死にたがりの第八十八話 穏やかになるはずだった一日……
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あらすじ

 

 

ほのぼのしてたよ

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「ふむっ……」

 

 

「……なぁ、シグナム」

 

 

「何だヴィータ」

 

 

「最近、何かもの凄く考え事してるみたいだけどさ。どうしたんだ?」

 

 

ここ最近……と言うよりも、管理局がこの家に来た時から、シグナムは何か考えている。

考えてるって言うよりは、何かを必死に思い出そうとしてるって感じがする。

 

 

「ああ……主の事について、考えていたんだ」

 

 

「アニスの事?」

 

 

「ああ……。主は、クロイツベルと言う一族の一人と、管理局の連中は言っていたのは覚えているか?」

 

 

「うん、一応」

 

 

「そして、この前蒐集で一緒になった、クロノに話を聞いたんだが。クロイツベル一族は自分の住んでる世界からは、決して出ない。そして、他の次元世界にも干渉はしないと」

 

 

「?それがどうしたんだよ」

 

 

「では、なぜこの世界に主が居るのか、と思ってな」

 

 

シグナムの顔は、少しさみしい表情をしていた。

何も話してくれないアニスに、少し焦ってるのかもな……。

 

 

「そして……私は……いや、我らは知っている。クロイツベルを……その一族の事を」

 

 

「私は聞いた事ねぇぞ?」

 

 

「いや……確かに我らは知っている、と言うよりは知っていたんだ……私はそれを思い出そうとしているんだが……どうも、靄が掛かっているみたいに、思い出せないんだ……」

 

 

「それって、私らが魔法か何かで一部の記憶を、クロイツベルに関わる事だけが消されてる、もしくは封印されてるって事?」

 

 

「そうなるな」

 

 

……良く分からないな……。

私達は確かに、クロイツベルってのは知らなかった。

アニスが自分の名前を言ったときだって、ピンと来なかったし……。

 

 

だけど、現にシグナムは何かを思い出そうとしている……。

何か分からないけど……思い出してはいけないような気がする……。

 

 

「なあ、シグナム」

 

 

「何だ?」

 

 

「アンクに話してみたらどうだ?アンクはアニスが生まれた時からずっと一緒だったって言ってたし、アンクだったら、クロイツベルの事も良く知ってると思うし」

 

 

「……そうだな。率直に主に聞くよりは、まだましかもな」

 

 

「やっぱり、アニスから直接聞くのは怖いのか?」

 

 

「違う。主だと、適当な言葉を並べて、逃げるのがオチだ。だったら、アンクに聞いた方がまだ早い」

 

 

「へぇ、そうなんだ」

 

 

まぁ、アニスは自分の事か全然話さないしな。

 

 

「ふわぁ〜……おはようさん……」

 

 

その時、リビングにはやてがやってくる。

っと、もうそんな時間か……。

 

 

「ありゃ……ヴィータにシグナムさんはまた朝帰りかいな……ええ加減に休まんと、体壊してまうよ……?」

 

 

「そうも言ってられないからな。時間が無い……」

 

 

「そうだよはやて。早く蒐集し終わらないと行けないんだ……だから」

 

 

「せやけど、それで二人が倒れたら元も子も無いやんか?今日は確か、アンクさんとザフィーラとシャマルやったな。二人は休んどき」

 

 

はやての方が正論なので、私もシグナムも何も言えなくなる……。

 

 

「ふぅ……。待っときな、今朝ご飯作ってまうから」

 

 

「ごめん、はやて……」

 

 

「ヴィータは気にする事なんて全然あらへんよ」

 

 

そう言ってはやてはエプロンを着けて、キッチンに向かう。

ホント、アニスとはやてって優しいよな……。

 

 

「なぁシグナム」

 

 

「何だ」

 

 

「私、アニスが主で良かった」

 

 

「……ふっ、何をいまさら。そんな事、全員思っていることだ」

 

 

そう、本当に今更だと思う。

だけど、いつも思ってたこと。

守護騎士全員も思ってる……今も、そしてこれからも……。

 

 

「おはようございます!すいません!寝坊してしまいました!」

 

 

忙しなくリビングにシャマルが入ってくる。

どうやら寝坊したらしい。

 

 

「別にそんなん気にしてへんよ?シャマルはゆっくり寝とったらええのに」

 

 

「そう言う訳にはいきませんよ!あ、何か手伝えることはありませんか?」

 

 

「ん〜、そやな〜。せやったら、お皿出してくれへんか?」

 

 

「分かりました〜」

 

 

パタパタと急ぎながら皿を取り出していく。

見ていて何かおっかない……。

 

 

「おはよう……」

 

 

「あ、ザフィーラ。おはよー」

 

 

ザフィーラも起きて来たようだ。

最近は狼形態になって家に居る。最近人間バージョンの方は見てないな……。

 

 

「ちっ……この犬が、何で俺まで起こしやがる……」

 

 

「この世界のことわざで、早起きは三文の徳と言う言葉は知ってるか?それだ」

 

 

「何の徳もねぇよ……。はぁっ……」

 

 

どうやらザフィーラに起こされたらしく、アンクの顔はうんざり顔になっていた。

ざまぁ。

 

 

これがこの家の朝の風景だった。

もう一人、私らの主のアニスがまだ起きて来てない……と言うか、たぶん昼近くまで起きる事は無いと思う……。

アニスが居れば、数か月前と同じ風景に戻るんだ。

 

 

アニスが居て、アンクが居て、はやてが居て、私らが居て……。

 

 

その為にも、絶対に蒐集を終わらせる。

そして、アニスを助ける。

 

 

そう思っていた矢先だった……。

 

 

ドタッ!!

 

 

何かが落ちたような音が、こちらまで聞こえてきた。

……またアニスがベッドから落ちたのか?

 

 

「シグナム……」

 

 

「ああ、私が見てこよう」

 

 

そう、この時までは、そう考えていたんだ。

アニスはベッドから落ちた……って……。

 

 

だけどそれは、すぐにぶち壊された……。

 

 

「主!?しっかりしてください!!」

 

 

アニスの様子を見に行ってシグナムの声が響く。

その声に反応して、全員アニスの部屋に急いで向かう。

 

 

そして、見てしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血を吐いて、苦しそうに顔を歪めながら倒れてるアニスを……。

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