《インフィニット・ストラトス》〜二人の転生者〜
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第五話 IS学園へようこそ!

俺達は今《IS学園》のゲート前である人物を待っていた。何故かって?そりゃあ編入する為さ。どういう事情で動いたかは不明なんだが女性にしか動かせないISを男の俺が動かしてしまったのだ。しかし《藍越学園》の試験が終わった後だったため、編入という形になってしまった。そして結果的に今日の入学式に間に合わなくてゲート前で教諭待ち、という状況である。ついでに春華も一緒である。

「っていうか意外と入試は楽だったな……実技はそうでもなかったが」

「お兄ちゃんにしてみれば筆記は簡単だよね!実技は……相手が悪かったよ」

《IS学園》の入試は筆記と実技で成り立つのだが、筆記がいくら良かろうと実技で適正が低ければ意味が無いので落とされるらしい、ついでに俺達二人は――

「ってか何で春華IS適性AからSに上がってんだよ?」

「お兄ちゃんにも言えることじゃない?男性なのにSって……普通じゃ考えられないし」

「確かに」

ついでに筆記は自己採点した結果二人共満点だったのだが、実技は春華はあと一歩、殆ど運が無かったという状況で負けてしまった。俺の場合は勝ったのだが……アレは果たして勝ったといえるんだろうか?

そんな事を考えていると、校舎の方から一人の人物がやってくるのが見えてきた。

黒いハイヒールにストッキング、黒のスーツ。髪まで黒なんだから黒づくしだ。しかしそれがその人物の白い肌とシャツに合っていて見事な調和をなしている。

その人物は長い髪を少し下の方で縛っている。俺と同じうなじの所で縛っているようなものだが。

やがて、その人物が俺達二人の前で止まった。

若干つり上がった目から放たれる眼光は厳しいようだが僅かな優しさを含めており、着ている服装が整っていて、スーツがよく似合う長身とボディラインがその雰囲気を更に引き立てている。

そう、この人物こそ俺の剣の師匠であり、義理の姉であり、最も尊敬する人物であり、一夏の実の姉である人物、織斑千冬さんだ。

「スマンな、待たせてしまって」

「いえ、別に構いません」

第一発言は思っていた厳しい口調の言葉ではなく、謝罪の言葉だった。意外といえば意外だったが特におかしくもないので、そこは普通に返答する。

「思ったより職員会議が長引いてな。なにせ男性のIS操縦者が二人も入学するんだからな。しかし、よりにもよって身内だからな……何時まで経っても世話が焼ける」

「スミマセン、まさかこんなことになるとは想像もしてなかったので。出来る限り手を煩う事のないように善処します」

「まったく、そうしてもらいたいものだな」

冬姉は呆れた声でそういうと「ついてこい」と一言言うと、校舎に向かって歩き出した。俺達も後を追う。

さっき言われた《男性のIS操縦者が二人》というのは一人は俺でもう一人は冬姉の弟の一夏だった。あいつも何でかしらないが動かしてしまったらしい。全く、変な因果だ。

「そういえば冬ね――織斑教諭、一つ聞きたいのですが?」

「なんだ?」

俺達は歩きながら言葉を交わす。

「入試の時の実技なんですが……結果的には自分の勝ち、となっていますが本当にそれでよかったんでしょうか?」

「お前が私の乗っていたISのシールドエネルギーを0にしたんだ……不服か?」

そう、俺の入試の相手は冬姉だった。しかしその勝ち方があまりにも意外な勝ち方だったのだ。

「そういう訳では……しかし、自分の乗ってたリヴァイヴの武器の弾が切れて、教諭の近接ブレードを折り、弾切れの銃器を鈍器にしてトドメというのは、なんというか、型破りというか……」

「実戦ではどうなるかわからんからな、どんなに型破りでも勝ちは勝ちだ。誇っていいと思うが?事実、折れた近接ブレードでも私は立ち向かっていったしな」

冬姉は校舎内の階段を登りながら言う。

「ありがとうございます。しかし自分はあれで師を超えたとは思っておりませんので」

「そうかな?現役時代の私のデータを倒して入試でも私自身を負かしたのだ。十分超えていると思うが?」

「そうですか……」

未だに複雑な心境だがこれ以上言っても平行線だと思い、黙った。

やがて自分と春華のクラスの一年一組の前で止まった。

「いいか、私が呼んだら入ってくるんだ。呼ぶまで入ってくるなよ」

「わかりました、織斑教諭」

「わかりました!」

俺と春華は頷く。

それを確認すると冬姉は教室の中に入っていく。その瞬間、聞きなれた声が聞こえて、ずっこけるような音が聞こえた。

――…パアンッ!…――

おお、すげえいい音。

「げえっ、関羽!?」

――パアンッ――

ホント凄くいい音だ。若干引くぐらいの。アレだと食らった奴は相当痛いだろうに。

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

関羽と言った奴の心もわからんでもないが冬姉の言うとおりだな。

その後暫くして冬姉の凛々しい言葉が聞こえてくる。

「諸君、私が織斑千冬だ。君達新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

多少暴力発言のような気もするが、さすが冬姉だ。教師はこうでなくては。特に《出来ない者には出来るまで指導してやる》という言葉には感激した。しかし俺は十五才じゃなくて十六才だ。それは何故か?俺の誕生日が四月二日だからだ。いいのか悪いのかちょっと微妙な日だな。

そんなことを思ってると教室から盛大な女子の黄色い声が聞こえてきた。

「キャーーーーー!千冬様!本物の千冬様よ!」

そりゃそうだろ、本人なんだから。

「ずっとファンでした!」

そうか、しかし今は教師だからな。ファンだからって手加減はしないと思うぞ?

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

これまた遠いところからご苦労様なことで。全寮制でよかったな。アパートとかの家賃が浮いたぞ。

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

同意するぞ。しかし冬姉の指導は厳しいからな、結構な覚悟がいるぞ。

「私、お姉様のためなら死ねます!」

ほう、ならちょっと死んで見せてくれ。一度死んだ人間の前で吐けるぐらいだ、容易いものだろう?

「……毎年、よくもこれだけの馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」

恐らく両方だと思います。そして心中お察しします。

「きゃあああああっ!お姉様!もっと叱って!罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように躾をして〜!」

元気な奴らだ……そしてうるさい。

「で?挨拶も満足に出来んのか、お前は」

「いや、千冬姉、俺は――」

――パアンッ!――

本日三度目……確か頭一回叩くごとに脳細胞五千個死ぬんだっけ?冬姉の威力ならその倍は死にそうだがな。クックック、叩かれる奴も災難だな。

「織斑先生と呼べ」

「……はい、織斑先生」

ふむ、まあ正しいとは思うが、このやりとりがあったということは生徒たちに関係がバレるのでは?まあ構わんと思うが。

「え?……織斑くんって、あの千冬様の弟……?」

その通りだ。まあ苗字一緒なんだし驚くことでもないよな?

「それじゃあ、世界で男なのにISが動かせる二人のうちの一人っていうのも、それが関係して……」

可能性は否定できんな。俺なんか開発に携わって、義理の弟だからな……

「ああっ、いいなぁっ。代わってほしいなぁっ」

変わってやってもいいが家事全般は必須だし憧れの冬姉のズボラさが耐えれる自信がお前にはあるかな?

そんなこんなで話が進んいく。

「さあ、SHRは終わりだ――と、言いたいところだが、突然だが転校生を二名紹介する。一ノ瀬、入ってこい」

「はい」

冬姉の言葉に静かに返事をし、扉を開けて、中にはいっていく。

歩きながら教室を見ると、教壇に冬姉が立っており、その横に緑の髪をショートカットにして眼鏡をかけている女性――おそらく副担任の山田真耶教諭だろう――が立っていた。生徒たちの方に目線をやると最前列中央に見慣れた人物が目に入った。今は座っているから身長はわからないが平均ちょっとはあったはずだ。しかも体つきも程よく筋肉がついているだろう。しかし昔やってた剣道を中学時代はやっていなかったようで「もったいない!」と言ったのは記憶に新しい。顔つきはまさに男らしく、黒髪を短く切りそろえており、瞳は僅かながらも光を持っており微笑の顔がとても似合う好青年になっていた。しかし今は状況が状況だけに驚きと呆れた顔を混ぜたような表情をしている。その人物は織斑一夏、俺の親友で義理の兄弟だ。同じく最前列の窓際には六年前とは見違えるほど成長しているが見間違うはずのない篠ノ之箒の姿が見える。

俺が教壇の横に経つと黒板――いや、ディスプレイという方が正しいかもな――に俺の名前と春華の名前が現れた。

俺は丁度目の前にいる一夏に目線を落とし、言った。

「久しぶりだな、夏。実際に合うのはどれぐらいになるかな?」

静かにそう言うと一夏は急に立ち上がりこう言った。

「秋?…ホントに秋だ!ははっ!お前どうしてここにいんだよ!?てっきりお前は藍越学園に入ったかと――」

「うるさい。席に座れ、馬鹿者」

――パアンッ!――

大丈夫か?お前?

「一ノ瀬……区別がつかないな。秋葉、春華、自己紹介をしろ」

「わかりました織斑教諭」

「はい、織斑先生」

俺は頭を抑えて「いてて」と言っている夏に再び言う。

「夏、よく見ておけ、自己紹介ってのはこうやるもんだ」

そう言って俺は短く深呼吸し、少し大きめに、ハッキリと発音し、だが凛々しく言葉を紡ぐ。

「どうも、私立の中学から進学し、転校してきました、一ノ瀬秋葉です。ISを操れる男性ということで入学しましたが、皆さんのように来る前から勉強している訳ではありませんが、皆さんの足を引っ張らず、尚且つ、遅れを取らないように努力したいと思うので、どうか宜しくお願いします」

俺はそう言って一礼してから少し微笑む。

山田教諭は呆気に取られており、冬姉は「ほう……」と感嘆の声を漏らし、夏もあっけに取られていた。

一拍おいた所で俺は少し身構えた。そして次の瞬間――

「キャーーーーー!二人目!二人目の男子よ!」

「しかも織斑くんとはまた違ったタイプのイケメン!」

「すごい髪がサラサラ、女装したら似合いそう!」

最後のは少し同意できないな。しかし昔「歌舞伎役者とかできそうだよな?女性の役とかもできそうだし」と言われた。まあ別に嫌ってわけでもないが、やはり少し気になる。

「ほら、春華、お前の番だ」

俺は春華の背中を優しく押してやる。

「は、はじめまして!一ノ瀬秋葉の双子の妹で一ノ瀬春華です!よ、よろしくお願いひゅまっ……あぅ……」

舌を噛んでしまった。見た目からして幼くて、こういう所があるからホントに可愛い、普通の共学校だったらモテるかもしれないな。やらんけどな!特に変態とかロリ専門の輩には絶対に!

「春華ちゃんって言うんだ!かわいい〜!」

「幼女よ幼女!ISを操る幼女!これはアルバムと写メで永久保存モノ!いえ、世界遺産モノよ!」

「春華ちゃん!私どっちもいけるバイだから、後で将来について語り合いましょ!勿論結婚を前提に!」

最後の二つおかしいだろ!駄目だ、女子校だと思って油断していたらまさかの敵がいた。

「騒ぐな、お前ら」

冬姉の一言でこの場は収まった。凄いな。

「秋葉、春華、お前らは織斑の隣だ。教壇から向かって右が春華。左が秋葉だ」

「「はい」」

俺達は返事をし、席についた。

「さあ、今度こそSHRは終わりだ。いい忘れていたが諸君にはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

うむ、いい教諭をもったな俺。まあ自己紹介の手前、ああ言ったが基礎知識どころか設計に携わったんだ。かなり先まで理解できるし、応用もバッチリ。入学前に貰った参考書なんかその日のうちに十回も読み直して頭に記憶しているしな。実習の基本動作もゲームをやってたから…まあ行けるだろう、入試の時にも殆ど違和感なかったしな。ゲームと現実は別物とは言うがIS・VBGに関しては本物のISの未完成とかをそのまま流用してるらしからな……大丈夫そうだ。

そんな風に気楽に考えていたが、気がかりな点が一つあった。

……入試の時、武器変換がスペックよりワンテンポ遅れたり、違う武器が出てきたり、早く動いたつもりが遅かったり、スラスターが上手く起動しなかったりしたな…入試のあとにチェックしたけど特におかしなところは無かったしな。あれはなんだったんだろうか?…まあいいか。そのうち分かるだろう。

 

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