真・恋姫無双〜武の頂点に立つ者〜 間幕 休息のひととき |
第質話 休息のひととき 前編
→<三人称>→
「ふぅ」
真っ青な空の下で、息を吐いたのは八雲。
今は昼下がり、陽は頂点まで登り、空はぬけるように蒼い。
そんな中、今朝からしていた仕事が一段落した八雲は休憩に中庭に来ていた。
「……黄巾の乱が終結して早1月、ようやく対反董卓連合の大凡の目処が立った」
そう、八雲は詠から回される仕事の他に、反董卓連合に対する準備を着々と進めていた。そして、今日、ようやくそれら全ての目処が立ったのである。
少なくとも、黄巾の乱の真っ只中で下準備を進め、その後1ヶ月で大凡の目処を立てるなど、優秀では済まされないだろう。
「……少し、疲れたか……」
そうして、八雲は空を見上げる。すると……。
「八雲!ワタシと闘え!」
大斧を振り上げ、そう怒鳴る声。それを聞いて八雲は一つため息を吐き、
「またか、いい加減にしてくれ、華雄」
嫌そうな表情を隠そうともせず、そう答えた。
「なんでだ!ワタシは恋とおまえを超える!ならば鍛錬を重ねるのは道理だろう!」
それを聞いて八雲はまたため息を吐いた。
……八雲の最近の心労のおよそ4割は華雄によるものだったりする。
「なーなー、うちを差し置いて面白そうな話せんといてーな」
更に、1割の心労を与える人物まで現れる。霞だ。
この二人、最初の模擬戦で試合って以来、たびたびこうして挑んでくるのである。
初めのうちは八雲も快く受けていたが、仕事が増えていくにつれその余裕もだんだんなくなっていった。
しかし、彼女らにそんなことは関係ない。ある時は仕事中の執務室に突撃し、またある時は八雲が部隊の調練中に闘おうとし(これは、華雄のみ)、こうして、八雲の少ない休憩中にまで
仕掛けてくる始末。要約してしまえば、八雲は疲れきっていた。主に華雄の所為で。
しかし、そこへ救世主が現れる。
「……だめ」
恋である。
恋はそう言うと、八雲へ近づき腕を掴み、
「……八雲は恋とご飯」
言葉少なにそう言った。
八雲は、たびたび恋を連れて食事に行く。確かに金はかかる。かかるがそれでも八雲には恋が必要なのだ。恋の食事姿はとても和む。つまり、八雲にとって恋は癒やしなのだ。
誰かの所為で精神的に疲れきった八雲は恋に癒やされ、恋はご飯を食べさせてもらえる。
そのため、八雲は恋を必要とし、恋は八雲に懐いている。
「し、しかしだな、ワタシたちも闘いたくて……」
「………………」
恋は何も言わない。何も言わず華雄をジッと見つめている。恋の中では、すでに八雲とご飯に行くことは決定事項だからだ。唯一の例外と言えば、八雲の予定が合わなかった時ぐらいであろうか。それだけ、恋は八雲に懐いている。
ジッと見つめる恋に対し華雄は明らかに挙動不審だった。視線はあちこちに飛び、口を開けたり閉めたりを繰り返している。
「し、しかし……」
「華雄、諦め。恋がこうなったら何が何でも動かん。また今度やな」
それをずっと見ていた霞が華雄にそう言った。
それを聞いて、華雄も悔しそうながらも引いた。
「……いこ」
「はぁ、わかった。行こうか」
「気ぃつけてぇなー、あ、八雲お土産よろしくー」
町へ向かう二人の後ろ姿へ霞はそう声をかけるのであった。
「はぁ」
「もきゅもきゅもきゅ」
町へついてまず向かったのは、定食屋。
とはいえ、料理は当然中華だが……。
「もきゅもきゅもきゅ、ゴクン。……もきゅもきゅもきゅ」
そして、八雲の目の前には皿の山が出来つつあった。
……大皿で。
「……相変わらずよく食べる」
思わず口にする。
「?…………」
恋は不思議そうな顔をして自分の箸に刺した点心と八雲を見比べ、
「食べる……?」
そのまま、ずいっと突き出してくる。
「いや、俺はもういい。これで腹いっぱいだ」
とはいえ、八雲も普通に比べれば食べる方だ。仕事中は簡単に済ませてしまうものの、食べる時は食べる。今も八雲の手元には空になった大皿などが4つ、5つ置いてある。のだが。
「だから、これは恋が食べればいい」
「ん……」
文字通り、恋は桁が違った。
「もきゅもきゅもきゅ」
しかし、彼女のその姿のなんと愛らしいことか、八雲のその口元は僅かながら緩んでいる。
と、そこへ
「ちー
んー
きゅー
キッーク!!」
八雲の後ろからねねが跳び蹴りをしてきた。
しかし、示し合わせたかのように八雲はねねの足を掴み、卓に突っ込まないように、小さい体を支えて、落とす。
「ぴぎゃ!」
ねねはお尻を打ちつけ、痛そうに押えながら立ち上がり、
「いきなり、落とすななのです!だいたい、なに恋殿と仲良さそうにご飯食べてるですか!」
吼えた。しかし、
「いきなり飛びかかってきたのはねねだろう。あと、必要最低限の怪我だけは避けるようにしたんだ。皿の山に突っ込むよりはマシな筈だ。あと、最後のは恋に誘われたからだ」
八雲に見事に論破される。このようなやりとりは一度や二度ではない。
「むむむむむ。ま、まあ、それはいいのです。でも、」
一旦、ねねはそこで区切ると、
「なんでねねを置いていったですかー!」
再度吼えた。それはもう、がーっと言わんばかりに。
実は、ねねも八雲に懐いていたりする。しかし、子供故か素直に甘えられず、攻撃という形になってしまう。結果、八雲の心労の更に2割を締めてしまう。
「わかった、わかった。悪かった」
八雲は完全に疲れ果てていた。
見上げた空は奇妙に蒼く感じた。
あとがき
……長い。
パパッと終わらせるつもりだったのに、異常に長くなりそうなのでここらで前編、後編に分けることにします。
凪、月、詠を楽しみにしていた人ごめんなさい。もう少し時間を下さい。入れたいもの全部入れると大変なことになってしまうので、取捨選択しています。
だからほのぼのは苦手なんですよね……。
次回予告
休息の八雲の午後は、凪との稽古には始まり、月の様子見、真桜、沙和への仕事回し、詠との黒いお話。
八雲の休息は未だ遠い……。
次回 間幕 休息のひととき 後編
Bloody walk the earth
(血塗れた大地を歩む)
説明 | ||
これは、ひとりの男の転生から始まる物語。 男は力を得て、何を為し、どう生きるのか。 それはまだ、誰も知らない。 どうも、ナナシノゴンベです。 処女作です。学生なので、鈍亀更新です。ついでに駄文です。 そんなのでよろしければ、どうぞ。 |
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続きは?(十六夜 出雲) 続きまだ?(sho) 早く続きが読みたいです(ヒナたん) |
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