《インフィニット・ストラトス》〜二人の転生者〜
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第九話 日本代表候補生

「あ〜くそっ、設計図とデータ作成で一晩掛かっちまった。まあ必要な材料とかは発注したし、どの企業も開発してない武器や装備、装甲や技術は俺が作るからいいんだが……」

俺は明け方前の薄暗い時間に寮へと続く道を歩いていた。しかしその足取りは重くてフラフラしており、まるで酔っ払っているようにも見える。しかし目は充血し、その下にはくまが出来ており、明らかに睡眠不足と疲労があります、と顔に書かれている。

寮の入り口に着き、中へ入ると同時に冬姉と目が合った。

「お、織斑教諭……おはようございます」

「あ、ああ……一ノ瀬、大丈夫か?」

さすがの冬姉も俺の状態を見て少しだが声が上ずっていた。

「大丈夫です。たかが一晩寝なかったぐらいで死にはしませんよ」

「そういう問題ではないんだが……まあいい、しかし授業では手は抜かんからな、居眠りなどしないようにな」

「了解しました……では失礼します」

「ああ」

俺はそおあと自室に戻り、鞄の中身を入れ替え、ジャージに着替えて顔を洗い、気持ちを入れ替えた。

「……ふぅ〜、よし、行くか!!」

そうして俺は朝の鍛錬へと向かった。

 

「う〜っす、ただいま〜」

「おっ、おはよう秋」

「ん?ああ、夏か。おはよう」

俺は朝練を終えた後、部屋に戻った俺は着替え中の夏と出くわした。

「……こういう時マジで女子じゃなくてよかったと思うよ」

「はは、秋の言う通りだ」

「少し待っててくれ、すぐにシャワー浴びて着替えるから」

「慌てなくていいぞ〜」

「了解」

そう言って俺はシャワーを浴びに入る。

「そういえばさ」

「あん?」

シャワーを浴びながらだったが夏が話しかけてくるので返事をする。

「秋は結果的に昨日何してたんだ?夕飯にも現れなかったし、ISの整備にしちゃあ時間かかりすぎだろ?開発室で何かしてたのか?」

「ん〜……話してもいいけど、誰にも言うなよ?」

「言わねえよ。今更だろ?」

「それもそうだな」

俺はシャワーを止め、頭を拭きながら洗面所へ出て(脱衣所と一緒になっている)ドライヤーで髪を乾かし始めた。

「束さんが十年前にISを制作、発表したのは知ってるな?」

「ああ」

「実はそのIS制作に俺も一枚噛んでいる」

「……は?」

「……………」

「……………」

会話が止まる。まあ無理も無いだろう。当時幼稚園をやっと上がった俺がISの開発に携わってるなんて誰が信じるっていうんだよ。

「まあ信じるか信じないかは勝手だが……本題はここから。まあそんな知識や技術があるので、俺はそれを使い、自分の専用機を自分で作ることにした……とまあこんな所だ」

俺は制服に着替え、脱衣所から出てきながら言った。

夏は案の定目を丸くして口を開けていた。

「まあ取り敢えずそういうこと。ついでにこれ知ってるの春華と冬姉と束さん本人位だから。箒にも話すなよ。じゃあ朝食行くか?」

「……え!?あっ!お、おう!」

「……大丈夫か、夏?」

「と、とりあえず秋がIS開発うんぬんは置いといて、今専用機を自作してるのはわかった」

「ならOK。いくぞ」

俺はそう言い、夏と一緒に食堂へ向かう。

階段を降りている途中、夏が「なあ、じゃあお前もISのコアを作れるのか?」とか言いそうになったので俺が冷たい視線で「言ったらそのくち二度と聞けないぐらいにミンチにするぞ……」と告げたら黙った。そして俺はこうやって言葉を紡ぐ。

「さっきの話だけどな、告げたとおり、俺と冬姉、束さんに春華しか知らない。あとは夏、お前だ。箒は当然知らない。というか知ってたらこんな風に箒と普通に話せてないだろう、あいつにとって束さんは俺達と自分を引き離した張本人だからな。そして俺のことを知ればもう世界中のすべてを信じられなくなるだろう」

「そうかなあ?」

夏はそう言うがハッキリと「箒はそうじゃない!」と言えない辺りで少しは思ってるのだろう。

「箒は外見や傍からみたら強い……いや、強そうだ。しかし一皮むいて中身を見たら今にも崩れそうな硝子細工のように繊細なんだ。要約すれば、弱い自分を他人に知られないために他人と距離をおいて、かつ何時も人を遠ざける。そういう所で束さんと似てるな……さすがは姉妹ってとこなのかな?」

「あ、それは少しわかるぞ!束さんは興味のある人以外とは付き合わないからな」

「そう、で箒はそれを凄く一般的にした感じだ。必要以上に他人に干渉しようとはしないが大事な人とかには干渉する」

俺達二人はそんなことを言いながら食堂に入っていった。入学からまだ少ししか経っていないが流石にいつも取り巻きがいるわけではない、故に俺達がどうも一番乗りらしい。食券を買いながら俺と夏は更に話し続ける。

「兎に角、箒との接し方は気をつけろ……といっても今のままでいいがな。ただこれだけは頭の片隅においておけ、箒は浮かれたり、感情が先走ってると周りが見えなくなる場合がある。お前はそれをサポートしてやってくれ」

「お、おう、わかった」

俺の真剣味な言葉に、夏はたじろぎながら返事をする。ほんとに大丈夫だろうか?まあいいや。

「はい!んじゃあこの話はここで終了!あ、おばちゃん!俺きつねうどんね!食券置いとくから!……で?昨日の箒との特訓どうだったんだよ?え?」

俺は夏に詰め寄り、聞いていく。すると夏はため息混じりに言う。

「それがどうもこうもねえんだよ。ISの事教えてくれって言ったのに剣道の試合で俺が弱くなってたから鍛え直す!って言って毎日三時間の剣道の練習……あいつは本当にISのこと教える気あるのか?」

「ほ〜……だとさ箒さん、教える気あるのか?」

「え?おわぁ!!!」

俺と夏が話してる間に箒と春華が後ろに来ていたのだ。俺と夏が向き合っていて俺は入口の方を向いてるので自然と夏からは真後ろになるので当然の反応だ。

「無論教えるつもりだ……が、しかしだ!一夏の剣道の腕があんなに鈍くなっているとは思ってなかったからな、これはIS以前の問題だ!と私が言って今日からまずは剣道の修行というわけだ……」

箒の熱弁に俺は「ふむふむ」と頷きながら反応していた俺は一息ついた所でこういった。

「夏、諦めろ!これから決定戦までは剣道一筋だ」

「はぁ!?ちょ、ちょっと待てよ!それじゃセシリアに勝てな――」

「勝算も無いのに挑発に乗るからだ。あ、序に俺は勝算あるから……じゃあ俺先行ってるから三人とも早く来いよ〜」

そう言って俺は返却口と出口に近い場所を陣取った。そこに寮長として見回りをし終えて混雑していた入り口と逆側――出口側から入ってきた冬姉を見つける。よかった丁度聞きたいことがあったんだった。

「織斑教諭、ちょっといいですか?」

俺は少し声のボリュームを上げて手を振った。すると冬姉は「む?」とこっちに気づき、近づいてきた。

「どうした一ノ瀬?やっぱり今日は休むか?」

「どの顔見て言ってるんですか……」

「ふむ……その必要はなさそうだな。それじゃ要件を早く言え。これでも私は忙しいんだ」

冬姉は俺の顔を見て一瞬で考えを改めた。それもその筈、俺の顔は少しつかれた感じはあるが健康そのものに見えるからである。部屋出る前に鏡で確認したしな。

「いや、実は昨日貰ったこの《ラファール・リヴァイヴ》……まあ通称《リヴァイヴ》ですがね、これの所有権――正確にはコアの所有権って現在どの国が持ってますか?」

俺は首から下げたネックレスを取り出し、目線の高さまで持ち上げる。

「その《リヴァイヴ》のコアは現在IS学園の所有物となっている。コアだけだがな、外装パーツやその他は《デュノア社》の物で、作成も担当した。だからその見返りに稼働データなどを《デュノア社》に送ってるのだがな」

つまりは《訓練機制作の見返りとして稼働データを渡します》ってことか。それでコアはIS学園のもの……まあ妥当だよな。

「で、それがどうかしたのか?」

冬姉が訪ねてくる。さあここからだ、うまくいくかな?

「あの、織斑教諭……非常に申し上げにくくて無茶を承知でお願いするのですが……」

「な、なんだ。言ってみろ?」

俺のこんな表情を見たのは久方ぶりだから冬姉も少し焦っている。ついでに今の表情とは冷や汗を少しかきながら苦笑いという表情だ。恐らく俺の今の言葉が異様に変だったのだろう。

「この《リヴァイブ》を自分の専用機にさせてください!!」

俺が頭を下げた瞬間、織斑教諭は少し驚いた表情をしていたが、すぐに笑い出した。

「クックック……ハァーハッハッハッハ!!そうか……そういうことか!別に構わん。どうせ専用機はIS学園の所有物になるのだからな。コアの一個や二個位なら大丈夫だ。持っていけ!」

「ありがとうございます!あ、IS学園からの譲渡ですが《デュノア社》にデータは渡さなくていいんで」

「ああ、わかっている。お前の専用機は元々はIS学園のものだ。だからどの企業や国家に所属して無くても大丈夫だ。たとえ裁判になっても無罪は確実だ」

まあ事実そうなってもオーナーが俺であるかぎりあっちは手を出せないだろう。

良かった〜……ん?一個や二個?

「織斑教諭、今一個や二個、って言いましたよね?じゃあもう一個は貰おうと思えばもらえるんですか?」

「ん?まあ一個人に一個ぐらいなら簡単だが二つとなると少しキツイが……まあお前の秘密を使えば簡単だろう?」

冬姉は真顔で言う。よし!それなら更にトントン拍子でいける!しかし秘密はばらさない!ふっふっふ、秘策があるのだよ。

「あの、じゃあもう一機……《打鉄》ももらえますか?あ、それは春華の方に……可能ですか?」

「ああ、大丈夫だ……しかし専用機持ちの条件はどうする?」

ああ、それか……春華には悪いが、まあ拒否らないだろう。

「春華を日本の代表候補生に……候補生なら専用機持ってても大丈夫でしょう?それに代表じゃないから複数いても大丈夫ですし」

俺はそう言うと冬姉は頷いた。

「わかった。掛け合ってみるが……まあ通るだろう。しかしまったく、お前は私を扱き使うな……やれやれ、私は一体何時食事や休息を取ればいいのだ?」

「スミマセン……今度とびっきりのご馳走しますから」

実は俺はこう見えても料理はプロ級だったりする。ただ、前は色々と忙しかったし、二人のときは圧倒的に春華の量が多いので春華に作らせていた。

「ふむ、それじゃあ楽しみにしているかな。すぐに掛けあってみるから……まあSHRの時に結果を教えてやる。その場合春華の代表候補生決定が他の生徒たちにバレるが、大丈夫か?」

「はい、OKです」

俺がそう言うと冬姉は「わかった、それじゃあな」とだけ告げて去っていく。ふう、これで全ての問題がクリアした。

「お〜い、秋おまたせ。いや〜春華の量が相変わらず多くてさ……秋?どうかしたのか?」

冬姉が去って俺が立ってる所に夏達が来て俺に話しかけたが、俺の状態の変化に気がついたのか聞いてくる。

「……ふっふっふ……はぁーはっはっは!いや〜諸君、今日は素晴らしい日だなあ!いやー、今日はなにかあるぞ絶対!特に春華!お前にだ!」

「ふ、ふえ?」

俺の急激な変化に春華は素っ頓狂な声を上げる。さすが我が妹……そんな行動一つ一つが可愛い。

「いやー、まさかこうまで行くとは!さあさあ!早く食べて教室へ行こうか!……いやー今日も飯が美味いな!なあ夏?」

「お、おう、そ、そうだな……」

別段急いでいったからといってSHRが早く始まるわけではないのだが、俺は妙に浮き足立っていた。やれやれ、これじゃ箒のことを言えないな……ん?自覚がある分制御できるからまだいいか?まあいいや!ああ、はやくSHRにならないものかねえ?

「きょ、きょうの秋葉は何かあったのか?」

「さ、さあ?兎に角箒、早く食うか。秋はもう食い終わりそうだ」

「私はもう食べ終わったよ?」

「「春華はどういう胃袋してるんだ!!??」」

「ふ、ふええっ!?」

朝から妙にテンションが高い俺達四人であった。

 

時間は進み、場所は変わって一年一組の教室、SHRの時間で新たに騒ぎが起きた。しかしこの話は少しさかのぼってから話したほうが面白いと思う。実際俺もそっちの方から話したほうがいいと思う。ということで俺達四人が教室に入ったところから話そうか……

 

「う〜っす、はよ〜っす」

「あ、一ノ瀬くんだ!オハヨー!」

「アッキー、オハヨ〜」

俺が教室に入って気の抜けた挨拶をした瞬間、クラスメイトの谷本さんと((布仏本音|のほとけほんね))(通称のほほんさん)さんが話しかけてきた。ん?朝のハイテンション?あれは教室に来るまでに何とか抑えたよ。実際はSHR始まったら笑いが堪えられるかってな感じだ。ああ、SHRまだかなあ。

俺がそんなこと思いながら席について何時もの《机の上で足を組み椅子を揺らす》というポーズを撮り終わった瞬間、谷本さんと布仏本音さん――のほほんさんが近付いて来た。谷本さんは普通なのだがのほほんさん、何であなたの制服の袖口はそんなにダボダボなのだ。しかも私服が狐の着ぐるみ風(見た目はほぼ某電撃ネズミだけどな)、しかもダボダボ……いや、可愛いよ?でも歩きにくくないか?あ、腕の袖口だけだから大丈夫なのか。

「しかし昨日のアッキーには驚いたね〜。まさかあんな表情するとは思わなかったよ〜」

「そうだよ、顔つきはイケメンで髪はサラサラで長いくて一見すると女子と見間違えそうなのに、あの時はとっても男らしかったもんね。私もビックリしちゃった」

「でもそのお陰で俺がどんな人物かわかったろ?」

俺が少し嘲笑気味に鼻で笑う。しかし二人は声を揃えてこういう。

「「うん!女の子を守ってくれる騎士(ナイト)みたいな男子!」」

ドンガラガッシャーーン!!……なんだその誇張されまくりの少女漫画の玉子様みたいな絵は!……みんなよく見ろ。敢えて俺は《王子様》を《玉子様》と書いたぞ。ふふ、くだらないとか言うなよ。俺はそれほどそういう存在が嫌いなのだ。

「で、アッキー、アッキー。セシリーに勝つ自信はあるの?」

ふむ、のほほんさんの中ではどうやら知り合いや友人はあだ名で呼ぶらしい。しかもわかりやすい。俺は秋葉だから《アッキー》、春華は《ハルハル》らしい、夏にいたっては苗字から《おりむー》だと。そして《セシリー》は……まあ分かるよな?

「愚問だな、のほほんさん。俺の前ではあんな人間は一捻りだよ。昨日のやり取りを見ていないのか?」

ピキッ。……今変な音がしたが気にしない。

「でもでもアッキー、セシリーはイギリスの代表候補生だよ?ISの訓練だって相当してるはずだよ?」

「どんなに頑張って代表候補生だろ?俺は国家代表を一人知ってる。今も学生という存在で……のほほんさんのよく知ってる存在だ」

「え〜っと……ああ、わかった〜……でもアッキーしってるの?」

「直接会ったことはないが話しぐらいなら聞いた時あるよ。まあさすがに《あの人》には敵わないが、それから比べたら月とスッポン、女神と鬼婆だぜ」

ビキビキッ。……おお、すごい音がしたぞ。まあ俺にとっては痛くも痒くもないがな。

「そもそも代表候補だろ?俺に喧嘩売るなら国家代表になってからってしろっての?のほほんさんもそう思わない?ハハハッ」

プチンッ。……血管が切れたか、意外と怒りっぽいらしいな。まあ俺もだが。

俺はその血管が切れた本人が机を立ち上がり、机を叩く前に行動に出た。

ガタッ、ヒュッ……カッ――

次の瞬間、血管が切れた本人――セシリアは眼を丸くして立ち尽くしていたが、やがて片耳――右耳を両手で抑えた。俺はいつも通りの格好から左腕を左斜め後ろ――セシリアの席に向かって伸ばしていた。

そしてその先の壁にはナイフが一本刺さっていた。

「今のは警告だ。昨日言った通り大人しくしてないと命の保証はないぞ。むしろ耳が吹き飛ばなかっただけ感謝するんだな。それでも文句あるなら次は右目を繰り抜いてやるよ」

俺は左腕を戻しながら袖口からもう一本取り出す。

セシリアは無言で自分の席に座った。

「素直な奴は嫌いじゃないね」

俺はそう言うと左手で何かを引っ張る動作をした。するとさっきのナイフが壁から抜け、宙を舞って俺の手元に戻ってきた。

「谷本さんとのほほんさん。これ止血剤とガーゼとサージカルテープ、セシリアに持ってって手当してやってくれ。ゴメンな手間取らせて」

「ううん、大丈夫だよ」

「アッキーってやっぱり優しいね〜」

二人は俺を見てにっこり笑う。俺はなんだか照れてしまった。

「……んなことねえよ。それとそろそろ座ったほうがいい。チャイム鳴るから」

「うん、ありがとう」

俺はそう言うとセシリアに声をかけた。

「おい、イギリス代表候補生。これから始まる朝のSHR……注意して聞いてろよ。格の違いっていうのを教えてやるよ」

「くっ……」

その瞬間チャイムが鳴った。それと同時に冬姉が入ってきた。

「早く席につけ……なんだ、もう付いてたか。ん?オルコット、その右耳はどうした?」

「えっと、これは……その……」

セシリアが言い淀みながらこっちを睨んでくる。見なくてもわかるよ、感覚で。

「織斑教諭、実はさっき自分がオルコットさんとぶつかってしまいまして……その時運悪く鎌イタチでちょっと切ってしまいまして……止血剤を塗って処置しましたので大丈夫です」

「そうか……あまり騒ぎを起こすなよ?」

冬姉は大体の事情を知っている顔をした。う〜むやっぱり敵わないな。しかしその割には叱らないな……なぜだ?

「それじゃあ山田先生、連絡事項を」

「はい。皆さんに連絡事項です。まずは来週予定の代表決定戦は予定通り行います。時間と場所は月曜の放課後、第三アリーナでやります。見学したい人は放課後すぐに移動、参加する人は各人ビットに入るように、いいですね?」

「「「「「「はい!」」」」」」

山田先生の言葉に教室の生徒全員がそう応える。

さて、次ぐらいかねえ……

「え〜……それからこの教室に新たに代表候補生が加わることになりました。いや、加わるというか……代表候補生になったというか……」

「山田先生、変わろうか?」

「あ、お願いします」

話す人物が山田先生から冬姉に変わった。しかし教室全体は代表候補生と聞いてざわめいている。

「秋、代表候補生だってよ。どんな奴だと思う?」

「身長140cmで胸はそこそこあって茶髪に茶色の瞳でツインテールにしててネクタイの女子生徒制服に黒いニーソ履いてブーツ履いてる恐らくこの教室内でそこそこは目立ってる存在である男子生徒の妹」

俺は一息で一気に言った。夏はそれを聞いて春華の方を見る。そう、この条件に合うのは一人しかいない。あ〜笑いてえ……しかしまだその時じゃねえ!

「静かにしろ。さて、一ノ瀬春華」

「え?は、はい!」

「お前は本日付で日本の代表候補生となる。放課後職員室にて通達と書類の作成があるから来るように。それから専用機だが、昨日言った通り空きがない。という訳で学園から《打鉄》を送ることにする。大切に使用するように」

「あ、ありがとうございます?」

何故疑問形……まあいいが。

まったく解らないという顔の春華の手には指輪が渡された。恐らくアレが打鉄の待機状態なのだろう。しかしそんな中一瞬にして女子達の質問に黄色い声、批判まで入っている。

「いいな〜いいな〜、ねえねえ一ノ瀬さん。今度ISの姿見せてね?」

いや、いつか見るから約束取り付けなくても。

「なんで私には専用機とか代表候補生の話が来ないの?やっぱり見た目?それとも身内関係?まさか賄賂とか!?だめよ一ノ瀬さん!そんな悪事に身を染めちゃあ!」

ちゃうわ!(ギリギリで)正攻法な方法で代表候補になったんだよ!

そんなこんなで騒ぎ出す教室の中に一際大きな女子の声が上がった。

「納得行きませんわ!!」

またお前か……

セシリアが机を叩いて抗議の声を上げると教室が静まり返った。しかし中には「ああ、またか……」という顔の女子生徒もいる。だよな、いい加減ウザいよな?あとゴメンな。毎回この原因作ってるの俺だから、いやマジで。

「そんなIS学園に来る前は共学の学校に行ってた人がわたくしと同じ代表候補生など!しかもあの極東の猿の妹!わたくしにこれ以上この様な屈辱を味わえと!それともアレですか!?この様な極東の地は人材不足が進んでるのかしら?そう、そうに違いありませんわ!じゃないとあの猿の妹が代表候補になど――」

「あんまり出しゃばるなよ、小娘が」

「お兄ちゃんは極東の猿じゃない!!」

「いい加減にしろよ……このクソアマが」

恐らくIS学園で最も恐ろしい状況、まさに地獄絵図がここに広がっている。何せ元IS世界最強に、前世で軍人だった少年少女二人が怒り真骨頂で睨んでいるのだから。

「……織斑先生、私も来週の代表決定戦出ます。いいですよね?」

「ああ、丁度私もそう提案しようと思っていたところだ。準備をしておくように」

「わかりました」

そう言って二体の鬼は静まった。そして最後の鬼は――

「……命拾いしたな。だが忘れるなよ。お前は《決闘》と言ったんだ。つまり死んでも文句は言えないってことだ……覚悟しておけ」

そういって席についた。

そこである女子生徒が恐る恐る手を挙げる。

「あ、あの〜……一応何で代表候補生になったか理由を聞いていいでしょうか?」

「む?簡単なことだ。筆記と実技、共に入試ではいい結果を残している。筆記にいたっては満点だ。さらにIS適性検査でS-Exというランクを示している。これは一ノ瀬兄妹二人に言えることでな。更に兄の秋葉の方は入試の実技で教官だった私を倒している。春華の方も運がなかったというか魔が刺したとしか言えない状況で負けてしまったが十分勝機はあった。そしてそれが政府に認められてこうなったわけだ。それじゃあ授業を始めるぞ。山田先生、号令を」

「あ、は、はい!」

まったく、笑うどころじゃ無くなった。くそっ!しかしこれであのクソアマは暫く立ち直れないだろう。夏はともかく俺と春華にはボコボコにされるはずだからな……しかし聞いた話では現時点での適性ランク、これは最初の格付けだからあんまり意味ないって、あ……でも「S超か、お前達二人に関しては異例だな。これ以上上がることもないが滅多なことでは下がらんだろう……誇っていいぞ」って言われたっけ?でもあんまり興味ないんだよね〜ランクとか。実際飛び出せば信じられるのは自分と相棒――ISだけなのだ。そして勝負である以上絶対はない。百戦錬磨のIS使いでも最弱のIS使いに負ける時だってあるのだ。

そんなコトを考えながら授業が始まり、俺はノートにシャープペンを走らせる。

 

本日数回目のチャイムが鳴る。四時間眼終了のチャイムだ。

「はい、それじゃあ授業は終わりです。みなさん、ちゃんとしっかりお昼を食べるんですよ」

そう山田先生が立ち去ると女子生徒たちも立ち上がり、それぞれ学食や持参弁当にありつく。

「夏、今日の昼飯どうする?購買のパンもそろそろ食ってみたくね?……ん?」

「どうした?」

俺が夏に話しかけると、教室の出入り口から一人の女子生徒がこっちに歩いてきた。メガネを掛けており、髪は癖っ毛のようで内側に向いている水色のセミロングだ。俺はその人物を知っている。

女子生徒は俺の目の前までやってくると。小さくだが話しかけてきた。

「あな、た……が……一ノ瀬……秋葉……?」

ふむ、かなりの人見知りというか……口数が少ないというか……まあわからんでも無いが。

「わりぃ夏。ちょっと購買までパシリやってくれ!ジュース一本おごるから」

「おう、いいぜ!何買ってくればいい?」

「焼きそばパンと適当なサンドイッチ。あとなんか飲み物。ほい、お金……ジュース代引いたつり銭、返せよ?」

「わ〜ってるって!」

「夏兄、私も行く〜!」

「私もいこうか」

夏が購買に向かおうとすると箒と春華もついていくことになった。好都合だ。

「終わったら屋上に集合な!」

「ん、了解」

そういって春華と夏は購買に向かった。

「さて、と……取り敢えずここじゃなんだから取り敢えず屋上行くか?((更識簪|さらしきかんざし))さん?」

「!……なん、で……私…のなま…え」

「知ってるかって?まあ一応代表候補生だし……興味があるんだ。倉持のところが開発してたISに。ほら、いくぞ!時間がない」

俺は無理やり女子生徒――簪さんの手を取り引っ張っていく。

「!?…は、離しっ……」

「屋上着いたらな」

そう言いながら俺は簪さんを引っ張って廊下を屋上に向けて駆けていく。

 

「さ、到着。ここなら誰も居ないからな、で何の話?」

「こ、これ……返す……」

簪さんが差し出してきたのは昨日《打鉄弐式》に駆けてきたUSBメモリーだった。

「……役に立ったかい?」

「……………」

俺がそう聞くと簪さんは少し黙っていたが不意に発した言葉は以外な言葉だった。

「私に……助けは、いらない……自分で……やるから……邪魔、しないで……お願い」

こりゃまた手痛いな。しかし俺は嫌われるようなことしたか?

「おいおい、それはないだろ?もうちょっと言い方があるだろ?これから開発室で鉢合わせするかもだから、ここは友好関係を結んどいたほうが互いにいいと思うけどな?」

「……それは……あなたの、考え……わたしは……私の考え、で……動く……それじゃ……」

簪さんは後ろを向き歩み始めた。

「例えそれがIS開発に一年を費やすことになってもか?」

「……………」

俺の言葉に簪さんは帰ろうとした歩みを止めた。恐らく自覚はしているんだろう、自分のやり方では《打鉄弐式》の完成するのは二年生になってからだろうと。

「私は……それでも……やる、やらなきゃ……いけないから」

「自分の姉さんの横に……いや、せめてそのすぐ後ろにいる為に……か?」

「!?……………」

「……どうやら図星らしいな。確かに簪さん、あなたの姉さんで現IS学園生徒会長であり、《更識家》の《第十七代目当主》であり《ロシアの国家代表》の人物――((更識楯無|さらしきたてなし))さんの駆るIS《ミステリアス・レイディ》はあの人が自力で組んだものだ……しかしそれを真似て簪さんがやる必要はあるのか?」

「そ、それは……」

俺は屋上の柵に背中を預け、もたれかかった。

「俺が思うに答えはNOの筈だ。でも頭の中ではわかっていても意識……しちゃうんだよな、自分の身内や兄弟姉妹が天才だと……無意識に比べちゃうっていうか。そして周りもそうやって比べて……でもだからって自分の姉さんを嫌っちゃ駄目だろ?すくなくとも向こうは嫌ってない、むしろ大好きなはずさ……だけどな簪さん、それを簪さんが拒んじゃ意味がないだろ?」

俺はそう言葉を紡ぐが簪さんは黙ったままだ、でも歩き出す雰囲気はない。

「……まあすぐにそう言っても無理、か。……そうだ、一つ教えてあげるよ。簪さんのお姉さんの更識楯無会長のISだけどな、アレ実は会長一人が組み上げたものじゃないんだ」

「!!…………嘘……」

「俺が嘘ついてどうすんだよ……けどまあ嘘じゃないぜ。二年生のエース《((黛薫子|まゆずみかおるこ))》先輩に、三年出席で生徒会会計、のほほんさんの姉の《((布仏虚|のほとけうつほ))》先輩。この二人が携わっていたから。それにそのとき《ミステリアス・レイディ》は七割方完成していたらしい。でも今の《打鉄弐式》は五割も完成してないだろ?」

「………そう」

簪さんは頷く。

「じゃあ別にこれぐらいはいいんじゃないのかな?……ほらよ」

俺はUSBメモリーを投げ渡す。簪さんは振り返り、それを受け取る。

「それとな、簪さんはもうちょっと人を信じたり、頼るのを知るほうがいい。今のままじゃ敬遠されっぱなしだぞ?」

「それは……」

簪さんは言い淀むが俺は続ける。

「そうだな……まず自信のない自分を信じようか。どんなに小さくても、どんなに弱くても、まずは自分が自分を信じないと、他人は信じれないぜ?」

「でも……………」

簪さんはまた言い淀む。やっぱ難しいか……

「じゃあまずは俺を信じろ」

「……え?」

「俺は簪さんを結構信用してるからな。俺を信じて、俺を頼ってみろ。そしたら自然と自分も信じれて、他人と交流することが出来るって」

「……………」

「すぐには信じられないか……まあいいや、じっくり考えてみてくれ。これから来週まで、俺は放課後開発室にずっといるからさ、その時に答えでも聞かせてくれや。あと今日の放課後、もう一つ二つ話すことあるから開発室で待っててくれ。なんで今はなさないかって言うと……そろそろ夏達が来る時間だからな」

俺は柵を離れて簪さんに近づいた瞬間、屋上と中を隔てる扉が開き、夏達が屋上に出てきた。

「お〜い、秋!買ってきたぜ〜!」

「おせ〜よ、バーカ!腹へって死にそうじゃんかよ!」

「おいおい、人をパシらせといてそりゃねえだろ?春華の買い物に付き合ってたら遅くなったんだよ!」

「えへへ〜お兄ちゃん!見て見て!購買のパン全部買い占めてきたよ!」

「お陰で私の分のパンまで取られてしまった。まあおにぎりがあったから良かったのだが」

「我が妹よ。俺はたまにお前の胃袋がどうなってるのか見てみたい……」

俺と夏達が楽しそうに話してるのを簪さんは驚いた顔で見つめていた。それはまるで《なんでこんなに楽しそうなんだろう》と言っているような。

「ほら、簪さんも戻ってお昼を食べたほうがいい。時間が無くなるぞ。それとな……あんまり夏を責めないでやってくれ。あいつは何も知らないし、故意があって倉持技研の人間を取ったわけじゃないんだ。ごめんな、じゃあまた放課後に」

「……あ、あの!」

「ん?」

「……か、開発室……待ってます」

「……おう」

簪は俺の返事を聞くと小走りで戻っていった。

「さ〜て、昼飯食うか!」

「おう!夏!俺の焼きそばパンと飲み物……の前につり銭返せよ?」

「おう、袋の中に一緒に入ってる。あそこのテーブルで食うか」

「わ〜い、春華が一番乗り!!」

「じゃあ私は春華の隣に座るとしよう」

「お前ら、はええよ!ちょっとはつり銭しまう俺の身にもなれ!」

「俺をパシらせた罰だな!」

俺達はそんな他愛のない話で盛り上がりながら昼食を食べ始めた。

 

午後の授業も何事も無く過ごした俺はSHRが終わった後、鞄に教科書を詰めていた。

「じゃあ秋葉、一夏を借りていくぞ」

「ああ、まあ俺の所有物じゃないから別段聞く必要もないがな。じゃあ夏、せめて箒に一本ぐらいは取れるようになれよ?」

「無茶言うなって!」

夏は冗談抜きに言ったが、俺は「まあ冗談だ、気にするな」と言った。そして夏と箒は剣道場に向かっていった。春華は授業が終わるとすぐに職員室に向かったのだろう。「ISの実践訓練するから」と飛び出していったからな、アリーナの使用許可でも取りに行ったのだろう。「あとで開発室こいよ」と言っておいたので恐らく後で合流するだろう。さてと、じゃあ俺も行きますかね。

俺はゆっくりと歩きながら開発に向かい、カードキーで扉を開けると既に簪さんは来ていた。

「……よっ。待ったか?」

「……今来たとこ」

「そうか」

そんなデートの待ち合わせのような会話をした後、俺は途中の自販機で買ったスポーツドリンクを渡してやる。

「勝手に買って来たけど、いらなかったか?」

「……ありがと……」

簪さんは自分のISから目を話して、俺の隣に腰を下ろした。ついでに俺は発注して届いた材料の横に腰を降ろしている。

俺はドリンクを一口含むと床において、昼休みの続きを話し始めた。

「昼休みの最後に言った話っていうのは、これは極秘事項に該当するのもあるから絶対に口外しちゃ駄目なんだが……大丈夫か?」

「……うん、大丈夫……」

「そうか、まあ俺が信用したんだから聞くまでもないな。じゃあまずは俺の正体から」

「正体……?」

「そ。ISの基礎理論とコア、そして現物が初めて登場したのは今から約九年前、稀代の天才……いや、鬼才の篠ノ之束博士によって世界に公表された。これは知ってるよな?」

「うん……」

俺はスポーツドリンクを一口含み、飲み込む。

「しかしその裏でISの開発に携わった一人の少年がいた。恐らくはその少年がいなければISは今よりもっと不完全で、更に危険な代物になっていただろう。それこそ搭乗者のことなど全く気にかけない……諸刃の剣のような兵器に。しかしその少年がいなかったからといってISが作られないわけではなかった。しかし篠ノ之束博士はその少年を起用し、少年もそれに応えるようにISの開発に携わっていった。そしてこの二人の手によって開発された一番最初のIS……コアナンバー001通称《白騎士》は完成した。そしてそれからまもなくして日本に向けて発射されたミサイル2341発のミサイルをただ一機のISが止めた事件、通称《白騎士事件》が起きた。この時の博士の年齢は十四歳、少年は僅か六歳だった」

俺は淡々と語り続けた。自分でも驚くぐらいスラスラと出てくるのだ。

「やがて篠ノ之束博士は失踪。コアも467個目を最後に作られなくなった。しかしもう一人、コアを制作でき、ISの事を世界中の誰よりも把握いているその少年は、別段コアを開発したり、ISの事を公表したりせず、ただの少年、学生として日々を過ごしていた。しかしそれは彼の高校入試の日に破られることになった。試験が終わり、帰ろうとした時に偶然にもISに触れ、起動させてしまった。そして彼は《男性でISを扱える人物》としてIS学園へ入学……今現在開発で自分の身を明かしている人物であった。……これが俺の正体、ビックリした?」

「………………」

簪さんは俺の方を向いて只々眼を丸くしているしかないようだ。それもその筈、稀代の天才にして鬼才の篠ノ之束博士と同等クラスの人物がいま横にいるのだから。

「……しかしだからと言って俺がなんでもできる訳じゃない。そこでもう一つの話になるんだけど……いいかな?」

「……!?……は、はい……どうぞ」

「ありがとう。本当なら俺にも専用機が与えられるはずだった、しかし俺はそれを断った……何故だと思う?」

俺の質問に簪さんは口に手を当て、考えこむがすぐに出たらしい。

「……自分で作成するため」

「正解。しかし今言った通り、俺も一人の人間でしか無い。そこで更識簪さん、出来る限りでいい、力を貸して欲しい」

「……………」

俺は一息つき、残ったスポーツドリンクを一気に飲み干すと立ち上がり、簪さんの目の前に立ち、言った。

「単刀直入に言います。俺のISの開発の手伝いをして欲しい!どうか手伝ってくれないだろうか?」

「…………わた、し?……が?」

「ああ」

俺は右手を座っている簪さんに向けて差し出す。しかし帰ってきた返答は――

「……お断り……します」

「……そうか」

俺は再び簪の横に座り直す。断られはしたが俺が隣りに座るのは別にいいらしい。

「簪さん、理由を聞いてもいいかな?なんで俺の誘いを断ったのか?」

「……怖い、から」

「……俺、そんなに怖いかな」

教室の生徒ならこういう返答はわかるが四組の簪さんは知らないはずだ。もしかして誰かに聞いたのか?

「ちが、う……わからないの……」

「わからない?」

「……あなたが誘う理由……あなたを受け入れようとしてる私……誰かに必要とされて……誰かと一緒にいたい……こんな気持ちは初めて……どうしたらいいのか……わからない」

「そっか……じゃあやっぱり俺と一緒にISを作らないか?」

「えっ……?」

俺は簪の方を向いて笑った。

「多分簪さんはわからないものが怖いんだろう、『いつかこの人も私を遠ざけるだろう』ってな感じでな。でもそれは飽くまで予測でしか無い……自分から踏み出さないと。自分から踏み出さない限り、わからないものはずっとわからないものになるだけだ」

「そう……だけど……」

俺は「ふう」と一息つき、眼を瞑ると、明るい顔で前を見つめ、ハッキリと大きめの声で言う、

「大丈夫、俺は絶対に簪さんを裏切ったりなんかはしない!出来る限り簪さんを守ってやる!だから、俺と組もう!簪さん!?」

俺は勢い良く立ち上がり、再度手を差し出す。

「う、うん!」

俺の表情と言葉に感化されたのか、簪さんはやっと俺の手を取って、答えてくれた。俺は答えてくれた簪さんが嬉しくて、抱きついてしまった。

「ありがとう……簪さん……」

「!あ……あの!……」

「ん?」

「は……離して……」

「あ、ああ!……ご、ごめん!急だったからビックリしたよな?ごめんな、簪さん」

俺は急いで飛び退いた。簪さんはもじもじしながら赤面していた。そりゃそうだろう、見慣れてない男子が急に抱きついたんだからな。

「い、いらない……」

「え?」

簪さんの不思議な一言に首を傾げる。何がいらないんだろうか?

「さん、は……いらない……か、簪で……いい」

「そっか!じゃあ俺も呼び捨てでいいよ!秋葉、秋(シュウ)、どっちでも呼びやすい方を選んでくれ」

「じゃ、じゃあ……しゅ、秋?」

「ああ、よろしくな、簪」

俺は互いの距離が近づいた感じがした。

 

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どうも、作者の菊一です。

はい、第九話でした。というわけで新キャラとして更識簪さんが登場しました!……え?のほほんさん達は違うのかって?……も、勿論把握してますよ!やだなー、もー(^^;Aアセアセ

まあ実際ヒロインは箒を除いたメイン四人とサブヒロイン数人(下手したら全員)からなります!今の所サブは簪とのほほんさんと千冬さん、束さんを予定してます(登場している人物の中ではですが)。しかし束さんはまだいいとして千冬さんの対応の仕方を間違えてしまった……恋愛要素今の所皆無orz……千冬さん目線の話を外伝的な感じで書いてみるか?いや、でも後々の話の進め方次第で……す、すみません!考えときます!

 

さて、次回予告を少々……次回!遂に秋葉と簪、春華の三人が秋葉と春華の専用機開発に取り掛かる!……冒頭部分でかなり話すし、話の内容で専用機のこと結構話すので次回の話を投稿した後「これ早めに専用機の設定出しても問題ないんじゃない?」って要望が来たら上げるかもしれません。来なかったらもう少し練り込んで投稿しますw

 

今現在、引き続き挿絵や表紙絵を書いてくれる絵師様を募集しております。絵柄や画風は問いません。宜しくお願いします。

ではまた

説明
第九話です。遂にあの子登場。ではどうぞ
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インフィニット・ストラトス

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