【デジモン】Hanting ACtion |
仮想の生き物、デジタルモンスターをパートナーとして
育て上げ、冒険するMMORPG『デジモンワールドオンライン』。
今や国内で三本の指に入るほどの人気を博しているゲームだが
ユーザーの間で流れている噂があった。
――デジモンワールドオンラインには、デジモンの世界デジタルワールドが封印されている――
嘘か真か、それは定かではない。
しかし、噂を裏付けるかのように、時折起こるゲーム仕様外の出来事。
そして、これから語られる事も、その『仕様外の出来事』に巻き込まれた者達の話である。
【Hanting ACtion 01 Side メジロ】
黒いデジヴァイスを横に置き、かつかつと人差し指を苛立たしげに机の上に打ち付ける。
時折、舌打ちをするかのような音すら口端から漏れてくるが、彼のデスクの周りには
人がおらず、冷ややかな視線を向ける人間は一人としていなかった。
幸いと言えばそうなのだが、彼にとっては他者が自分をどう思うかなどどうだって良い事だった。
「ありえねえし、なんで俺が調査担当なんだよ。もっとねーよ!」
『メジロ…みっともないぞ』
「なんだよアーサー、愚痴の一つくらい言わせろ」
『一つどころか二つも三つも言ってるじゃないか』
「イチイチ揚げ足取ってるんじゃねえ。俺のパートナーなのになんでそんなクソ真面目なんだよお前は」
嫌味たっぷりに呟いたその言葉に返答はなく、代わりに大きなため息が返ってくる。
会話はそこで一度途切れ、メジロ、と呼ばれた彼は「チッ」とまた一つ舌打をすると、デスクトップに向かい
今回の案件に関してざっと見直す。
自分が企画した今回のイベント『Hanting Action』にて、デジモンワールドで有り得ない事を引き起こす
原因の一つ、とも言われている『ゴーストデジモン』が出没すると噂があるのだ。
ゴーストデジモンは、モノクロの体を持ち、一切意思疎通が不可能なバグデジモンの事を指す。
このバグデジモンが現れた際は、必ずと言って良いほどログアウト、ログイン障害が起き、
時にはゲーム内にユーザーの意識が取り込まれる、とまで言われている。
運営陣の中にはゴーストデジモンを実際に見、意識が完全に取り込まれた事がある、と言う者もいたが
メジロはそれを信じてはいなかった。
自分の目で見た事もないモノを信じろと言う事事態がバカバカしいとしか思えなかったからだ。
しかし、今回不運な事に、企画担当だったと言う理由でゴーストデジモンの調査を指示されてしまった。それが不服で堪らない。
「あー!納得できねぇ」
『逆に考えてみればいい。ゴーストデジモンの噂が本当かどうかお前の目で確かめられるだろう』
デジヴァイスのスクリーンは煌々と輝き、凛とした顔のホークモンを映し出す。
射抜くような視線は逃れる事を良しとしない。
「・・・わーったよ、分かったから睨むんじゃねぇよ」
『睨んでなんて居ない。とりあえず、分かったのなら調査を始めよう。どこから始めるんだ?』
「ゴーストデジモンがパートナーじゃないか、と言われてるヤツが一人いる」
言って、メジロはパソコンのフォルダから画像をデジヴァイスへ転送する。
そこには、少年か少女か見分けが付かないツメモンを抱えた人物の姿があった。
くすんだミルクティのような色をした髪に、あまりにも目立つビビットピンクの瞳。
その傍らには、今回のイベント用のサポートデジモン、レオモンがいた。
『とりあえずこの人物をマークして、事件の足がかりを掴むのか』
「そう言う事だ。それじゃあ、一般ユーザーに成りすましてログインするかね」
呟いて、メジロはゴーグル型ディスプレイを取り出し、クライアントを起動させた。
【Hanting ACtion 01 Side エレクトラ】
「あんなに怒らなくたっていいのにねえ」
茶色の髪をくるくると弄び、少し頬を膨らませて呟く。
「・・・去年の丁度今頃、単位を落としそうだと泣きそうな顔をしていらっしゃったのはどなたですの?」
足元から響く少々高飛車な声。
視線をやれば、そこには自分のパートナーであるプロットモンのレイラが呆れたような顔で見上げている。
「あー・・・あたしかしら」
「でしょう?だったらあの子の気持ちもわかりますわね?・・・素直に謝りなさい」
でもー、と呟いて項垂れる。小さい頃から仲のいい友人を、ついこの間から始まったイベント『Hanting Action』を
一緒にやろうと思い、声を掛けたのだが、タイミング悪く、彼女のレポート提出期限と重なってしまった。
仕方のない事だとは思いつつも、いつもの調子でからかった所、怒られてしまった。
「でももへったくれもないですわ。ちゃんと謝る事、いいですわね?」
「・・・善処するわ」
「そう、ならよしとしましょうか」
「あの・・・」
話がまとまった所で、申し訳なさそうな声がする。
その方向に目をやると、茶色い癖毛の髪の少年が困ったような顔で自分を見ている。
「えっと・・・それで僕はなんで呼ばれたんでしょうか・・・エレさん」
「そんなのもちろん・・・Hanting Actionに拉致する為に決まってるでしょう?」
「エレクトラはいつも強引だなぁ、友達に嫌われちゃうよ?」
「全くその通りですわ、ファンビーモン・・・もっと言ってもよいですのよ」
容赦のないパートナーデジモン達の言葉に、「ぐ」と言葉を詰まらせるエレクトラ。
しかし、タダで転ぶような性格である訳もない彼女は、すぐさま次の言葉を口にする。
「あら、もし不服ならイベント参加諦めてモギ君連れてオーバーデル墓地に向かってもいいのよ?
あそこであたしの欲しいアイテムを見かけたって噂を聞いたし、そっちの方がいいかしら」
「めめめめ滅相もない!いこう!モギモギ行こう!Hanting Action頑張ろう!」
言葉に過剰反応したファンビーモンは、茶色の癖毛の少年、モギモギの背を押し、
近くにあるタウンへと急かそうとする。
押されてよたよたした足取りで走り始めるモギ少年とそのパートナーを見て、
人の悪い笑みを浮かべるエレクトラ。その表情を横目にため息を吐くのはプロットモンのレイラ。
四者四様の動きで和やかな空気が流れていたが、程なくそれは壊される事になった。
チリッ
目の前の世界が一瞬、ノイズを吐き出した。
(チリッ・・・?)
訝って、目をこすってから周りを見渡す。ノイズを確認する事は出来なかったが、その代わりに
風を切り裂いて上空より飛来する物体に気がつく。
「危ないですわ!」
咄嗟にレイラが前に出、モギモギの服に噛み付いて後ろへと勢いよく引っ張る!
それをエレクトラが受け止め、モギ少年だけでなくファンビーモンとレイラも抱え込み
後ろ向きのまま飛び上がり、周りの茂みの中へと緊急ダイブをした。
背中から着地をしたためか、リアルの世界でエレクトラのゴーグル型ディスプレイが揺れて
耳の上辺りが痛くなり、軽くその部分をさすりながら起き上がる。
ドン!
起き上がった瞬間の出来事だった。
上から飛来していた物体が地面に衝突したのか、轟音と共に爆炎が吹き上がる。
突然の出来事だったので何が起こったのか状況が把握できないままでいた。
「メタルグレイモンのギガデストロイヤーですわ」
レイラがくい、と顎で上空を指し示す。視線を動かせば、上空には青白いグレイモンが滞空しているではないか。
「ウィルス種のメタルグレイモン!」
モギ少年は自分のデジモンカードコレクションから一枚を取り出し、見比べる。
「ウィルス種のメタルグレイモン、攻撃的で強いんだよね・・・僕達勝てるかな」
「が、頑張ろうよ!モギモギ!オイラも頑張るからさ!」
鼻息を荒くし、臨戦態勢を取るファンビーモンだが、もう一匹のデジモン、レイラは警戒こそしているものの
戦闘態勢を取ろうともしなかった。
「恐らくあのメタルグレイモンは私達なんて目に入ってないと思いますわ」
「どういう事?」
小首を傾げるモギ少年に、エレクトラが答える。
「あっちを見てみなさい」
指で方向を示すと、その先には男か女か、判断に悩むアバダーが佇んでいた。
薄いミルクティ色の髪によく目立つビビットピンクの瞳、そしてその腕にはツメモンが抱かかえられていた。
その視線は上空のメタルグレイモンを射抜くように見据えている。
「どうやら、あの子がターゲットみたいね」
ターゲットがこちらに向いていないので、移動してしまいたかったが・・・
「もしあの子が危ない事になったら、助けなきゃ」
モギ少年の一声で待機する事と相成ったのだった。
「――本当に、面倒だね。早く倒してイベントの点数にしてしまおう。ヨミ、効率最優先で」
「分かったし!素早く倒すし!」
腕の中で息巻くツメモン。その姿を見据えながら、パートナーは口端を持ち上げ、ツメモンのヨミを地面に解き放ち、すぐさまデジヴァイスを構える。
「ヨミ!・・・・・・・行くぞ!」
黒いデジヴァイスが光り輝き、ヨミの姿を変えて行く。
進化の眩い光の中、世界がまた一つノイズを吐いた事に気がつく者は誰もいなかった。
01 fin
説明 | ||
デジナミに投稿しているアスクの姉主人公での番外編ですー 詳しい世界観は【http://www.tinami.com/view/236070】からご覧下さいませー! 今回の話を書くに辺りとある方のお子様お借りしておりますww 気がついたらメインキャラに… デジナミサイドでもこのイベント話を書きたいと思ってたり。 ※キャラ投稿をしていない子達で話を書いているので特にデジナミタグはつける予定はありません。デジナミ所属の話ではないため、最後に粗筋はつけておりませんがご了承お願い致します。 |
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