《インフィニット・ストラトス》〜二人の転生者〜 |
第二話 兄妹の転生
…ここはどこだろう?…からだがやけに軽い…まるで浮いてるような――
その瞬間、俺は急に重力を感じて、落下した。
「ってえ!!」
地面が近かったのか、後頭部に何とも言えない衝撃を感じ、背中にヒンヤリした感覚とやはり痛みを感じた。
「お、おにいちゃん、大丈夫!?」
声をした方に顔を向けると妹の春華が心配そうな顔をしていた。
「ああ……そ、それよりお前は大丈夫なのか!?」
俺はついさっきまでの出来事を思い出し、瞬時に起き上がって春華のカーゴパンツの裾と上衣をめくり上げた。しかしハンドガンに撃たれた傷どころか――
「――昔付けられた傷の跡が完全に無くなってがはぁ!!??」
「お兄ちゃんのエッチ!スケベ!変態――!!!」
春華が俺の頭を殴り、叩きつけてくる。
「ご、ごめっ!ただ傷が大丈夫かと思って!ちょ!やめっ!」
頭を上から叩きつけてくるのでホントに痛い。ってか一体どれだけ叩かれれば――
「あっはっは!どうやら二人共、異常はないらしいねえ。一応、大丈夫かい一ノ瀬兄妹?」
イキナリ声が横から飛んできたので俺は立ち上がり、春華を俺の後ろにやって銃を構えた。幸いにもホルスターの中にハンドガンはあった。
「誰だテメェは!!」
ハンドガンの銃口を超えの主に向ける。俺は銃口を向けながらその人物の服装を見た。
だぶだぶしたマントというかローブというか、そんな布が大量に使われた白い服にサンダルという…昔読んだ神様みたいな服装だった。実際に杖も持ってるし…ふざけた野郎だ!
「ふむ、《誰か?》と問われれば《神様だ。》としか答えられないな。一ノ瀬秋葉少尉」
「…神様、ね。一応言うと俺は神様っていうのは信じないんだが、神様ってんなら証拠を見せてくれよ?」
俺は銃口を向け、睨みながらそう言う。
「おや?キミはもう見ただろう?キミの後ろにいる妹さん、春華准尉の体の傷が全て塞がっているのを。あとは僕が君達をここへ連れてきたことかな?」
確かに…春華の傷は消えていた。それに死んだはずなのに春華が生きていることも含めればコイツが神様ということも大体は納得が行く。
「さて、いい加減その物騒な拳銃を納めてくれないかな?第一…弾倉がなきゃ、話しにならないだろ?」
そう言って奴が出した手には、俺が持っていたハンドガンの弾倉が全て握られていた。これで形勢逆転とまでは行かないが、不利になったのは恐らくこっちだろう。
「…わかった。ただ弾倉は返してくれ。自分の身を守る術は大いに越したことはない」
「ああ、構わんよ。まあここには僕と君たち以外誰も居ないがね。でもすぐには返せない。僕の話を聞いてからにしてもらおう」
やっぱさすがにすぐには返さないか。
「…襲って殺したりは?」
「それなら最初にやってる」
「確かに…」
俺は苦笑いして腰を下ろした。そして神様も腰を下ろした。
「さてと、率直に言うと君達二人は死んだ。ここまでで質問は?」
「ちょっと待て、こら!!前半はいいけど後半の質問要求はおかしいだろ!!」
「冗談だよ。場を和ませようと思ってね?不満だったかい?」
「そういうわけじゃないけどよぉ…」
コイツ…なんか苦手だ。
「でも半分は本気さ。例えば《何で死んだのか?》とか《ここはどこ?》とか《自分たちの小隊の安否は?》ってな具合にあるだろう?」
確かに…
「じゃあとりあえずその三つを教えて!!」
春華が後ろからそう言う。
「わかった。まずは死亡した理由。これは君たちが敵兵に撃たれたからだ。しかし僕は神様だからね、前の神様のせいで酷い人生を歩んだ君達をどうにかしようと思ってここに呼んだ。次にこの場所だが通称《天空の庭》と僕は呼んでいる。そう見えるだろう?」
そう言われて俺と春華は辺りを見渡した。
確かに俺達が座っている場所は大理石っぽい床に縁ぎりぎりに柱が伸びて、天井を支えている。そしてその先は雲の平原。空は雲一つ無い青空。太陽がギラギラと輝いている。
「綺麗…」
「そうだな…」
俺も春華も、こんな光景は見たことなかったので暫く眺めていた。そしてたっぷり堪能した後、神様の話に戻った。
「さて、最後の小隊のことだが、君たち以外は無事に生きてるよ。しかし君達はよほど信頼が厚かったんだね。小隊全員が涙を流していたよ。自分より年下の隊長だったというのに…」
「仲間が死んだら誰だって悲しむだろ…おれだって目の前で部下が死んだら悲しみ、怒るだろう」
俺は少しうつむきながら答える。昔から今までどれだけの仲間や友人の死を目の辺りにして、それがフラッシュバックしそうだったからだ。
「…しかしそれでも戦争を止めない人間はいる。しかしそういう競争本能があったからこそ人間は発展したといってもいいんだがね…悲しいものだ」
「そうだな…」
俺達は皆黙ってしまった。春華に関してはもう目からポロポロと涙を流していた。
「いけない、辛気臭くなってしまったな。まあとりあえず君達は死んだ。ここまではいいな?では次だ。そこで君達には新しい人生を迎える権利があるんだが…どうする?」
一瞬神様が言った言葉が理解できなかった…新しい人生、それはつまり――
「俺達はもう一回生きられるっていうことか!?」
「ああ、勿論出来る限りの望みは叶えよう。まあそれなりの代償はあるけど」
俺と春華は眼を合わせた。春華の眼は「まかせる」と言っていた。
「…じゃあ《普通の生活》を」
「ふむ…普通、というと友達と笑って過ごしたり、学校に行って勉強したり…そんな生き方かい?」
神様はすこし驚いていた。しかし俺達にしてみれば《他人の普通》が《幸せ》であった。
「本当になんでもいいんだよ?《世界の覇権を握りたい》とか《他人を貶めたい》とか《ハーレム大国建国》とか…いいのかい?」
「ああ、俺達は生まれてすぐ捨てられたからな…そういう生活をしたいんだ」
俺は春華の肩を抱いて、そういった。
「ふむ…ある世界で君達のような人物を見たよ。ある姉弟なんだが両親が蒸発してしまってね、それでも姉の方は弟を守りながら生きていた。弟の方は姉に迷惑をかけないように生きて、素直な少年に育って…お互いがお互いを気遣っている姉弟だったよ。なんならその世界にしてみるかい?」
「俺達は普通の世界ができるならどこでもいい!」
俺は自分の決意を固め、そう言った。
「…面白い人物だな、君は。わかった、その世界にしよう。世界の大まかな説明をする。《インフィニット・ストラトスという宇宙空間で使用を目的とされたパワードスーツが開発されたがそれは兵器としての道をたどった。しかし条約が提携され、今はスポーツとして活躍してる。そしてそれは女性にしか扱えないから女尊男卑の世界》だ。ただ僕は君を気に入った。色々な能力を与えるから有意義に使ってくれたまえ。それと《織斑一夏》という男の子とその周辺の人物の事を気にかけてやってくれ。ではまた…」
「またって事は会う予定があるのか?」
「可能性はあるだろう?…っと、ほら、ハンドガンの弾倉だ。あと君の体の傷は消してない。まあ転生したら零からだから転生後の事故で同じ傷を偶然的につけてあげるよ。あとそのハンドガンは十五歳の誕生日の時に届くようにしとくよ。生まれてすぐ銃刀法違反はしたくないだろう?」
「確かに…でもそれじゃあ弾倉返してもらっても意味ないな」
俺は苦笑いしながら言う。
「それもそうだな…さて、じゃあいくよ。転生魔法、発動!!」
その瞬間、俺と春華の足元に魔方陣みたいなものが現れ、俺と春華は転生された。
「頑張ってな…一ノ瀬秋葉君…」
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