その人は何処へいった? 1.ある迷子に対する語り
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―――ある例え話をしよう

 

 

貴方は『平行世界』というものを信じるだろうか。

よく馴染み深い人もいるだろう。そこそこメジャーな話だからね。

 

並列世界。

 

確立分岐世界。

 

IFの話。

 

二番目の魔法。

 

シュレディンガーの箱……

 

あぁ。ここでは世界の話だから猫では無く、それを覆う箱なのがみそだね。

ま、言い方は無数にあるが所謂「此処」とは違う異世界のことだ。

 

 

ここで私はあえてその世界を『本』に例えるとしよう。

世界を本と例えるなら、そこに住む住人は物語の登場人物達という事になる。

その中にはいわゆる主人公と呼ばれる人物もいるだろう。

 

ここでの異世界とは、つまり本の隣に仕舞われている本の事を指す。

本は一冊で一つの世界として独立していて、原則本から本に登場人物達は移動できない。

……まぁ偶に表紙をぶち抜いて移動する爺さんもいるらしいがね。

 

おっと、話が逸れたな。

 

まぁ何が言いたいかというとだね。

世界を本と言い換えるならば、その本の数はそれこそ無限に存在している、という事だ。

 

もちろんその本にもジャンルみたいなものがある。

恋愛。ファンタジー。伝奇。推理。冒険。戦記。18歳未満のお断りなナンチャラ書院的なものまで。

それらジャンルは区分化できないものを含めると、これもまた無限に存在する。

 

まだあるぞ。

その本の読み手がその本の世界観を基に独自に物語を紡いでいく。

そして新たな本が完成するわけだ。これはもう数えようがないな。

何しろふとその読み手の心に浮かび、紡いだだけで本として現出するのだから。

管理する方の身にもなって欲しいものだ。本がポイポイ出来るもんだから仕事が終わらない。

 

 

…ん?何?

 

さっきから本だの管理だの具体的だなって?

 

あとこの首が痛くなるような本棚の森はなんだ??

 

……ここまで話したら、普通察しないか?

それともただ認めたくないだけ?…まあいいや、その気持ちも分からないではないからね。

 

ここはね。図書館だよ。と・しょ・か・ん。

貸し出しはしていないけどね。

そしてこの四方八方無限の彼方に続く本棚は世界を収納しているのさ。

 

そしてそれを私たちは管理している。言うなれば私は司書だね。

「あっち」の書架群管理責任者。よろしく。

 

…違う。「厚木」じゃない、「あっち」だ。

 

どういう意味かって?

そんな複雑な事情がある訳じゃないけどね。

 

最初さ。本棚にちゃんと番号を振っていたわけよ。

けどねー、本棚の数が急にどんどん増えちゃってさ。

めんどくさくなった館長が「君はこっち。あなたはあっち。お前はそっちら辺。」と言い出してね。

それが名前になった。

 

しょうがないじゃん。無限に番号なんかつけれないよ。

ま、それは置いといて。

そろそろ聞いて良いかな?

 

 

 

―――君は、誰?

 

 

 

 

説明
なんてことはない。

ただ、迷子が家を探すおはなし。


―――帰れるかどうかは、また別にして。



※本作は小説投稿サイト『ハーメルン』様でも投稿しています。
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