超次元ゲイムネプテューヌ Original Generation Re:master 第4話 |
波乱のクエストを終えて数日が経った頃。
本日は大陸プラネテューヌとラステイションが接近する日であり、大陸を移動する手続きを行うために一同は協会を訪れていた。
「協会っていつ見ても人少ないね。綺麗なトコなのに……。エコ?」
果たして従業員を少なくするのはエコなのかな? とか一同は思ったけど敢えて口に出さなかった。
「モンスターの所為よ、人を襲うから。まあ、プラネテューヌはそこら辺は顕著よね……。
他の大陸よりも疲弊が激しいっていうか……」
アイエフはキョロキョロと辺りを見回す。
都市の中心部である場所だが、所々モンスターの襲撃の跡が見られた。
プラネテューヌは何故か他の大陸よりもモンスターが凶暴なのである。
「それよりここで何をするの?」
「えーと、ここで渡島目的を話すです。そうすれば接岸場の方にも話を通してくれるです」
「分かった! ちょっと行ってくるね」
「ちょっと待て。俺も行く」
ネプテューヌが一人駆けていこうとするところで、テラは引き留める。
「別に一人で大丈夫だよ〜」
「いや……なんか、不安だ」
「信用されてない!?」
ガーン、と効果音が入りそうなくらいにショックを受けるネプテューヌ。
その件に関しては二人はノーコメントだ。
☆ ☆ ☆
「すいませーん! 他の大陸に渡ったりしたいんだけど、OKですか?」
アバウトである。
ネプテューヌの声を聞いて奥の方から若い男性が顔を見せる。
「はいはい。大陸移動の手続きですね? 他の大陸に渡る目的と期間を教えていただけますか?」
「期間は、よく分かんない。
目的は……あ、モンスター退治! 世界中回ってモンスターと戦うの!」
「まだ若いのに、見上げた根性ですねぇ。
分かりました……長期、モンスターに関する被災地の支援が目的、と」
男性はさらさらと手元の書類に情報を書き留めていく。
「それともさっくばらんに慈善事業とか書いておきましょうか? 履歴書にも書けますよ?」
「どうでもいい。アンタのしたいように書いてくれ」
テラは鬱陶しそうに声を上げる。
「なんでもいいから早く! パーティが待ってるの!!」
「なるほど。お友達が一緒でしたか。
では……ここに移動者のお名前を。
……はい、終了です。お疲れさまでした」
男性は書類を持って奥に行こうとする。
「待って待って! 私、協会初めてなんだ! ここってどんなトコ?」
ネプテューヌの言葉に男性は一瞬戸惑ったような顔をしたがすぐに元に戻り、にこりと微笑む。
「協会初心者の方ですか。
分かりました、では我々の起源や成り立ちについて少し……」
男性はゴホンと咳払いをする。
「……そもそも協会とは、遥か昔に女神様がご自身でお作りになられた唯一の組織です。
大陸の管理の一切を任されているのですよ。
一方で信者を募る広報活動なども行っております。
おおまかですが、お分かり頂けましたでしょうか?」
ながながとした説明を終えて男性は一息吐く。
「んー……目新しい情報はないかな。
ダメかと思ってたけど、割と普通に働いてる人達なんだ」
「大陸によってモノは違いますね。中にはダメな協会もあるでしょうし……。
今はあまり悪口も言えませんが……」
「どういう意味だ?」
「いえ、こちらの話です」
テラはその返答に妙な感じを覚えつつも、話に耳を傾ける。
「そっか。ダメなところもあるんだ、人間と一緒だね!」
「哲学的な返しですね……。嫌いじゃないですよ?」
その言葉に、テラは顔を青ざめてネプテューヌを庇うように前に出る。
状況を掴めていないネプテューヌはポカン、と口を開けている。
「アンタ……まさか……」
「嫌ですねぇ、そう言う意味じゃないですよ。
さ、そろそろお友達のところへ戻られては? 待たせたままなのでしょう?」
「分かった、ありがとう!」
ネプテューヌはくるりと踵を帰して出口へ向かう。
テラはチラチラと男性を見つつ、足早に向かうネプテューヌの後を追った。
「ネプテューヌ……なかなか、いい名前ですねぇ」
☆ ☆ ☆
「おぉー! なんか大地が割れてる!?
まさかこれが、神々の争いの傷痕ってヤツなんだね!?
きっと遥か昔にここで世界の覇権を巡っての光と闇の争いがあったんだーー!」
ネプテューヌ超元気。
「何言ってんの、あの娘」
「何とかは高いところが好き……ってか」
「すみませんです。ねぷねぷはすこし記憶が抜け落ちちゃってるから根気強く、付き合ってあげてほしいです」
コンパは必死にフォローに回る。
「あー、そう言えばそんな仕様だったわね。看護学校生のコンパが言うと説得力あるわ」
アイエフは腕組みしてうんうんと頷く。
「そういえば、みんなは何時から知り合ったんだ?」
テラは何となく持っていた疑問をぶつける。
別に知らなければ知らないでいいのだが、このくらいの付き合いになると世間話とか、雑談とか言われるとこのくらいしか思いつかないのである。
「ほんの数日前です。
玄関の前に刺さってたねぷねぷを引き抜いたら傷だらけだったので看病したのがきっかけです」
アイエフは「はぁ!?」とか言って唖然とする。
「刺さってた!? 引き抜いた??
……ああ、あの子は土から生えてきたのね。信じていいのよね?」
「信じていいです。
でも、地面じゃなくて空から降ってきて刺さったです……アイエフさん」
地面から人間が生まれることはなく、もし地面から生まれてきたらそれはもう人間ではない。
「ん? あー……なんか地味にさん付けよね。
いいわよ、コンパならちゃん付けでも。アンタは特別。
でも……」
アイエフはそう言って接岸場の事故防止のために取り付けられた柵から身を乗りだして下方をのぞき込んでいる少女、ネプテューヌに目を向けた。
「あいちゃーん、こんぱー、テラさーん、早く来てよー!
大陸の端っこ、いい眺めだよー? あ、もしかして怖い? 怖いんだー!」
そう言ってネプテューヌはアハハーとか笑う。
「何て言うか……」
「あの子にちゃん付けで呼ばれるのは同列に見られているみたいで嫌だわ」
「……」
その言葉にコンパは困った顔をして、最終的に苦笑いでやり過ごすことにした。
「えーと、ここは接岸場と言って大陸と大陸が時々くっつく場所なんです」
「だから別に一つの大陸が割れてるワケじゃないぞ?」
「そーなんだ。でもコレ、どうやって渡るの?
ジャンプ? 『イヤッフー!』とか言った方がいいかな?」
「繋ぎに赤い帽子でもかぶれば、ねぷ子なら飛べるかもね。
そうじゃなくて、跳ね橋があるのよ」
ちなみに赤い帽子のおじさんが飛ぶのは落とし穴とか、進行に邪魔な土管であり、大陸間をジャンプするわけではない。
「ま、最近は何かと物騒だからな。跳ね橋を渡るのにも許可が必要で、さっき協会に行ったのはそのためだ」
「そーなんだー」
なんてコトを話しているとゴゴン、と地響きが鳴り、跳ね橋が重厚な音を立てて降ろされる。
眼前に広がるのは、黒の大地である。
☆ ☆ ☆
「うわぁー! なんか鋼鉄島―って感じ?
ここは何て大陸なの?」
「ここは重厚なる黒の大地『ラステイション』だ。
つーか前に大陸情報確認したろ、もう忘れたのか?」
テラはハァ、と溜息を吐く。
「ここはブラックハート様が治める大陸よ。
見ての通り、重工業が盛んで工場なんかが多いの」
「こういう、ディティールっていうの?
大陸ごとに建物や雰囲気が違うのってやっぱり女神様のシュミ?」
「違うと思うわ。守護するのは確かに女神様だけど、文明を築くのはあくまで人間だもの」
その答えに納得いかないのか、ネプテューヌは口を尖らせる。
「あいちゃんは夢がないねー。こんぱはどう思う?」
「えっと……工場とか煙突とかいっぱいで、産業革命って感じがするです。
ちょっとマニアックかもです」
アイエフは簡単な情報集めが終わったのかパタンと携帯を閉じる。
「まあ、女の子が食いつきそうな感じじゃないかなー。私はわりと好きだけど」
「へぇ、アイエフってこういう感じの好きなのか?」
「まあね。悪い?」
「別に悪くはないけど……」
アイエフが若干拗ねたような顔をしたのでテラはその表情が『あ、可愛い』とか思ったのだが、他の二人から純粋な殺意のようなモノを感じたので慌てて邪念を捨てた。
「と、とにかく協会に行こうぜ。まずはより正確な情報を得ないと!」
慌てて取り繕った様を見て、ネプテューヌとコンパは更に視線を鋭くした。
目からビームである。
*
「すいませーん! モンスターのことについて知りたいんですけど、中に入っていいですかー?」
ネプテューヌは教会の入り口の前に立ちはだかる男に言う。
普段の彼女ならそんなこと気にせず、ずかずかと入っていくのだが、ここの協会はまるで入り口を塞ぐようにその男が立っていたので何となく入りづらいなー、みたいな雰囲気を感じ取ったらしい。
「モンスターの情報? そんなものを知ってどうするんだ?」
男は怪訝な顔をしてネプテューヌを睨むが、彼女はそんなことお構いなしだ。
「『鍵の欠片』っていうアイテムを探しているです。
そのために強いモンスターさんを探してやっつけないといけないです」
「モンスターをやっつける!?」
コンパの言葉に、男はいきなり大声を上げて持っていた杖で地面を叩く。
「馬鹿言うな! ラステイションの軍隊でさえ、モンスターに苦戦しているんだ!
お前達みたいな子供がモンスター退治など、百年早い! さっさと帰れ!」
男はしっし、と手で払い、追い返そうとするがコンパは噛みつく。
「見た目で判断しないでほしいです! こう見えても私達は今まで何度もモンスターさんをやっつけてきたですぅ!
ねぷねぷだって変身したらうんと強く、格好良くなるです!
そうです! 変身して見せつけてやるです!」
コンパはずんずんと話を進めてネプテューヌの背中を押す。
「変身? 何を言っているんだお前。
ごっこ遊びなら余所でやれ! 仕事の邪魔だ!」
一回くらい自分の目で見なきゃ信用できないよな、とかテラは思ったが、それにしても対応が非道すぎると沸々と怒りを溜めていた。
「協会って随分と不親切ね。
女神様に使えるあんた達がそんな調子じゃ、ブラックハート様も大したことないんでしょうね」
「何とでも言え。我々国政院は女神にへつらう教院とは違う!
女神がどう思われようと、痛くもかゆくもないわ。
お前達こそ、あんまり聞き分けがないと痛い目見るぞ!?」
その言葉にテラは感情よりも身体が先に動いていた。
素早く男の背後に回り、男の腕を捕って関節を逆方向に軽く押す。
痛みと驚きで顔をゆがめる男をテラは無表情で見つめる。
「おい、オッサンよぉ。あんまり舐めた口をきいてるとこっちも感情の制御がきかなくなっちまいそうなんだよ。これ以上、変なこと言ってみろ。
二度と動けなくなるぜ?」
テラの無感情な、しかし内なる怒りがこめられた言葉にネプテューヌとコンパは怯え、アイエフの陰に隠れる。
アイエフはしばらく黙ってその様子を見ていたがスッと制止の合図を出す。
「一般人相手に変なことしない! 行きましょ、ここでこれ以上時間を使っても無駄なだけよ」
アイエフの言葉に、テラは納得がいかないという風だった舌打ちして男を開放する。
捕まれた腕を押さえている男を横目で見ながら一行は協会を後にする。
*
「いい? いくらあっちに非があったとしてもあんまり面倒を起こさないようにね。
妙なことをすれば困るのは私達の方なのよ?」
「……悪かった」
テラは若干の不満を覚えつつも今夜の寝床を探すべく、夜のラステイション市街へ向かった。
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もうすぐ春休み終わる… 家に籠もってたい… |
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