【伝説の樹の下で】
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【伝説の樹の下で】

 

SE:放課後の喧騒

 

男「――――俺は待っている…片想いの彼女を…

  この学園に入ってはや三年、ぶっちゃけ通算18年彼女の居ない俺が、勇気を奮って書いたラブレター…

  『ずっと貴女が好きでした。今日の放課後、校舎裏の大きなポプラの木の下で貴女を待っています』

  ついに…ついに言ってしまった。彼女はどんな顔で来るだろうか…頬を赤らめながら…?それとも…」

 

SE:タッタッタッ(小走りの足音)

 

男「はっ、足音が!…もしかして彼女っ?」

女1「はっ、はっ、はっ、はっ(掛け声)」

男「…誰?…てか、何で胴着…?」

女1「すぅ――――、はぁ――――…はぁっ!」

 

SE:ブウンッ!(風きり音)

 

男「うわあっ !? 」

女1「はぁっ!はぁっ!えいっ!やああっ!」

男「ちょ、いきなり危ないって――――」

女1「(低めの声)はぁああああああ〜〜〜…

  あたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたっ!」

 

SE:連続の打撃音

 

男「うっわあああああぁぁぁぁぁっ!!!!!」

女1「あたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたっ、

  ――――おあたぁっ!」

男「はぁ、はぁ、はぁ…」

女1「―――――ふ…私が求める拳の道は、まだ遠い…」

 

SE:タッタッタッタッ(走り去る音)

 

男「…あぁ〜びっくりした…ここ、あのコのトレーニングコースだったのかぁ…

  それにしても凄まじい…ポプラの葉、ほとんど落ちちゃったよ…ん?」

 

SE:ヒタヒタヒタ(歩いてくる音)

 

男「また足音…、今度こそ彼女――――…はぁ?」

女2「―――ああっ…」

男「ええっ、何いきなり泣いてんのっ?」

女2「このポプラの樹の葉がすべて落ちた時、アタシの命の炎も燃え尽きてしまうのね…」

男「いや、それはさっきいきなり落ちたんだって」

女2「嗚呼…小鳥さん教えて…純真無垢なアタシの魂は、柔らかな天使の羽根につつまれて天上へと召されていく…

   鳥よ鳥よ鳥たちよ、鳥よ鳥○○○(ピ―――――――)の歌〜〜〜〜〜〜♪」

男「いつの間にか歌ってるよ…てかそれ明らかにパクってるし」

女2「ふぅ…――――もう疲れたよ、パトラッシュ…」

男「すいません、それ、俺の台詞なんすけど」

女2「そうだわ、こんな事してられない…やっぱりシチュエーションは大事よね、まずは病気にならなくっちゃ♪」

男「健康なのかよっ!」

女2「よ〜し、今日はおなか出して寝ちゃうぞ〜〜〜っ!レッツゴ〜〜〜〜っ!」

 

SE:タッタッタッ

 

男「…えらく安上がりだな、おい…はっ?」

 

SE:サクサクサク

 

男「またまた足音…今度こそ…今度こそっ――――…」

女3「すぅ―――――…あめんぼあかいなあいうえおっ!」

男「今度は発声練習っ!?」

女3「隣の客はよくきゃききゅう客だ、東京都特許きょきゃきょきょとっきょきょっ!」

男「てか滑舌わるっ!」

女3「―――――物売りにはそれぞれ売り声というものがございます。竿竹売りは「さーおやー、さおだけ」と長く伸ばしてございますな。

これが「さおだけっ、さおっ」てな、せわしない売り声ではどうも具合が悪うございます。

   売り声にはそれぞれ季節感というものがございます。金魚売てなものは夏のもんですな。

  「き〜んぎょ〜ぇ、金魚」ああ、夏やなぁ、という気がいたします。

   一方、冬の売り声の代表といえばうどん屋さんですな。「うど〜んや〜ぇ、おそば」

   『清やん、おもろかったなぁ』

   『 おもろかった。「冷やかしゃ郭の一の客」ちゅうけどおもろかった。しかも金がかからんところがええが』――――――」

 

フェードアウトして、再びフェードイン

 

女3「―――――『ウッ…ウゴッ…ゲホッ、ゲホッ…ああ、もうちょっとでほんまに饅頭で死ぬとこやった…

   どなたはんも、おおきに、ごっつぉはん』

  『何を言うてんねん、あんた…あんたが饅頭が恐いちゅうから、普段自分らでも食わんような上等の饅頭を…

   あんたのほんまに恐いもんはいったいなんや!? 』

  『今度は、濃いぃお茶がいっぱい恐い 』」

 

SE:チャチャン、デンデン…(お囃子の音)フェードアウトして遠ざかっていく

 

男「…や、やっと終わった…落研の練習とは…不覚にも『寿限無』で笑ってしまった自分が情けない…

  しかし、『ろくろ首』が上方落語になってるとは新鮮な驚きだったかも―――――

  って、違う違うっ!俺は何をやってるんだっ!てか、彼女は一体どうしたんだ―――――」

 

SE:トントン(肩を叩く音)

 

男「んっ?」

女4「アナタ、そんな所で何やってんの?」

男「何って、俺は愛しの彼女を―――――」

女4「――――ああ、言っても分からないか、このテのタイプは」

 

SE:ジャラッ

 

男「なっ、何を―――」

女4「――――――仏説摩訶般若波羅蜜多心経 観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時――――――――」

男「ちょっ、アンタ何いきなり…ちょ、やめ…あ…何かだんだん眠くなって――――」

 

(女4の般若心経続く)フェードアウト

 

女5「――――先生、お疲れ様でした」

女4「別に疲れてないわ。たいした未練があったわけでも、変なモノになってたわけでもないし」

女5「そうですか…でも、彼も可哀想でしたね。一大決心して告白しようって日にバナナの皮で滑って、頭打っちゃうなんて…」

女4「―――正確には、『一大決心の上、告白しようとして家を出たら靴紐が切れて、つんのめった所を黒猫がよぎって、

   バランスを崩した瞬間、トラックに跳ねられて12メートル飛ばされて着地した所にバナナの皮があったんだけどね」

女5「…バナナ、ほとんど関係ないですね…」

女4「運の悪い時ってのはそういうものよ…それでも告白したかったのね、彼…」

女5「そうですね…ところで彼、分かってたんでしょうか?自分が死んでるって事――――」

 

 

 

 

終わり   

説明
彼女いない暦18年の高校三年生の男子が勇気を奮って書いたラブレターの返事を待っていた。
だがその前には数々の障害が…彼は告白できるのか?
そして、衝撃のラストが。
―――君は、生き残る事が出来(自主規制)
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