けいおん!大切なモノを見つける方法 第21話 澪先輩の壁を作ってしまう方法、その2
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 第21話 澪先輩の壁を作ってしまう方法、その2

 

 

 

 

 

 心機一転、新学期。

 晴れ晴れしい高校1年の新章突入、……なの、だ、が。

 

 澪先輩は叫ぶ。

 顔を真っ赤にしながら涙目で、力の限り叫んだ。

 

「フユの変態!ド変態っ!!スケべ、エッチ!爆ぜろ、粉微塵にっ!」

 

 …………。

 

 どうして俺があの心優しい澪先輩にこんな恐ろしいまでに犯罪性を匂わせる発言をされているか気になった人がいるかもしれない。

 今から説明する、いや言い訳をする。

 だから、110番に掛ける為のその電話を今すぐ引っ込めてもらっていいかな!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結構遠回りな説明になってしまうがキチンと説明するのであれば、ここから話そうと思う。

 それは2学期が始まってまだ間もない、夏休みボケが継続されている日のコトだ。

 本来なら数学Aの授業が行われるはずの時間だが、今回は数学教師の梅田先生の都合で今回の授業は自習である。この自習の時間にやった阿呆なコトこそが悲劇を呼ぶ引き金だったと思われる。

 

「新学期早々に自習かよ、ったく」

 

 俺は新しく買ったばかりの0.3ミリ芯のシャープペンシルをくるくると指先で遊ばせながら呟いた。

 

「いーじゃんいーじゃん、自習ってさ。休み時間増えるようなもんでお得じゃんっ」

 

 そんな俺の独り言に耳ざとく反応してくれたのは純だ。純は数Aの教科書を用いてパタパタと自分に風を送って涼んでいる。まだまだ、残暑厳しい今日この頃だ。

 確かに誰一人真面目に自習なんてしてねーしな、と呟きながら右隣の席に座っている純の方へ体ごと視線を向けた。

 よそのクラスはどうなのか知らないが、ウチのクラスは割と頻繁に席替えを行う。学生にとってはなかなかに重要視されるイベントであるが、新学期一発目の席替えにて俺は教室の最前列という先生方に目を付けられやすいあまり芳しくないポジションを獲得してしまったのだ。しかし、偶然にもすぐ隣に純というカモフラージュがいてくれたのでまあ良しとしよう。

 

「でもさー、俺今日は珍しく学んでやんぜっつう感じの学習意欲がたぎってる日なのになぁ」

 

 ごく稀にだけど、そういう日ってあるだろ?予習やり過ぎちまった次の日とかさ。

 

「よっし!そんなフユの為に、この時間は俺が梅田の代わりに講師になってあげるよ!」

 

 ガタっ!と俺の真後ろの席で勢いよく立ち上がった男子生徒がいた。変態が代名詞、いやむしろ変態の代名詞であるナカミっちゃんである。

 彼は俺と純の目の前にある黒板の前に立ち、GTNの特別講義セミナー、とやけに達筆な字で書き殴った。……グレートティーチャーナカミチ、だろうか。バカである。

 

「フユフユー、またナカミチが何か馬鹿なコト始めたよ。あははっ」

 

「ナカミっちゃんの奇行には俺たち慣れてるつもりだけどさ、もうちょい説明してや」

 

 俺と純は、また面倒なコトが始まったなと思ったが、また面白そうなコトが始まったなと、同時に思った。

 こういうナカミっちゃんの阿呆なノリが俺は結構気に入っていたり。

 

「言葉の通りだよ。俺が先生、フユと鈴木さんが生徒。さぁ講義のテーマを決めてね。視聴者の様々なニーズにお応えするよ。例えば女の子のピ―――とか、ピ―――してる最中にピ―――しちゃったときの正しい対処法とか」

 

「…………」

 

「…………」

 

 忘れていた、ナカミっちゃんは変態だというコトを。

 俺と純は互いの顔を見合わせて、ハア、と大きくため息をついた。ナカミっちゃんのノリが気に入っているとか思ってしまった十秒前の俺をブン殴ってやりたい。

 

「ナカミっちゃん……」

 

「ん?どうしたの、フユ」

 

「一応、純は女の子なんですが、一応」

 

「おいコラ、一応ってナニ!?」

 

「下ネタはまずいんじゃないかと……」

 

「下ネタ?さっきのが?またまた、冗談言わないでよフユ、この程度でさぁ。視聴者のニーズに―――」

 

「視聴者意識してんならピー音入りそうな放送禁止用語連発すんのやめろや、コラ!」

 

 本気でとぼけた顔をしているナカミっちゃんに対して無駄だとは思うが一応ツッコミを入れてみる。

 隣にいるのが純だからいいものを、と失礼なコトを思ったが確実に純に怒られそうなので口には出さないでおく。

 

「もう2人ともワガママだなー。じゃあえーっと、アレだ、アレ。……失恋ホヤホヤらしいフユの為に、次の恋にステップアップできるよう教示してあげるよ」

 

「な……っ!」

 

「あははっ、いいねソレ!ナカミチ、アタシもそれ乗ったっ!テーマは……『フユの男磨きマニュアル』だねっ!」

 

「純、てめ……っ!?」

 

 純はニヤニヤ笑いながら席を立ち、白いチョークを掴んで黒板に『フユの男磨きマニュアル』と丸文字で書きやがった。

 

「お前ら、友人の失恋をなんだと思ってんだ!?」

 

「まぁまぁ、いーじゃんフユ。アタシたちはフユの為を思って、こうやって教鞭ふるってあげようと……ププッ」

 

「嘘つけやっ!純、今テメー絶対笑っただろ!?」

 

「フユ、被害妄想はよくないな。誰にフラれたのか知らないけど、俺たちはフユの今後を心配してだな―――」

 

「本当に心配してくれる人はお前らみたいにオモチャ見つけた悪魔みたいな顔しねぇよっ!つーか純、いつのまにか講師側になっちゃった!?」

 

 

 

 

 

 こうして、GTN&Jによる超ありがた迷惑な講義が始まった。

 

「えー、まず。一口に男を磨くと言っても、様々なファクターがあります。その中でも最も有用性が高いとされる『短所を削る』、これにウェイトを置いた方が効率がいいでしょう。フユのような短所だらけの男子には尚更です」

 

「……ナカミっちゃん。本人が目の前にいるよ?」

 

 ナカミっちゃんの容赦ない冷静な説明がグサグサと突き刺さる。コイツの場合マジで言ってるやがるからな。

 

「フユの短所、かぁ。まー、なんといってもフユってバカだもんねぇ」

 

「……純。本人が目の前にいるよ?」

 

 純は楽しそうに普段先生たちが使っている指示棒で俺の頭をぺしぺし叩いてきやがる。どついたろか、この女。

 

「落ち着いて、聞いてくれ。これはフユの伝説のほんの一部でしかないんだけど、こないだいきなりフユから電話掛かってきてね、『やべえ、俺今どこいんのか全然わかんねえ。ナカミっちゃん、助けてくれ』とかメッチャ冷静な良い声で迷子宣言してきたんだよ?方向音痴にも限度があるだろ」

 

「それはちょっと考え事しながら歩いてたら、なんつーか見覚えの無いトコロに行っちゃったというか……地図が嫌いなんだよ、うん」

 

 俺は自分を慰めるように、弁解の言葉を述べる。地図が嫌いって、なんか男らしく見えないことも、……やっぱ見えないか。

 

「ナカミチの言う通り、フユの方向音痴は常軌を逸してるね。今後フユが土地に明るくないトコでデートしなきゃなんないとき、男として相当なディスアドバンテージだよ」

 

 純はうんうんと肯きながら、黒板に『方向オンチを直す』と書き込んだ。

 

「一番フユのバカ伝説に立ち会ってると自負するアタシがビックリしたのはね、フユって時々信じられない嘘みたいなバカやるよね。バナナの皮踏んづけてずっこけるとか漫画のキャラでしょってっ。それに石鹸をチーズと間違えてホントに食べちゃうし。現実で泡吐く人アタシ初めて見た、お腹よじれるかと思ったよっ」

 

「純、おめーが紛らわしいトコに石鹸置いてんのがワリーんだろーがっ!」

 

 バブル光線事件という名の、今現在でも語り継がれている俺の黒歴史である。

 純はお腹を押さえて思い出し笑いで爆笑している。ナカミっちゃんはその間に黒板に『食用品以外は食べないようにする』と書き込んだ。

 

「コレって俺の男子力上げるための講義なんだよな?間違っても、俺の恥ずかしい暴露話大会じゃないんだよなっ!?純とナカミっちゃんが俺をオモチャにして楽しむコーナーじゃないんだよなっ、な!?」

 

 そろそろ俺と純とナカミっちゃんの3人で、なんとも頭の悪いバカなコトしているコトに周りのクラスメイトが気付き始めた。

 ……何故こんな公開処刑をされねばならないのだろう。

 俺は顔を手で覆って、わが身の不幸を呪った。

 

「それで、他にはねー」

 

 俺の魂の叫びを鮮やかにスルーして、純は楽しそうに話を続ける。

 

「フユって神経質っていうか几帳面なトコ多いけど、たまに物凄く乱雑って言うか豪快になるときがあるよね。いつだったかカップラーメン食べてるときに、お箸がないからって突然持ってたボールペンで食べ出したんだよ!?覚えてる、フユ?」

 

 ああ、覚えている。純が食い始める前に割り箸地べたに落としやがったんで俺がしぶしぶ自分の分の割り箸をあげたんじゃなかったか。……どうやら純は中途半端に忘れているらしい。

 

「湯呑みでコーヒーとか普通に飲んじゃうしっ」

 

 ティースプーンの代わりにレンゲで砂糖かき混ぜる女に言われたくない。

 

「フユのドジっぽい所アタシは好きなんだけどねぇ」

 

 ドジ……すげぇ反論しづらい。俺は軽音部において、あの唯先輩と同じぐらいシールドに引っかかってずっこけていたりするのだが、そのコトは黙っておこう。

 

「いや、待ってくれ鈴木さん。フユのそういったちょっとガサツなところは、男らしいと言えるかもしれない」

 

「いや、言えねぇよ!自分のコト言うのも何だけど、全力で言えねぇよ、ナカミっちゃん!」

 

 男らしさを履き違えてるよ……っ!

 

「という訳で、フユに是非実行してもらいたい男らしい行為を列挙していこうと思います。鈴木さんも遠慮せず意見をどうぞ」

 

「なあ、俺の話聞いてる!?俺のツッコミはBGMじゃねんだぞっ!?垂れ流しの有線でも、もうちょい耳傾けんだろっ!」

 

 俺の悲痛な叫びは、もちろんのコト悪魔と化した2人には届かない。

 

「じゃあ、まず手始めにだな。お賽銭箱にクレジットカードを投げ込もう」

 

「全力でしねえよっ!どんだけ生々しいお賽銭だよ、神様もお寺の住職さんもリアクションに困るわっ!」

 

 ナカミっちゃんは、男らしさを完全に履き違えてる!

 

「じゃ、次はアタシね。センター試験前に三年生の校舎で盛大にこける(バナナの皮で)ってのは?」

 

「本っ気で受験生にブッ殺されんぞ!?赤本で撲殺される――ってここでもバナナかい!」

 

 純のこういう悪ふざけの塊みたいなトコはマジ矯正して欲しいと思う!

 

「やっぱ男らしさってのは、周りの目を気にしないってトコにあると思うんだよね。交番の前でシガレットチョコを食べる、または泥酔の演技をしてみよう」

 

「男らしさドコ行ったんだよ!?ただの悪戯だよ!」

 

 下手したら捕まるから!シュール過ぎて引くから!

 

「フユってバイトしてんだから、二千円札を破り捨てるぐらいのスケールは欲しいよね」

 

「ナニが生まれんだよ!?俺の不幸だけだろが!」

 

 純、バイトの給料日でもぜってー奢ってやんねぇからな!?

 

「ブロッコリーとカリフラワーを反対に認識してみるのはどうだい?」

 

「それ梓だから!」

 

 なんでナカミっちゃんが知ってんの!?

 

「濡れた猫を電子レンジで乾かしてみよーよ、フユ」

 

「文字通り爆発するよ!純、お前ん家の猫でやったろぉか!?」

 

 俺は猫派だけれども!

 

「フユってワリと着道楽で、服たくさん持ってるだろ?あえての、一度着た服は二度と着ないルール導入は?」

 

「豪快……!あまりにも豪快すぎる!!」

 

「じゃーね、次はー」

 

「もういーよ!!」

 

「次はだね――」

 

「もういいっつってんだろが!?」

 

自習とはいえ、数学の授業でここまで大声を上げた人物は自分が史上初なんじゃないか、というほど声を荒げてバカ2人に精神削りながらのツッコミを浴びせる。ゼーハーと肩で息をしながら頭痛を抑える。

 

「はぁはぁ……、もー突っ込まねぇぞ……。ああ、ぜってー突っ込まない……!」

 

「おいおいフユ、ハアハア言いながら自分のアレを突っ込むとか突っ込まないとかやめてくれよ。本当にフユはエロいコトしか言わないね、自重してくれ」

 

「ブッコロス!!」

 

 お前だけには言われたくないわ!

 もうナカミっちゃんを黙らせるには意識を刈り取るしかないと判断した俺は、律先輩直伝のチョークスリーパーで落としてやるコトを決意する。

 しかし、ナカミっちゃんは真剣な表情に切り替えてこんなコト言ってきやがった。

 

「しょーがない。フユ弄りはここまでにして、そろそろ真面目にやるね」

 

 もう開き直って俺弄りって言ってんじゃん!

 ナカミっちゃんはやれやれ、と嘆息しながら黒板に赤いチョークで『強引さ』と一際大きく書き込んだ。

 

「フユに足りてないのはズバリ、『強引さ』。コレに尽きるね」

 

「いきなり真面目ぶっても説得力ねーぞー」

 

「いや、でもナカミチの言うコト、アタシすごいわかるよ。確かにそうだって思うもん」

 

「純までなんだよ、いったい。……アレか、積極性が足りねーとか、そんなん?」

 

「そーじゃなくて、積極性とかとはちょっと違くてさ。フユってこーいうトコあるじゃん」

 

「どういうトコ?」

 

 純は得意げに語り出す。

 

「フユは自分の欲求に対してすごい正直でしょ?楽しいコト大好きで、やりたいコトやる」

 

「……うん、良いコトだろ」

 

「でも、自分以外の他人のコトになると、そりゃもー自分の欲求に対して素直じゃなくなる、というか屈折しまくってるじゃん」

 

「うーん……?」

 

「あーもー、なんで伝わらないかなぁ。バカフユ!……ナカミチ説明してっ」

 

 純はもどかしそうに地団太踏みながらナカミっちゃんに丸投げをする。

 つーか2人とも出来の悪い息子に向けるようなその生優しい視線ヤメテ。

 

「まあ、ぶっちゃけるともっと我を通せってコト。どんな時でも自分の欲求を満たす為に、強引にいきなよ」

 

 なんだかここ最近、みんなに似たようなコトばっかり言われている気がする。

 

「フユのそういうトコ、俺も嫌いじゃないけど、男としたらどうかなって話。この先、フユのそういうトコ、カッコ悪くて情けないって言う女の子絶対に現れるから。気を付けるべきだね」

 

 もう梓に言われてるけどな。

 

「……なるほどなぁ。悔しいけど、微妙に説得力あるな。ありがとうございます、グレートティーチャーナカミチさん」

 

 緩急つけてマトモなコト言ってくるからナカミっちゃんって憎めないんだよなぁ。

 

「うむ、もっと俺を褒めてくれていいよ。フユは肉食系男子になりなよ、草食系は俺みたいな顔が良いヤツしか生存できないから。フユはムリだからな」

 

「やっぱりブッコロス!!」

 

 ホントに緩急つけてくるんだよな……。

 

「フユ、欲求に対して正直になるって具体的にどういうコトかわかるかい?そもそも人間の三大欲求はだな―――」

 

「オチが見え見えだっつうの!お前性欲について語りたいだけだろ!?」

 

「性欲について、ナニを恥ずかしがるコトがあるんだい。フユだって男なんだから、ピ―――とかピ―――に興味あるだろう?」

 

「ナカミっちゃん、ちょっとは周りを気にしてくれっ!」

 

「周り?あ、そうだ、聞いてくれよ鈴木さん。フユのピ―――ってピ―――なんだよ?知ってた?」

 

「ふ、フユ……っ」

 

「ああ、純が本気で引いてる……!」

 

 純は珍しく顔を真っ赤にしながら俺のコトを見つめて、じんわりと後ずさった。

 もう駄目だ。ナカミっちゃんは止まらない。止められない。

 

「フユ、ナニをそんな心配してるんだい?……ああ、この小説の展開とか?前話はすごいシリアステイストだったのに、今回の21話は果てしなくふざけてるもんね、主に俺が」

 

「この小説とか21話とか言うなよ!?そういうルール的なトコちゃんとしてこうぜ!?」

 

「この21話はギャグ回だから、ナニを言っても許される」

 

「……もうやりたい放題じゃねえか」

 

 このままナカミっちゃんに喋らせているとマジでいろんな意味でまずい。

 このままだとこの小説のキーワードタグに『R−18』が登録されてしまうかもしれない。いや最悪、運営から削除されるかも……!

 

「フユ、大丈夫だって。俺がこの小説のキーワードタグに『変態』ってこっそり登録しといたから」

 

「…………え?」

 

「小説情報の確認してみなよ。……な?」

 

 う、嘘だろ?

 

 タグ:恋愛 青春 『変態』 不定期更新

 

 ……………。

 …………。

 ………。

 ……。

 …。

 

「ガチでやってんじゃねえかあああっ!!!」

 

「コレで安心だね。俺が今まで言った放送禁止用語も全部ピー音で上手く誤魔化されてるから。フユ、褒めてくれよ。やったね」

 

「ある意味やっちゃったよ!いくらなんでも自由過ぎんだろ!?ナニさりげなーく『変態』タグ混ぜてんだよっ、恋愛→青春→変態ってどんな単語の流れだ、思わず2度見したわっ!!」

 

「この小説の読者層変わってくるかもね。めっちゃニッチな層しか読んでくれなかったりして、アハハ」

 

「アハハじゃねんだよっ!ただでさえ万人受けしない作風なのに……っ!この話から読んでくれた人勘違いしちゃうじゃん、この小説こーいう話じゃねえから!」

 

 もう滅茶苦茶だ。頼むから今回の話は本編じゃなくて番外編にしてくれ、後生だから『変態を黙らす方法』に今から変更してくれ!

 

「ナニ落ち込んでるんだい、フユ。あ、自分が苗字が無いモブキャラなの気にしてるのかい?」

 

「下の名前無いヤツに言われたくねえ!つーか、そういうの言っちゃダメだろ!?暗黙の了解!大人のルール!」

 

 俺の魂の叫びは、ナカミっちゃんには届かない。

 止められない止まらない、ナカミっちゃん。なんだかかっぱえびせんみたいだなあ、と小学生の作文のような感想を抱いて現実を忘れようとしたが、悪魔の下ネタは止まらない。

 

「ではでは改めまして、ピ―――について語ろうか。お子様なフユにはピ―――から聞かせるべきだね」

 

「もうこのツッコミが最後だかんな、ナカミっちゃん……。頼むから!人前で!教室で!大声で!ピ―――とかピ―――とか言うんじゃねぇ―――」

 

「うるさーーーいっ!!」

 

 とうとう梓の今日イチバンのツッコミが何故か俺に向かって放たれた。

 ズパアアン!と小気味いい音がした瞬間、顔面に鋭い痛みが走る。梓が丸めたノートを俺の顔面に向かってフルスイングした轟音である。俺の顔が野球のボールならばスタンドまで運ばれるコトであろう、ナイススイング。

 

「いっ……ってえなっ!ナニすんだよ、バカ梓!」

 

「バッカはアンタでしょ!?大声でナニ言ってんの!?ホントに変態なのっ!?」

 

「変態はナカミっちゃんだろが!コイツが元凶―――ってあれ?ナカミっちゃんもういない!?」

 

 気が付くとナカミっちゃんと純は何事も無かったかのように自分の席について自主勉学に勤しんでいる、お前ら……!

 

「『フユの男磨きマニュアル』……?フユ、これって何してたの?」

 

「ナカミっちゃんと純が……ってか、うわヤベ、鼻血出てきたっ」

 

 鼻奥にツーンと突き通るような痛みが走り、粘膜がぷつりとやられたコトを自覚する。なんか鼻血出たときってえらい焦るよな。

 

「男磨き……こんなコトしなくたって、私なら別に……」

 

「あ?なんか言った?つーかティッシュティッシュっ!」

 

「……もういい、フユのバーカ」

 

 他人を流血させたコトに対する罪悪感とかないんかね、コイツは。梓は乱暴に自分のハンカチを俺の顔面に押し付けてきやがる、痛い痛い。

 

 余談だがこの間、憂はずっと真面目に黙々と数学Aの自習を続けていたらしい。彼女の爪の垢をナカミっちゃんに飲ませたいやりたいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まーだ怒ってんのかよ、梓」

 

「怒ってないっ、呆れてるだけっ」

 

 放課後になり授業という苦行から解き放たれた俺と梓は部室に向かって歩いていた。梓はまだ不機嫌なのか少し歩くスピードが早い、俺が少し遅れてカコカコ杖を突いて梓に付いていくという図だ。

 

「あーあーあー。あんなん、ちょっと純たちとふざけてただけじゃんか」

 

 梓は相も変わらず俺の前をツカツカと歩いている。しかし、足音のリズム、テンポから判断するに予想より機嫌は悪いらしい。ワリと単純な梓のコトなら足音ひとつで大概わかったりするのだ。

 

「フユはさあ、あんな風に……」

 

「ん?どしたん?」

 

「……なんでもない」

 

 …………。

 今の梓の言いたいコトぐれー、さすがの俺でもわかる。いつも通りだ、いつも通り心配してくれてるんだ。

 

「純もナカミっちゃんも、変に気ぃ遣わない方がイイって思ってくれてんだよ、腫物扱いしない方がいいって。そんで実際俺はああやって笑い話にしてくれた方が気が楽でいい」

 

 心配してくれんのも嬉しーけどさ、と笑いながら付け加える。

 

「唯先輩のコトは、もうホントにいいんだ。ぜーんぜん大丈夫、俺意外なコトに前向きになれてるっつか」

 

 ソレは強がりからくる嘘で、唯先輩を見ると胸にチクリとした鈍痛が走る。しかし、以前のように身動きが取れなくなるほどじゃない。前向きになれてるってのは、本当のコトだ。

 

「……そ」

 

 梓は一度もこちらを振り向かずに短くそう言いながら、相変わらず俺の前をツカツカと歩いている。だが、歩調が心なしかゆっくりとしたモノに変化している、ちょっとは機嫌直してくれたのだろうか。彼女の背中から漂う雰囲気に少しだけ柔らかいモノがブレンドされたような気がした。

 ここはひとつ、男磨きマニュアルの通りに男らしくいってみよう。

 痛む右脚を無視して梓に追いつき、その小さな背中を軽くバシンと叩く。

 

「えっ?ふ、フユっ、どうしたの?」

 

「気合入れてこーぜ。練習だ練習っ!」

 

 俺はニヤリと笑って、密かなモチベーションの源を告げる。

 

「今学期はアレがあんだろ?学園祭っ、コレすなわち、俺たちの―――」

 

「ライブデビュー……だね」

 

「そーだろ、そーだろっ?」

 

 あと1、2ヶ月で我が桜ヶ丘高校の学園祭がある。ウチみたいな文化系の部が普段の練習の成果をお披露目する格好の舞台である。

 

「俺たち2人のデビュー戦なんだから、そら気合入っちまうって」

 

「私たち2人の。2人の、かぁ。……えへへ」

 

「だったらこんなトコで油売ってる場合じゃねーだろ冬助!って話になってくんだろ!」

 

「うん、……うんっ、そうだね、そうだよねっ。いっぱい練習して成功させなきゃダメだよ梓!って感じだよね!」

 

「よっし、いち早く部活いこうや。梓、鞄持ってくれっ」

 

「うんっ!」

 

 梓はイヤな顔ひとつせずに、むしろ嬉しそうに俺の鞄を持ってくれる。

 こういう素直なときの梓ってホントのホントに可愛いよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあさあ、先輩たち、さっさとお茶飲んでくださいっ。練習始めますよ!」

 

「そうですよ、フユの言う通りですっ。学園祭までそんなに時間ないんですから、ビシバシいきますからね!」

 

 部室に着いた俺と梓を待っていたのは、やっぱりのんびりとお茶を飲んでいるいつも通りの軽音部先輩一同だった。そんな先輩たちにせわしなく発破をかける俺と梓。

 

「おいおい、やたら気合入ってるけど、どうしたんだよ?1年コンビ」

 

 律先輩は俺たちの肩の力の入りように少し戸惑いながら問いかけてきた。

 おいおい2年カルテットさんよ、愚問だぜ。

 

「どーしたもこーしたも、学園祭があるじゃないですか学園祭がっ。なんてったって俺と梓の―――」

 

 ニヤリと笑う梓と目が合う。

 

「ライブデビューだもんなっ!」

「ライブデビューだもんねっ!」

 

 そう言って、俺たちは子供のように笑い合った。

 今の俺たちアドレナリン分泌されまくりだぜ。

 

「つうワケで今日の俺たちはもう既にランナーズハイなんスよ」

 

「まあまあまあまあ、2人とも。やる気一杯なのは良いコトだけど、そんなんだとすぐ息切れちゃうよ?まずは私のお茶飲んでくれたら嬉しいな」

 

 う……、仕方がない。ムギ先輩にそう言われ、俺は比較的シレっと席に座り直した。

 ムギ先輩の菩薩のようなかつ女神のような笑顔である。そんなある意味凶器みたいなモン見せつけられたら誰だって素直になっちゃうよなぁ。

 

「相変わらずムギ先輩だけには超素直だし……」

 

 梓がジトッとした湿度の高い目でぼそりと俺だけに聞こえるように言ってきやがったが、聞こえないフリをする。

 

「フーちゃんとあずにゃん見てると、去年の私たち思い出すねー」

 

 唯先輩は言いながら、思い出し笑いをしている。……いちいち可愛いなぁ、畜生。

 

「唯ちゃんの声が本番直前でガラガラになっちゃったんだよね」

 

 ムギ先輩も去年の珍事の思い出し笑いをしながら、俺と梓にティーカップを渡してくれる。

 先輩たちから散々聞かされた話だが、去年の文化祭の直前にボーカルである唯先輩が練習のし過ぎで声帯をぶっ潰しやがったのである。そして、そのピンチヒッターとして抜擢されたのが、あの恥ずかしがり屋の澪先輩だってんだから驚きだよなぁ。

 

「そんで澪先輩が代わりにボーカルやったんですよね。ほぼ即興でベースボーカルできるって、澪先輩の脳味噌4つくらいあるんじゃないですか?」

 

「まあ、私が作った曲だからな。当然だよ」

 

 俺の茶化しが入った屈折した褒め言葉はどうやら正確に伝わったようで、澪先輩は少し照れ臭そうにそう言った。……本当この人はスペック高いぜ。

 

「でも、去年の学園祭ライブ、大成功したって聞きました。私も見たかったですよ、本当に」

 

 悔しそうにしている梓は、この先輩たちの演奏に憧れて入部したクチなので、そりゃもう見たいし聞きたかったコトだろう。ってか俺も見てみたいし。

 

「まあ、成功って言えば成功なんだろうけどな。……最後の最後で澪が―――」

 

「律っ!ソレ言ったら絶対にダメだからな!?絶交だからな!?」

 

 声を荒げて律先輩の言葉を遮る澪先輩の様子は尋常じゃなくおかしかった。顔を真っ赤にして律先輩に詰め寄り、胸倉を掴んで本気の顔で圧をかけている。

 ハイハイわかってますよー、と笑いながら軽く律先輩はいなしているが、事情の知らない俺と梓は当然のごとく好奇心が刺激される。

 

「え、ナニがあったんですか?」

 

「何でもないから!ホントに何でもないから!」

 

「いやいや、気になりますってば」

 

「き、気のせいだろ?きっとそうだよ、ふ、フユ」

 

「……や、ナニが気のせい?」

 

 会話が成立していない。日本語が理解できないほどにテンパっている澪先輩だが、そうまでして隠したいコトって何なんだ?他の先輩たちに訊いてもクスクスと笑っているばかりで教えてくれないのだ。すげー気になんだけど。

 俺と梓の疑問は深まる一方である。

 

「くっそう、気になるなぁ。いろんな意味で去年の学祭ライブ、聞きてーし見てーな」

 

「―――じゃあ、見てみる?」

 

 突然さわ子センセイが背後から登場。

 

「うっお!?さわちゃんいつの間に!?」

 

 驚きの声をあげる律先輩は、椅子をガタリと言わせて少々大きめのリアクションをとっている。

 

「去年の学園祭ライブのDVDみんなに見せに来たら、アンタたちタイムリーな話してるわねー」

 

 わーお、グッドタイミングだぜ、さわ子センセイ。

 さわ子センセイは小脇に抱えている小さなノートパソコンを少し離れたオルガンの椅子の上で開き、起動させる。

 

「あ、あわわ……っ!」

 

 マンガみたいな慌て方をしている澪先輩。よほど見られたくないトラウマが去年の学祭にあるらしい。そのトラウマが今ここで露見するコトが現実味を帯びてきたコトで、さっきまで真っ赤だった顔が真っ青に変化している。

 場の流れを全く知らないさわ子センセイは、ライブの映像が記録されているであろうDVDをノートパソコンに挿入し、動画を再生させたのだが―――

 

「〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

 声にならない声をあげながら、澪先輩に止められてしまった。パソコンを叩き壊しかねない勢いでガチャガチャとキーボードを適当に叩くように押し込んでいく、停止のキーを運よく押せたのか、ディスプレイに映っている動画はピタリと動きを止めてしまった。まだ始まったばっかなのに。

 

「そ、そんなに見られるのヤなんですか……?」

 

 俺と一緒にディスプレイを覗き込んでいた梓が、状態異常な澪先輩に問いかける。ぶんぶんと激しく首を縦に振る澪先輩の無言の圧力に押されて、俺は少し、というか滅茶苦茶引いてしまったのだが、はてさてコレでいいのだろうか。

 

「仕方ないね、諦めよう、フユ?澪先輩こんなに嫌がってるし」

 

 普段の俺ならば。まーしゃーねーなー、とぼやきながら梓のように自分より澪先輩の気持ちを優先した発言をするコトだろう。

 しかし、しかしだ。

 

「あきらめる―――」

 

 今日からの俺は、今までのフユではない。

 男らしさを兼ね揃えた、ニュー冬助なのである。

 思考するは己が欲望のみ、強引に行くんだ冬助!

 

「―――とみせかけて!」

 

 一旦、澪先輩の意識を外に振って安心させておいて、普段からは想像できないようなクイックネスでノートパソコンに詰め寄り、映像を再開させようとする俺。

 

「な、ななななナニしてんだよ、フユーーっ!?」

 

「うはは、イイじゃないっスか別にっ。どーせ歌ってんのが恥ずかしいとかそんなんだろ?」

 

「だっ、違くてっ!とにかくやめろおおおぉ!」

 

 澪先輩は、パソコンを操作しようとする俺のシャツを絞って全力で阻止しようとしている。照れ隠しじゃないガッチガチの力の入れ方だったが、所詮は女の子のか弱い握力腕力である、俺はそんな澪先輩の妨害を力ずくで無視してやった。

 うはは、ナカミっちゃん。これが男らしさというモノなんだろう?

 

 さて、如何にアタマの具合が残念な子供代表の俺でも、さすがにこの行為に男らしさは全くと言っていいほどに含まれていないコトぐらい気付くハズだ。しかしながら、初の学園祭ライブを控えているコトからハイになり過ぎて徹夜明けのような妙なテンションになっていたコトは否めない。ソレが今回の惨劇を引き起こした根本のミスだったのだ。

 好きな女の子の背中に虫を入れるぐらいならまだ可愛げがあったのだが、俺がこのときにとっていた行動は見方の角度次第では軽犯罪にカテゴライズされてしまうかもしれない。痴漢犯を捕まえようと警戒するあまり気付いたら自分が痴漢扱いされてしまう状況とでも言えばお分かりいただけるだろうか?いや、まったく意味が分からない。

 ……もう、こうやって地文で男らしさとは真逆の言い訳をしながらダラダラと延命措置を続けるのも苦しくなってきたので、この後起こった阿呆過ぎる事件を生温かい目で見守っていただきたい。

 

 

「ちょ、澪先輩、危ねぇって!パソコン落ちるって!」

 

 言葉の通り、オルガンの椅子の上に置かれているパソコンがバランスを崩してグラついている。澪先輩と俺のしょーもない意地の張り合いで揉み合った結果である。澪先輩は俺とパソコンの間に強引に体を割り込ませてパソコンを奪い取ろうとしたのだが、その拍子にパソコンがとうとう椅子から転げ落ちてしまったのである。

 さすがにさわ子センセイの私物であろうパソコンを破壊してまで露見を阻止しようとは思わなかったのだろうかそれとも反射的に手が出たのだろうか、澪先輩は椅子から転げ落ちるノートパソコンを空中で掴み取ろうとダイブするように床とパソコンの間に滑り込んだ。俺の感覚ではすげースローモーションに感じて、棒立ちしながら俺と梓はパソコンのキャッチを試みる澪先輩をただ驚きながら見ていたのだが。

 どんがらがっしゃーん、と冗談みたいな音と共に澪先輩は盛大にずっこけたのだ。

 そして、キャッチに成功したものの拍子にキーボードを触ってしまったらしく、パソコンのディスプレイに映る映像が再び動き始めた。

 

『みんな、……ありがとぉ!!』

 

 しかも、映像の時間がだいぶ先に飛んでしまったらしく、画面の中の澪先輩は少し変わった格好でライブ終了後の観客への感謝の言葉を放っていた。そのまま先輩たちは舞台袖にハケていくのだが、ディスプレイの中の澪先輩はシールドに足を引っ掛けて無様に転んでしまっている、そして何故か観客から奇妙なざわめきの声があがった。

 細やかに描写するのもアホらしいので、端的にザックリと言ってしまうと、転んだ拍子に澪先輩のスカートが捲れ、その中の下着を思いっきり観客に向けて晒してしまったのである。

 しかし、しかしだ。俺はそんな澪先輩のトラウマが映し出されているパソコンのディスプレイを見ていなかった。いや、正確には視界には入っていたのだが、そんなモンより意識を持っていかれるモノが目の前に存在したのだ。

 ソレは一体ナニか?

 

「…………―――!」

 

 俺の目の前で澪先輩はズッコケていた、……下着を晒しながら、である!

 パソコンの中の澪先輩も目の前にいる澪先輩も寸分違わぬ同じ体勢で、俺と梓に向かって、いわゆる俗に言うアレだ……、パンチラってやつをぶちかましやがったのだ。

 下着の柄まで同じなんだから、なんかもう笑えてくる。

 

「――――っ!!」

 

 澪先輩は高速で体勢を立て直し、後ずさる。過去最高に顔を赤くして、涙目で俺を見る。

 いやいやいやいや、ナニその痴漢されたような目!?

 俺なんもやってないよ、マジで!?

 しかしながら、俺も健全な男なワケで、女子高生のパンツ見てナニも感想を抱かなかったワケではない。俺は顔を赤くしながら、澪先輩が悲鳴を上げるのを防ごうと言い訳を開始しようとしたのだが、異変が起こった。

 鼻奥にツーンと突き通るような痛みが走り、粘膜がぷつりとやられたコトを自覚する。

 ……激しくデジャヴだ。

 先ほど梓の手によって弱らされた粘膜のため、俺は鼻血を止めるコトができなかった。こんな伏線回収、いらないと思う。

 

「ふ、フユ……っ。アンタってホンットあり得ないっ!先輩の、ぱっ、パンツ見て鼻血出すとかマンガの世界の住人なの!?本物の変態なのっ!?」

 

「おめーがさっき俺の顔面殴りやがった後遺症だろうが、梓ぁ!!」

 

 澪先輩が悲鳴を上げるよりも早く、隣にいた梓が俺に向かって怒鳴ってきた。

 例によって例のごとく、怒りでツインテールが逆立っている。目なんて瞳孔開いてンぞ。

 

「うあ、つーかマジ血ぃ止まらん……っ。ティッシュティッシュ!」

 

 後ろでそんな俺たちのやり取りを見ていたさわ子センセイや先輩たちが腹を抱えて大爆笑している。律先輩なんか机をバンバン叩きながら笑い過ぎで呼吸困難に陥っていた。……後で覚えてろよ。

 ティッシュで鼻を押さえながら、澪先輩の方を見る。梓が隣ですっげえ怒りながら怒鳴りまくっているのだが、今はそれどころじゃない。

 

「み、澪先輩?……大丈夫?」

 

「…………っ!」

 

「み、お……先輩?」

 

 そして、鬱積された澪先輩の魂の叫びがここでようやく解放される。

 

 澪先輩は叫ぶ。

 顔を真っ赤にしながら涙目で、力の限り叫んだ。

 

「フユの変態!ド変態っ!!スケべ、エッチ!爆ぜろ、粉微塵にっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして再び軽音部において、俺の人権は剥奪され、澪先輩の壁を作ってしまったワケだが。

 コレだけは言っておきたい。

 

 みんな、男らしさを履き違えんな!

 

 

 

 

 

 

 

説明
勢いとノリだけで書いた、けいおん!の二次小説です。
Arcadia、pixivにも投稿させてもらってます。

よかったらお付き合いください。
首を長くしてご感想等お待ちしております。
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