龍の転生者と魔物達の転生記・新盤 新一話目
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日本…この地には現在三つの裏の組織が存在する一種の三国志状態が出来上がっている。

 

魔法世界の大国MM連合をバックに持つ組織『関東魔法協会』

日ノ本の古来から続く呪術の一族が関東…否、バックに有るMM連合に対抗する為に一つに纏まった組織『関西呪術協会』

 

そして、もう一つ、

 

『関東』と有るが本来関東にも古来より存在する裏の一族は存在していた。だが、世界樹を中心に関東に根を張った関東魔法協会によって関東の地は、悪い言い方をすれば乗っ取られた。

 

古くからの東の一族は滅びるか、西洋魔術に傾倒するか、関西に合流するか、何れかの選択肢しかなかった。

だが、現在の長『近衛詠春』になってから多くの西に属している一族が西から離れて行った。彼は確かに英雄と呼べるだけの力を持った武の英雄、少なくともネームバリューは大きい。だが、関西に属する者達…西洋魔法使いに恨みを持つ者達にとっては、彼は魔法使いの下に下った裏切り者として捕らえる者も多い。

彼等の立場ならば、本来であれば不満が有ったとしても組織に残り続けるしかないはずなのだが、近年に入って彼等にとって新たな選択肢が出来た。

 

『日本退魔連合』…日本に存在する退魔の力を持った者達の連合組織。現在のトップとなっている東の大陰陽師が操っていた式神を従えた正体不明の龍面の男がトップとして立ち作り上げられた組織である。

連合に所属する者達を縛るルールの幾つかを上げると『力無き者を守る事を矜持とせよ』『退魔連合に所属する全ての組織は規模等関係なく全て対等であり、議会制とする』『《力》を使い罪を犯した者は長の直属の配下によって念密な調査の後裁かれる』。

 

東西の協会は当初退魔連合の設立を認めなかったが、構成する勢力の多くが裏切られた事が原因の戦力不足で西は幸運にも身動きできず、実力による第三勢力の排除に訴えた東は《立派な魔法使い(マギステル・マギ)》の称号を持った魔法使いを含む破格とも言うべき戦力の殆どを長直属の戦力、鬼面の剣士の前に失う結果に終わった。

その後、退魔連合の存在は東西の両協会の黙認の形で認められる事となった。

 

そして、その結果、現在三つの組織の存在によって日本の裏は三つの戦力が蠢く冷戦状態におちいり…心臓に悪いが概ね平和となっている。

 

「…まあ、お蔭でオレの立場は面白い事になってるよな」

 

 

『天凪 総麻』、中学二年、職業:中学生兼退魔士……兼日本退魔連合の長及びその直属全て

 

 

実は端から日本退魔連合の長と周辺の人材は一人を除いて全部彼だったりする。

『魔法先生ネギま』と言う前世に存在していた漫画に似た世界で生きる為に《黄龍の器》と言う力をベースに世紀末の魔人達全員の力を龍斗から与えられた総麻が作り上げた組織…それこそが、《日本退魔連合》だ。

 

「そう、全ては……楽して平和に生きる為にぃ!!!」

 

様は総麻自身がどちらの組織にも属さずに偽ぬらりひょんが手を出せない立場に置く為に、態々《力》を幾つか使って第三勢力を作り上げた訳で、関西の弱体化と第三勢力の強化も偽ぬらりひょん対策だ。

最悪、偽ぬらりひょんのバックに有る組織の後ろ盾になった可能性の有る義理の息子がトップに立っている関西と関東の合併、それによる偽ぬらりひょんの動かせる戦力の強化を僅かでも阻止する事も兼ねている。

 

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そんなある日の事、

 

「オイ、総麻! 信じられるか!? 十歳だ、十歳! 十歳の子供が担任として赴任して来たんだぞ! 幾らなんでも有り得ないだろ!?」

喫茶店で現在進行形で、初等部に入学した頃に出会って麻帆良学園の常識を異常と感じる者同士として相談に乗った事が切欠で続いている付き合いの友人の『長谷川 千雨』さんに愚痴られている総麻くんでした。

確かに『子供先生』の事は噂で聞こえてきた…。

…何れ訪れる事だろうとある種の達観は持っていたが、こうして、改めて現実として突きつけられると、この世界がかつての人生で読んでいた漫画『魔法先生ネギま』に近い世界だと言う現実を認識させられる。

「え、えーと…取り合えず落ち着いて…」

内心、この学園全体に影響を及ぼしている『認識阻害魔法』とやらの影響下の中で、その影響を受けずに居る自分達の方が『異常』なのだろうと思ってしまう。

まあ、総麻自身は『黄龍の器』と言うある種の『究極の異常』だからと言い訳は出来るが。

いや、総麻は『異常』では無くこの世界における『異端』と言い換えるべきかもしれない。

龍脈の力によって目覚めた世紀末の魔人達の《力》を最大の形として、この世で唯一持っている。これを異端と言わずに何と呼ぶべきなのか?

何度そう思ったかは既に数えるのを止めた。

 

一度、この世界に『魔人学園伝奇』の世界観が混ざっていないか調べてみたが、東京には真神五人衆の通う『真神学園』も、美人な巫女姉妹の居る『織部神社』も存在していなかった様子で安心した。法で裁けぬ悪を裁く暗殺業も請け負っている『拳武館高校』については深くは調べなかった。…万が一存在していたら、それはそれ、命が幾つあっても足りないので。

実際、日本退魔連合を作った時に一通り確認してみたが、存在していなかった事には心から安堵した。

 

……もっとも、龍斗か異界王かファーブニルの意思かは不明だが、『刀に槍だけで無く鞭やナース服、賞味期限が不明な食品や雑誌にアイドルの写真まで扱っている亀の忍者が営んでいる某骨董品店』と修行場で有る『旧校舎』だけは総麻と総麻の関係者だけが利用できる形で存在してくれていたが。

「悪い」

「まあ、オレに対しては気にしなくても良いけど、周囲の目だけは気にしてくれれば嬉しいかな」

「うっ…」

流石に総麻に与えられた東洋(御門(みかど) 晴明(はるあき))、西洋(裏密(うらみつ) ミサ)、中国(劉(りゅう) 弦月(しぇんゆえ))の術の知識の中に人払いの術等も存在しているが、そんな物を下手に使う気は無いから思いっきり注目を集めている。

初等部の頃に出会って以来こうして相談に乗っている事が現在まで続いている訳だが、この麻帆良の不思議には総麻としてもなれない。

偶然にも出た声と溜息が彼女と重なってしまった。もっとも、総麻の事情を知られたら、『お前が言うな』とでも言われそうなのだが。

「退屈な平凡を嫌っている奴にしてみれば、2−Aの騒動の多さは羨ましいって思うかもしれないけどさ」

「…羨ましいって言う奴が居るなら、今すぐ代わってくれ」

「まあ、人間自分に無い物は魅力的に見える物だからね。そう言う人に限って、いざ自分がその立場になったら、取り乱したりして」

そう言って苦笑を浮かべると、彼女に気付かれない様に真剣な表情を浮かべる。

……魔人学園伝奇の世界観が無い事を確認した時、一つだけ恐ろしい可能性が推測出来た上に否定する証拠も肯定する証拠も無い為に、感情で否定したが、当ってくれるなと願い続けている事が一つだけある。

…簡単な話だ…。

『麻帆良学園』が『真神学園』…いや、魔人学園伝奇に登場する学校の役割を担っていると言う可能性だ。他にも織部神社の変わりに『龍宮神社』と言う形で、ネギまの舞台が魔人学園の重要な場所の役割を果たしていると言う可能性だけは未だに否定できていないし、油断していて突然怪事件に巻き込まれても困るので調べているが、それらしき証拠は発見できていない。だが、

 

(少なくとも、修行場は此処に有る)

 

少なくとも、《旧校舎地下》は魔法球として総麻の手元に有る。…ゲームの中そのままの真神学園の旧校舎と幕末が舞台の続編での主人公達の拠点である《龍泉寺》がくっついている姿は違和感が有る。

魔法球の旧校舎地下は一階毎に外に出るか先に進むか選べるので有る程度安全に修行は出来ているが、流石に危険と考えている一区画の主が居る五階にはまだ入っていない。

 

(…この先、どんな事が起こるか分からないからな…油断しない方が良い)

 

少なくとも、日本退魔連合所属の退魔士で有りながら、関東魔法協会の本拠地である麻帆良学園で学生をしているのだから、今まで学園長やタカミチを初めとする魔法関係者達が接触して来なかった事の方が不思議だ。恐らくは迂闊に刺激して戦闘に陥るのは防ぎたかったとも考えられる。

 

だが、丁度ネギ・スプリングフィールドの来日と言う大事が起こっている以上、そろそろ向こうが自分達の指揮下に無い裏の関係者である総麻に接触してきても可笑しくないだろう。

 

総麻はそう考えた後、カップの中のコーヒーを一口喉に流す。

そして、もう一つ、魔人学園伝奇の大きな戦いが起こるとすれば、同時期か数年の時間差で二つの世界の命運をかけた戦いが始まる事となる。

そして、目の前の少女は未来の英雄の従者候補として集められたと邪推できる2−Aの一員で、《黄龍の器》と言う異端である自分と同じく学園の認識阻害魔法の影響を受けずに居る。

『楽観は危険だが、考えすぎも良くない』と思いながらも、自分と言う異端が原因で目の前の少女は魔法と言う裏の世界だけでなく、本来ならば巻き込まれるはずも無かった龍脈を巡る陰と陽、そして、邪の戦いに『重要人物』として巻き込まれる危険性もあると言う可能性も考えてしまう。

(まあ、し過ぎは良くないけど、どっちらも警戒して準備しておいて損は無いだろう…)

万が一、そうなった場合の決意はある。

「ここに居る事が不安?」

「いや、不満は有るけど不安は無いな」

「…もしかしたら、危険に巻き込まれるかもしれないのに?」

軽口ながらも切実な問いかけだった。

 

「……何かあったら、その時は助けてくれるんだろ?」

心から信頼していると言う笑顔で語りかけてくれる彼女の表情を見て、改めて決意する。最悪の事態が起こった時は持てる力の全てを使って『邪』を滅して、目の前の少女を守る。ただそれだけだ。

例え、異端である自分を彼女が拒絶したとしても…。

「当然」

だから、自身を持ってそう答える。まだ総麻の力はあらゆる意味で完全ではないが、それでも………一人くらいは守り抜く。

世紀末や幕末の魔人達の様な仲間が居れば決意も違うだろうが、どんな力を持っていたとしても個人で守れる物は高が知れている。

それ以上のものを守れと言われても拒否するだけだ。唯一つ、大切なものを守れればそれで良い。何より、総麻の手は世界には届かない。人が一人で守れるのはどれだけ力を持っても、自分とたった一人だけ。

ゆっくりと、ポケットの中に有る一枚のカードに触れる。

(だろ、ジークヴルム…。)

『雷皇龍ジークヴルム』…それが、異界王から与えられた《バトルスピリッツ》の力で、スピリット達の中で最初に召喚したスピリットにして、唯一召喚した大型スピリット。最初に従えた龍。意思を持って総麻に従ってくれた信頼する仲間の一体。

だが、それもまた総麻の力の延長で有る以上は過信は禁物だ。

 

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「…って、思ってる矢先に来やがったか」

 

男子寮の郵便受けに入っていた『今夜九時世界樹広場に来られたし』とだけ書かれた宛名もない封筒に入った手紙、それを読み終わると総麻は、

 

「…まあ、従ってやる義理は無いけどな。それに…」

 

封筒毎手紙を持った手に氣を練り上げ、それを炎に変換する。氣を着火させ炎を発生させると発生した炎は一瞬で手紙を燃え散らす。

それは、総麻の操る魔人学園伝奇の主人公の一族たる《緋勇》の扱う流派、徒手空拳技《陽》の技の一つ《巫炎》

 

(…せめて名前くらい書いとけ…)

 

だいたい見当は付くが差出人不明の手紙の指示に従う気はない。

 

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