劇場版仮面ライダーアクエリアス エピソード・オブ・ベルカ EPISODE2 |
[予告編]
「やあ、士樹」
「あ、ユーノさん」
「何を読んでるの?」
「古代ベルカを生きていた覇王の伝記を読んでいたんですよ」
―それは、1人の少年が好きな人についてもっと知りたいと思ったことがきっかけだった―
―少年が司書と話しながら本のページをめくっていくと、
“助けて”
突然謎の声が助けを求めた―
―その数秒後、少年は本に吸い込まれて気を失った―
「ここはいったい…?」
「どうやら気が付いたようだな」
―本に吸い込まれてたどりついた先は古代ベルカの覇王領―
「クラウス・G・S・イングヴァルトだ、よろしく頼む」
「前杉士樹です。助けてくれてありがとうございます」
―そこで出会ったのは、少年にとって何ものにも代え難い人物の先祖だった―
「聖王と覇王、冥王が仲良く学園生活を送っている!?」
「信じられませんか?」
「今の状況からは信じがたいが、この写真を見れば信じざるを得ないだろう」
―少年が現代のこと、覇王や聖王の末裔について話したことをきっかけにして2人は次第に打ち解けていった―
―だが、その平和も長くは続かなかった―
「町の人達が怪物に襲われている?」
「ああ、魔力反応が無い上に並の兵じゃ歯が立たん」
―そして現れたのは、かつて世界の破壊者達によって倒されたはずの悪の秘密結社―
「何故だ!?何故お前が生きている!?アポロガイスト!!」
「言ったはずだ、宇宙で最も迷惑な奴として蘇るとな!」
―少年は鎧をまとい懸命に戦うが、強化変身したその怪人に歯が立たなかった―
―それでも少年は諦めようとしなかった―
「もういい!!君がそこまでして戦う必要はない!!」
「あなたの死は、僕の恋人の消滅を意味します!それを受け入れられる事が出来ないから戦うんです!!!」
―必死の思いで戦う少年の危機を知り、終焉者が助けに来た―
「大樹さん…」
「君がこんな無茶をするなんて珍しいね。ま、彼女の存在がかかってるんじゃ無理ないけど」
―少年は終焉者から手渡された1枚のカードを手に再び立ち上がる―
「見せてあげるよ、アクエリアスの……終焉を継ぐ者の真の力を!!」
≪FINAL KAMEN RIDE:AQUARIUS≫
―少年が手にしたのは、あらゆる障害を撃ち滅ぼすための銃と未来を予知する第六感―
―今ここに未来をかけた壮絶な戦いが始まる―
[EPISODE1]
【ACE学園高等部図書室】
「やあ、士樹」
司書であるユーノ・スクライアが本の整理をしていると、読書中の士樹と出会った。
「あ、ユーノさん」
「何を読んでるの?」
「古代ベルカの覇王の伝記ですよ。ふと読みたくなったんですよ」
「なるほどね」
士樹は本を左手で持ちながらユーノと話す。
「ところで、今はどの辺りを読んでるんだい?」
ユーノが士樹の肩越しに本を覗きながら言う。
「まだオリヴィエがゆりかごに乗り込む前ですね」
士樹がユーノに答えながらページをめくっていくと、
“助けて…”
何処からか声が聞こえてきた。士樹は周りを見渡すが、自分の近くにはユーノしかいない事を確認する。士樹の様子に気づいたユーノが声をかけてくる。
「どうしたの?」
「…今何か聞こえませんでしたか?」
「? いや、何も聞こえなかったよ」
(空耳にしては妙にはっきりしているな。いったい誰が?)
士樹が視線を本に向けたまま右手を顔に当てて思案する。すると、突然本が光り出した。
「本が!?」
“助けて……誰か助けて”
(まただ!この本が僕を呼んでいるのか?)
ユーノが叫び、士樹がそう考えたとたんに本の輝きが強くなり、士樹を包み込んだ。
「士樹!!」
光が収まり、ユーノが呼び掛けた時そこにいるはずの少年は存在せず、ただ分厚い本が床に落ちる音だけが響いた。
★★★★★
それからいくばくの時間が経過した後、士樹は目覚めた。起きた士樹は現在の状況を理解することを始めた。それで、自分が今ベッドに寝ていて、その部屋―恐らく建物全体―が石造りであることが分かった。
「ここはいったい…?」
「気がついたようだな」
士樹が声の方に振り向いた時その表情は驚愕に包まれた。何故なら彼の恋人と同じ碧銀の髪を持つその人物はとうの昔に死んでいるはずだからである。
「私はクラウス・G・S・イングヴァルトだ。ここはベルカの覇王領で、君は私の白の前で倒れていたところを警備の者が保護したんだ」
「(なるほど、そういう事だったのか…)僕は前杉士樹です。助けてくれてありがとうございました」
士樹は、自分が置かれた状況を把握し、頭を下げて礼を言う。ちなみに、慌てていないのは、単に場慣れしているだけである。
「それで、君はどうしてあんなところで倒れていたんだ?」
「実は…」
士樹はここに来るまでの経緯、自分が遠い未来の別世界から来たのであろうことをクラウスに告げた。
「未来か…。信じがたいが、君の銃に使われている技術から考えるとあながち嘘ではないだろう」
クラウスは士樹にアクエリアスドライバーとカード入れを渡しながら言った。
「未来の生活がどうなっているのか興味がある。話してくれないか?」
「僕が現在住所を置いている世界ではいろんな出自の人や種族による平和的な共存を模索し、そのための学園が作られました」
「ほう」
「ちなみに、聖王と覇王の子孫、冥王本人も生徒として普通に暮らしています」
「現在の戦乱の世界からは考えられないな…」
「証拠写真を見せますよ」
クラウスはあまり表には出していないが、内心では驚いていた。そんなクラウスに士樹はどこに持っていたのか普段接することの多いリリカルメンバーと撮った写真を見せた。
「随分と女性が多いが、君はハーレムでも築いているのか」
「違いますよ。僕が付き合っているのはアインハルトだけです」
士樹は写真の中で自分と腕を組んでいるアインハルトを指差す。
「これは私の子孫だな」
「そうですよ」
「この活発そうな女の子はオリヴィエの子孫で、この内気な女の子は冥王か」
「性格にはヴィヴィオはクローンですけどね。ヴィヴィオとは時々アインハルトを巡って争奪戦を繰り広げることもあります」
「平和な世界じゃなかったのか?」
「たまにゾンビが発生する等の事件が起こって命の危険を感じることはありますが、基本的に平和です」
「それは本当に平和というのか」
しれっと言う士樹にクラウスは呆れ気味になる。2人が話していると、1人の女性が部屋の扉をノックした。
「クラウス、入っていいですか?」
「良いですよ」
入ってきた女性の顔を見たが、現在地が古代ベルカの覇王領だという時点である程度予測していたために士樹は驚かずにすんだ。
「オリヴィエ・ゼーゲブレヒトです。以後、よろしくお願いします。クラウスの呆れ声が聞こえてきたのですが、何を話していたんですか?」
士樹とクラウスはかくかくしかじかとこれまでに話していたことを説明した。
「ずいぶんと楽しそうな学園ですね、私達もそんな風に出来たら良いんですが…」
オリヴィエは笑顔でそう言った。
「もっと詳しい話を――」
突然オリヴィエの話を遮るようにして乱暴に扉が開かれ、1人の兵士が入ってきた。
「どうしたんだ?」
クラウスが表情を引き締めて話を聞く態勢になる。
「大変です、覇王様!町に怪人が現れました!!」
「なんだと!?」
「怪人……」
兵士が報告した内容にクラウスは大声を上げた。士樹も己とは決して切り離すことが出来ないその単語に反応した。
「今怪人って言いましたよね?」
「えぇ、最近町にちょくちょく現れるんです。しかし、単体での戦闘能力が高くてベルカの騎士でも並の者じゃ歯が立たないんです」
「状況はどうなっている?」
オリヴィエが士樹に説明する傍らでクラウスは現状の把握に務めていた。
「城下町の南西部にて騎士団が交戦していますが、なかなか決定打を与えられません」
「南西部か」
士樹はカード入れとアクエリアスドライバーを持って窓に近寄る。
「士樹、何をしに行くんだ?」
「怪人と戦いに行きます」
士樹は窓枠に乗りながらさも当然のように言い放った。
「そっちは窓だぞ」
「時間が無いようなのでショートカットさせていただきます」
そう言いながら士樹は窓から飛び降りた。そして、重力軽減魔法を使って無事に着地した。
「ドライバーはどこも故障していないみたいだね。これなら十分戦える」
着地した士樹の側に蒼がベースで黒のラインが走っている専用バイクであるアクエリアスチェイサ―がやってきた。
「まるでゼクターだね」
バイクのエンジンは既に暖まっているようで主の搭乗を心待ちにしているように感じられた。士樹はアクエリアスチェイサ―に跨り、戦場に向けて発進した。
[EPISODE2]
【覇王領城下町南西部】
「第1、第2小隊全滅!!」
「第5、第7小隊もほぼ壊滅状態です!!」
町に現れた怪人と交戦している部隊の仮司令部とも言うべき場所で指揮官は伝令から報告を受けていた。魔力反応をいっさい用いない人知を超えた力を持つ存在に手こずらされている指揮官は苦い表情をした。
「近接戦闘が十八番のベルカの騎士でさえこのざまとは……」
騎士団と戦っている怪人の内十数体のアントロードが仮司令部の方へ向かってきた。
「隊長!!」
「ここは死守だ!!ネズミ1匹通すな!!」
『了解!!』
指揮官とその周りにいた騎士達が怪人を迎撃しようとデバイスを構えた時、
「はい、到着」
士樹のアクエリアスチェイサ―が先頭にいるアントロードを跳ね飛ばして指揮官に背を向ける形でバイクを停止させた。
『…………』
思わぬ乱入者に騎士達は目を点にしていた。
「邪魔だね」
当の士樹はバイク上にコンソールを呼びだして操作していた。
「逝ってらっしゃい」
≪FULL FIRE≫
電子音と共にアクエリアスチェイサ―に搭載されているミサイルランチャー、ガトリングガンから大量の砲弾が放たれた。それらの砲弾は十数体のアントロードを塵1つ残さず吹き飛ばした。
「思ったよりけっこういるね」
士樹はバイクから降りて、後ろを見る。
「騎士団の人達ですね。大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ」
「貴様はいったい何者だ?」
騎士の1人が士樹に問う。
「終焉を受け継ぐ仮面ライダーです。変身!」
≪KAMEN RIDE:AQUARIUS≫
士樹はアクエリアスドライバーから発生した複数のシルエットが重なると共に蒼の鎧を身にまとい、仮面ライダーアクエリアスへと変身した。
「仮面ライダーだと!?」
「この時代にはいなかったはずだぞ!?」
アクエリアスの姿を確認したオルフェノクとグロンギが何体か突っ込んできた。アクエリアスは振り向かずにそのままカードを1枚使用した。
≪ATTACK RIDE:CLOCK UP≫
怪人の攻撃が触れる直前にアクエリアスの姿は消え、人間では認識できない速さで動きだした。
「消えただと!?」
「いったいどこへ行っ――ぐはっ!?」
オルフェノクは台詞の途中でグロンギと共に空中に吹き飛び、散弾による集中砲火を受けて爆散していった。その後、他の怪人達の一部が死を認知する間もなく倒れていった。騎士達は自分達が手も足も出なかったアクエリアスの戦闘力から目を離せなかった。
≪CLOCK OVER≫
クロックアップが時間切れになったアクエリアスは再び騎士達の前に姿を現した。
「次は、これだ!!」
≪KAMEN RIDE:SEED BIRTH≫
≪FAFNER RIDE:MARK FUNF≫
アクエリアスは3枚のカードを使い、メタルブラックが特徴的な仮面ライダーシード、黒くて体中に球体状のアタッチメントが付いている仮面ライダーバース、紫色の機動兵器……マークフュンフを呼びだした。
「し、召喚だと!?」
アクエリアスの特殊能力にベルカの騎士達は驚愕した。
「戦えない人達はその後ろに隠れてください!!」
アクエリアスがそう言うと、マークフュンフは騎士達に近寄り、壁となるべくイージスと呼ばれる特殊シールドを展開した。その後、1番格闘に長けたシードが敵に殴り込み、アクエリアスとバースが援護する形で怪人達を蹴散らしていった。怪人の数はどんどん減っていき、最後にはドラゴンオルフェノクだけが残った。
「お前で最後だ」
「このっ…、なめるな!!」
余裕たっぷりに言うアクエリアスにドラゴンオルフェノクは突っ込んできた。
「チェックメイトだ」
≪ATTACK RIDE:CROSS ATTACK≫
電子音が響くと、バースとシードが必殺技を放つ体勢に入った。シードがライダーパンチ、バースがセルバースとした上でのドリルアームによる必殺攻撃をドラゴンオルフェノクへと放つ。ドラゴンオルフェノクは両腕の装甲でそれを防ぎ、両者は拮抗するが、
≪FINAL ATTACK RIDE:D・D・D・DRAKE≫
アクエリアスがディエンド譲りの高速移動で背後に回り込み、ドレイクの必殺技であるライダーシューティングを放った。さすがに必殺技による挟撃には耐えられなかったのかドラゴンオルフェノクは爆発した。戦闘の終了を確認したアクエリアスが変身を解除しようとしたら突然白いタキシードを着た1人の男性が歩み寄ってきた。
「ほう。ライダーを召喚する青いライダーがいると聞いたが、ディエンドではなく貴様だったのか」
アクエリアスはその男性を警戒し、再び気を引き締める。
「何故だ!?何故お前が生きている!?アポロガイスト!!」
「言ったはずだ、私は宇宙で最も迷惑な奴として蘇るとな!!」
「なら、さっそく地獄に帰ってもらおうか」
アクエリアスと召喚されたライダー達がアポロガイストをいつでも攻撃できるよう体勢を整える。
「まあ、待て。今回私は戦いに来たわけではない」
「何? じゃあ、いったい何が目的なんだ!?」
「この世界にいる騎士とやらの様子見だ。だが、もうそれも終わった。次は、全戦力でこの国を攻め滅ぼし、スーパーショッカー復活の糧とする!!」
アポロガイストは両手を広げながら大仰に叫ぶ。
「くたばれ」
アクエリアスは発砲するが、2人を遮るようにしてオーロラが現れてアポロガイストをそのまま包み込んでしまった。
『また会おう、仮面ライダー』
アポロガイストが捨て台詞を放った後、アクエリアスは変身を解除し、それと共に召喚されたライダー達は消滅した。
「逃がしたか……。厄介な事が起こったね」
士樹は苦々しげにそう吐いた。
「城に戻ってクラウスさん達と相談しないといけないな」
士樹はアクエリアスチェイサ―に乗り、来た道を戻っていった。
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