『改訂版』真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第一部 其の十二
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『改訂版』 第一部 其の十二

 

 

 

雍州 五丈原

【紫一刀turn】

 魏軍は今、五丈原に集まっている五胡、羌族に対し柵や防壁で守りを固めながら、渭水を背に対峙していた。

 俺と華琳は本陣の天幕の前で、布陣を行っているみんなの動きを静観している。

「まさかこの五丈原で五胡と対決する事になるなんて・・・朱里が居なくて本当に良かったよ・・・」

 五丈原に諸葛亮なんて不吉すぎる!

「劉備軍は定軍山を素通りできたみたいだし、魏軍がこれから定軍山に向かうことはないだろうから秋蘭の事も心配無い。((臨沮|りんしょ))に愛紗、夷陵に桃香は近付いていない・・・まあ、気に成りだしたらキリがないけど・・・・・劉備軍が成都を目指すのに((落鳳坡|らくほうは))を通るのかが気になるな・・・緑が居るからそこは避けると思うけど・・・」

「何をぶつぶつ言ってるの?」

 華琳に睨まれた・・・。

「本来なら腰を据えて敵の兵糧が尽きるのを待つところだけど、今回はそんな訳にいかないから一刀の案を採用したのよ。しっかり見なさい!」

 逃げて難民になってしまった人たちに、街や土地を取り返してあげないといけない。

 それが早ければ早いほど民衆の心を掴む事ができるんだ。

「技の名前を叫ぶだけで攻撃力が上がるなんて眉唾モノだったけど・・・春蘭を始め武官全員が試験でその効果を認めるとは思わなかったわ。」

 それに関しちゃ俺もビックリだけどな。

 まさかここまで効果が出るとは思わなかった・・・。

「それよりも、この五丈原の攻め方・・・個人の戦力強化が出来れば楽に成るなんて言うからこの『厨二』な策を提案したけど、実際どう攻めるんだ?」

「この五丈原という場所。どんな所に見える?」

 華琳が指した方角には木の生い茂った急な斜面、高さは十数メートルくらいか?

 これがずっと続いていた。

 斜面の背後、俺達から見て正面になる南には山が連なっている。

「あの斜面の上ってなだらかな感じで山に続いているのか?」

「なだらかどころか、平地よ。」

「平地!?」

「これが五丈原とその周辺の地図よ。この線があの斜面。」

 天幕の前に置いた机の上に広げられた地図を見ると・・・。

「なんだこりゃ!?まるで山から半島みたいに張り出した所が全部平地なのか!?」

「正に天然の要塞ね・・・あの上に進軍できる道は数箇所しかない上に幅がそれほど無い。」

「下手に近付けば伏兵や弓の餌食で、上手く上がれても敵が得意な馬が自由に走り回れる広大な平地って訳か・・・」

「火計をするにしてもあんな広い所少々燃やしたところで意味はないでしょうし・・・」

「成程、こりゃ確かに持久戦で敵の食い物が尽きるのを待った方が得策だよな。」

「戦場が五丈原になるという手紙は出してあるから、桃香たちが陽平関を落としていれば朱里や雛里ならば背後の山から攻める形で援軍をしてくれるでしょうけど・・・・・これは考えない方がいいわね。来るかどうかも分からない援軍などを期待するようでは、その段階で負け戦だわ。」

 朱里の名前が出た時に、思わず声が出そうになった。

 桃香と緑が成都を目指すのに、朱里がこっちに来るはずは無いからな。

 援軍を出すにしても誰かに任せるはずだ。

「結局は数箇所しかない入り口を力押しで突き抜ける訳だ。」

「そう言う事。あなたの言う『厨二』の力でね・・・・・ところで『厨二』ってどういう意味?」

「う〜ん・・・・・どう説明したらいいか・・・暗号がそのまま一般化したようなところがあるから・・・」

「暗号ね・・・それなら確かに言葉自体に意味は無いわね。」

 

 本当の事を知ったら、みんなから袋叩きにされるんだろうな・・・・・。

 

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【エクストラturn】

 五丈原に銅鑼の音が鳴り響き、数え役萬☆シスターズの歌を背に、魏軍が突入を開始した。

 

「必殺必中!((一矢一殺|いっしいっさつ))っ!!」

 

 秋蘭必殺の矢が進入路両脇の木の上で弓を構えた敵を次々と打ち落とす!

 その秋蘭率いる弓隊が雨あられと矢を射掛けて味方の進軍を援護した!

 

「ぶっ飛べっ!!((穿破岩打武反魔|はいぱあがんだむはんま))ぁーーーーー!」

「唸れっ!!((超伝磁葉々|ちょうでんじようよう))ぉーーーーー!!」

 

 季衣の鉄球と流琉の円盤が路の両脇に居た伏兵を木や地面ごと吹き飛ばす!

 味方の援護を受け最初に五丈原に姿を見せたのは!

 

「はあああああああああああああっ!!((蹴撃|しゅうげき))!((猛虎弾|もうこだん))っ!!」

 

 凪が走ってきた勢いのまま足に溜めた気弾をまるでサッカーボールの様に蹴り出した!

 待ち構えていた五胡の兵はまともに喰らって大量に吹っ飛んでいく!

 

「ウチの螺旋は天を衝く螺旋やああああああぁぁ!((天衝螺旋槍|てんしょうらせんそう))ぉーーーーー!!」

 

 凪の攻撃で呆気に捕られていた五胡兵達が真桜の螺旋槍を喰らって回転しながら飛んで行った!

 

「どこを見てるか!このビチグソがぁ!!((海兵隊式双剣乱舞|かいへいたいしきそうけんらんぶ))ぅうううぅぅ!!」

 

 更に沙和が追い討ちを掛け充分なスペースを確保した。

 

「蛆虫どもぉ!!日頃のキビシイ鍛錬は今この時のために在ったのっ!!」

『サーッ、イエッサーッ!!』

「思う存分ビチグソどもを食い尽くせなのおぉおおおぉっ!!」

『サーッ、イエッサーッ!!』

 

 沙和の命令の下、魏軍兵が五胡兵に襲い掛かった!

 

「おら!おら!おらあああぁぁああ!((蒼竜|そうりゅう))!((神速撃|しんそくげき))っ!!」

 

 霞を先頭にした騎馬隊が沙和の海兵隊の脇を抜け五丈原の奥深くに突っ込んでいく!

 

「騎馬戦でこの張遼隊が負けるなんざ!許さへんでぇっ!!気張りやあぁっ!!」

『うおおおおおおぉぉおお!!遼来来っ!!遼来来っ!!遼来来っ!!』

 

「うふふふ♪あはははは!あーっはっはっはっはっはーっ!!」

 

 高らかな笑い声と共に真打!魏武の大剣の登場である!!

 

「貴様らの命運は曹操様に刃を向けた瞬間に決まったのだっ!!

 刃向かう事は無駄っ!!

 逃げる事も無駄っ!!

 貴様らに許されるのは只地獄に行く事のみっ!!

 この魏武の大剣!夏侯元譲が直々に案内してくれるわっ!!」

 

「((矜持猛進|きょうじもうしん))、((乾坤一擲|けんこんいってき))!

      ((怒髪衝天|どはつしょうてん))、((剣閃剛輝|けんせんごうき))!

 

    ((七星餓狼|しちせいがろう))!((天翔烈牙斬|てんしょうれつかざん))っ!!」

 

 大上段から振り下ろされた一撃!

 気か?剣圧か?その判断もつかぬ衝撃波が今まで倒された数以上の五胡兵を吹き飛ばした!!

 

「しゅ、春蘭が・・・・・・難しいことを言っている!?俺は今、改めて『厨二』の凄さを実感したっ!」

 紫一刀の身も蓋もないツッコミが入った!

 

「ふっ・・・・・圧倒的じゃねぇか。わが軍は・・・」

 そんな呟きが宝ャから漏れた。

 これは華琳の軍であって、決してお前のじゃないぞ!宝ャ!!

 

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【紫一刀turn】

 みんなの活躍に見惚れていると、視界の端に馬でやってくる稟と風、それに自分の足で突っ走って来る桂花が入った

「ちょっと北郷っ!何なのよアレはっ!?」

「何と言われても困るが・・・あれが『厨二』の力だっ!」

「訳の分からない力説をするんじゃないわよ!!」

 

「考えるんじゃない!感じるんだっ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・ダメだわ、コイツ・・・・・」

「まあまあ、桂花ちゃん。今回もそうですが前の張三姉妹の時といい、我々の常識を覆す発想と知識。風は素直に凄いと思いましたよ〜。」

「私もそうは思うが・・・・・皆さん昂揚しすぎでは・・・華琳様はどう思われますか?」

「・・・え?そ、そうね・・・我々魏が五胡とまともな戦をする初戦なのだし、それに洛陽での一件で兵に怖気が見えていた事を考えれば、これ位の方が兵に勢いを付けられるのではないかしら?」

 ん?華琳には珍しく何か心此処にあらずって感じだったな・・・。

「華琳様がそう仰るのならば・・・」

 

「伏せなさいっ!!」

 

 華琳の声に俺達は反射的に地面に伏せた!

 

「((絶衝|ぜっしょう))!((旋輪転|せんりんてん))っ!!」

 

 華琳を中心に光の輪が煌めいたかと思うと、次の瞬間。

 伏せた俺達の周りに五胡兵が落ちてきた。

 光の輪と見えたのは、華琳の大鎌『絶』が描いた刃の残像だったのだ。

 

「性懲りもなく私を狙って来たようね。」

 

 忌々しそうな呟きの中に、何処か満足気な雰囲気があった。

「い、戦の騒音に紛れて来るなんて、あ、侮れない奴らだな・・・」

 華琳は春蘭達を見てて、自分もやりたくなってたんだろう。

 そのことをツッコミたいが華琳の手には未だに絶が握られている・・・・・。

 俺としてはまだ首と胴をくっつけていたいので・・・ここは敢えてスルーする事にした!

 

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 半刻も保たず敵は潰走を開始した。

 現在は追撃戦へと移行していたが深追いはしないようにと華琳からの厳命が出ている。

「事前の心配が無駄に思える程の結果になったけど・・・」

「一刀、その考えは危険よ。指揮官が事前の心配事を解消して初めて兵は信頼して戦えるのだから。」

 厨二の興奮が覚めて冷静になれば、この作戦がかなりの無茶だったのが見えてくる。

「うん、まだ先の長い戦いだもんな。気を引き締めるよ、ありがとう華琳。」

「ふふ、そうしなさい。今日はここで野営をするからさっきみたいなのが来るかもしれないわよ。」

 暗殺者が闇に紛れてって事か・・・・・本当に気を引き締めないとな。

「そうだな・・・篝火は多めに用意させる様にするよ・・・・・こっちもそうだけど、劉備軍と孫呉軍にも現れる可能性もあるんじゃ・・・」

「それならこの前の手紙を読めば朱里や冥琳なら対策を立てるでしょう。」

 戦の前に考えていた心配が再び蘇ってくる。

 雪蓮と愛紗の毒矢、雛里の((落鳳坡|らくほうは))・・・・・。

「・・・なあ華琳、落鳳坡ってどの辺りなんだ?」

「らくほうは・・・?聞いたことのない地名ね・・・それも天の知識?どの様な字を書くの?」

 俺が地面に木の棒で書いてみせる。

「落鳳坡・・・不吉な名前ね・・・まさかこれは雛里のっ!」

 流石華琳、これだけで俺が言わんとする事を察してくれる。

「桂花!稟!風!あなた達は落鳳坡という地名に心当たりは有るっ!?」

 少し離れた場所で各部隊に指示を出していた三人が振り返った。

「い、いえ・・・記憶に在りません・・・」

「風もないですね〜。」

「私も地図や文献、旅をしていた時も見聞きした記憶はありません。」

 なんだって?落鳳坡が無い?・・・・・それじゃあ安心・・・じゃないっ!!

 思い出したっ!

 三国志演義じゃ?統が不吉な地名だって言うエピソードがあったけど。

 

 ?統が死んだ場所だから付いた地名だって説があったんだっ!!

 

「ちょっとあんたっ!落鳳坡って何よっ!!同志雛里に何かあるって言うのっ!?」

 桂花がえらい剣幕で食ってかかるが、俺は・・・。

 

 緑!頼む、気付いてくれっ!!

 

 そう念じるしか出来なかった・・・・・。

 

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益州 ((綿竹|めんちく))付近山中

【緑一刀turn】

「これは聞きしに勝る山道だな・・・『蜀の桟道』とはよく言ったもんだ。」

 劉備軍は現在、成都に向かって進軍中なのだが、途中どうしても山を越えなければならなかった。

 崖は有るわ、道には大きな石がゴロゴロしてるわで、輜重隊の荷車がまともに動けない。

 おかげで進軍スピードがここに来て急に遅くなった。

「何か方法を考えないとダメだな・・・・・」

「あ、あの・・・ご主人さま、朱里ちゃんが・・・その・・・何か思いついたみたいですけど・・・こ、今回は間に合いませんけど・・・えっと・・・」

 雛里がいつも以上にしどろもどろで答えてくれた。

 もっとも俺の視界には雛里の帽子しか目に入っていないが。

「雛里、熱が有るんじゃないか?身体が熱いぞ。」

「あわわ!そ、そんな事はありませんっ!だ、大丈夫ですっ!」

 実は雛里を守る為、俺の馬に一緒に乗せていた。

 陽平関を出発する前に紫苑、桔梗、焔耶に落鳳坡の場所を訊いたら、そんな地名は無いと言われた。

 朱里と雛里には訊けないからなぁ・・・・・。

 やはり?統が死んだ場所に落鳳坡の名が付いたんだろう。

 そうなると山道を移動する最中は常に雛里が襲われないように注意しなければならない。

 本当なら雛里の周りに武将全員を配置したい所だが、六万もの軍隊がこの細い山道を移動するため、長くなった隊列を指揮するのにはどうしてもみんなを分散させなければならなかった。

 そんな訳で俺と雛里の護衛は貂蝉と卑弥呼である。

 周囲は近衛隊が固めてくれているし。

 それに華佗も一緒に居てくれるから、最悪の事態になっても大丈夫のはずだ。

 俺は自分にそう言い聞かせてこの険道を進んでいた。

「華佗から見てどうだ?雛里の具合は。」

「いや大丈夫だ、病魔の姿は見えない。長旅で疲れが出てるのかもしれないな・・・」

「あわわ!だ、大丈夫です!・・・・(このままでいられれば・・・)」

「え?何か言った、雛里?」

「い、いえっ!何でもないですっ!!」

 う〜ん、こんなに側に居るのに顔が見れないってのは残念だ。

「雛里ちゃん羨ましいわん。」

「うむ、このような時で無ければ我らも御主人様やダーリンと一緒の馬できゃっきゃうふふと行きたい所だな。」

「でも今は雛里ちゃんを守ってあげなくちゃね〜♪」

「そうだな、ここは御主人様とダーリンのツーショットを愛でる事で我慢する事としようではないか、貂蝉♪」

 なんか不気味な会話が聞こえた気がするが・・・・・気にしない様にしよう。

 だけど、やっぱり雛里の顔が見たいな。

「雛里、ちょっと帽子借りるよ。」

「え?」

 返事を聞かずに雛里の帽子を自分の頭にのせる。

 ビックリして振り返った雛里と目が合った。

「こんなに近くに居るのに、雛里の顔が見れないなんて勿体ないからさ♪」

「あ、あわわわ!ごしゅじんひゃま・・・・・」

 ああ、成程。さっきから恥ずかしがってたのか。

 それで体温も上がってた・・・。

 

「ご、ご主人さまっ上!」

 

 雛里の声で咄嗟に上を見ると、岩が落っこちて来ていた!

 

「「((奥義|おうぎ))!((石破殿饗拳|せきはてんきょうけん))っ!!!」」

 

 貂蝉と卑弥呼の放った掌型の気が落ちてきた岩と・・・・・・・

 山の一部も一緒に吹き飛ばしてしまった。

「危ない所であったな、御主人様♪」

「ホントねぇ〜、これからは上も気を付けないとダメね〜ん。」

「ありがとう卑弥呼、貂蝉・・・雛里、大丈夫だったか?」

 庇うために抱きしめた腕の中で、雛里はプルプル震えていた。

「あ・・・ごひゅひん・・ひゃま・・・きゅぅ〜・・・」

「ひ、雛里っ!?」

 抱きしめた力が強すぎたか、恥ずかしさが限界を越えたのか?

 目をグルグルにして気絶してしまった。

「落ちたな。」

「落ちたわねぇん。」

「落ちたのう。」

「華佗!落ち着いてないで治療をっ!!」

「大丈夫だ。呼吸はしっかりしてるからそのまま寝かせてやったほうがいい。」

 華佗に言われた通り寝かせておく事にしたが、このままでは馬からも落ちてしまいそうだったので、雛里を俺の体に括りつけて行く事にした。

 

 一部始終を見ていた周りの近衛隊の口から噂が広がり、この場所は『落鳳坡』と呼ばれる様になった・・・・・・。

 

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益州 江陽

【赤一刀turn】

 長江と成都に向かう((?水|せんすい))との合流点にある街、江陽で孫呉軍と五胡は対峙していた。

 蓮華はここに来る前に追い付いたが、冥琳と雪蓮に言われた通り説得して建業の留守を護ってもらう為に戻ってもらった。

 シャオと亞莎を連れて。

 蓮華とシャオには相当ゴネられたけどね。

 そして妹二人を呉都に戻した王様は・・・・・仏頂面で敵陣を見据えていた。

「まったく!あいつら馬鹿の一つ覚えみたいに暗殺部隊を送って来てくれたわねっ!!」

 さすがの雪蓮も立て続けにやってくる暗殺者にイライラしていた。

 暗殺者は思春と明命の率いる近衛隊が退けていた。

 初めは雪蓮も喜んで戦闘に参加していたが、途中で飽きてきたのか近衛に任せるようになっていった。

 しかし、天才的な感を持った雪蓮は寝ている最中でも殺気が近付けば目を覚ます。

 おかげで寝不足になった雪蓮は鬱憤を晴らす為に暗殺者を叩きのめす様になった。

 かく言う俺も雪蓮に付き合わされ寝不足なのだが・・・。

「雪蓮!あいつらをぶっ飛ばして今日こそはゆっくり眠ろうっ!!」

「任せてちょうだい、一刀っ!!」

 俺も雪蓮も、妙に気分が昂ってんな。

 ナチュラルハイだなこりゃ、あはははは♪

「・・・・・まあいいか。思春、明命。雪蓮の補佐、頼んだぞ。」

「はっ!」

「お任せ下さいっ!冥琳様!」

「祭殿、左翼はお任せします。存分に暴れて下さい。」

「応っ!ついでに御当主様の動きにも気を配っておこう。」

「ふふ、頼みます。穏、後翼を頼むぞ。敵の遊撃と暗殺部隊に気を配れ。」

「は〜い。騎馬が主体ですからねぇ、掻き回されないように気を付けま〜す。」

 冥琳の指示も終わったみたいだな。

 敵は既に江陽の街から出て布陣を完了している。

「それじゃあ行くわよっ!!」

 

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【エクストラturn】

 雪蓮が軍の先頭に立ち、南海覇王を抜き放つ。

 

「世のため人のため!五胡の野望を打ち砕くっ!!

   我!孫呉の王、孫策伯符っ!!

       南海覇王の輝きを恐ぬのならっ!!

 

   かかってこいっっ!!!」

 

 雪蓮の厨二な口上を挑発と取った五胡軍は突撃を開始した。

 それを見た雪蓮の口角が吊り上がり、瞳には剣呑な光が宿る。

「ふふふ・・・・・そんなに早く地獄に逝きたいのかしら?」

 唇をひと舐めして、まるで見栄を切る様に大きく南海覇王を構えた。

 

「天の御遣いの力を借りてっ!

    今!必殺のっ!!

  ((南海覇王|なんかいはおう))っ!!((狂乱裂破|きょうらんれっぱ))あああああっ!!!」

 

 単騎で突撃する雪蓮を先陣が鋒矢の陣で追いかける。

 敵陣に突入した雪蓮の速度は落ちない。

 視界に入った敵を次々に瞬殺していく。

 その勢いは袁術軍を相手にした時の比ではない。

 

「あーーーっはっはっはっはっはっ!!」

 

「これは『江東の虎』の再来じゃな・・・」

 祭は自らの呟きに、武人の魂が燃え上がるのを感じた。

 己が獲物の巨大な弓『多幻双弓』を構え、

 特製の鉄矢を番える。

 

「策殿にばかり気を取られておると痛い目を見るぞ!

   ((轟怒剛弾|ごうどごうだん))っ!!」

 

 祭の放った鉄矢は指揮官らしき五胡兵を貫通し、更に十人を貫いて十一人目の胸に突き刺さって止まった。

「往くぞ皆のものっ!!早う行かねば策殿に手柄を全て取られてしまうぞっ!!」

『応っ!!』

 

 

「普段は静かな鈴の音も、今日は盛大に響かせてくれるっ!!

       ((鈴韻響叫|りんいんきょうきょう))っ!!((天魔覆滅|てんまふくめつ))っ!!」

 

「蓮華様の分もこの周幼平が頑張ってみせますっ!!

        ((秘剣|ひけん))っ!((返燕閃|へんえんせん))っ!」

 

 思春と明命も獅子奮迅の活躍を魅せ、孫呉の兵士達の士気を上げていく。

「孫呉の勇者達よっ!敵は五胡だが勝負の相手は劉備軍と曹魏軍だっ!!我らの勇猛さを奴らに自慢してやれっ!!」

『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!』

 

 

「え〜い!や〜!」

 なんとも気の抜けた掛け声ではあったが、

 襲ってくる敵を九節確で確実に仕留めていく穏であった。

 

「え〜い! ((蛟龍連撃毒牙列殺打|こうりゅうれんげきどくがれっさつだ))〜!!」

 

 技が凄いのか、穏の揺れるオッパイに気を取られて殴られているのか?

 判断に苦しむ所だが、味方の士気は間違いなく上がっている。

 

「遊撃隊が攻めて来るのは敵本隊が苦しく成ってる証拠ですよ〜!

『応っ!!』

 

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【赤一刀turn】

 みんな結構乗りがいいなぁ♪

「思春がここまで乗ってくるとは・・・・・そういえば水関でも名乗りを上げるの楽しそうだったな・・・」

「まあ、武官であれば目立って手柄を挙げたいと思うものさ。」

「思春や明命は影での活躍の方が多いもんな。」

「それにこうして名を上げておけば孫呉に豪傑有りと敵の士気を挫く事が出来るようになる。そういう意味でお前たち三人の策は武官に受け入れられたのさ。」

「成程ねぇ・・・」

「最も攻撃力が上がるというのは不可解だが・・・実際上がっているのだからどんな理屈かは後で考えれば良いか。」

 それもそうか。何故火は燃える?何故物は落ちる?

 俺が答えを知ってるのは学者が考えて答えを見つけてくれたからだ。

 そうじゃなけりゃ「そんなの当たり前」で済ますはずだもんな。

「むしろ私はこの『厨二』という策を事前の打ち合わせも無く思いついた、お前たち三人の方に興味をそそられるな。」

 またしても冥琳のニヤリ流し目で見られた。

 これを左目下の泣き黒子が見える角度でやられるとドキッとするんだよな♪

「それは突き付けられた問題が三人とも同じだったから、出てきた答えも同じだったって事だと思うけど・・・・・それよりも敵が撤退を始めてるみたいだぞ。」

「おっと・・・では各部隊に指示を・・・・・雪蓮のあの様子は・・・」

「雪蓮がどうかしたのか!?」

 冥琳は真正面から俺を見てポンと手を打った。

「雪蓮はお前に任せよう。」

「は?」

「北郷はあの状態の雪蓮を見るのは初めてだな。」

「あの状態?」

 遠目で良く分からないがかなり興奮してる様だ。

「相当気が昂っている。ああなると誰かが気を鎮めるのを手伝ってやらないといけなくてな、北郷、お前が相手をしてやってくれ。」

「ええ!?そういうのって冥琳の役じゃないの!?」

「私が忙しい時は誰かに頼むのはよくある事だ。」

「・・・・・そうだね、今一番手が空いてるのって俺だよね・・・」

 言ってて心が折れそうだよ・・・。

「で、具体的には何すりゃいいんだ?」

「そうだな・・・手紙に有った星の名付けた奥技・・・『陽撃昇天破』だったか?それを雪蓮にすればいいだけだ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「下手をすると徹夜になるだろうが、頑張ってくれ。」

 冥琳は俺の肩を叩いて指揮所に行ってしまった・・・・・。

 

「き、今日こそゆっくり眠れると思ってたのに・・・・・・」

 

 今日の戦はもう間も無く終わりそうだが・・・。

 俺の戦はこれから始まるようだ・・・。

 

 

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あとがき

 

 

前回に引き続き

厨二な技の連発と

パロディてんこ盛りで

お送りしました。

 

技&パロ解説

秋蘭―奥技表にあった物に「必殺必中」を付け足しました。

季衣―ハイパーになりましたw(1stガンダム)

   敵にゴックが居たら受け止められていた事でしょうw

流琉―超になりました。(コンバトラーV)

   円盤から刃が出てるかもしれませんw

凪――キャプテン翼ネタ。

   タイガーショットですw

真桜―原作でもおなじみグレンラガンネタ。

沙和―オリジナル技ですが

   原作に準じる様に「海兵隊式」と付けました。

霞――こちらも真桜と同じく原作奥技のままです。

   原作とのつながりをできるだけ残したかったので。

春蘭―ほぼオリジナルです。

   萌将伝「天下一品武闘会」の雪蓮戦を参考にしてるので

   「ほぼ」ですw

華琳―旋輪転は「乙女対戦」の技です。

   口に出すとき物足りない感じだったので

   武器名+αを追加しました。

雪蓮―技そのものはオリジナルのつもりなのですが

   何か聞き覚えがあるので、

   どなたかお気づきになられたなら教えてください(;´Д`)

   口上はダイターン3のパロディです

   「天の御遣いの力を借りて」は雪蓮の乙女心の表れということでw

祭――ライディーンのゴッドゴーガン・・・

   かなり苦しいですね・・・

思春―いきなり時代劇w

   「影の軍団」から何のひねりも無くそのままです。

明命―こちらも時代劇・・・というか

   佐々木小次郎の燕返しですw

   「魂切」の長さが「物干し竿」を連想してしまって・・・

穏――「ぶるま幻想」でもネタにした九節棍

   原作の祭√で出てくるのでお忘れの方はご確認を。

   技はオリジナルです。

   あのオッパイが有って初めて成立する攻撃ですねw

おまけ―石破殿饗拳

    漢女の技はそれっぽい漢字を探すのが楽しいですねwww

 

 

落鳳坡

近衛隊が噂を広めたのは一刀に対するひがみですw

 

 

雪蓮の状態

原作で有ったアレです。

お忘れの方は雪蓮√でご確認を。

 

 

今回書いている最中にパソコンが壊れてしまい、結局買い替えてしまいましたorz

色々とやらねばならない事があるので、次の投稿は少し遅くなりそうです。

申し訳ありません。

 

 

説明
大幅加筆+修正となっております。

今回は魏軍「五丈原の戦い」
劉備軍「蜀の桟道越え」
呉軍「江陽の戦い」です。

ご意見、ご指摘、ご要望、更に
「私のような一般兵士でも修行すれば将軍方の様に必殺技が出せるでしょうか?」
などのご質問がご座いましたら是非コメントをお寄せ下さい。

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コメント
そっちの落ちるかぁ…w 緑の所に貂蝉と卑弥呼がいて助かったな…w(はこざき(仮))
y−sk様  冥琳の解説した意味も有るでしょうが、やっぱりみんなやると気分が良いんでしょうねw 宝ャはそれでも言わずにはいられなかったようですwww(雷起)
神木ヒカリ様  きっと冷静を装ってウズウズソワソワしてたと思いますw(雷起)
みなさんノリノリですねwそれと宝ャ、そのセリフはガンダムだと死亡フラグだ。(y-sk)
華琳が可愛いなぁ、自分もやりたかったんだね。(神木ヒカリ)
アルヤ様  それはもうwww 恋姫たちでけではなく、緑一刀は赤と紫からも責められますwww(雷起)
量産型第一次強化式骸骨様  当初は馬から落ちて尻もちくらいにしようかと思ったのですが、雛里に怪我をさせるような事ができませんでした。ですが、ある意味こっちの方が我々のダメージが大きかった様なきがしますwww(雷起)
akieco様  兵士たちの一刀に対する嫉妬と雛里に対する愛の深さ故・・・・・一刀なら笑って受け入れるでしょうwww(雷起)
落鳳坡wwwwwwその名の由来を聞いてみんなに問い詰められる一刀の姿が目に浮かぶ・・・・・・(アルヤ)
まさかの落鳳坡w 確かに落ちたけど意味が違うww(量産型第一次強化式骸骨)
落鳳坡…なんて…嫉妬深い名前…(akieco)
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