そらのおとしもの〜天使と仮面騎士の物語〜 第5話『破砕の衝撃』
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【工藤家リビング】

 

「で、結局その怪物を逃がしちゃったわけね、あんた達は」

「ああ」

「そうなるな」

 

戦闘から2時間後、翔太郎とフィリップは探偵事務所、照井竜は警察署で情報収集や被害の確認、刹那と智樹は工藤家で反省会と対策会議を行っていた。何かあった時は互いの携帯に連絡することになっている。

 

「あいつの装甲、やたらと硬いんだよ」

「おまけに必殺技も普通に効かない確率が高い。あの装甲をどうにかしないと」

「はいは〜い」

 

シリアスなムードの中、アストレアが手を挙げた。

 

「イカロスさんのアポロンを使って消し炭にしちゃえばいいと思います」

 

その発言にニンフは「何とんでもないことを言ってるんだ!!」という顔をし、普段無表情なイカロスでさえわずかに動揺を見せた。

 

「アンタ、町中であれを使うつもり!?」

「だって、そんなに装甲が硬いならまとめて吹っ飛ばすしかないじゃないですか…」

「イカロス、そのアポロンって言うのは何だ?」

 

刹那はニンフとアストレアを放置し、イカロスにアポロンの説明を求める。

 

「アポロンは、元々私のお母さんが今は亡き伯母さんのために作ったあらゆる存在を封印し、破壊する凍魔剣」

 

凍魔剣という言葉に刹那とリインは反応するが、口には出さない。

 

「と対になる弓で、5割に満たない出力でも町1つは楽に滅ぼせる威力はあります」

「それは、使えるわけねぇよな」

 

智樹は頭の後ろで手を組みながら言う。一方、刹那は別のことを考えていた。

 

(まさか『あれ』作ったのはダイダロスさんなのか?それに今の台詞から考えると、俺とイカロスの関係は…)

「ねぇ」

 

刹那が1人思考していると、ニンフがそれを中断させた。

 

「何だ?」

「装甲が邪魔なんでしょ。だったら、防御力を無視出来る攻撃をするなり、装甲を『分解』すればいいじゃない」

「そんな簡単に出来れば苦労しないっ『いや、出来る!』刹那?」

 

ニンフの発言で活路を見出した刹那は智樹の発言を中断させる。

 

「ライダーではないが、今ニンフが言ったことを出来る魔法がある」

「魔法?お前確か魔力は無かったよな」

「そうだ。だけど、ゲイザーに変身してアタックライドとしてそのカードを使えばいけるかもしれない」

 

刹那が喋り終えると携帯に着信が入ったので電話に出た。

 

「もしもし」

『刹那かい』

「フィリップか、何か分かったのか?」

『検索中に奴らが次に何処を狙うのかが分かった。敵の情報は現地で翔太郎に説明させるからすぐに向かって欲しい。場所は――――』

「分かった、すぐに行く」

 

電話を切ると、智樹の方を向いた。

 

「智樹、今すぐ出るぞ!奴らがまた攻撃を仕掛けてくるらしい」

「おいおい、休む暇もないのかよ」

「頑張ってください、お兄ちゃん、智樹さん」

 

祝福の風に見送られ、刹那と智樹は本日2度目の出陣を行うのだった。

 

 

★★★★★

【風都大通り】

 

「さあ、今度こそこの風都から魔族や神族を消し去ってくれるわ!!」

 

前回のカタツムリ似フォルスがそう言うが、彼らを出迎えたのは木枯らしだけだった。

 

「誰もいませんね…」

 

随伴していたソルジャーの1体が呼び掛けるが、その他大勢は沈黙していた。

 

「それにしても、いったい何故誰もいないんだ?」

 

 

「それは、お前達が攻めてくる前に警察に頼んで一般人を避難させたからだ」

 

その沈黙を破るように刹那と翔太郎、智樹が現れた。

 

「今度は逃がさないぜ!変身!」

≪CYCLONE・JOKER≫

「変身!」

≪KAMEN RIDE:GATHER≫

「変身!」

 

変身を終えたダブルとゲイザー、龍騎は敵部隊に突っ込んでいった。

 

「そりゃあ!」

 

ダブルは風を纏った拳でソルジャーを殴り飛ばし、ハイキックで後ろにいるソルジャーを蹴り飛ばしたりした。

 

≪STRIKE VENT≫

 

龍騎は右手にドラグクローを付けてドラグクロ―・ファイヤーで複数のソルジャーをあの世に送っていた。

 

「大半が翔兄達に引きつけられている今の内にリーダーを倒しておくか」

 

ゲイザーは2人の様子を見た後ライドブッカーUで敵に突貫し、カタツムリ似フォルスの下にたどり着いていた。

 

「何をするのか分からんが、どんな攻撃もこの体には効かんぞ!」

「それはどうかな?」

 

ゲイザーはライドブッカーUをガンモードにしてけん制しながら接近した。敵は体を硬化させてそれに耐えた。その間フォルスの動きは止まっていた。

 

「この時を待っていた!!」

「何?」

≪ATTACK RIDE:BREAK IMPULSE≫

 

ゲイザーは敵に考える間も与えずにカードを1枚取り出して使用した。その上で接近し、右腕を鷲掴みすると、硬化したフォルスの体にひびが入っていった。

 

「くそ!!」

 

フォルスはひびが内臓を脅かす前に素早く硬化した部分をパージし、ゲイザーから距離を取った。

 

「本来なら今ので完全消滅しているはずだが、さすがはスペード7……トリロバイトアンデッドをモデルに作られただけあってしぶといな。さしずめトリロバイトフォルスか」

「何故それを知っている!?」

「情報収集に長けた仲間が調べてくれた」

 

とはいえフォルスも相当な痛手を負っているということに変わりはない。今ならその気になれば通常兵器でも倒せると思えるぐらいに装甲が無くなっている。

 

「チェックメイトだ」

≪FINAL ATTACK RIDE:G・G・G・GATHER≫

 

ゲイザーはライドブッカーUをソードモードで構え、目の前に10枚のディメンションフィールドが展開される。

 

「このダメージじゃ受け止められない!逃げるか」

≪SPIDER≫

「な、何だこれは!?」

 

逃走しようとしたフォルスの動きをダブル・ルナトリガーが網を使用して封じる。

 

「逃がさないといっただろう」

【後は任せたよ、刹那】

「ありがとう、2人共」

 

ゲイザーはダブルLTに礼を言うと、迷いなくディメンションフィールドを走り抜けてフォルスにディメンションスラッシュUを決めて爆散させた。

 

 

★★★★★

 

 

その戦いを戦場からそう遠くないビルの屋上で見ている1人の少女がいた。イカロスの幼馴染の1人、ニンフである。

 

「風都に仮面ライダーと呼ばれる白い剣士が現れるってのは聞いてたけど、まさかそれが刹那とは思わなかったわ」

 

妖精を思わせる虹色の羽根を煌めかせているニンフの視線の先では、変身を解除した智樹が他の2人とハイタッチしている。

 

「7年前にダイダロスさんの所から盗まれたD2シリーズの片方をどうやって手に入れたのかは分からないけど、かなり使いこなしているみたいね。ま、イカロスの彼氏が装着者ならダイダロスさんも文句言わないでしょ」

 

ニンフは羽根を羽ばたかせてその場を去った。

 

「意外と面白そうだし、私もここに住もうかな?」

 

そう言うニンフの表情はまるで新しいおもちゃを見つけた子供の顔だった。

 

説明
[そらのおとしもの〜天使と仮面騎士の物語〜]
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第3話『その名はゲイザー/忍び寄るFの影』 http://www.tinami.com/view/402731
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