女王様の頑張る日々。弐頁目 |
「…着いた。」
「づーがーれーだー………」
『現在時刻11時37分56秒。』
『歩いた距離は…計算してねぇや。』
木々をわけ、迷子二人と二機が到着したのはエルダー村。
村の中央に小川も流れたのどかな村だ。
まぁ、二人の心境はちっとものどかではないが。
「もう足が棒っつか……。」
「脚部疲労が限界ギリギリ。」
『女王途中からモビに乗ってただろ。』
『チビ子途中からレビに乗ってただろ。』
「とにかく休める所を探さないとね!」
「ナソードにも休息は必要。」
視線をモビとレビから逸らし、二人は村をぶらつき始めた。
モビとレビは『あーあーストライキしようかなー』とか『動力ぬかれっぞ。』とか言いながらもイヴの傍から離れようとはしない。ナソードギアの性なのか。
探し出した店で体力ポーションを買った二人は、近場の椅子に腰かけくぴくぴとポーションを飲んでいた。
モビとレビはイヴの両隣に転がっているため、アイシャとイヴに妙な間ができている。わざとやっている。
「…。それで、イヴ?ナソードの復興とか言ってたけどさ。具体的にどうするわけ?」
「コアを探す。ボク単体で出来ることは限られている。だからコア、統括装置を探さないといけない。」
「どこにあるの?」
「知らない。」
「……まぁ、あんたの知識やら記憶やらを参考にすればこの私がなんとかできるかもしれないわ。」
「無理だと思う。」
「ちょ…。そこで否定するのはどうなのよ!」
( Γ`・ω・)Γがーという形相でイヴに詰め寄るアイシャ。
イヴは澄ました顔でその顔を眺め「フッ。」と鼻で笑った。
「ちょっ!何で笑うのよ!」
「笑ってない。」
「笑ったでしょ!鼻で!しかも鼻で!」
「笑ってない。」
「笑ったでしょ?」
「笑ってない。」
「笑ってないでしょ?」
「笑った。………ハッ!」
「……。」
ニッコリ、と目が笑っていない笑顔でアイシャは微笑んだ。
この時のイヴは初めて恐怖という感情を知ったという。
「さて。当面の問題だけど…。まずはお金ね。何にするにしてもお金。あと情報。何よりもこれが先決よ。」
『今更だが一ついいか?』
「はいモビ。」
椅子(レビ)に正座させられたイヴを横にモビがふよふよと自己主張を始めた。
『お前、ツレがいたんじゃなかったのか?』
「あ……。まぁいいでしょ。あいつら多分私の事忘れてるだろうし。何より私には貴重なサンプルことイヴがいるわけだしね。」
「……。」
『女王、そこはドヤ顔するところじゃない。』
「さて。まずだけど…。そこにあるのを見て頂戴。」
アイシャが指さしたのは、村に数少ない大きな店。
に貼られていた、厳つい男が描かれたポスターだ。
「賞金首、ベンダースよ。あれを捕えれば食費ぐらいは稼げるでしょ。」
「つまり賞金稼ぎ。」
「そういうこと。あのポーションで割と手持ちも少ないし。じゃんじゃん稼いで食費、旅費、研究費とがっぽり稼ぐわよ!」
「おー。」
意気揚々と腕を振り上げテンションを上げる二人。昼食はもちろんなかった。
が、二人はそのテンション故気づかなかった。自分の空腹(エネルギー切れ)が近いことに。
ハイテンションの二人とローテンションの二機が向かった場所はエルダー村近くにそびえ立つエルの樹。所々にエネルギー鉱物エルが生えた樹だ。
エルが枯渇したこの時代でも自然的に生え、保護されているためかとてもきれいな景色が広がっていた。
『女王。いくつか採取しておくぞ。』
『女王が倒れられるとこっちが困るしな。』
モビとレビが機体横についたマニピュレーターで所々に生えたエルを採取していく。
採取されたエルが次々とモビとレビの身体の中に収納されていく。
その光景をみてアイシャが目を丸くしていたが、そういうものだと即座に納得した。
「エル補充完了後、状況開始。目標、賞金首ベンダースの捕獲。」
『採取終了、戦闘モード起動。各種機能オールグリーン』
『採取終了、索敵モード起動。各種機能オールグリーン』
(切り替えはやっ…。)
モビが刺々しく、レビがパラボナ的アンテナっぽく変形した。
その変形する様子をアイシャは目を輝かせてみていた。
「状況開始。アイシャ、行ける?」
「ハッ!圧倒的超次元天才美少女魔導科学者アイシャ様に任せなさいっての!」
「肩書き長い。」
アイシャが杖を構え、走り出す。
杖を振り回し、動物やら獣人やらを(物理的に)なぎ倒しながら突き進むアイシャを見て、イヴは少し微笑んでいた。
『妙にご機嫌だな女王。』
「……。そんなことない。ボクに感情はない。」
『よく言う…。ほら行くぞ女王。チビ子に置いて行かれる。』
「そうね…。行きましょう。」
軽くイヴが地を蹴ると、その体が宙に浮いた。
数mは地を離れ、天然の樹の壁を三角飛びしながらイヴはアイシャを追った。
「アイシャ様すとらーいく!!!」
エルの樹の内部、天然の迷宮の一室。
人工で創られた扉をアイシャがドロップキックで蹴り開けた。ドアの破片が部屋の中に飛び散る。
「な、なんだ!?」
部屋の中心にいた大男、ベンダースが声をあげると同時に、イヴが部屋に飛び込んだ。
「イリュージョンストライク、セット。」
『ヒャッハー!((汚物|にんげん))は消毒だオラァ!』
『悪いがベンダースって奴以外は金になりそうもないし死んでもらうぜ。』
イヴの背後から大量のナソードギアが現れ、モビとレビと共に上空から降り注いだ。
ベンダースはとっさに大剣で防いだものの、周りの獣人の頭が消し飛んだり胴体に大きな風穴が空いたりと、聖域と言えるほどきれいな景色は一瞬にして地獄絵図に変貌した。
「あなたがベンダースですね。9/10殺しして捕獲します。」
「この圧倒的美少女アイドル魔導美少女、アイシャ様に目を付けられたが最後よ!」
『チビ子、美少女が被ったぞ。』
『微少女乙』
着地したイヴと、立ち上がったアイシャがベンダースの前に立ちふさがる。
一瞬で部下たちを惨殺した相手にベンダースは一瞬恐怖し、すぐに大剣を構えた。
「誰だが知らねぇが、俺様の根城をこれだけ荒らしてくれたんだ。殺る気は十分だよなぁ?」
「これからあなたの根城は薄暗い牢獄。」
「私達の糧になってもらうわよ、賞金首ベンダース!」
「いい度胸だ…!」
ベンダースが愛用の大剣を振り上げ、アイシャに向けて振り下ろす。
それを見たイヴが指示をするように両手を動かすと、モビとレビがアイシャを庇うように大剣を受け止めた。
『おいおい、ナソード使いが悪いぜ。』
『まぁ、意外に切れ味は悪いみたいだけどな。』
「アイシャ。」
「合点!チェーンファイアーボール!!」
振り下ろそうとした状態で剣を固定されたベンダースの腹部に杖を押し当て、魔法を詠唱。
ゼロ距離で多量の火球を押し付けた。
ドドドドドド、という衝突音と炎上音が一緒になった音を立てながら、ベンダースは壁に背中をぶつける。
「戦略もない、図体だけデカい、そのくせ筋力変換効率が悪い。三流って奴?」
『脳足りんって奴かね。』
「さて。どうするのかしら?その傷なら戦えないだろうけど。」
「……クハッ。クハハハハハハ!!」
血を吐きながら叫ぶように笑い出したベンダース。その狂気的な雰囲気にイヴとアイシャは言葉を失った。
「畜生、俺は死なねぇ…!絶対に死んでやらねぇからな……!絶対、ぜってぇにだ……!」
ベンダースの息が徐々に小さくなり、呼吸の音が聞こえなくなったと同時に、ベンダースの身体は破裂した。
「ッ……!!」
「……。」
とっさに二人とも顔を腕で覆い、飛び散るから顔をまもる。
『……。もういいぞ。』
モビの声を期に、二人は腕を降ろす。
ベンダースがいた場所には、さっきまでベンダースが使っていた大剣が、血だまりの中心に刺さっていた。
「う、くっ……。」
「……。これが、賞金稼ぎって仕事よ。」
「…。」
俯いて声を発することもできないイヴを横目に、アイシャはベンダースの使っていた剣を引き抜いた。
振り回すには重すぎる代物だが、村に持って行く程度なら持てる重さだ。
「……。」
「帰りましょ、イヴ。」
「…了解。状況終了、戦闘システム解除……」
『戦闘モード終了、通常モードに移行』
『ルート上の索敵開始。』
「行きましょ。」
大剣を引きずりながら歩き出したアイシャに無言でついていくイヴ。
人間が破裂するところなぞイヴは見たことがなかった。
それも、自分から。
イヴのショックは何より、人間との共存を願おうとしておきながら遠慮なく何人も殺している自分自身に対してだった。
自分は、何をしているのか。それがイヴの心の大部分を支配していた。
これで、アイシャとイヴの初仕事が終わった。
この世界、心が弱くても、力が弱くても生き残れない世界で。
ナソードと人間が共に手を取る時代が来るのか。
それは、まだ誰も知らない。
説明 | ||
この小説はアイシャとイヴの二人がエルソードの世界を駆け巡るハートフルコメディーな二次小説です(迫真) ※ハンゲブログ?知らんな。 ※アイイヴ最高。 ※ベンダースさんはライバルポジ(嘘) |
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