《インフィニット・ストラトス》〜二人の転生者〜
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第六話 俺の親友は大人気

「あー……」

「……大丈夫か?夏?」

「……大丈夫だ、秋」

一時間目のISの基礎理論の授業が終わって、今は休み時間なのだが……夏の様子がおかしい。疲れてるというか、項垂れている。しかもかなりの重症そうだ。

「もしかして授業についていけるか不安になったとか?」

俺は自分なりに結論を導き出しながら夏に聞いていく。

「いや、それもあるんだが……なんて言うか視線が……」

「視線?ああ、なるほど……」

俺は今の現状を見て納得する。それは何故か?簡単だ。基本ISを扱えるのは女性だけでその中での男性としての俺と夏が珍しいのだ。しかもIS学園の女子生徒は中学や小学校の時からISの勉強をしているので、自然と女子校出身者となる。だから男性と面識が殆ど無いので俺達に近づきがたいのだ。だから遠巻きに見ているしか無いのだが……廊下にまで群がるって、しかも先輩達もいるし。こりゃ夏も気が滅入るわけだ。

「夏、いい事を教えてやろう。こういう状況はあまり気にしないことだ。気にしたら余計に疲れるだけだからな、普段通りに過ごしてればいいのさ。そしたらいつかは落ち着くだろうし何より俺がいるっていうのが大きいな。一人と二人じゃ違うもんだぞ、話し相手とかいるっていうのはかなりいいもんだ」

俺は落ち着きながらそう言い、俺は椅子を少し後ろに傾け、机の上に足を乗せて、足を組む。

「秋、いくら気にしないからって気にしなさ過ぎだ。それに行儀が悪いぞ」

夏が俺の行動を見て注意する。

「まあまあ、固い事言うなって。人間の人生なんて結構長いようで短い。自分の人生は自分の好きなように生きるほうが楽しいに決まってるだろう?俺はそれを実践してるだけ……それに夏、お客さんだぞ?」

「え?」

俺は椅子を揺らしながら夏の背後を指さす。

それに釣られ夏は背後を見る。そこにはツリ目で長い髪を白いリボンで束ねてポニーテールにしている久しぶりに会った俺と夏、春華の幼馴染の箒が立っていた。身長は平均的だが幼少の頃からやっていた剣道の為、体つきが結構引き締まっており、長身を思わせる。しかも出ている所は出ており、服の上からでも体つきがいいのがわかる。うん、成長したな箒……いろんな意味で。

「……ちょっといいか?」

「あ、ああ」

箒に声をかけられ、夏は立ち上がる。うん、夏も思った通り身長も結構高く、スラっとしている。

さて、問題はここからだ。この場合俺も行ったほうがいいのだろうか?まあ悩んでも仕方ない、さり気なく聞いてみよう。

「ほ――篠ノ之さん、俺にもなにか用事かな?」

「い、いや、今は特には……」

ふむ、じゃあ夏にだけか。俺は夏に目線を向け《早く行って来い》と手振りで教えてやった。しかし夏は首をかしげた。まったく、昔から要領を得んやつだ。

仕方なく箒に目線を再び合わせ《屋上に行って来い》と右手で上を指した。箒はわかったように頷き、夏を屋上に連れていった。ふう、漸く行ったか……まあ積もる話もあるだろうからな、今は二人っきりにしてやろう。俺と話すのは後でいい。

俺は二人を去ったのを見てからカパンからノートPCを取り出し、起動させる。

廊下には夏が去ったことで弱冠だが女子の人数は減っていたが、未だに大勢の女子が俺に注目している。もしこの目線が物理的な攻撃だったら俺は死んでいるだろう、くわばらくわばら。

俺はPCのあるフォルダを開き、作りかけのデータを作成していく。そのデータとは俺と春華のIS専用機のデータだった。このISは今までのISとは完全に違う形態にしていた。まずは((全身装甲|フル・スキン))であること。いくら絶対防御があるとはいえ、やはり胸や背中がむき出しはスッキリしない。あとは手足がちゃんとしていることだ。脚はちゃんと地表で歩けるようになってるし腕や手も鋭利化してない、そもそもあんなに尖らせてどうするんだか?そして何とも言えないのが動力源であった。大容量バッテリー等ではなくて俺はそれに+永久機関を組み込んだISを考えている。もしこの永久機関が実用化されればISはどんなにエネルギー消費する武器も打ち放題になるのだ、勿論公開するつもりはない。例え世界を敵に回してもこれだけは公開してはならない、じゃないと確実に兵器への運用が危ぶまれるからな。しかしかと言って永久機関だけでは不安なので大容量バッテリーを更に容量を多くして搭載している。普通の試合とかじゃさすがに永久機関はヤバイだろうしな。

そして暫くしたら二時間目の予令がなった。おっと夏はまだか、しょうが無い奴だなあ、まあ探しにはいかんがな。すぐに来るだろう――ほら来た。

「おかえり、どうだ、色々喋れたか?」

「おう、秋。それが中々上手く喋れなくてさ、なんかいっぱい喋りたいことあったのにな……」

「まあそんなもんだ。まあ焦るな、これから時間はたっぷりあるさ」

「サンキューな」

「な〜に、それよりも早く準備しろ。織斑教諭の出席簿アタックが来る前にな」

「おう!」

夏はそう言うと、急いで教科書と筆記用具、ノートを取り出した。

 

「――そうしてISが発表されてから今年に入って十年になります。しかしそれまでの現行戦闘兵器とISでは圧倒的な戦力差のため世界の軍事バランスが崩壊してしまいました。そして開発者が日本人だった為日本が独占的にISの情報や技術を持っていましたが、危機感を募らせた諸外国はIS運用協定――通称《アラスカ条約》によってISに関する情報の開示と共有、研究のための超国家機関設立、軍事利用への禁止が決められ今に至ります」

二時間目、教壇の上では山田教諭が教科書を広げ、弁舌を振るっていた。そして俺はしっかりとノートを取っている。本当は意味はないのだが一応身分は学生で、俺がIS作成に関わっているなど極少数しか知らない。だから怪しまれないように勉強しているように振る舞う。通知表の評価や単位も欲しいしな。単位落として留年なんてのは嫌だし。

そんなことを思いながら山田教諭の話を聞いている俺だった。しかし山田教諭の授業はイマイチ覇気がない。冬姉に慣れているからだろうか?まあ関係ないか。

しかしIS開発から十年か……長いようで短い年月だった。まあその分中身が濃かったんだろうけどな。十年前、当時五才か六才の俺、冬姉と束さんは中学生……そんな子供三人が現在最強の兵器に至ろうとしているISを開発したんだもんな。それだけでも大事件だとは思う。そして《アラスカ条約》というのも作られ、全世界でISの開発が行われるようになった。

そこまではいい。俺だってそうなることは予想してたさ。しかし俺はその後の世界情勢が許せなかった。いわゆる《女尊男卑社会》である。IS開発者の一人としては嘆かわしいことである。世界各国、どこでも女性は優遇され、街角ではすれ違った女性にパシリにされ、挙句政治等でも女性の比率が多くなった。勿論中にはそんなことしない良心を持った女性も存在するが……圧倒的に少ないのが世の常である。そして男性も男性で女性の前ではへこへこする輩も増えてきた。まあ中には俺のようにヘコヘコしない男性もいるけどな。

「――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は刑法によって罰せられ――」

山田教諭、それって俺が今開発してるISや第四世代ISも入るんでしょうか?……恐らくは入るんだろうな、何せ第三世代が実験段階の第四世代に俺のは永久機関だもんな。まあだからと言って止めはしないがな、約束事ってのは破るためにあるんだよ……なにげにいい言葉じゃないか。それに言ったって束さんは止めないし、口外しなきゃいいんだよ。

そう思いながら隣の夏はどうしているかと思って目線を横にしてみたが、案の定、顔を真っ青にして引きつったような苦笑いをして教科書を覗き込むように見ている夏がいた。

「織斑くん、何かわからないところがありますか?」

すると夏の表情に気づいたのか山田教諭が夏に聞いてくる。

「あ、えっと……」

それに対し夏は何とも歯切れの悪い返事をする。しょうがないやつだ。

俺は指先で机を小さく二回叩いた。その音を聞いた夏が目線だけをこちらに向けた。俺は唇に人差し指を立て、《黙っていろ》と指示した。そして――

「スミマセン、山田教諭」

俺は控えめに見えるように挙手をし、席を立つ。

「はい、なんですか?一ノ瀬くん」

「実は自分もな――織斑くんも事前授業は受けてないのでわからない所が多々あるのですが、放課後に補修という形で色々と教えてもらえないでしょうか?」

「え、えっと……補修は構いませんが、一応どの辺がわからないのか教えてもらえるかな?」

や、ヤバイ!この返答は考えてなかった!夏の状況を見るかぎり全部わかってないっぽいからな……下手な嘘は逆に身を滅ぼしかねんしな。腹くくって行くしか無いか!

「スミマセン、実は全部でして……」

「え……。ぜ、全部、ですか……?」

山田教諭は全力で困った顔で引きつっていた。まあそうだよな、IS学園に入学してこんな事言う生徒は設立以来初じゃないのか?

「……一ノ瀬と織斑、入学前の参考書は読んだか?」

端の方でパイプ椅子に腰掛け、授業を見守っていた冬姉が声をかけてきた。

「実は……その、必読と書いてあったので読んだには読んだんですが……初めて目にする単語や文章が多くて半分も理解できなくて……スミマセン!!」

俺は腰を九十度折り曲げ、深々と冬姉に頭を下げた。夏も状況がわかったのか「スミマセン!」と言って頭を下げた。

「……まったく、まあ素直な所を認めて今回は多目に見てやる。が、出来る限り参考書の内容は覚えろ。一週間以内にだ」

「「わ、わかりました!」」

俺と夏は頭を上げ、各々返事をして、席についた。

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった《兵器》を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解ができなくても覚えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ。それと織斑」

「は、はいっ!」

夏はいきなり呼ばれ、勢い良く席から立って気をつけの姿勢になった。

「今度からはわからないことがあったら先生に聞け。一ノ瀬とかに頼るなとは言わん、が自分で質問する、というのが大事だ。わかったか?」

「は、はいっ!」

ふむ、どうやら冬姉にはバレていたみたいだな。さすが俺の師匠、伊達や酔狂で教師はやってないな(当たり前だけどな)。

そんな話が交わされ、山田教諭と放課後に補習の約束を交わしたが、山田教諭は何を想像したのか顔を真赤にしてクネクネと体を捩り、それを冬姉の言葉で意識を取り戻し、授業を再開、そして無事二時間目も終わった。

 

 

あとがき

作者の菊一です!いや〜最近小説書いてて「つ、疲れた」感がひどくて書き溜め作戦が早くも緊急事態に!!いや、まだ十話位あるからハイテンションで行けば!!

あと要望くれた人がおりまして……詳しい内容は明かせませんが(くれた人が「明かしちゃって大丈夫です!」って言ってくれたら明かすかもですが)《ヒロインにこのキャラを使って欲しい》と《主人公兄妹の設定と専用機設定が見たい》という要望があったのでただ今後者の設定の方を書いております。頃合いを見て設定は投稿します……だって早めに投稿してネタバレすることとか書いてあっても嫌なので^^;自分で制御できない文章です、はい。

ヒロインの方は基本メインは全員好意を抱かせようと思ってます。主人公からの好意は自分の独断で行きますが……だけどもし、読者からの要望があって、自分が「これいいな」と思えばその要望をできる限りで採用します。序にこの人から送られてきた要望には全力で答えます、というか大方予想できてたのでw

他にも「サブヒロインとの絡みを」とか「こういう話をちょっと読んでみたい」とか、挙句の果てに「自分の想像全開で作ったこんなキャラ使ってください!!」とか(無いとは思いますがw)どんな要望でも出来る限りは受けますwけど飽くまで要望ですので通らないことがあるかもしれません、送る場合は肝に命じておいてください。

というわけでどんな要望でも、感想でも受け付けてます。批判でも構いませんがあまりひどいのはやめてくださいw

 

次回は《あの人》登場です!……この人の登場初期って実はあまり好きじゃないんですよね。まあ後々可愛くなるからいいんですけどw

そして恐らく次回は長いです。というか今の状況どうなんでしょうか?「長い!」とか言われたら少し切りますが……どうでしょうか?

さて、それじゃあ感想、要望待ってます〜!

説明
第六話です。
全開あとがき忘れてました……まあ毎回内容があるわけではないのでご了承を。
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