そらのおとしもの〜天使と仮面騎士の物語〜 第3話『その名はゲイザー/忍び寄るFの影』 |
【鳴海探偵事務所】
「フォルスが出たって本当なんですか、照井さん!?」
「ああ。非常に分かりにくかったが、以前お前が話した特徴と一致していた。恐らく間違いないだろう」
翌日、学校を終えた刹那は翔太郎がいる探偵事務所に直行し、そこで照井からフォルスについて聞いていた。ちなみに、智樹は女子更衣室を覗いてそはらからお仕置きとして殺人チョップを食らったため、現在はベッドの上である。
「ねぇねぇ、フォルスって何なの?」
探偵事務所所長で照井の嫁である亜樹子はフォルスが何なのか分からないため、質問する。
「それは、僕が説明しよう」
左手に本を持っている、刹那と同い年ぐらいの少年―フィリップ―が前に出て説明を始めた。
「フォルスとは人間とは別の存在……神族や魔族、妖怪などの根絶を唱えるアロガンスという組織が作った特殊な改造人間のことだよ。分かりやすく言えば、((記憶をメモリではなく肉体に直接埋め込んだ|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)) 人間だよ」
「改造人間!? 私、そんなの聞いてないし!!」
フィリップの説明に亜樹子は動揺するが、いつものことなので一同はスル―する。
「同盟関係にあったミュージアムが滅んでガイアメモリ事件が終息を迎えつつある中でフォルスが出てきたって事は、アロガンスがいよいよ本格的に動き出すってことか?」
誰もが疑問に思っているであろう懸念事項を口に出すと、刹那が無言で頷く。
「帰ったら、皆にも警戒を促しておくよ、翔兄」
「警察でも対策を練っておく」
「ああ、元気でな」
翔太郎の言葉を最後にその場は解散した。
★★★★★
一方、そのころ女性陣は
「あっちが肉屋で、こっちが八百屋」
「後、魚屋に薬局はそっちですね」
「ありがとうございます、そはらさん、リインさん」
「気にしないでくださいです、イカロスさん」
リインとそはらが土地勘のないイカロスに風都の案内をしていた。
「だいたい案内したし、ちょっと喫茶店で休憩しようか、2人共」
「そうですね」
2人がそう言ってイカロスを喫茶店に連れていこうとした時、急に商店街が騒がしくなり、3人が前を見ると、大勢の人々が必死に何かからイカロス達の居る方向に逃げてきた。
「な、何が起こったの!?」
そはらは突然の事態に慌てるが、イカロスとリインは冷静だった。
「うわぁあああああ!!」
吹き飛ばされた1人の男性が地面に激突する音と共に複数の怪人が現れた。隊長と思われる虫のような怪人が1体と兵隊の様な怪人が5体である。町を破壊していた怪人達の1体がリイン達に気づき、走り寄ってきた。
「2人共、逃げますよ」
「分かりました」
イカロスが2人に呼び掛けるとリインは返答するが、
「あ…ああ……」
そはらは目の前の存在に恐怖し、足が震えて動けない状態だ。
「そはらさん!!」
リインが肩を揺らすが、そはらは何も反応を示さない。その間にも怪人は近づいてきて、3人に刃を振り下ろそうとしていた。
「くっ…!」
3人の命が失われようとしたその時…、
1台の白いバイクが怪人をはねた。
「大丈夫か、3人共!」
「お兄ちゃん!」
「刹那!」
ヘルメットのバイザーを上げた刹那は3人の無事を確認する。
「リイン、2人を連れて下がっていろ」
「はい! 行きますよ、2人共!!」
リインはイカロスと一緒にそはらを引きずりながら近くの物陰に隠れた。
「ワームタイプが1体、量産タイプのソルジャーフォルスが1個小隊か」
刹那は眼前に存在する敵戦力を分析すると専用バイクであるゲイズチェイサ―を降りると、腰にベルト……ゲイザードライバーを巻いて右手にカードを持った。
「変身!」
≪KAMEN RIDE:GATHER≫
刹那がバックルにカードを挿入すると、電子音と共に出現した複数のシルエットが刹那の体に重なり、その体を変えた。全体的に白く、ところどころ金色のラインが走った白の仮面騎士。それが、工藤刹那の変身する仮面ライダーゲイザーだ。
「仮面ライダーだと! 待て、我々は世界平和のために戦っている! この世にはびこる害虫を駆除ずるのに手を貸してほしい!」
ソルジャーの1体がゲイザーを勧誘するが、ゲイザーはそれを無視してライドブッカーUをソードモードに変形させながら接近し、一気に振り下ろして爆散させた。ソルジャーを問答無用で切り倒したゲイザーは怒りで手を震わせながら言った。
「ふざけるな! お前らアロガンスがやっていることは不当な差別に虐殺以外の何物でもない!」
それを聞いた隊長のセパルキュラフォルスは残念そうに言った。
「ならば、仕方ない。ここで死ね!!」
セパルキュラフォルスの命令でソルジャー達がゲイザーに斬りかかった。ゲイザーもそれを迎え撃つべく剣を構えた。先に突っ込んできた3隊は、糸を縫うように動きながら胴体を真っ二つにした。背後から襲ってきた1体は回し蹴りで体勢を崩してからライドブッカーで貫いた。
「馬鹿な…、ソルジャー部隊があっという間に全滅だと!」
「勝敗は決した! おとなしく投降しろ!!」
ゲイザーがライドブッカーの剣先を向けながら降伏勧告を出す。
「まだだ! まだ勝敗は決していない!!」
そういうと、セパルキュラは急に目にも止まらない速度で動き出した。
「ワーム特有のクロックアップか」
ゲイザーは冷静にブックモードにしたライドブッカーUから1枚のカードを取り出してバックルに装填した。
≪ATTACK RIDE:CLOCK UP≫
ゲイザーもセパルキュラに対抗してクロックアップを使い、異なる時間の流れに身を置くことで周囲の存在が止まって見えるようになった。セパルキュラフォルスはゲイザーがクロックアップしたことに一瞬動揺するが、すぐさま右手の武器で斬りかかる。ゲイザーはライドブッカーUを変形させる時間が惜しいといわんばかりにその攻撃をかいくぐって殴る蹴るの攻撃を加えて次々とダメージを与えて吹き飛ばす。
「とどめだ」
ゲイザーは必殺の一撃を決めるべくカードを1枚取り出して使用する。
≪FINAL ATTACK RIDE:G・G・G・GATHER≫
ゲイザーはジャンプして右足を突き出し、目の前に展開された10枚のディメンションフィールドを通過して必殺の蹴り……ディメンションキックUを叩き込んだ。
≪CLOCK OVER≫
それと同時にゲイザーの時間の流れも元に戻った。敵の全滅を確認したゲイザーは変身を解いた。
「3人共、大丈夫か?」
「お兄ちゃん!」
リインは刹那に駆け寄り、その胸にダイビングする。
「うおっと!」
リインのあまりの勢いに刹那は後ろに倒れそうになるが、何とか踏みとどまる。
「よしよし」
刹那がリインの頭を撫でていると、イカロスも静かに近寄ってきて抱きついた。
「イカロス?」
「振りほどかないでください……、さっきは本当に死ぬかと思ったんですから」
「そうか」
刹那はリインを撫でるのを止めてイカロスを優しく抱きしめた。
「むー、イカロスさんだけずるいです。なら、私は」
リインはそういうと目をつぶり、そのまま刹那にキスした。
「えっ――」
刹那とイカロスは数秒ほど呆然とし、その事実を認識した時に驚愕した。
「な、何をす、するんだ、リイン」
「何って……、キスですよ」
刹那は義妹の不意打ちによって完全にテンパっていた。
「リイン……、何をしているんですか?」
イカロスは瞳の色が赤くなり、戦闘態勢に入った。
「イカロス、お前こそどうしたんだ?」
「気にしないでください。少し本気でリインさんとOHANASHIするだけです」
「望むところです、イカロスさん」
リインも臨戦態勢に入る。2人は、刹那から離れて互いに構え、今にも一戦交える空気になった。
「ふ、2人共、こんなところで喧嘩はよせ!」
ちなみに、近くで3人のやり取りを目撃していた人物がいる。言うまでもないが、そはらである。
「私、絶対に忘れられているよね…」
そはらの叫びは空に虚しく響いた。
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