仮面ライダークロス 第二話 Rを送ろう/鎮魂の剣 |
フェイトは帰宅後、ずっと考え事をしていた。
内容はもちろん光輝と仮面ライダークロスの事である。
クラスメイトが仮面ライダー、それも、Wでもアクセルでもない全く新しいライダーだったというのは、彼女に少なからぬ衝撃を与えた。
フェイトはカレンダーを見る。明日は土曜日だ。
(来週、詳しい事を聞いてみよう)
彼女はそう決意した。
月曜日。ずっと昏睡状態だった照山が登校してきた。
「照山!」
「おー、光輝!」
「もう大丈夫なの?」
「ああ。ったく、酷い目に合ったぜ」
「それにしても、与那国の奴が通り魔事件の犯人だったとは…」
バージルは与那国が逮捕されたことにショックを受けている。
彼はバージルにとっても好印象だったのだ。
「ま、人生何があるかわからねぇってことだ。」
ダンテは大して悲しくなさそうに言った。
「なんだ、みんなもう知ってるのね。」
そこへ、ディスクさんがやって来た。
「テレビでもやったもの。知ってるに決まってるわ」
レディさんが正論を言う。
ちなみに、ダンテ、バージル、照山、レディさん、トリッシュさん、ディスクさんは、僕が仮面ライダーであることを知ってる。特にディスクさんなんかは、事件解決を依頼してくることがある。
「なら、一つ面白い話があるんだけど…」
「面白い話?」
僕が詳細を尋ねようとしたとき、チャイムが鳴って銀八先生が入ってきた。
「またあとでね。」
ディスクさんは自分の席に戻った。
ホームルームが始まった。
「えー、皆さんもう知っていると思いますが、与那国くんが連続通り魔事件の容疑で逮捕されました。悲しいことですが、授業は普通どおりやるので気にしないように」
僕はずっと気になっていたことを言うことにした。
「先生。」
「何だ白宮。」
「それはいいんですけど、何でいつも煙草を吸ってるんですか?」
「これは煙草じゃない。レロレロキャンディーだ」
「レロレロキャンディーから煙はでねぇよ。」
ダンテが言った。
「それは先生がすごーくレロレロしているからだ。」
銀八先生は口からレロレロキャンディーを出した。ダンテは呆れ果てたような顔をした。
僕はさらに尋ねる。
「でも先生。普通どんなに頑張ってもレロレロキャンディーから煙なんて出ませんよね?どうして先生は出せるんですか?」
「それは先生がドーパントをも超える超人になりつつあるからだ。」
「第二のドナルドになるつもりですか?」
「…………………。」
「…………………。」
「…それは嫌だ。」
「あらぁっ!」
ドナルドはスッ転んだ。
しかしすぐ起き上がり、「これか?これか?」と言いながら銀八先生を殴りまくる。
「ちょっ!待て!痛い!痛いからマ「ハンバーガーが、四個分くらいかな?」ごあっ!!」
ドナルドはハンバーガーを四個出して銀八先生に投げつける。
ハンバーガーは銀八先生の顔面に、胸に、腹に、股間に、それぞれめり込んだ。
なにで出来たハンバーガーなんだろう?っていうか、ドナルド怒り過ぎだよ。
ホームルームは、ボロボロになった銀八先生を保健委員のシャマルさんと梔(くちなし)さんが担いで行ったことにより、終了した。
僕はディスクさんの話を聞くことにする。
「それで、話って何?」
「通り魔事件とは別に、最近、連続感電死事件っていうのが起きているの。」
「連続感電死事件?」
トリッシュさんが反応した。トリッシュさんは電撃を自在に操れる悪魔だから、無理もない。
「オイオイ、まさかお前が犯人じゃねぇだろうな?」
ダンテがそう言った瞬間、トリッシュさんが片手でダンテの頭を掴み、電流を流した。
「ぐああああああああああああ!!!!」
ダンテが叫んだ。そりゃ当たり前だよダンテ…。誰だって殺人事件の犯人なんかにされたら起こるって…。
トリッシュさんは怒る。
「馬鹿なこといわないで!!私がそんなことするような女に見える!?」
今やったけどね。
「なんだ、もうおしまい?もっと殺ればいいのに…」
レディさんが恐いことを言ってるよ。しかも字が違うし…
でもダンテはすぐ復活した。さすがスパーダ理事長の息子。すごい耐久力だ。
「ったく…しかしお前じゃないとすると、あとはネヴァンか?」
「呼んだ?」
ネヴァンさんがやって来た。この人も電撃を操る悪魔だ。
「いや、連続感電死事件の犯人がお前じゃねぇか、って話をしてたんだ。」
「…」
ネヴァンさんは無言でダンテの手を握ると電流を流した。
「があああああああああああ!!!!」
「はい、本日二度目〜♪」
レディさんは楽しそうに言い、
「…馬鹿が」
バージルは静かに罵倒し、
「おっかねぇ…」
照山は震えあがり、
「おぞましいね。」
僕はその光景を見ていた。
「話を戻すわね?その連続感電死事件のことだけど、老人から子供まで、結構な人数が被害にあっているの。」
「無差別か…通り魔事件よりたちが悪いぜ。」
実際に通り魔の被害にあった照山が言う。
「いいえ、まんざら無差別ってわけでもないわ。」
ディスクさんが否定した。
「どういう事?」
僕は聞いた。
「被害者は全員、何かしらの悪事を働いているの。殺人とか強盗とか、いじめとかいたずらとかね。」
僕は驚いた。
「殺人や強盗は分かるけど、いじめやいたずらとか、そんな理由で!?」
「ええ…」
「お前のことだ。もう何か掴んでいるんだろう?」
「さすがねバージル。その通りよ」
ディスクさんは携帯を取り出すと、少し操作してから見せる。
画面には『天罰の雷〜あなたの恨み、晴らします〜』と書かれたサイトが映っていた。
「ディスクさん、これは?」
「被害者の大半が、このサイトに来た依頼の標的になっているの。この事からも、事件の犯人はサイトの管理者ということになるわ。」
照山は驚く。
「すげぇじゃねぇか!あとはそのサイトの管理者さえわかれば「もう判明しているわよ。」早っ!」
さすがディスクさん。こういうことに関しては、本当に手回しが早いね。
「それで、犯人は?」
「犯人は…」
次の休み時間、光輝は頭を悩ませていた。
「まさか…そんな人が犯人だったなんて…」
『犯人は葉沼洋一(はぬまよういち)、警察官よ。』
『警察官が!?』
『ええ…どんな理由があるのか、それは本人に聞くしかないけど、彼で間違いないわ。』
ショックだった。市民を守る立場である警察官がガイアメモリに手を出し、事もあろうに市民を殺害しているというのだ。
(これも全て、あいつらの仕業だというのか…)
光輝は自分が戦っている、とある組織について憤りを感じた。
そんな彼の心情を察したのか、ダンテは言う。
「まあ、世の中何が起こるかわからねぇもんさ。それに…」
「それに?」
「お前は仮面ライダーなんだ。お前が解決してやればいい」
「…言われなくてもそうするさ。場所はわかってるんだ、こっちから行ってやる…」
光輝の様子を見たダンテは、バージルに耳打ちする。
(こりゃあ相当なショックを受けてるな…)
(仕方あるまい。警察の中に、例の連中の内通者がいたこともあったからな)
(…ったく、世の中ってのは何が起こるかマジでわかんねぇな)
彼らの父、スパーダは、教育委員会だけでなく、世界的にも影響のある人物だ。故に、ある程度の情報は二人の耳にも入ってくる。
その時、
「ねぇ、光輝。」
「何、フェイトさん?」
フェイトが話しかけてきた。
「ちょっと話があるんだけど、昼休み、屋上に来てくれるかな?」
「?いいけど…」「じゃあ待ってるね。」
フェイトは自分の席に戻った。
(どうしたんだろう?)
光輝が考えていると、レディとトリッシュの笑い声が聞こえた。
「…何?」
「いいえ?」
「何でもない何でもない…ふふ…」
レディもトリッシュも笑ってばかりだ。ダンテと照山も笑っている。
「やるじゃねぇか、コウキ。」
「お前にも、春が来たんだなぁ。」
しかし、ダンテ達が言いたい事を理解したバージルは、
「そうかな…」
と言った。
「バージル?」
光輝はバージルを見るが、
「いや、何でもない」
バージルは顔をそむけた。
「?」
光輝は首を傾げた。
昼休み。光輝は屋上に赴く。
そこでは、もうすでにフェイトが待っていた。
「ごめん、待った?」
「ううん、大丈夫。」
「ところで話って何?」
「…」
フェイトは黙ってしまった。
(…あれ?もしかして…)
光輝は今になって気付いた。二人きりで屋上、これは紛れもなく…
(そ、そんなはずない!僕じゃ君には釣り合わないよ!)
光輝は心中大いに慌てる。
「あのね…」
フェイトが口を開いた。光輝は飛び上がりそうになったが、どうにか平常心を装う。だが、首筋を流れる冷や汗を止めることができない。
そして、フェイトは言った。
「見ちゃったの。光輝が、仮面ライダーになって戦ってるところ…」
光輝は脳内が一瞬フリーズした。
「…え?」
「私だけじゃなくて、なのは達も…」
光輝にとって最悪の事態は避けられたが、別の意味で最悪の事態が訪れた。
「そ、そうか…見ちゃったんだ…」
「覗き見なんていけないって、わかってたんだけど…でも…」
フェイトは光輝をまっすぐ見つめて尋ねる。
「どうして黙っていたの?」
「…」
今度は光輝が黙った。
数秒間を置いて、光輝は話す。
「巻き込みたくなかったから。」
「そう…なんだ…」
「ごめんね、今まで黙ってて…」
「う、ううん全然!それより…」
「えっ?」
「…ありがとう、守ってくれて……」
フェイトは、笑ってお礼を言った。
彼女の笑顔は、綺麗だった。
光輝も笑顔で言う。
「お礼なんていらないよ。僕は仮面ライダーとして当然の事をしたまでだからね」
このあと、ダンテ達から散々叩かれたのは言うまでもない。
公園。そこで一人の少年がいじめを受け、べそをかいていた。
警察官、葉沼洋一は、それを見ていた。
「あいつらか、いつもあの子をいじめているというやつらは…」
葉沼は手袋を脱ぐ。
「今粛清してやる…」
その下には、生体コネクタがあった。
「粛清を受けるのは貴様の方だ。」
葉沼の後ろから声がかかった。
振り向いてみると、照井と翔太郎がいる。
「照井課長、それに探偵…」
「葉沼刑事、誰よりも正義を愛していたあんたが、どうしてガイアメモリなんかに…」
「わかっていないな探偵…今も愛してるよ。正義を…この街を…」
「だったら何で!」
「ふっ…だからさ。だからこそ私は、ガイアメモリに手を出した!」
葉沼はSと書かれた黄色いガイアメモリを取り出す。
「私はこの力で、全ての悪を排除する!!この天罰の雷で!!」
《SPARK!》
葉沼はガイアメモリ、スパークメモリをコネクタに挿し、大量のボルトが突き出た鉄屑のような怪人、スパーク・ドーパントへ姿を変えた。
「左、奴を倒すぞ。」
「…ああ、止めてやるよ、俺達で…行くぜフィリップ!」
「了解だ。」
鳴海探偵事務所のフィリップが応えた。
《CYCLONE!》
《JOKER!》
《ACCEL!》
「「変身!」」
「変・身!」
《CYCLON/JOKER!》
《ACCEL!》
翔太郎はWサイクロンジョーカーに、照井はアクセルに変身した。
「『さあ、お前の罪を数えろ!』」
「さあ、振り切るぜ!」
それぞれの決め台詞を言った二人は、スパークに突撃する。
「愚か者め!」
スパークは手から大量の電撃を放つ。
「どうだ!近づけまい!」
「ならこれだ!」
《LUNA!》
《TRIGGER!》
《LUNA/TRGGER!》
《ENGINE! JET》
Wはルナトリガーにハーフチェンジして追尾弾を乱射し、アクセルもエンジンブレードにエンジンメモリを装填して衝撃波を放つ。
だが、スパークは全ての攻撃を撃ち落としてしまう。
「無駄だ!天罰の雷の前には全てが無力!」
「くそ!このままじゃジリ貧だ!どうする!?」
『せめて奴の懐に潜り込めれば…』
その時、
《CROSS!》
「変身」
《CROSS!》
「はーーっ!!」
「フッ!」
光輝がクロスに変身し、ドナルドとともにスパークへ死角からの拳を叩き込んだ。
「ぐおぁっ!!」
スパークは地面を転がる。
「お前は…!」
翔太郎はクロスの登場に驚く。
ちなみに、なぜ彼らがここにいるかというと、光輝が葉沼を叩くために、警察に顔のきくドナルドを誘って風都署に行ったところ、もうすでにいない事を知り、昔からよく当たる嫌な予感を頼りにたどり着いたのだ。
「大丈夫ですか!?」
「あとはドナルド達におまかせ!」
「貴様ら!!」
「あらぁっ!」
ドナルドは電撃を食らって吹き飛んだ。
「ドナルド!」
「ははっ!どうだ!」
しかし、ドナルドは何事もなかったかのように立ち上がった。
「ハッハッハッハ☆ドナルドには効かないよ。」
「なんだと!?このっ!」
「あらぁっ!」
ドナルドはまた吹き飛んだ。
「今だ!はあああああああ…はっ!!」
クロスは手からエネルギー弾を放つ。
「おあっ!!」
スパークは吹き飛んだ。ドナルドは再び起き上がり、歩いてくる。
「大丈夫だった?」
「もちろんさぁ♪」
「こいつら一体…」
「気を引き締めろ!まだ終わっていない!」
一同は照井の一言で、スパークを見る。
「なぜだ…なぜなんだ…なぜお前達は!私の邪魔をするんだ!!」
スパークは立ち上がり、自分の思いを叫ぶ。
「私は、風都から悪をなくしたいだけなのに!!」
「…その思想は否定しませんよ。」
クロスは静かに言った。
「でも、殺すだけじゃ何も解決しない!それに、今の基準でこんなことを繰り返していたら、この風都から人が誰もいなくなってしまう!僕は、それを止めに来たんだ!!」
「黙れぇっ!!」
スパークは電撃を放った。
しかし、その電撃がクロスに届くことはなかった。
クロスの目の前に光の柱が出現し、電撃を防いだからだ。
「何!?」
驚くスパーク。
やがて光の柱が消え、一本の剣が姿を現した。すぐそばには、Rと書かれた黒いガイアメモリもある。
「これは…うっ!?」
クロスの頭の中に、イメージのようなものが流れ込んできた。
「…そうか。レクイエムサーベル、レクイエムメモリ。これが僕の、新しい力か…!!」
「何をごちゃごちゃと…死ね!!」
スパークは電撃を放ってくるが、クロスは素早くレクイエムサーベルを手に取り、電撃を弾く。
さらにレクイエムメモリを拾い、レクイエムサーベルの柄のフタを開けて装填し、引き金を引く。
《REQUIEM!CATABILE》
「はあっ!!」
クロスがレクイエムサーベルを突き出し、光線を飛ばす。
「ぐあっ!」
スパークは吹き飛んだ。
「くっ!まだだ!」
スパークは再び電撃を放つが、
《ALLEGRO》
クロスの姿が消えた。
「なっぐあああっ!!」
と思った瞬間、スパークは超高速による連続攻撃を受けた。
さらに、
《TONE》
クロスは高周波と衝撃波を刃に纏わせ、斬りつける。
「ぐおあぁっ!!」
「さあ、暗黒に沈め。」
クロスは引き金を引く。
《REQUIEM・MAXIMUM DRIVE!》
「デスティニーグレイブ!!」
クロスは空間を十字に斬り、エネルギーの斬撃を放った。
「眠れ。深淵の底で」
「ぐおああああああああああ!!!」
スパークは爆発し、スパークメモリが排出され、砕け散った。
葉沼は呻く。
「そんな…私の…正義が…」
光輝は変身を解く。
「行き過ぎた正義は、悪と同じだ。ガイアメモリを手にした時点で、もうあなたは正義じゃなかったんだ。」
葉沼は気絶した。
「…あとはおまかせします。ドナルド、行くよ」
「もちろんさぁ♪」
二人は去ろうとするが、
『待ちたまえ、白宮光輝!』
それをフィリップが止める。
光輝は名乗っていないにもかかわらず、名前を呼ばれたので、立ち止まった。
「…例の検索能力ですか。僕の名前を知っているなら、僕が何者かも知っていますね?」
『ああ…君のことは、もう翔太郎達に話してある。』
「…そうですか。」
「一つだけ聞かせてくれ。」
今度は翔太郎が尋ねてきた。
「何でしょうか?」
「君は、味方なのか?」
翔太郎としては、圧倒的すぎる力を持つ彼とは戦いたくなかったのだ。
光輝は答える。
「味方ですよ。あなた方がこの街を裏切らない限りね…」
光輝とドナルドは、今度こそ去った。
************************************************
次回、
仮面ライダークロス!!
シグナム「私と戦ってくれ!」
?「ママ?」
なのは「少し…頭冷やそうか…」
ドナルド「ドナルドマジック!」
クロス「さあ、暗黒に沈め!!」
第三話
V登場!/白い悪魔の娘?
これが裁きだ!!
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