特捜戦隊デカレンジャー & 魔法少女まどか☆マギカ フルミラクル・アクション
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Episode.01 ウィッチ・フィールド

 

少女は走る―――

長い長い、果てしなく続いているのではないかと思われる白黒ます目の道を――

そして、辿り着く。階段の向こう、出口の文字が書かれた扉へと――

一段一段、階段を上り、扉の前で立ち止まる――

一瞬の逡巡の後、少女は意を決して扉を開く。そこにあったものは―――

 

「・・・酷い・・・・」

 

廃墟と化した街。黒い曇天の下に広がる街は、まるで嵐に見舞われたかのように破壊しつくされ、瓦礫や建物は空を舞っていた。そしてその中央上空に、まるで地上の破壊を象徴しているかのように佇む、黒い影に包まれた巨大な何か。逆さに吊るされたヒトの姿を象っている様に見えるが、ソレが放つ気配はこの世の何にも属さない、不快感を覚える異質なものだった。

 

「はっ!!」

 

この町を絶望に包み込むような存在・・・そんな黒い巨大な何かに立ち向かう、一人の少女が居た。巨大な影から放たれる、ビルや謎の光等の攻撃を受けながらも、果敢に挑む少女・・・

 

「仕方ないよ。彼女一人では荷が重すぎた。」

 

目の前で繰り広げられる壮絶な戦いを、ただ茫然と見るしかできなかった少女に、すぐ傍に居た何かが声をかけた。イヌとも猫ともつかない、白い四足歩行動物。少女の隣に座り、ただただ無表情で黒い影と少女との戦いを見つめる。

 

「でも、彼女も覚悟の上だろう。」

 

「そんな・・・あんまりだよ!!こんなのってないよ!!」

 

思わず、目の前の白い何かへと叫ぶ。先程まで戦っていた少女が、自分に気付いたのか。何事かを叫んでいる様だ。だが、戦いによって巻き起こされた轟音が、それを打ち消す。

そんな少女の様子を気にも留めず、白い何かは話を続ける。

 

「諦めたらそれまでだ・・・でも、君なら運命を変えられる。」

 

その言葉に、少女は希望を感じた。少女は目の前の白い存在の話にただただ聞き入る。

目の前で戦っていた少女が落下していく事にも気付かずに・・・

 

「避けようのない滅びも、嘆きも、全て君が覆せば良い。そのための力が、君には備わっているのだから。」

 

「本当なの?」

 

少女は問う。

 

「私なんかでも、本当に何か出来るの?こんな結末を変えられるの?」

 

こんなちっぽけな存在である自分が、目の前に広がる絶望に満ちた運命を変える事が出来るのか、未だに信じられなかった。そして、白い存在は少女に答える・・・

 

「勿論さ。だから僕と契約して―――」

 

 

魔法少女になってよ

 

 

 

 

 

「!?」

 

次の瞬間、気付いた時には、少女はぬいぐるみを抱いた状態でベッドの中で目覚めていた。カーテンの向こうに光が見える事から、朝が来たのだろう。少女は起き上がり、盛大な溜息を吐く。

 

「はぁ〜〜・・・夢オチ?」

 

彼女の名前は、鹿目まどか。見滝原市の一角にある家に住む四人家族の長女である。見滝原中学校に通う中学二年で、どこにでもいるごくごく普通の少女として暮らしを送っている。

 

「さて、行かなきゃ・・・」

 

まどかの一日は、ここから始まる。

 

「おはよう、パパ。」

 

「おはよう、まどか。」

 

部屋を出て、家庭菜園をしている父親――知久に挨拶をし、母親――詢子の寝室へ向かう。

 

「ママ!ママ!朝!あ〜さ〜!!起きて〜!」

 

ベッドの上、布団に包まる詢子の上に、まどかの弟――タツヤが馬乗りで乗っている。中々目を覚まさない詢子に対し、まどかはカーテンを思い切り開き、布団を勢いよく剥ぎ取って起こす。すると・・・

 

「でぁぁああああああああ!!!・・・あれ?」

 

まるで朝日を浴びた吸血鬼の様な悲鳴とともに詢子は起床、そのまま着替えて歯磨きをする。ちなみに、詢子は寝間着のままである。

 

「最近、どうなのよ?」

 

「仁美ちゃんにラブレターが届いたよ。今月になってもう二通目。」

 

「直に告るだけの根性の無ぇ男は駄目だ。」

 

そんな世間話をしつつ、まどかは顔を洗い、詢子は身だしなみを整えていく。まどかがタオルで顔を拭き終わる頃には、詢子は化粧を終え、朝方の姿から見違える様な容姿となっていた。その後、朝食を済ませ、詢子は職場へ、まどかは学校へ向かって行く。

 

「行ってきます!」

 

家を出て、いつも通り学校へ向かう道を走っていく。その先には、二人の友人――美樹さやかと志筑仁美が待っていた。

 

「おっはよー」

 

「おはようございます。」

 

「まどか、おっそーい!」

 

仲良しのクラスメイト同士集まり、他愛のない会話を交えながら登校する。これが、鹿目まどかの日常の光景だった。何の変哲もない、本当にどこにでもいそうな普通の少女の生活・・・

だが、この日の朝だけは違っていた。いつもの登校時の風景に見慣れない物があったのだ。

 

「あれ?あそこに止まっているのって、もしかしてパトカー?」

 

まどかが気付いたのは、横断歩道の近くの道路脇に止められた一台の車。白と黒のカラーリングは、町中で見かける事も多い警察車両のパトカーなのだが・・・

 

「そうみたい・・・『S.P.D.』って、もしかして宇宙警察!?」

 

「えっ!?あのデカレンジャーですの!?」

 

車両の再度に入っている文字、『S.P.D.』に驚くさやかと仁美。それもその筈、普通の警察車両ならばともかく、対宇宙犯罪者専門の機関である宇宙警察・スペシャルポリスの文字が入った車はそうそう見かけない。まどか達にとって、見滝原でこの車を見るのは初めてだった。

 

「へ〜!!凄い!!普通のパトカーよりかっこいい!!」

 

「さ、さやかちゃん・・・」

 

「うふふ・・・確かに、珍しいですわね。」

 

普段滅多に見掛ける事のないものなだけに、その車は少女達の興味を惹く対象となる。さやかを筆頭に、車両に駆け寄る三人。仕舞いには、携帯の写メで写真を撮り始めていた。すると・・・

 

「こら!何をしているんだ!?」

 

「「「わっ!」」」

 

突然、後ろから掛けられた声に驚いて飛び上がる三人。後ろを振り返ってみると、『S.P.D.』のエンブレムの入った服を着た男性の姿があった。

 

「ご、ごめんなさい!つい、珍しかったものだから!」

 

慌てて謝るまどか。さやかと仁美も申し訳なさそうにしていた。そんな少女達の様子に、男性はさっきまでの険しい表情から一変、笑顔を見せる。

 

「なんてな。別に見るだけなら大丈夫だからさ、そんなに畏まらないで。」

 

「あ、はい。」

 

砕けた口調で話す男性に対し、まどか達も徐々に表情が和らいでいく。

 

「俺は『S.P.D.』の赤座伴番。皆からはバンって呼ばれてる。君達は、見滝原中の生徒かい?」

 

「はい。鹿目まどかです。」

 

「美樹さやかです。」

 

「志筑仁美です。」

 

自己紹介が終わったところで、さやかが疑問に持っていた事を聞く事にする。

 

「あの〜、事件でも起こったんですか?」

 

「ああ、ちょっと調べものでね。この辺りで聞きこみをしていたんだ。ところで、君達、ここ最近変わった事は無かったかな?」

 

バンの問いに、三人は不思議そうに顔を見合わせ、首を傾げる。

 

「さあ・・・特に何も起こっていないと思いますが。」

 

「そうか〜・・・ありがとう。ところで君達、学校は大丈夫なの?」

 

「「「あっ!!!」」」

 

またも三人の声が重なる。まどかを待っていたので、遅刻ギリギリだったのが、さらに時間がなくなってしまった。

 

「ヤバッ!!完全に遅刻だよ!!」

 

「ど、どうしよう!!」

 

「急ぎましょう!!」

 

このままでは間に合わないと慌てだす三人。そんな三人に対し、バンが救いの手を差し伸べる。

 

「よかったら、学校までおくってあげようか?」

 

その言葉に、一瞬ぽかんとする三人。だが、次の瞬間には喜色を顔いっぱいに湛えて・・・

 

「い、良いんですか!?」

 

「ああ、まだ俺は本格的な捜査に入ってないし、見滝原の学校にも丁度用事があったからさ。」

 

「あ、ありがとうございます!!!」

 

「やっほー!パトカーに乗れるぞぉっ!!」

 

「もう・・・美樹さんったら・・・」

 

「ほらほら、そうと決まったら乗った乗った。」

 

こうして、まどか、さやか、仁美の三人はバンの助けによって遅刻を免れたのだった。

 

 

 

「ふう・・・半日かけて走り回ったけど、成果は無しか。」

 

そして時刻は夕方、学校で言えば放課後になる。今朝、まどか達を学校へ送った後、バンはそのまま見滝原市内の捜査を続けていた。捜査内容は、ここ最近見滝原市において観測された、謎のエネルギー反応の調査である。

 

「怪重機を動かせる程のエネルギーか・・・本当にそんなものが現れるのか?」

 

話を聞いた時には半信半疑だった。実際に怪重機が現れたのならばともかく、反応はエネルギーだけというのがどうにも解せない。しかも、それが短期間で十数カ所も現れるなど、絶対にあり得ない事だ。

 

「もしかしたら、かなりデカいヤマかもしれないな・・・よし!!捜査続行だ!!」

 

改めて気合いを入れ直し、ハンドルを握るバン。しばらく車を進めて行くと、一件のデパートの前を通りかかる。と、その時だった。

 

「エネルギー反応!!?こんな所でか!?」

 

バンの持つ、宇宙警察官が携帯している警察手帳にして身分証明書、SPライセンスにプログラムされているエネルギー探知機が反応を示したのだ。

バンはすぐさま車を道路脇に止めると、デパート内へと走り込む。ライセンスの示す方向に従い、デパート内を駆け、反応元を探索する。階段を駆け上がり、通路を曲がり、扉を開く内に、どんどん人気のない場所へと入っていった。

 

「・・・ここか。」

 

遂にライセンスがエネルギー発信源と断定する地点へと到着する。バンの目の前にあるのは、デパート内でここに至るまで何度も潜りぬけてきた扉。バンは念のために、宇宙警察官の携帯用小型拳銃であるSPシューターを取り出し、構えながら扉を開く。

そして、そこには・・・・・

 

「な、なんだこれ!!!?」

 

バンは絶句した。扉の向こうに広がっていたのは、この世の物とは思えない光景―――

蝶、信号、金網、線路、柵・・・様々な物が、まるで支離滅裂な切り絵の様に散在している謎の空間。その広さからしても、デパートの中ではあり得ない物だった。

常識を完全に無視した光景は、バンの思考を一瞬硬直させる程だった。だが、冷静になってみれば、この目の前に広がる光景が何なのかは見当が付いた。

 

「・・・幻想空間か?」

 

かつて地球署に勤務していた時に、鏡の世界の中に人間を閉じ込める力をもったアリエナイザーと戦った事があった。恐らく、これもその類の能力で作り出された幻想の世界だろう。一度引き返す事も考え、後ろを振り向いたが、既に入ってきた扉は消滅していた。完全に閉じ込められた事を認識し、辺りを警戒しながら進む事を決める。

 

「もしかして、これが一連のエネルギー反応事件の謎の正体か?だが、何のために・・・・・!!」

 

異変は、空間内を歩き始めて間もなく起こった。バンを取り囲むように現れる、謎の影。姿を見せたそれらは、カイゼル髭を生やした毛玉の様な外見をした異形だった。

 

「成程・・・手厚い歓迎だな!!」

 

確かめるまでもない。現れた異形達は、ハサミや鎖の様な物騒な物を取り出して敵意を剥き出しにしている。包囲網を見るに、今持っているSPシューターだけでは戦力不足である。バンはそう判断すると、SPライセンスを取り出し、本体横のセレクターを『チェンジ』モードに合わせて構える。そして、

 

「エマージェンシー・デカレンジャー!!」

 

SPライセンスの上部スイッチを押しコールする事で、内部に圧縮収納されている形状記憶金属デカメタルがバンの身体に定着し、デカスーツとなるのだ。

 

「フェイス・オン!」

 

赤い閃光がバンの身体を覆い尽くす。そして、次の瞬間に現れたのは、赤いスーツにマスクという戦闘服を身に纏った刑事――デカレッドの姿があった。

 

「ディーマグナム!!」

 

変身を終えると同時に、デカレッドは専用のビーム拳銃――ディーマグナムを腰から抜く。両手に構えた拳銃からビームが放たれ、先程までデカレッドを包囲していた毛玉達を撃ち抜いていく。

毛玉達も負けじと応戦するも、デカレッドの射撃制度の前には、近づく事も容易ではなく、上手く懐に入り込めても、蹴りか肘鉄で撃墜されていく。

 

「一気に行くぜぇぇえ!!!」

 

毛玉達の攻撃を一切寄せ付けずに幻想空間を突き進むデカレッド。毛玉達が密集している

場所を目指して走り続ける。恐らく、この幻想空間を作り出している何者かは、守りが固い場所に居る筈。そう考えたからだった。

 

「くそっ!!まだ辿り着かないのかよ!!」

 

だが、いくら毛玉達を蹴散らし進んで行っても、敵の本体には辿り着けない。それでもバンはひたすら進み続ける。そして、数百対近い毛玉を倒し、二キロ弱もの距離を走り続けた頃だった。

 

「な、何っ!?」

 

突如、周囲の空間が歪み始めたのだ。自分に襲い掛かってきた毛玉達も、歪みの中へと消えて行く。そうしてしばらくして空間の歪みが収まると、辺りには機材が置かれた、倉庫の様な光景が広がっていた。バンが先の幻想空間に入る前の、デパートのバックヤードである。

 

「・・・反応は、ロストしたか・・・」

 

ライセンスが告げる反応の消失に舌打ちするバン。どうやら、エネルギー反応の謎を解き明かす前に、反応元が消えてしまったようだ。

 

「仕方ない・・・そろそろ相棒達もこっちに到着する頃だし、いったん引き揚げるか。」

 

デカスーツの変身を解除し、デパートを出る事を決めるバンだった。

そしてその頃、別の場所では・・・・・

 

 

 

薄暗いデパートの裏手の資材置き場。その一角で、黄色の光に照らされている場所があった。金髪の少女の手の中、癒し光に包まれているのは、四足歩行の白い小動物。その様子を、二人の少女――まどかとさやかは呆けた表情で見ていた。

やがて治療が終わると、白い小動物――キュゥべえは、まどかとさやかの前に立ち、自身の頼みを口にする。

 

「僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ。」

 

そして、物語は幕を開ける。魔法少女と宇宙刑事・・・本来交わる事のない二つの存在が交錯する時、その終焉にあるのは何なのか―――――

その答えを知る者は、誰も居ない。

 

説明
見滝原市にて、謎のエネルギー反応が続発する。一連の現象について調査をすべく、見滝原市へ急行するデカレンジャー。そこで出会ったのは、この世に災いをまき散らす魔女と呼ばれる存在と戦う、魔法少女と呼ばれた少女達。本来交わる事の無い物語が交差する時、その結末には何が待っているのか・・・
この小説は、特捜戦隊デカレンジャーと魔法少女まどか☆マギカのクロスオーバーです。
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コメント
相変わらずバンの警察らしくないアバウトさは健在ですね。(超AIn12)
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デカレンジャー 魔法少女まどか☆マギカ 戦隊ヒーロー 魔法少女 魔女 クロスオーバー 

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