桜と空と… |
「花見をしに行こうぜ」
マミさんの家で皆でお茶とケーキを楽しんでる時に突然杏子がそう切り出した、あまりにも唐突過ぎたので皆反応できずに目をぱちぱちさせてる
まぁ、あたしも反応できてない一人なわけなんだけど…
「……んっ…唐突ね、なにかあったのかしら?」
ケーキを切り取ってからゆっくりと食べ、飲みこんでからほむら聞く、誰もが話さずにいたからやたらと間が開いたように感じた
「んっ、ほら『あたしと』マミが付き合い始めてからそこそこ経つしなによりいい天気だからよ、デートとかしたいなってな」
杏子のやたらと強調した一部の言葉にそれまで穏やかだった一瞬で硬化した―というよりほむらの周辺の空気が凄い事になった、隣にいたマミさんにいたっては滝のような汗が流れてる
「――そうね、『あなたは』まだ予定がたってないみたいね」
「おいちょっと待て、あたしはってどういうことだ?」
「言葉通りの意味よ、私は巴マミと既に約束してるわ」
「ちょっ!暁美さんっ!!?」
ほむらのやり返しから爆弾発言、そして今で固まってたマミさんが急に慌て出す
「おいマミっ!どういうことだよ!」
「えっ!? わっ、わわわわわ私はあっ暁美さんが行きたいって言うから!そそそそそれに佐倉さんも誘うって言ってたし…」
「――おい」
「そうね、誘うのを忘れてたわ、私とした事が『うっかり』していたわね…で?貴方は来るのかしら?」
「当たり前だろうがっ!二人にしてたまるか!」
なにやら面白い――まぁこの三人だといつものやり取りなんだけど―やり取りが始まった…
にらみ合いを始める二人と間に挟まれて困った笑顔をしてるマミさんをかわいそうだけど放置してあたしはまどかの方を向いて聞いてみる
「花見かぁ…まどかは行く?」
「さやかちゃんと一緒なら良いよ」
毎度の事だけどそう返されると嬉しいけど結構恥ずかしい、だからあたしは誤魔化すためにケーキを少し切り取って一口食べる
「あっ!じゃっ!じゃあ美樹さんも鹿目さんも一緒に行きましょ!?皆で行けば楽しいでしょうし!」
あたしとまどかがどうしようかと話したのをこれ幸いにマミさんがあたし達も連れて行こうと誘いの手を出す
「……どうしよっか? さやかちゃん」
「そうだねぇ、杏子やほむらに悪いしねぇ…………」
「そんな事言わないでっ!ねっ? 私達友達なんだし!」
あからさまに動揺というか慌てながらマミさんが必死になって誘う、見てると何か可愛いというかからかいたくなるというか……そういう衝動に駆られる
「いやいやいや、マミさんは二人との約束じゃないですかー、あたし達が邪魔するのも悪いですよ!」
「……――美樹さぁん」
恨みがましそうな目で睨んでくるけど左右でにらみ合ってる杏子とほむらで説得力とか色々と皆無になってるマミさんをみてさすがにちょっとやりすぎたかなと思えてきた
「さやかちゃん、あまりマミさんを困らせちゃ駄目だよっ」
まどかがあたしを咎める様に嗜める、困ったような笑顔じゃないのは多分……
「んー……それもそうだね、と言うことなので、嫁と一緒にご一緒させていただきますね」
取り合いをしてる二人には悪いけど参加することにしておいた、まどかの視線がちょーっとだけ怖かったのもあるけどそれ以上にマミさんの安堵の表情が面白かった
「そっ、そう言う事だから、今度の休みに皆で花見に行きましょ? ねっ? 佐倉さんに暁美さん!?」
「……そうね、まどかもと言うことであれば仕方ないわね」
「ちっ、わーったよ……マミの頼みだしさやかも来るってなら仕方ねぇ……」
二人ともぶつぶつといいながらも納得をした、この後またしばらくは大人しくお茶会が再開されたわけで、そのまましばらくしてあたしとまどかは先に帰る事にした
「――ねぇ、さやかちゃん」
帰り道、微妙な沈黙を続けてたあたし達の空気を破ったのはまどかの言葉だった、腕を組んでの帰り道もいいけど今日は手を繋ぎ、指を絡めた繋ぎ方での帰宅である
「んっ?どうした?」
「………………うぅん、なんでも―」
「無いわけないでしょ? 勝手に自己完結しないように」
話を終わらせようとしたまどかを遮るついでに軽く額を叩く、当然のことながらこつんって程度だが
「あれでしょ、あたしがマミさんをからかってるのが面白くなかったんでしょ?」
「……うん」
「からかって面白かったのは認めるけどね……でも」
頭を掻きつつ返答をして、次の言葉を待たずにまどかを抱き寄せてまどかの唇にあたしの唇を押し付ける
急に抱き寄せたことで体を強張らせるけどキスをされてると分かると空いてる手で抱き返し、体の力を抜いてもたれかかるようにしてくる
「……はぁ…………でもこういうことをするのはまどかにだけだよ?」
「んっ…………うん……でも――出来たら……………その……」
「んー、あたしの嫁は焼きもちさんだなぁ……わかった、努力するよ」
まぁ、実はあたしもまどかの事を余り言える立場じゃないんだけどね―と、考えながらももう一度キスをしてあげる、ようやく落ち着いたのか機嫌を良さそうにしていっそう強く抱きついてくる
「…………ずるい……」
唇を離してからまどかはそう呟いて顔をあたしの胸元辺りに擦り付けるようにする、あたしは多分嬉しいけど怒ってるような表情なんだろうなと想像しながら頭を撫でてあげる
「ずるくて結構! さっ、帰るよ」
「うんっ!」
しばらくしてから一度体を離し、改めて手を繋いでからあたし達は帰り道を歩くことにした
そして家に帰ってから支度をして――自分の部屋で改めて自分のやったことが恥ずかしくて転げまわったのは言うまでもないことだった……いくらまどかを落ち着かせるためとはいえ良く考えなくてもあんな人目のつくところでなんて…と思い出した結果である
そして花見の当日、普段より少しだけ早めに出て待ち合わせの場所には10分くらい前についたんだけど…まどかが既に居たので声をかけつつ後ろから抱きつく
「おっはよー、まどか」
「ひゃっ!?もぉ……おはよう、さやかちゃん」
後ろからいきなり抱きつかれたからさすがに驚いたらしい、それでも困ったような笑顔で終わるのはあたしとまどかの仲って奴かもしれない
「そういえば杏子たちはまだ来てないの?」
「うーん……まだ来てないみたいだね…………あっ、あれじゃないかな?」
まどかが軽く周囲を見回して指を指した方向を体を離してあたしも見る、よく見なくてもわかるけど杏子がマミさん片腕を引っ張り、マミさんのもう片方の腕にほむらが腕を絡めてマミさんの横を歩いてる、そしてマミさんは困り顔で転ばないように引っ張られてた
「ほら早くしろって―おっ、もうあの二人居るぞ」
「ちょっ、ちょっと佐倉さんも引っ張らないでって……おはよう鹿目さんに美樹さん」
「おはようまどかにさやか」
「うん、おはようみんな」
「おはよー、それにしても結構な荷物ね」
杏子とほむらの手にはそれなりの大きさの袋と重箱みたいなものがあった、ちなみにマミさんは……まぁ二人に手を塞がれてるから持てないよね……
「えぇ、料理にお菓子と……飲み物ね、お菓子と飲み物は佐倉さんに任せたから中身がわからないけど…料理の方は私が作ったから自信があるわよ?」
「あたしだって嫁の手料理があるからそれも自信ありますよぉ?」
「もぉ……さやかちゃんも作ってきてるのに」
「だーめ、これはまどかにだけなんだからねっ」
「はいはいごちそーさんっ、さっさと座る場所見つけようぜ」
「そうね、早く腰を下ろして花見をしたいわね」
「ちょっ、二人とも待ってぇぇぇぇぇぇっ!」
マミさんが杏子とほむらに引っ張られていったのであたしとまどかはその後をついて行く事にした、何であの二人がイライラしてたのかはよくわからないけど……
結局見つけた場所は少し遠いけどその分あたし達しかいない良い所だった、マミさんがシートを敷き始めるとほむらが料理の入ってる重を置いて皿とかを用意し始めて―その横で杏子は適当に菓子とかを置いてさっそく菓子を食べ始めていた
あたし達もシートの上に座って荷物を置いたり皿とかコップを受け取ったりしてるわけだが……
「あんたも手伝わなくて良いの?」
「あー? そういうめんどいのは任せてんだ」
「あら、なら佐倉さんはご飯いらないのね?」
「あーなんか凄い手伝いたくなったな!ほら貸せよっ!」
脅しに屈したのかコップや割り箸を渡して行く杏子であった、そして皆にコップが行き渡ったので飲み物を淹れ、みんなのコップに飲み物が入った所でマミさんがやおら立ち上がった
「やっぱり花見なんだし乾杯しましょ!誰か音頭取らないかしら?」
「おんどぉ? あたしはめんでーだからパス、マミがやりゃいいじゃねーか」
「うぐっ!みっ、美樹さんはどうかしら!?」
浮かれたのかマミさんが凄いことを言い出した、杏子がジト目で見ながら嫌がった、そのおかげであたしに振られたわけだが…
「あたしはゲストだからっ!主催のマミさんがやれば良いじゃないですか!?」
「うぅっ……じゃっ、じゃあ鹿目さんはどうかしらっ!」
「ふぇっ? えっ…えと…………」
「だーめですよマミさんっ!あたしの嫁にそういうのを強要するのはこのさやかちゃんが許しませんよっ!」
「あうぅぅ…………あけみさぁん……」
まどかにまで振ろうとしたからあたしが阻止したら泣きそうな顔でほむらを見た、正直可愛いんですけど……
「巴マミ、言いだしっぺの法則って言うのがあるわよ」
「……は、はい…………」
ほむらに止めを刺されてマミさんは完全に落ち込んだ、そのあまりの惨状を杏子はお腹を抱えて笑っていた、そしてひとしきり笑った後に涙をぬぐいつつ
「はひー……しっ……しっかたねぇな、マミも一緒ならやってやるよ」
と、妥協案を出した
「―っ!?ほんとっ!?佐倉さん!!」
その一言にマミさんが復活して杏子の手を握る
「おっ、おう、ただし、一緒だからな!?」
「えぇ、一人だと凄い不安だったけど二人ならもう何も――」
「それには及ばないわ、私も付き合うわ」
ほむらが黙っていなかった、二人の間に割って入るように表れてちゃっかりとマミさんの手を握っている
「ほむら……言いだしっぺがどうとか言ってなかったか?」
「法則とは言ったけどやらないとは言ってないわ」
「ちょっ、ちょっと二人とも……こんな時まで…………」
また何時ものやり取りが始まってマミさんもオロオロしだしたから間に入ることにした、そろそろ始めないとおなかも空きすぎてるし
「はーいはいはい、争奪戦はそこまでにして、今回位は三人でやったら?」
「そっ、そうね、出来たら毎日だけど仲良くやりましょ? ねっ?」
「ちっ……仕方ねぇな」
「…………そうね、不毛なのはやめておきましょう」
二人が矛を収めたのでマミさんが安堵のため息を一つついた
「それじゃあ主催のマミさん、あとほむらに杏子、乾杯の音頭をよろしく〜」
「んっ、んんっ!それではっ、私達が出会った事への感謝と」
「「あたし(私)とマミ(巴マミ)との仲の進展と」」
「こっ!こここここれからも皆仲良くやっていけることを願いましてっ!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
結局マミさんは最後まで慌てたりするのであった……まぁ無事に乾杯も終わったのでしばらくは食事で大人しくなるとは思うけど…………
――甘かった、完全に
何があったって食事で食べさせてあげるとか口移しとかそういうのはあまりにも些細過ぎた問題は杏子がどうやって入手したのかわからないがお酒なんかを持ち出してからだ
「………………」
最初に飲まされたほむらは無言でちょっとずつ飲みながらマミさんと杏子を見てる―いや、あの視線は睨んでるといっても良いと思う、そして睨まれてる二人はと言うと……
「なぁ〜マミ〜そらがぐるぐるだぞ〜あはははははは〜」
「へぁ?ひゃくらひゃんひゃにひっへふのぉ?」
――ごらんの有様とも言うべきか、見事に酔っ払って絡まってる、マミさんはさらに言うとろれつが回ってない……そしてまどかはと言うと何時の間にかどこかに行ってた――ちょっと探しに行かないと
「ちょっ、ちょっとあたしトイレに行って来るわ!」
ある意味凄く嫌な予感もするけどそれよりまどかを探しに行った方が良いと判断して立ち上がり、適当な言い訳をしてまどかを探しに行く―とは言っても何処に行ったのか検討あまりつかないんだけど…
後ろから笑い声とか色々と聞こえるけどそれは無視しよう、どうなっても知らないよホント…
「あっ、ここに居た」
探し始めてそれほどもかからず、一本の桜の木の下で桜と空を一緒に見てるまどかを見つけた
「あっ、さやかちゃん……もしかして」
「うん、逃げてきた、ってゆーかあんた何時の間にかいなくなってるんだもん、そりゃ探しにいくわよ!」
「ティヒヒッ、ごめんねっ」
特有の笑い声をあげてからまどかがもう一度空を見上げた
「どうしたのさ?」
「うん…………あのね……」
いつになく真面目な声で言うからあたしも真面目に聞く
「空がすごく青くて……何かさやかちゃんみたいって思ったら…桜の色がわたしみたいって思えて……でもそれってなんかわたしとさやかちゃんの距離が凄く遠いってことで…そんなことないよねって…………」
「―――てやっ!」
なんか話を聞いてて拍子抜けした―というかなんつー事考えるかなーと思ったとたん無性に腹が立ったからとりあえずデコピンをしておいた
「あいたーっ!!?」
「まったく……縁起でもない事考えるんだからこの嫁は……」
あたしはまどかを後ろから抱きしめて、桜の木の根元辺りに腰を下ろす
「空が青いのは遠くから見たらだってのは確かにそうだけどね、でもね、空って空気と同じでしょ? って事はあたしはまどかのすぐそばにいるって事じゃない、違う?」
そこまで言ってまどかはようやく「あっ……」って声を漏らした―そこまで考えてなかったらしい
「だからさ、そんな変な風に考えないように、わかった?」
「うん……心配させちゃってごめんね?」
まっ、こういうところも可愛いんだから仕方ないのよね…まどかは
「そう思うならあたしにごほうびをちょうだい、って言うか勝手にもらうから」
「ふぇ?ごほうびって――んぅっ!?」
まどかの質問に答える事もなくあたしはまどかにキスをする、まどかは驚いてるのか体をビクッとさせて強張らせる
「んっ……ふぅ……はぁっ……んふ…ぅ……ご褒美確かに貰ったからね」
「はっ……んぁ……っ……ぅ……もぉ…………人にみられちゃうよ……?」
「それじゃあ仕方ないか…それにトイレって言って探しに来たんだし……そろそろ戻らないと」
さすがに人目を気にするまどかに合わせるようにして戻ろうと言いつつ立ち上がる、もちろんまどかは抱いたままだが―
「その前に……もう一回――んっ……ふぅ……ちゅる……ぅん…・・……」
「ふぇっ?もういっか―んんぅっ!?んっ……ぁ…………んぁ……ふぅ……」
今度はさっきのようなのじゃなくて舌を絡めるキス、もちろんこれはさすがに人目があったらやれないからさっき軽く確認して、それでのこの行為である
「はっ…………んふっ……じゅる……れるぅ…………はっ……ぁ……」
「ぁ……んぅ……ふっ……ちゅ……るぅ…………ふぁ……もぉ…………やっぱりずるい……」
本当はもっと長く続けたい所だけどさすがに戻らないといけないから短めに切り上げるとまどかが嬉しそうだけど困ったような、そんな表情であたしを批難する
「ごめんごめん、続きは家でしてあげるからさ……ねっ?」
「……うぅ…うん……」
さすがにちょっと悪いかなと思ったので提案したら顔を真っ赤にしてこくんと小さく頷いた、そしてまどかはあたしから一度体を離すと手をしっかり握った
「それじゃ、戻ろうか?」
「うん……あっ、さやかちゃん」
「なに?」
「……その……愛してる…………」
「―っ!?…うん……あたしも」
不意打ちにそんな事を言われてはあたしも恥ずかしくて無言で皆の所に戻るしかなかった――
そして戻ってきたあたし達が見たものは――下着姿でわけのわからない事を叫んでるマミさんと、そのマミさんの膝に頭を乗せ、マミさんの服を羽織って猫のように寝てる杏子と、マミさんにしなだれかかってぶつぶつと何かを呟いてるほむらだった……
片付けと三人を介抱であたしとまどかが偉い目に遭うのはまた別のお話……
説明 | ||
某所に投下したSSです 花見をネタにしたものです 勢いで書いてる部分があるので酷いことになってる所もあります 未成年の飲酒はもちろん駄目ですよ? |
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