博麗の終  その15
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【幼い月の雫】

 

 レミリアの明晰な頭脳が、荒れ狂う感情の渦に飲まれていく。

 

 

 怒り……

 

 悲しみ……

 

 驚き……

 

 戸惑い……

 

 憎しみ……

 

 愛しみ……

 

 

 ――恐れ――

 

 

 失われてしまうという予感がある。

 

 優れているからこそ先が見えて。

 

 脳内が自動的にはじき出す未来に絶望して、思考が白く塗り潰されていく。

 

 

「……まひ…………けい、れん……」

 

 

 それでも。

 

 そんな壊れかけの思考からでも、状況への解答がこぼれ出していた。

 

 考えることを拒絶するほどの強い衝撃を受けていても、自動的に正しい状況が導き出されてしまう。

 

 わかりたくないことでも、拒絶したい現実でも。

 

 理解して、分析して、判断してしまうのだ。

 

 

「部分的な脳死による障害は体中に出ています。もちろん内臓も同様です」

 

 

 紫の補足も、恐らくは届いていないだろう。

 

 届いていなくとも、時と共により真実へと近づいていくのだろう。

 

 

 そして――――

 

 

「なに…………なによ……これえぇ」

 

 

 レミリアの顔がくしゃくしゃに歪んでいく。

 

 大きい瞳の下にはみるみる涙が溜まっていってぽろぽろと流れ出す。

 

 まるで寂しさが溢れ出した十の子供のように、見た目通りの幼い感情をさらけ出している。

 

 

 全世界で最も恐れられている吸血鬼という化物が、500年を生きたという存在が。

 

 

 たった一人の人間を思って、ただ、泣いている。

 

 

説明
優れている者は、考えるまでもなく答えを出してしまうのです。
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