称は「Little(リトル) Battler(バトラー) eXperience(エクスペリエンス)」である

LBXはコアスケルトンにパーツを装着することで自由なパーツやフレームの換装が可能で武器も豊富にある

一般的には市販のものが基本だがバンとジンが持っている物のように一点ものも存在する

 

「・・・といったとこかな」

 

「へぇ、奥が深いんだね、LBXって」

 

「感動したであります!」

 

バンの説明にシンクとリコッタは感心していた

 

「それでLBXを最初に作ったのは俺の父さんなんだ」

 

「えー!ホント!?」

 

「うん、このイプシロンを作ったのも父さんなんだ」

 

「バンさんのお父さんはすごい人であります」

 

「ありがとう、俺の自慢の父さんだよ」

 

バンは自分の父親のことを褒められ少し照れながらそう言った

 

「でもそんなにすごいものなら流石に僕も知ってるはずなんだけどな・・・」

 

「うーん、少なくとも2046年に開発された強化ダンボールは知ってると思ったんだけど・・・」

 

「・・・・・え?」

 

バンの言葉に違和感を覚えるシンク

 

「バン、今なんて言った?」

 

「え?少なくとも2046年に開発された・・・」

 

「に、2046年ーー!?」

 

「え!?ど、どうしたんだ?」

 

「だって僕のいた世界ではまだ2011年だよ!?」

 

「2011年!?」

 

今度はシンクの言葉にバンが驚く

 

「・・・どうやら僕達とシンク君は世界は同じでも年号が違うみたいだね」

 

そこにジンがこの会話の要点を述べた

 

「それじゃあ知らないわけだよ、何十年も前なんだもの」

 

「うん、それにまさかバン達が未来の人だなんて」

 

「あぁ、ってことはシンクって実は大先輩ってことになるのか」

 

衝撃の事実に軽く混乱しつつ納得する二人

 

「・・・ってことは勇者様とバンさん達とでは帰る世界が違うんでありますか!?」

 

「うん、そう言うことになるね」

 

「大変であります!勇者様とバンさん達、別々の帰る方法を探さないといけなくなったであります!!」

 

「「あ・・・」」

 

リコッタの言葉に固まる二人

 

「と、とにかく落ち着いてリコ」

 

「そうだ、まだ時間はあるんだからあせらなくていいよ」

 

その後もしばらくリコッタを宥めるシンクとバンであった

 

 

 

 

 

「落ち着いた?」

 

「はいであります」

 

「はは、それは心強い!」

 

リコッタも落ち着いたところで通話中のエクレールがそう言った

 

「エクレ、何か朗報が?」

 

「ダルキアン卿が戻ってこられる!」

 

リコッタの疑問にエクレールは興奮気味で答える

 

「本当でありますか?ならユッキーも一緒でありますね」

 

「あぁ!」

 

「ねぇエクレ、それ誰?」

 

なんのことかわからないシンクはエクレールに聞く、バンとジンもそれに頷く

 

「ビスコッティ最強の騎士、ダルキアン卿と我らの友人ユキカゼだ」

 

「二人ともとっても頼りになるであります」

 

「へぇ」

 

「どんな人だろう」

 

シンクとバンはその二人に会うのを楽しみにした

そしてその後シンク達は再び街の観光を再開した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「到着であります」

 

あたりも暗くなり、フィリアンノ城に戻ってきたバン達

 

「もうこんなに暗くなってたんだ、そういえばミルヒのコンサートってあとどのくらいなんだ?」

 

バンはコンサートの時間が気になりエクレールに聞く

 

「まだしばらくある、だからその前にお前等は風呂にでも入ってこい、姫様のコンサートに汗臭い姿でこられても困る」

 

「風呂、ってどこで?」

 

「案内図もありますし、中の人間に聞けばわかるでありますよ」

 

「わかった、あ、じゃあその前にLBXをしまっておきたいんだけど」

 

そこでバンはイプシロンを取り出しながらそう言った、戦の後からずっとポケットの中に入れていたのだ

 

「僕もそうしたいんだが」

 

「ならお前達の部屋に案内する、二人は付いてこい」

 

「わかった、シンク、先に風呂行っててくれ」

 

「うん、判った」

 

そしてバン達はシンクと分かれて行った

 

 

 

 

 

「ここが今日からお前が住む部屋だ」

 

「おぉ」

 

エクレールに連れられた部屋は騎士団が暮らす寮みたいな場所だった

 

「お前の部屋は隣だ」

 

「判った、それじゃあバン君、また後で」

 

「あぁ、後でな」

 

エクレールとジンが部屋から出て行った

そしてバンはイプシロンを見つめる

 

「まさかLBXと合体するなんて、しかもそれで戦ったんだよな・・・」

 

バンは今日の出来事を思い出していた、イプシロンと合体したこと、今日であった人達のこと、この世界のこと、戦のこと・・・どれもバンにとって印象深いものだった

 

「・・・でも、いつかは帰らないとな」

 

そう、いくら楽しくても、バンは違う世界の人間。 いつかは元の世界に帰らなければならないのだ

 

「あと長くて16日・・・それまでにこの世界でたくさん思い出を作るのもいいかもしれないな」

 

そういう考えもいいのかもしれない、そう思ったバンは鞄にイプシロンを入れて意気込んだ

 

「よーし、そうと決まれば明日から・・・」

 

『我ら!ガレット獅子団領』

 

『ガウ様直属秘密諜報部隊』

 

『ジェノワーズ!』

 

すると外からそんな声が聞こえた

 

「なんだ?」

 

バンは気になり外を見る、すると宙に浮かんでいるモニターに三人の少女と捕らえられたミルヒが写りだされていた

 

「これって・・・」

 

「バン!」

 

唖然としているとエクレールが扉を勢い良く開けて入ってきた

 

「エクレール!、これってどういう・・・」

 

「話は後だ、とにかく着いてこい!」

 

そう言ってエクレールは走り出す、その後ろにはジンもいた

わけが判らなかったバンだがとりあえず二人に付いていくことにした

 

 

 

 

 

「姫様!」

 

場所は変わってモニターに映し出されている場所、そこにシンクが慌てて服を着ながら出てきた

 

「ビスコッティの勇者殿、あなたの大事な姫様は我々がさらわせていただきます」

 

「こちらはミオン砦で待ってるからなあ」

 

「姫様がコンサートで歌われる時間まであと一刻半、無事助けにこられますか?」

 

それを聞いたシンクはジェノワーズの三人に向かって叫ぶ

 

「どうして姫様をさらう!」

 

「ガレット獅子団の王子である、ガウル様は勇者であるあなたと一騎打ちを所望です」

 

「それまで、姫様はこちらで預からさせてもらうで」

 

「さて、どうします?ビスコッティの勇者さん」

 

ジュノワーズの三人にそう言われたシンクは迷うことなく

 

「受けてたつに決まってる! 僕は姫様に呼んでもらったビスコッティの勇者シンクだ!」

 

そう返した

 

「要人誘拐奪還戦成立ですね」

 

「ミオン砦で待ってるでー」

 

「それでは」

 

返事を聞いたジュノワーズはミルヒを抱きかかえて飛び去って行った

そこにエクレールとバン、そしてジンが駆けつけた

 

「勇者!」

 

「シンク!」

 

「みんな!大変なんだ、姫様が・・・」

 

駆けつけた三人に状況を説明しようとすると

 

「こんのぉ、ドアホがあぁぁぁぁぁあ!」

 

エクレールにとび蹴りで柱まで吹き飛ばされてしまった

 

「えぇ!?ちょっ、どうしたんだよエクレール!」

 

「痛いよ!なにすんの!?」

 

「それはこっちの台詞だ!勝手に宣戦布告を受け入れてどうゆうつもりだ!」

 

その言葉にシンクとバンは唖然とする

 

「いや、だって姫様捕まってたし・・・」

 

「というかあの状況で断ることってできたのか?」

 

「当たり前だ!大陸協定に基づいているとあいつ等も言っていただろう!」

 

「うそぉ!」

 

その事実に驚くシンク、無論バンとジンも驚いていた

 

「とにかく早く追おう、姫様のコンサートまで時間もないのだろう」

 

そこでジンがそう提案した

 

「あぁ、受けてしまったものを今責めてもしかたないな、セルクルで追うぞ」

 

「うん!」

 

「わかった!」

 

四人は頷き合うとセルクル小屋に向かって走り出した

 

 

 

 

 

「申し訳ないであります、今出せるセルクルは三匹しかいないのであります」

 

セルクル小屋に着くとリコッタが既にセルクルを用意していたのだがそこにいたのは三匹、リコッタの分を合わせても二匹足りないのであった

 

「まぁ急だったからしょうがないといえばしょうがないな」

 

エクレールは頭を掻きながらそう言う

 

「どうする?」

 

シンクは心配そうにそう聞く、するとバンとジンは頷き合う

 

「俺達は後から向かうよ」

 

「バン?」

 

「シンク君は直々に指名されている、エクレールとリコッタは少なくとも僕達より砦の内層に詳しい。 先に行くなら君達の方が向いている」

 

ジンにそう言われ顔を合わせるシンク達

 

「・・・判った、僕達で先に行ってるよ」

 

「お前達は兄上の所に行くといい、騎士団のセルクルが余っているかもしれないからな」

 

「判った、それじゃあ頼んだぞ」

 

そう言うとバンとジンはロランの下に向かい、シンク達はセルクルに乗り、ミオン砦へ向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロランさん!」

 

「バン殿にジン殿、どうかしたのか」

 

バンは息を切らしながらロランに頼んだ

 

「俺達に・・・セルクルを貸してください!」

 

ロランはその言葉に少し驚き、そして頷いた

 

「判った、どの道二人のセルクルも用意するつもりだったんだ。 二人とも、こっちへ」

 

ロランに促されたどり着いた場所には二匹のセルクルがいた、一匹は純白の、もう一匹は濃い紫のセルクルだった

 

「この二匹が君達のセルクルだ、好きな方を選んでくれ」

 

ロランがそう言うとバンは真っ直ぐ純白のセルクルに向かった

 

「白い・・・セルクル・・・」

 

その純白のセルクルにバンはなぜか惹かれていた

 

「・・・俺、こいつにします」

 

「なら、僕はこっちに」

 

「うん、それじゃあ姫様は頼んだよ」

 

「「はい!」」

 

ロランの言葉にバンとジンは力強く頷いた

そしてバンはその純白のセルクルに触れて

 

「・・・こいつの名前、俺がつけていいですか」

 

「あぁ、それは構わないが」

 

それを聞いたバンは純白のセルクルを見ながら

 

「それじゃあ、お前の名前は・・・アキレスだ!」

 

そう名付けられたセルクルは大きく翼を広げながら鳴いた

 

「なら、君の名前は、エンペラー、といったところかな」

 

ジンも自身のセルクルに名前を付け、名付けられたセルクルは目を瞑り、小さく頷いた

 

「よし、行こう!ジン」

 

「あぁ、エンペラー、出撃だ!」

 

そして二人はセルクルに乗り勢い良く飛び出した

 

「いっけぇ! アキレス!!」

 

バンにそう言われ、純白のセルクル、いや、アキレスは咆えるように鳴くと猛スピードで駆けていった

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第三章
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ダンボール戦機 DOG DAYS LBX 

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