真・恋姫アナザー〜二つの鈴の音〜第一音
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ヒュー…カッ…ヒュー…カッ…

 

「…ふう、こんなもんかな。でも師匠はこんなもんじゃないし、もっと撃つまでが速いからもっとやらないといけないな…ふっ」

 

そう呟くと、神経を研ぎ澄ませ的に狙いを定める。一つ一つの動作を確認し、それでいてすばやく次の矢を放てるように…

 

俺は姓は北、名は郷、字は江清(こうせい)、真名は一刀という。父と母は酒屋で、酒好きの中ではかなり有名な店の息子である。そんな酒屋の息子が、何故弓の鍛錬をしているかと言えば、家の酒を盗んだ賊を取り押さえた時に、たまたま酒好きの武官がそれを見て、武の才能があるから鍛えてはみぬかと誘われたからである。ちなみにその酒好きの武官は、今自分の師匠になっていた。

 

「おう。今日も精が出るな一刀よ」

 

声をかけられ振り向くとそこには、師匠が立っていた。

 

「あ、師匠。お疲れ様です。」

 

師匠の姿を確認した俺は、頭を下げる。

そして改めて師匠に向きあうと、何故か師匠は嫌な顔をしていた。

 

「はぁ…だから師匠はやめんか!祭でいいというのに…」

 

「いや、でも…」

 

「でもじゃないわい。祭じゃ、さ・い。次師匠とかぬかしよったら、もう鍛錬には付き合わんぞ。」

 

「はぁ、分かりました。祭様」

 

「様はいらん。もっとほかの言い方にしろ。ったく何回言ったら分かるんじゃ」

 

「はぁ…すみません。」

 

祭さんが、頬を膨らませながらそう言っているのを見て、反射的に謝ってしまう。

それにしても、見た目かなり若く見えるのに、これでもそれなりの年齢らしい。

しかし、さっきみたく頬を膨らましている姿が似合ってしまうのだから、明らかに年齢を偽っているとしか思えない。若いっていう意味で…。

ウチの母親も、歳の割りに、そこら辺を歩いている自分と同年代の人とでも、張り合えるくらい若く見えるので、きっと女性達は俺達男性とは何か違うのだろう。

だって、親父は歳相応って言うか…それより老けて見えるからな。

 

「ん。まぁ謝られるほどじゃないがの。それにしても…ほう、かなりうまくなったのう。そこら辺の将よりもよっぽどうまいわい」

 

こうやって表情をすぐ変わるのも、祭さんの特徴の一つである。

そこらの将よりうまいっていうのは流石に言いすぎだとは思うけど…それでもこうやってほめてもらえるのは、正直うれしい。

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「いやいや…そんなこと無いですよ。」

 

「何を謙遜しとるんじゃ。そんなことをしても別にかわいくわないぞ?」

 

「ちょ…そういう意味で言ったわけじゃなくですね。」

 

いきなり変なことを言われ思わず顔が赤くなった。

この人は何時もそうだ。

こうやって、俺を弄るのが楽しみらしい。

本人から聞いたから間違いない。

でも、たとえその事を知っていたとしてもやっぱり反応してしまう。

どうやら、俺は感情を隠す事が苦手みたいだ。

 

「ククク…すまんすまん。じゃが、あまり自分を下に見るのは良くないぞ?確かに過信しすぎるのもいかんが、それでも自分の腕には自信を持たんと、何かあった時にうまく動けんからな。」

 

「はい。分かりました」  

 

「うむ。それでじゃ、まだ続けるつもりか?」

 

「そうですね、もう少し撃っていこうとは思っていますが…」

 

俺がそう言うと、祭さんは顔に手を当てて呆れた。

いったい何をそんなに驚くことがあるのだろうか?

別にこれと言って、呆れられるような事はしてないと思うんだが…。

 

「おぬし、まだ撃つのか?そう根を詰めてもうまくはならん。少しは休憩でもせい」

 

「そうですか?まだまだいけると思うのですが…」

 

事実まだ集中は切れておらず、少し気を張ればさっきと同じ用に撃つことができるであろう。

最近になって、なんていうかコツ?見たいなものがつかめてきたのかそうそう疲れる事が無くなった。

なので、このまま撃っていても自分的には問題ない。

だが、祭さんは俺の思いを知ってか知らずか、再度やめるように言ってきた。

 

「だめじゃ。お主はまだいけると思っとるじゃろうが、ワシから見たら今がやめ時じゃと思うぞ?」

 

「そうですかねぇ…。分かりました。これでやめることにします。それで?」

 

「それでとは?」

 

「祭さんの事ですから、このあとまた何かにつき合わされるのでしょ?今日はなんです?」

 

そう言うとニカッと笑いあるモノを取り出した。

 

「おう、さすがじゃのう。なぜ分かる」

そう言って祭さんが取り出したのは、お酒。

多分あの徳利の中には、家で買ったお酒が入っていると思う。

なにせ、家の店の常連…という次元をもはや超えているかもしれないが、ほぼ毎日お酒を買いに…または城へ運ぶように頼んでいるのだから。

こう考えるのも当たり前だろ?

 

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「まぁ祭さんの事ですし?短い付き合いじゃないですからね。」

 

と笑いながら言った。

 

「まぁそうじゃの。ほれ、そうと決まればいくぞ。」

 

そう言うと、鼻歌を歌いながら、自分に背を向けて歩いていった。

ため息をつきながらも、別にそれが嫌と言うわけじゃないので、その背中についていった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・

・・

 

二人して目的の場所へと途中、何かを思いついたように祭さんが尋ねてきた。

 

「そういえば、おぬしいつも鈴を付けておるが、それは大事なものなのか?弓を扱うものは時には人に見つからず矢を射ることも必要となる。その時に音が鳴ったらまずいじゃろ?」

 

鈴とは、俺の腰に何時もつけているこの鈴の事だろう。

確かに、祭さんの指摘は正しいし、俺の武の師匠としては危険な目にあわせない為にも注意しておきたいのだろう。

だけど、この鈴だけは……

 

「そうかもしれません。でもこれは俺にとって”絆”なんですよ。昔大切な人に同じものを送っていて、そいつとある誓いを立てたんです。なのでこいつを外す事はできません。」

 

すると、面白そうなものを見つけたと言わんばかりにワクワクとした顔をこちらに向けてきた。

 

「ほう。なかなか興味深い話じゃのう。どんな誓いをたてたのじゃ?」

 

「え、それはさすがに…」

 

「なに、はずかしがっとるんじゃい。ワシはお前の師じゃぞ?隠し事など許さん。」

 

かなりむちゃくちゃな事を言ってきた。

いくら弟子でも、師匠にいえない事だってある。

流石に隠し事の一つぐらい許してほしいんだが…多分無理なんだろうな。

 

「それはないでしょ!?だいたい師匠と呼ぶと怒るくせに…」

 

と文句を言うと、

 

ゴン!!

 

という音とともに、頭の上に拳が落ち、頭の上に星が回った。

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「いってぇ…」

 

「ええい、ごちゃごちゃとうるさい。さっさと答えんか!」

 

「はぁ…わかりましたよ。でも笑わないでくださいね。」

 

無駄だと分かっていてもとりあえずは予防線を張っておく。

 

「わかっとる、わかっとる。それで、いったい何を誓ったんじゃ?」

 

そんなにワクワクしないでほしい。

言っても無駄だと分かってるけどさ…。

 

「それは…………です。」

 

「なんじゃ聞こえんぞ?男ならはっきりと言わんかい。」

 

「だから、”皆が笑えるような国にしよう”です。俺の家、酒屋なのは良くご存知だと思うのですが、店でお酒を買っていく人の笑顔が俺は好きなんです。そいつとはよく遊んでて、家にもよく来てたんですが、そいつも俺と同じようなこと思ってくれたみたいで、俺がその話を言い出したときに一緒にやろうと言ってくれたんです。その時にこの鈴を証として二人で持つようになったんです。…ッて何笑ってるんですか!!」

 

あの頃を思い出しながら話していると、隣では腹を抱えながら笑っている祭さんがいた。

 

「わっはっはっは…あー可笑しい。何が可笑しいって…ククク…」

 

「そんな笑わなくてもいいじゃないですか。えーどうせ、ガキの戯言ですよ。」

 

口では適当に言ってみるが、内心では笑われたことに深く傷ついていた。

”皆が笑えるような国にしよう”

王様でもなければ、その国の将でも無い俺がそんな事誓った所で、夢物語でしかない事は俺にもわかっている。

でも…それでも、夢を夢だけで終わらせるのは俺には出来ない。

だって、俺は諦め良くないから。

 

すると、そんな心を読み取ったように祭さんが言う。

 

「いや、すまんすまん。バカらしくて笑ったわけじゃない。お主が小さい頃に、そんなことを胸張って言っている姿を想像したら可愛くてな。それにその志は悪くない。むしろ良い。その志がある限りお主はきっと良い男になるじゃろう。」

 

「あ…ありがとうございます…」

 

テレながらそう答えた。

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「して、その志をともにしている者は今どこに居るのじゃ?」

 

「それは分かりません。前いた村で一緒に遊んでいたヤツで、こっちに移り住む時に別れたっきりです。それに…」

 

「それに…なんじゃ?」

 

「それに前いた村は、私腹を肥やす太守に成ってから、疲弊して最後には賊に襲われ壊滅したと聞きました。」

 

「!!…そうじゃったか、すまん。」

 

”しまった”と言ったように急に祭さん顔をしかめる。

そしてすまなさそうにこちらを見つめてきた。

 

「いえ。ご心配ありがとうございます。それにこれは俺の勘でしかないんですが、きっと生きていると思うんです。あいつは俺よりも武の才能が有りましたから…」

 

そう言って俺は少し遠くを見つめた。

きっと生きている。

普段は無愛想で、感情を上手く伝える事が出来なかった奴だったけど、あんな良い奴が簡単に死ぬ訳が無い。きっとどこかで生きて、そして俺と同じ鈴を持ってくれている。

根拠や確証があるわけじゃないけど、俺はそう思う…。いやそう信じている!

 

そう思って遠くを見つめていた俺の表情は、少し寂しさが映っていたのかもしれない。

たぶんそう感じ取った、祭さんが明るい物言いで俺に声をかけてくれる。

 

「そうか、会えるといいのう。ワシもお主がそこまで信を置いているやつに会ってみたいわい。」

 

「ええ、きっと気にいると思いますよ。ただちょっと…」

 

「ちょっと…なんじゃ?」

 

「いえ、あいつは人見知りが激しくて、そして頑固なところがあるので、心を許すまでは時間がかかると言いますか…なんというか…ただ人を見る目はあると思いますので、その人の人となりが分かれば大丈夫だと思います。」

 

「なるほどのう…つまりお主とは逆の人物と言うわけじゃな?…にしても、そいつのことをよくわかっとるようじゃが…んコレか?…女なのか?」

 

祭さんが至極楽しそうな顔をしながら、小指を立てて聞いてくる。

いきなり、なんてことを言ってくるのだろうか?

た…確かにアイツのことは好きだけど、それとはまた違うと言うか…なんていうかもう家族みたいなモノで…えーとつまりなんだ?

…………とにかく違うんですよ!

 

まったく…。武人としての心構えなどは尊敬に値するけど、こういう所はだめな人だなぁと思ってしまう。

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「ちょっとやめてください。っていうかなんで小指立ててるんですか!?あーもーこの話はおしまいです。もうだからやめてください。先に行きますよ。」

 

「なんじゃつまらん。お主から女の話を聞くのは初めてじゃからな。ほれ話せ。師匠命令じゃ。」

 

「嫌です。はぁ何でこの人を師と仰いだんだろ」

 

その後も、祭さんに追及されながらもそれをつっぱねて、目的地へと歩を進めるのだった。

 

(思春お前は今どこで何をしているんだろうな?俺はお前との約束を守って何とかやっているぞ?きっとお前も同じように頑張っているんだろ?俺はお前が死んだなんて信じちゃいない。だから近くにいるなら俺のところに来い。また一緒に遊ぼうぜ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一刀!教えんか!?師匠の命に背くというのか?もう教えてはやらんぞ?」

 

「あーもー、だから教えませんって、分からない人だな。(ダメだこの人はやくなんとかしないと…)」

 

 

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第一話いかがだったでしょうか?

 

思「前作よりもちょっとボリュームを増やしたといった所だな。それよりも、普通なら、待っている人などいなくて当然なのに、それでも待っていてくれている人がいたんだ。もう一度お礼を言え!」

 

それに、ついては本当にありがとうございます!!

 

思「私からもお礼を言いたい。ありがとう」

 

さて、ここで一つお知らせがあります。

この作品ですが、他のサイトにも投稿する事を決めました。

理由は、あちらのサイトでは、携帯でも小説が読めるようになっているので、暇な時間にも簡単に読めると思ったからです。

あと、此方の更新が止まっている時に、あちらでネギまの小説を投稿していたからという理由もありますね。

 

思「ほう…。そんな事して大丈夫なのか?」

 

大丈夫問題ない(キリッ

と、ネタを挟んで見ましたが、そのサイトの名前は”にじファン”です。

あちらの名前はcasterとなりますので、よろしくお願いします。

 

思「ふむ。まぁ…もちろん此方の方が更新するのは早いだろうが、気が向いたらあちらもチェックしてくれ。」

 

さて、次回の更新については、まだ未定となります。

といっても、遅くなる訳じゃないですが…。余裕を持たせる為に、一話修正した後に、修正が終わった物を投稿するので、何時とは断言しずらいからです。

 

思「今の所どんな状況なのだ?」

 

そうですね。3〜4話はもう修正終わっています。

もし、時間がかかりそうなら、先に投稿すると思います。

 

思「なるほどな。あまり遅くなると、待っている人もいなくなるからな?そこは注意しておけよ?」

 

もちろんです。

さて、そろそろ〆に入ろうと思います。

皆様お待たせしました。

今日の思春ちゃん。

今回より再開です。

今回は、ネタフリとかはしません。皆さん妄想力全開で読んでください。

それでは、次回まであでゅ〜ノシ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思「……チュッ♪ふ…ふん///こ、これは今まで待っていてくれたお礼だ。…何?ほっぺたじゃなくてく、唇にして欲しいだと?/////む…無理だ!!わ、私がそんな大胆な事できない事知っているだろ!?…く〜///そ、そんな目で見つめるな!!…その目には弱いんだ。……わかった。もう一度だけほっぺにしてやるから、それで満足しろ!!……いいか?いくぞ?……チュッ♪。……今までまっててくれて……ありがと。…大好きだぞ!」

 

 

ふむ。…私はどちらかといえば、して貰うよりも、するほうが好きなのだがな。

 

思「////だったらさせるなーーーー!!!!」

説明
第一話投稿しました。
あくまで、リメイクですので、大筋は前作と同じになります。
今日の思春ちゃんも、今回から復活しますので楽しみにしてください。

それでは、どうぞ!
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コメント
いやっはーーーーーーーーーー!(裕樹)
萌香さん:ありがとうございます!更新がんばります!!(秋華)
poyyさん:し…至高ですと!?そんな評価を受けるとは…とても嬉しいです!(秋華)
kuorumuさん:是非ニヤニヤしてください。私もそれを望んで日々小説を書いています!(秋華)
量産型第一次強化式骸骨さん:あはは。後日なんて生ぬるいことは私はしませんよ。(秋華)
Lisaさん;お待たせしました!これからもよろしくお願いします!(秋華)
待ってましたよ〜。更新楽しみに待ってますからね〜(萌香)
今日の思春ちゃんは至高である!!異論は認めない!!(poyy)
ニヤニヤしながら読んでます(kuorumu)
そして後日、祭から一刀の話を聞いた雪蓮にも問い詰められるんですね分かりますww(量産型第一次強化式骸骨)
待ってました!!!!(Lisa)
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真・恋姫†無双 北郷一刀 ヒロイン不在  今日の思春ちゃん再開 

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