第00話 プロローグ - 機動戦士ガンダムOO × FSS |
第00話 プロローグ - 機動戦士ガンダムOO × FSS
星々が瞬く宇宙空間に一際大きい光の花が咲く。だれもがそれをみたら幻想的な光景であると思っただろう。ただ、その花びらは実に平面的なものであった。その花の中から一体の人形を乗せた船が出現する。まるで花から産み落とされたように。
船が完全に出現すると花はしぼみ、宇宙空間へとかき消えていった。光の花。それはワームホールの出口である。そして、このワームホールから出現したのは……。
「トレミー、TRANS-AM終了。各部のチェックを開始します。」
「ミレイナ、こちらは異常はない。」
「トレミーも異常ありません。GNドライヴ、船体、全兵装システムとも異常ありません。」
「現在地の確認を頼む。」
「少々お待ちを。……セイエイさん、現在位置特定完了しました。我々はイースター太陽系にワープアウトしました。」
ここは遙か別宇宙のジョーカー太陽星団。
イースター、ウェスタ、サザンド、ノウスの4つの太陽系に移動太陽系を合わさった5つの太陽系で構成された銀河である。ジョーカー太陽星団はクラウン大銀河の中の小銀河であるが、この銀河に異なる銀河より来訪者が訪れたのだ。
次元回廊を突破し、ジョーカー太陽星団に乗り込んできたのはソレスタルビーイングのガンダムマイスター、刹那・F・セイエイとその愛機、ELSダブルオークアンタ。そして、ガンダム支援艦、トレミーを操舵するミレイナ・バスティである。
「俺達はついにジョーカー太陽星団に到着したのか。」
「はい……。」
刹那もミレイナもモニターに映る星々の瞬きに目を輝かせていた。少女時代から父と共に星の海を旅してきたミレイナであったが、六十年以上の人生経験の中で異なる銀河へ旅は今回のミッションがはじめてである。まして、地球人が聞いたことも見たこともない宇宙への旅である。先ほどの刹那との応答時に声にこそ態度を表さなかったが、トレミーの操縦桿を握る両手は僅かながら震えていた。それが武者震いなのかはミレイナ本人にもわからない事だった。
それは五十年に及ぶELSとの対話の旅で様々な宇宙を旅してきた刹那ですら同様であった。今回のジョーカー太陽星団へのミッションは特別な思いがあったからだ。それに刹那とクアンタに同化しているELS達から発せられる脳量子波にも若干の乱れが感じられた。
(お前達も興奮しているのか?)
ELS達もはじめて訪れる銀河に興奮を隠しきれないようだ。刹那もELSも、もうしばらく、このままジョーカー宇宙を眺めていたかったが、ミレイナの通信により意識を本来の任務に戻すことになる。
「セイエイさん、周囲に艦影は確認できませんです。」
「……こちらも艦影を確認出来ない。」
体の震えを克服するため、いち早く本来の職務に戻っていたミレイナはEセンサーのレンジを切り替えて周囲を航行する艦船のチェックを開始していた。トレミーには地球での協力者から提供されたジョーカー太陽星団の星図や航路図等がインストールされている。
「民間航路から外れているようだな。だが、クアンタが目撃されると面倒だ。ミレイナ、収容を頼む。」
「了解です。ELSダブルオークアンタ、収容を開始します。」
ミレイナはコンソールを叩き収容シークエンスを開始する。刹那はクアンタをトレミーに収容、ハンガーに固定すると足早にトレミーのブリッジに急いだ。
トレミー、正式名称プトレマイオス3。本艦はプトレマイオスこそ名乗っているが、歴代に比べて、規模、戦闘能力は別物であった。刹那はモビルスーツハンガーから狭い通路を抜けて、ブリッジに通じるオートロックを開く。やはり、ブリッジも同様に狭くなっており、シートこそ四客用意されていたが、基本的に一人もしくは二人のパイロットにより操舵、戦闘を行うように設計されている。
刹那がブリッジに姿を現すと、やはり心細かったのだろう。緊張した面持ちで操縦桿を握っていたミレイナの表情が明るくなった。先ほどまで一人ブリッジで奮闘して様子が容易に伺えた。
「ミレイナ、よく頑張ってくれた。」
刹那は労いの言葉をかけると、ミレイナは少し照れるように答えた。
「いえ、ゲートキーパーさん達の協力がなければ正確な航行は不可能でした。それに、セイエイさんとELS達も支援してくれたので助かりました。」
「それもひっくるめてミレイナの実力のうちだ。」
「フフフ。ありがとうございます。誉めても何も出ませんよ?」
照れ笑いした仕草から、母親のリンダを思い出した。ミレイナもすでに六十歳を越えているとはいえ、その姿から老いはまったく感じられず、刹那がはじめてイアンから紹介されたリンダとそっくりだった。
刹那がブリッジに来たことによりミレイナは気が楽になったのだろうか、ノーマルスーツのバイザー越しでもわかる位、自然と表情から緊張の色が消えていた。副操縦席に座った刹那はミレイナに話しかける。
「ミレイナ」
「はい。」
「とりあえず、ファーストフェーズ、ミッション・クリアだ。」
「はい!です。ここからが長い任務になりそうです。」
刹那は黙って頷く。ファーストフェーズ、それは協力者達の力を借りて次元回廊を突破し、地球からジョーカー太陽星団に辿り着くことであった。その道中、刹那達はゲートキーパーと呼ばれる((二人の女神|アトロポスとクローソー))と出会い、闘い、導いて貰っていた。それはまた別のお話になるが。
「ミレイナ、今回のミッションは武力介入ではない。」
「はい。ソレスタルビーイングがジョーカー太陽星団に武力介入する必要は現時点ではありません。」
「だが、最悪の時は一国、もしくは全星団全国家を相手にしないといけないだろうな。」
「それにいつサタン達も出現するかわかりません。」
「今の俺とクアンタではMHやサタンの相手は厳しいだろうな。」
「はい……。」
刹那自身は地球での協力者から文字通り殺人的な剣の指導を受けていたが、ある理由によりELSダブルオークアンタは本来の能力を発揮できないでいたのだ。少しの沈黙のあと刹那が口を開く。
「遅くはない。ミレイナだけでも、今から引き返しても構わないぞ。」
「そんな事言って良いんですか? 今すぐ帰れって言われたら、トレミーのGNドライヴを暴走させて自爆しますよ? そうしたら、どうやってELSダブルオークアンタにGN粒子をチャージするんです?」
「それは、困るな。」
「わかれば宜しいです。」
少し頬を膨らませながらミレイナは悪態をついた。勿論、両名ともに冗談である。地球を出発する前に刹那はミレイナの覚悟を知っている。だから、刹那はイノベイドではなく、ミレイナの任務への同行を許可したのだ。
「セイエイさん、私がお婆ちゃんになる前に、ミッション遂行をお願いしますね。」
「ああ。」
自嘲気味にミレイナは刹那に問いかけると、刹那も少し困った顔をしながら答える。今回のミッションは数年、場合によっては数十年時間を要する恐れがあるためだ。そのためには現地での協力者が必要不可欠である。幸いにもジョーカー太陽星団へ旅立つ際に支援してくれた協力者達から((ツテ|・・))は一応用意してもらっていたのだが、出発時点では刹那達はいつの星団歴に辿り着くことになるのかわからなかったため、果たして現地協力者に会えるかどうかも怪しかった。
「ミレイナ、セカンドフェーズを開始する。」
「了解です。トレミー、これより第一目的地に向けて針路を固定します。」
ミレイナはサイドティック型操縦桿を操るとトレミーをイースター太陽系第二惑星に向けて針路をとる。先に述べたように現プトレマイオスは歴代に比べて規模が小さく非常に小回りが利くのだ。そのためU字型ではなく、ガンダムタイプのコックピットで採用されている操縦桿が使用されていた。齢六十を過ぎたといえ、ミレイナは鮮やかにトレミーを操る。
刹那は危なげない操縦を見守りながら、モニターの脇に設置された地球時間を時計に目をやった。ジョーカー太陽星団へ到着直後、自動的に星団歴時間とリンクするようにプログラムされており、地球時間の一秒は星団歴時間では四秒相当、つまり地球時間の秒針はこちらでは四秒後に一秒進むよう細工が施されていた。その中で、地球時間での日付から重大なことを思い出した。
(そうか、今日はあの日から丁度六カ月だったか。)
刹那とミレイナがジョーカー太陽星団に到着したのはマリナ・イスマイールの国葬から六カ月後の事であった。
西暦2365年、地球。
刹那・F・セイエイがELSとの対話から地球に帰還して一年が過ぎていた。
物語はここから始まる。
プロローグ完。
説明 | ||
ジョーカー太陽星団に突如出現した一隻の宇宙船と巨大人型兵器。それは遙か遠い銀河からやってきたソレスタルビーイングのMS支援艦トレミーとELSダブルオークアンタであった。 西暦2365年、地球。ELSとの対話を終えて地球に帰還した刹那は、マリナとわずかな時間であったが幸せな生活を送ることができた。しかし、突如魔界から現れたサタン達によって刹那とマリナ、そしてELSダブルオークアンタは絶体絶命のピンチに陥ってしまう。サタンの目的とは?西暦の地球に現れたログナーの目的とは? この物語はクロスですが、基本的にオリジナル展開です。原作にない設定や人物も登場します。ただし、星団歴の改編に繋がらないように頑張っていきたいと思います。 |
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