死にたがりの第八十一話 それは奇跡か必然か……
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あらすじ

 

 

何か猫二匹が簡単に捕まりました

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

それは、ある休日の昼下がりだった……。

 

 

ピンポーン。

 

 

「あ、誰か来たみたいやな」

 

 

「俺が出ようか?はやてちゃん、今忙しそうだし」

 

 

今日もみんながそれぞれ蒐集に出向いてくれているので、俺とはやての二人きり。

それにしても、こんな時間に……誰が?

 

 

「良いんよ。アニス君は病人やさかい。それに、腕ももうろくに動かないんやし、無理したらアカンよ」

 

 

そう、この数日で、クイーンが言った事が当たってしまったのだ。

日に日に腕が痺れ、ろくに動かせなくなってしまった。

 

 

「……ごめん……」

 

 

「気にせんでもええって。ほな、ちょっと行って来るな」

 

 

はやては笑顔のまま、リビングから出て行った。

……はぁ、どうしたものかな……。

 

 

もう少しで、胃も完璧に動かなくなりそうだし……。

ああ……キツイな……ここまで来ると、不自由って感じがするよ……。

いや、足が動かない時点で不自由か……。

 

 

ああ、一体俺は何処に向かってるのだろうか……。

 

 

その考えてた時。

 

 

「帰りい!!あんたらには話す事なんかこれっぽっちもあらへん!!」

 

 

玄関の方から、はやての怒号が聞こえてきた。

一体どうしたし……。

 

 

俺は痺れてる手で、車いすの自動操縦のレバーを動かし、リビングを出る。

一体どうしたんだろう?

 

 

そして、リビングを出て最初に見えたのは。

バリジャケットを纏っているはやてだった。

 

 

「はやてちゃん?どうしたの?」

 

 

「あ、アニス君!出て来たらアカン!!」

 

 

何故かそう言われた……。

何故に?て言うか、誰が来てる……の……。

 

 

「えっ……何……で?」

 

 

そこに居たのは……。

 

 

「アニス君……」

 

 

「アニス……」

 

 

なのはとフェイト。

そして、リンディとクロノ……その四人だった……。

 

 

「っ!?クイーン!」

 

 

「駄目や!アニス君は魔法使ったら絶対に駄目!」

 

 

「でもっ!」

 

 

どうしてここに管理局が……。

そうか、やっぱりあの猫、捕まったのか……おいおい、マジかよ……。

絶対もう一匹が助けたとばかり……。

 

 

「ア、アニス君落ち着いて!」

 

 

「そうだよ!私達は、アニスを捕まえに来たんじゃない、話し合いに来たんだよ!」

 

 

「誰が管理局の言う事なんか信じるか!アニス君、えぇから早ぅ逃げて!て言うか何であんたらアニス君の事知ってんねん!」

 

 

何かはやてがもの凄い喧嘩腰なんですけど……。

どうしたものかな……。

 

 

「はやてちゃん、ストップ。少し落ち着こうか」

 

 

「で、でもアニス君。管理局が……」

 

 

「そこの二人なら大丈夫だよ。あの二人は知らないけど」

 

 

リンディとクロノを見る。

こら、目をそらすなそこ。

 

 

「どうやら、話し合いに来たってのは本当みたい。現に、なのはちゃんはデバイスを首に掛けてない……それを見るに、残る二人もデバイスは持ってきてないんでしょ?フェイトちゃんとクロノ。リンディさんは知らないけども」

 

 

「うん、私も今日はバルディッシュは預けてる」

 

 

「僕もだ」

 

 

「私もよ」

 

 

ふむっ……まぁ、良いか。

それにしても……。

 

 

「何時まで面食らってるの?はやてちゃん」

 

 

「いやっ、だって……アニス君、管理局の人と知り合いなん?」

 

 

「そこの女の子二人は友達だけどね。後の二人は知らん、塩でも撒いておいて」

 

 

「おい!どうしてそうなる!」

 

 

「うるさい変態!さっさと帰れ!もしくはそのまま死ね!」

 

 

「い、言うに事欠いて、君は!!て言うか誰が変態だ!」

 

 

「クロノ」

 

 

《クロノ》

 

 

「クロノ君」

 

 

「ク、クロノ?」

 

 

「「《いえーい!》」」

 

 

「い、いえーい……」

 

 

フェイト、これは通過儀礼だよ……。

これを越えなければ、クロノ弄りは出来ないぞ!

 

 

「はやてちゃん、取り敢えず、お客さん」

 

 

「う……うん……」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「それで、どうやってこの家が分かったんですか?一応、ウチの守護騎士の一人が補助魔法で隠していたと思いますけど」

 

 

「その前に、やっぱり君が闇の書の主って事で良いのか?」

 

 

「……まぁ、そうなっちゃってるみたいだね」

 

 

あれから四人とも家の中に入れて、お話し中。

どうしてこうなった……。

 

 

「何時から君は闇の書の主に?」

 

 

「う〜ん……かれこれ数か月前からかねぇ。あ、ちょっと待って。ちょっとそこの三人。いがみ合っちゃ駄目だよ?」

 

 

何かなのはとフェイトが、はやてと言い争いになってた。

何これ見苦しい……。

 

 

「貴女はアニス君の何なのかな?」

 

 

「そうだよ?アニスの何なのかな?」

 

 

「ウチの事はえぇねん、でも君達は何なんかな?なれなれしくアニス君の名前呼んじゃって」

 

 

……よし、あっちはスルーでいいや。

何かめんどくさい。

 

 

「君は自分がやってる事の重大さが分かっているのか?」

 

 

「ふぅ……あのねぇ。そんなの俺が一番分かってるに決まってるっしょ。俺がやってくれなんて頼むと思う?むしろ止めてたわこのアホ。だけどねぇ……聞かないんだよ、俺の話」

 

 

ずずーと紅茶をすすりながら話を続ける。

おおう、腕が振るえる震える。

 

 

「闇の書の事は、どうせ調べたか何かしたんでしょ?闇の書はランダムで転移し、主を選ぶ。そして守護騎士が目覚めて、闇の書を完成させる為に魔力を蒐集し続ける……。まぁ実際、闇の書を完成させたら主事巻き込んで死ぬんだけどねぇ」

 

 

「それを知っていて、どうして蒐集をしているんだって聞いてるんだ!」

 

 

「黙れよ小僧。テメェなんかにはあいつらの事なんか分かんねぇよ」

 

 

「っ!」

 

 

俺は殺気を込めてクロノを黙らせる。

ふぅ……俺もこれ位なら出来るしね。

 

 

「俺がやれ何て一言も言っていないって言っただろ。守護騎士達は自分の意志で蒐集をしている。俺はそれを止める手立てが無かった……て言うか、思いつかなかった。そして時間ばかりが取られて、この様さ……」

 

 

自分の足を……体を見て、もう一度、クロノとリンディに向き合う。

 

 

「今じゃ腕にも呪いが来て、物を持つのも辛い。足は完全に動かないし……やんなるよ、ホント……」

 

 

「それじゃあ……この事件は、貴方の意志ではないのね?」

 

 

「そうなりますけども……俺は納得いっていない。むしろ、悔やんでる。あいつらは悪くない、俺の呪いを解こうと必死で動いてくれている……俺ならどうなっても良い。あいつらだけは見逃してやってくれないかな?」

 

 

「……アニス君……」

 

 

はぁっ……どうしたものかな……。

ここでつかまると、計画がなぁ……それは痛い……せめてそれが終わってからでも……。

 

 

「はぁっ……君は完全に自分の立場を忘れている様だね?」

 

 

「?俺の立場?」

 

 

「そうよ。アニス君はクロイツベル一族の子。この事件の八端が、アニス君の守護騎士なら、罪には問われないわ」

 

 

「……あー……そういやそうか……クロイツベル一族は捕まえられないんだったっけ?でも、守護騎士は無関係じゃ……」

 

 

「闇の書の守護騎士はプログラム。そして、それを使っているのがクロイツベル一族なら、話は簡単よ」

 

 

「ふぅーむ……俺自身、プログラム扱いされるのは嫌なんだけど……まぁ、あいつらが無事ならそれに越したことはないか。それよりも、聞いて良いですか?」

 

 

「何かしら?」

 

 

「どうして俺の居る場所が分かったんです?」

 

 

「……そうね、これは話さなきゃいけないわね……」

 

 

「……実は、君を……いや、正確にはそこの八神はやてって子を監視していた人が居たんだ……そしてつい最近、その人の使い魔を捕まえて……」

 

 

「それで、監視してる奴が分かったと……」

 

 

クロノは静かにうなずく。

まぁ、そうなるわな……信頼を置いていた人が、まさかこんな事をしていたとは思わんわな。

 

 

「それで、その人を捕まえて居場所を発見したと?」

 

 

「そうなる。だが、その人が言うには……」

 

 

「闇に書の主は、本当は俺じゃなく、はやてちゃんだっ、て言いたいんでしょ?」

 

 

「そうだ。だから、どうして君が闇の書の主になっているのか聞きたい」

 

 

「……そんなの、逆にこっちが聞きたいくらいさ。俺だって、どうしてこうなったか全く分からないんだよ」

 

 

「そう……分かったわ」

 

 

ありゃま、随分と素直だね。

こりゃ何かあるのかね?

 

 

「おお、怖い怖い。提督ともあろう方が、こんなに素直とは」

 

 

「それは皮肉と取っても良いのかしら?」

 

 

「さぁ、どうでしょうね?」

 

 

「……はぁ、やっぱり貴方って、食えない子ね」

 

 

「だからこんなガキ相手に何をしようとしてるんだって話ですよ。全く……おっと!」

 

 

ガシャン!

 

 

あー、やっべ、カップ落しちまった。

やれやれ、手の自由がきかないって、困るなホント。

 

 

「アニス君大丈夫か!?」

 

 

「あ、うん。ごめんはやてちゃん、滑ってカップ落しちゃった」

 

 

「良いんやこれ位。それに、アニス君腕があんまり動かないんやから仕方ないで」

 

 

「ありがとう」

 

 

いやはや、どうしてものかな、本当に……。

あー、手の感覚ねぇや……。

 

 

「所で……アニス君の事だし、今回も何か策があるのかしら?」

 

 

「あー、そうですね……あるっちゃあるんですけども……まぁ……ねぇ……」

 

 

絶対にこいつら駄目だとか言いそうなんだけど……どうしたものかな……。

賛同してくれるかどうか……。

 

 

「アニス君、策があるってホントなの!?」

 

 

「私達が出来る事なら何でもするよ!」

 

 

「ちょっ、君達!?」

 

 

まだ何も言ってないのに、賛同すんのはぇぇ……。

どうしてこうなってんの?

 

 

「落ち着いて、二人とも。先ずはアニス君の話を聞かないと」

 

 

「そ、そうだ!落ち着くんだ!」

 

 

何とかリンディとクロノが二人を止める。

いやぁ、良かった。

 

 

それからはやても戻って来たので、二期でなのは達がやっていた方法を伝える。

まぁ、アルカンシェルの話は伏せておいた。

だって、局員でもない俺が知ってたら不自然でしょ?

 

 

「それで、その核を何処かで完全に消し去りたいんですけど……何か無いですか?」

 

 

「待て待て……その方法はどうやって見つけたんだ?そして、どうして君が知っている?それも、管理局の情報には無い物ばかりだぞ……」

 

 

「クロイツベルの情報網を舐めてもらっちゃ困る。これ位、三歳の時座学で覚えさせられたわ」

 

 

「さ、三歳って……まだ言葉も曖昧な時期じゃないか……」

 

 

「それでこんな規格外に……」

 

 

「よしはやてちゃん、後で頭突きな」

 

 

規格外とはこれまた酷い……。

せめてチートと言ってほしい!

 

 

「そうね〜……それを消し去るくらいの威力がある物は、あると言えばあるんだけども……」

 

 

「まさか艦長、あれの事を言ってます?」

 

 

「そうよ?」

 

 

「ん?あれってなんです?」

 

 

「そうね。アニス君ならこの話も習ったかも知れないから言うわね?あれって言うのは、アルカンシェルの事よ。だいぶ前に起こった闇の書事件にも使われた広範囲の魔導砲。その闇の書の核を消し去るのなら、その魔導砲を使うのが一番よ」

 

 

「だけど、それを何処で撃つかが問題なんだ。こんな所で撃ってしまったら、大変な事になる」

 

 

「……ふむぅ……それって、宇宙で撃つことって可能ですか?」

 

 

「えっ?えぇ、それ位なら大丈夫だと思うけど……」

 

 

「もしかして君……」

 

 

「……そう、核を宇宙で消し去ろうと考えたよ……」

 

 

まぁ、まんま受け売りなんですけどね……。

でも、今の俺の状況から見て、時間が無いしね。四の五の言ってられない。

 

 

「でも、それをするには……管理局の……リンディさん達の協力が必要になってくる。お願いできますか?」

 

 

「……まぁ、ジュエルシード事件での恩もありから……これで貸し借りはチャラって事で言いかしら?」

 

 

「はい、それで構いません」

 

 

「分かったわ。それじゃあ、今日から私達局員も、アニス君の作戦に賛同します」

 

 

「「やった!!」」

 

 

「はぁっ……艦長がそう言うのなら……」

 

 

なのはとフェイトは喜び、クロノは呆れている。

そして、はやては。

 

 

「アニス君……助かるん?」

 

 

「……まぁ……正直言って、このタイミングで、この人達が来たことは奇跡かな?何とか、助かり確立を上げれたっぽい」

 

 

「良かった……ホンマに良かった……」

 

 

泣き崩れてしまった。

はぁ、迷惑かけっぱなしだな、俺……。

 

 

「……今日の所は、帰ってもらえませんか?守護騎士達と話さないといけないので」

 

 

「分かりました、ではまた日を改めて伺います」

 

 

「はい、分かりました」

 

 

「それじゃあアニス君、またね」

 

 

「ばいばい、アニス」

 

 

「うん、ごめんね?見送り出来なくて」

 

 

「ううん、気にしてないよ」

 

 

「そうだよ。アニスは、ゆっくり休んでて?」

 

 

そう言って、皆は帰って行った。

ふぅ、何とかこれで行ける……。

 

 

「はやてちゃん、いつまで泣いてるのさ?」

 

 

「だって……アニス君が……グスッ……アニス君がぁ……」

 

 

「全く……よしよし……」

 

 

もう力が入らない手で、はやての頭を撫でる。

……もう、感覚も無くなってきている……。

 

 

早く守護騎士を説得しないと……。

いや、でも……案外すんなり受け入れてくれたりして……。

 

 

今後の事を考えながら、俺ははやての頭を撫で続ける。

 

 

……ホント、奇跡ってあるんだね……。

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奇跡も、魔法も……あるんだよ……?
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リリカルなのは俺にしては珍しい真面目回

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