仮面ライダークロス 第六話 Pの遊戯/父と娘と… |
夜、8時を回った時のことだった。
さて、今日はあと二時間くらいトレーニングしてから寝ようかな、そんなことを考えていると、
プルルル…
電話がかかってきた。
誰だろう?と思ってでてみると、フェイトさんだった。
「もしもし光輝!?」
「フェイトさん?どうしたの、そんなに慌てて…」
「お兄ちゃんが…お兄ちゃんが…!」
フェイトさんの言うお兄ちゃんというのは、クロノ・ハラオウン先生のことだ。
「クロノ先生がどうかしたの?」
「お兄ちゃんが…怪我を…」
「なんだって!?とにかくそっちに行くから、待ってて!」
僕はロイヤルランナーに乗り、フェイトさんの家に向かった。
僕がフェイトさんの家にたどり着くと、ちょうどクロノ先生が救急車で運ばれていくところだった。
「光輝!」
フェイトさんが駆け寄ってくる。
「フェイトさん、一体何があったの?」
「…実は…」
それは、フェイトが自室でくつろいでいる時のことだった。
ピンポ〜ン
突如として鳴り響く呼び鈴。
「フェイト〜、代わりに出てちょうだ〜い!」
「は〜い!」
母リンディの命を受け、フェイトは玄関へ行き、ドアを開けた。
しかし…
「…あれ?」
そこには誰もいない。代わりに、大きな赤い箱が置いてあった。
「?」
フェイトはそれをリビングに持って行き、蓋を開けた。
中に入っていたのは、可愛い西洋人形だった。
「わあ…」
あまりの可愛さに、フェイトは感嘆の声を漏らす。
「母さん、可愛い人形だよ!」
フェイトはキッチンにいるリンディに呼び掛け、再び人形に視線を戻した。
だが…
「…あれ?」
箱の中から人形が消えていた。
「?」
落としたのかと思い、フェイトは机の下などを探してみる。
その時、
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
兄クロノの絶叫が聞こえてきた。
「お兄ちゃん!?」
驚いたフェイトはクロノの元へと急ぐ。
部屋に飛び込んだフェイトは、悲鳴をあげそうになった。
あの人形がいたのだ。
だが、先ほどの可愛さは消え失せ、人形は恐ろしい形相でケタケタ笑いながら、手にしたナイフでクロノの四肢をめった刺しにしている。
フェイトはバルディッシュを取りに行っている暇はないと判断し、インテリアとして飾ってあったバットで人形を殴った。
人形は吹き飛ぶが、すぐ起き上がると、窓を開けて逃げてしまった。
僕は驚く。
「そんなことが…」
「信じてくれるの?」
「信じるに決まってるじゃないか。魔導師や悪魔、ニードレスだっているんだから、それくらいのことが起きたって不思議じゃないよ。」
「光輝…」
「…今夜はもう遅い。明日、ディスクさんから話を聞いてみよう」
「ディスクから?」
「あの人なら何か知ってるかもしれない。だから…」
「…うん」
「…おやすみ、フェイトさん」
「おやすみ、光輝」
僕はフェイトさんの家をあとにした。
翌日、僕らはこの事をディスクさんに話した。
「それは恐らく、呪いの人形ね。」
ダンテが尋ねる。
「呪いの人形?髪が伸びるとかいうあれか?」
「確かにそういう物もあるみたいだけど、私が言ってるのはそれと別の物よ。」
「どういうことだ?」
今度はバージルが尋ねた。
すると、ディスクさんは一冊の本を持ってきた。照山が読み上げる。
「『少女と人形の家』作者は堀之内慶鷹?何だこりゃ?」
「私なりに調べてみた結果、今回と同じような事件がすでに二件発生していることがわかったの。被害にあったのは、いずれもこの本に対して酷評を下している人物…フェイトちゃん。クロノ先生がそういうことをしていた覚えは?」
フェイトさんは考える。
「そういえば、ひどい本を買ったとか、つまらないとか、言ってたような…」
「決まりね。」
ディスクさんの話では、その小説を批判した人のところへ人形が送られてきて、その人を襲うらしい。まさに呪いの人形だ。
「呪いの人形なぁ…」
照山が言った。
その時、銀八先生が入ってきた。
「お前ら席につけー」
そして、ホームルームが始まった。
「悲しいお知らせがあります。クロノ先生が入院しました」
またしても全然悲しくなさそうに言う銀八先生。この人は自分以外どうでもいいんだろうか…
「なんかうわごとで人形人形言ってたんだが、フェイト、お前事情知らねぇか?」
フェイトさんが事情を話して、ディスクさんが捕捉説明をした。
「んな、呪いの人形なんているわけねぇだろ…」
先生の手は震えていた。
「なに先生、もしかして怖いの?」
レディさんが茶化す。
「ば、馬鹿言え!怖くなんかねぇよ。世の中には髪が伸びる人形とか、アナログスティック周りの毛が伸びる人形だってあるんだ。動き回る人形があったっておかしくねぇよ」
おもいっきり下ネタ発言したね。だから僕はツッコんだよ。
「先生、そんなところに毛が生えてる人形はありません。」
「わかんねぇぞ?案外マニアが作るかもしんねぇ。」
「どんなマニアですか。」
その時、僕は悪寒を感じた。見ると、なのはさんがバリアジャケットを纏い、デバイス、レイジングハートを持って立っていた。
「女の子の前でそんなこと言うなんて…」
しかもスイッチが入っている。
先生はうろたえた。
「や、ほんの冗談だからさ、ね、一回落ち着こうか、ね…」
「先生、ちょっとお話しましょうよ…」
「お話しようよ。」
ドナルドまで乗ってきた。
「や、だからさ、一回落ち着こうってば。ドナルドまで乗ってこなくていいから…」
「「お話しようよ。」」
「ハモんな!だから落ち着けって!」
「つい殺っちゃうんだ♪」
「ドナルド!字が違う!字が違うから!」
「ハンバーガーが四個分くらいかな?」
「ごあぁ!!」
ドナルドが材質不明のハンバーガーを四個投げつけた。
先生、地雷踏んじゃったね…
僕はフェイトさんと一緒に帰っていた。本当は部活があるんだけど、あんなことがあったからね。早く帰った方がいいってことで、なのはさんが休ませたんだ。
僕が一緒にいる理由だけど…はやてさんの、
「フェイトちゃんも狙われるかもしれへん。だから、光輝くん一緒に帰ったってな。仮面ライダーの光輝くんがいれば、安全や。」
という発言があったからだ。
「ごめんね、光輝」
「ん?ああいいんだよ。僕は気にしてない」
確かに、フェイトさんが狙われる可能性はゼロじゃない。もしもの時は、僕がフェイトさんを守らないと…
僕がそう考えていた、次の瞬間、
「光輝!!」
フェイトさんが叫んだ。
「どうしたの?」
「あ、あれ…」
フェイトさんが怯えながら指をさした。
見ると、恐ろしい形相をした人形が、ケタケタ笑いながら走っていた。
「な、何だあれ!?」
「間違いない!お兄ちゃんを襲った人形!」
「あれが!?」
僕は驚いた。どうしようか迷っていると、人形を追いかける照井さんと亜樹子さんが見えた。
それを見て僕の決意は固まった。
「僕は人形を追いかける。フェイトさんはここで待ってて」
「私も行く。」
「でも…」
「大丈夫。足手まといにはならない」
「…わかった。」
僕はフェイトさんを連れて人形を追いかけた。
人形は近くのスクラップカー置き場に逃げ込んだ。
照井さんは僕とフェイトさんに驚く。
「君たちは…」
「事情は理解してます。僕にも戦わせて下さい!」
その時、車のクラクションの音が聞こえた。
見ると、人形が車に乗り込み、ケタケタ笑いながらクラクションを鳴らしている。
「所長、下がってくれ。」
「フェイトさん下がって。僕が戦う」
二人は下がる。
〈CROSS!〉
〈ACCEL!〉
「変身」
「変・身!」
〈CROSS!〉
〈ACCEL!〉
僕はクロスに、照井さんはアクセルに変身した。
人形は傘を使ってアクセルを押し、僕達に突っ込でくる。
アクセルはそれをひとっ飛びでかわし、僕は左にサイドロールしてよけた。
人形を乗せた車は壁に激突した。
攻撃に失敗した人形は、車を降りてそのまま車を分解し、そのパーツを投げつけてくる。
「貴様ぁ!」
アクセルは怒って突っ込む。
人形はそれを待っていたかのようにホースを向け、ガスを噴射。
アクセルがもがいているうちに、アクセルの片足にホースを巻き付け、イナバウアーの要領でアクセルの股を通過。ホースを引っ張ってアクセルを引きずり回す。
「やめなさいよ!この化け物人形!」
「照井さんを離して!」
亜樹子さんとフェイトさんが言った瞬間、人形の動きが止まる。そして、人形はその顔を可愛い顔へと変化させて、フェイトさん達を見る。
僕はその時、何か、声のようなものを聞いた気がする。
おっといけない!今がチャンスだね。
僕は手からエネルギー弾を放って人形を吹き飛ばした。
ようやく解放されたアクセルは、エンジンブレードにエンジンメモリを装填、
〈ENGINE! ELECTRIC〉
電撃を放って人形を吹き飛ばした。
人形はそのまま逃げてしまった。
僕は照井さんから話を聞いた。
照井さんの見解によると、あれはドーパントらしい。フェイトさんも亜樹子さんも、あんな小さいドーパントがいるのかって驚いてたけど、ドーパントはメモリによって変身後の姿、超人形態の形状が変わる。
ものすごく大きなドーパントもいれば、人型じゃないドーパントもいる。
まあこれはドナルドから聞いた話であって、僕は大きなドーパントしか見たことがないんだけど。
その後、鳴海探偵事務所に行った僕達は、何やら取り込み中だったフィリップさんの力を借りて、今回の事件の黒幕と思われる存在が、ディスクさんの言っていた堀之内という人だということを突き止めた。
照井さんは堀之内にかまをかけ、堀之内が起こすだろう何らかの行動を待つため、僕達を連れて風都署に向かっている。と、亜樹子さんがついてきていないのに気がついた。
僕達は亜樹子さんのところに戻る。
亜樹子さんの話だと、リコっていう女の子がいたらしい。
確かその子って、堀之内にドーパントにされて、利用されてるっていう、堀之内の娘さんだよね?そんな子が、何でこんなところに?
…まあいいや。とにかく風都署に行こう。
僕達が超常犯罪捜査課に向かっていると、
「どぅああああああああああああああああああああ!!!!」
悲鳴が聞こえてきた。
急いで行ってみると、あの人形が暴れていた。
すでに二人の刑事さんが倒されてて、残っていたのは、なぜかいた翔太郎さんだけ。
人形は照井さんを見るや飛びかかろうとするけど、
「バインド!」
フェイトさんがとっさにバインド魔法をかけて、
「うおりゃああああああああ!!」
亜樹子さんが段ボールを被せて、閉じ込めた。
これで一安心。と思っていたら、ナイフが突き出てきて段ボールを切り始めた。
フェイトさんが言ってた、クロノ先生を大怪我させたっていうナイフだろう。
「逃がすか!」
〈ACCEL!〉
「変・身!」
〈ACCEL!〉
照井さんはアクセルに変身して、逃げ出した人形を追いかける。
「俺達も行くぜフィリップ!」
翔太郎さんもダブルドライバーを装着するけど、なんかフィリップさんが渋ってるみたいで、なかなか変身しない。
でも、
〈CYCLONE/JOKER!〉
なんとかWに変身できた。
〈CROSS!〉
「変身」
〈CROSS!〉
僕もクロスに変身して、W、フェイトさん亜樹子さんと一緒にアクセルを追いかける。
アクセルは人形と対決する。
だが人形はアクセルの攻撃をかわし、顔面に取り付いて叩いたり蹴ったりする。
〈ENGINE! ELECTRIC〉
アクセルは電撃で痺れさせ、人形を引き剥がす。
そこにWとクロスが登場し、Wが攻撃をしかける。
人形はWの攻撃をいなして飛び上がる。
「これで決めるぜ!」
〈TRIGGER!〉
〈CYCLON/TRIGGER!〉
Wはサイクロントリガーにハーフチェンジ。
〈REQUIEM!〉
クロスもレクイエムサーベルにレクイエムメモリを装填。
二人は遠距離攻撃をしかけようとするが、人形がWに蹴りを食らわせ、クロスを飛び越えた。
こちらを向く人形。その手には、Wのトリガーマグナムが握られている。
「何!?」
驚くライダー達。だが人形はお構いなくトリガーマグナムの引き金を引く。
しかし、クロスがいち早く飛び出し、レイブンクロークを盾にしてWとアクセルを守る。
クロスのおかげでダメージは受けないが、このままでは攻撃できない。フェイトが高速移動魔法ソニックムーブを使おうとした時、
「リコちゃんやめて!」
亜樹子が叫んだ。
とたんに人形は攻撃をやめ、亜樹子の方を向く。その顔は、形相ではなく、可愛い顔だった。
「また…」
「?」
その瞬間、亜樹子とクロスは、声のようなものを聞いた気がした。
攻撃が止まった隙を狙ってトリガーマグナムを奪い返したWは、アクセルと共に射撃をしかける。
クロスも我にかえり、レクイエムサーベルのエネルギー照射攻撃を繰り出すが、人形は全ての攻撃をかわし、物陰に逃げ込んだ。
慌てて追いかけるW。
「どこ行った!?」
『翔太郎。スパイダーショックを』
フィリップに言われて、Wはメモリガジェットスパイダーショックを起動。ライブモードに変え、放つ。
「?」
Wが事の成り行きを見守っていると、スパイダーショックがワイヤーを放つ音が聞こえ、ほどなくして人形をワイヤーで絡め取ったスパイダーショックが、大量の虫と一緒に出てきた。
亜樹子は先ほど起きた現象が気になり、人形に近寄ろうとする。フェイトも、いざとなったらすぐ動けるように、亜樹子をかばう。
次の瞬間、人形がナイフを取り出した。
「「!!」」
亜樹子は立ち止まり、フェイトは亜樹子の盾になろうとする。
Wとクロスもそれぞれの武器を構えるが、
「俺がやる。」
〈ACCELE・MAXIMUM
DRIVE!〉
アクセルが進み出て、マキシマムの発動体勢に入る。
「!照井さん!」
「竜くん!だめ!!」
ドーパントとはいえ、相手は子供である。クロスと亜樹子は慌てて制止の声をかけるが、
「安心しろ。メモリブレイクだ!」
アクセルは意に介さず、
「はあっ!!!」
飛びかかってきた人形に必殺の蹴り、アクセルグランツァーを叩き込んだ。
人形は吹き飛び、亜樹子が駆け寄る。
「リコちゃん!!」
だが人形は応えず、形相は消えており、可愛い顔になっていた。
フェイトはあまりの状況に動けずにいる。
フィリップは驚いていた。
『メモリが排出されない!それは堀之内の娘じゃない。ただの人形だ』
翔太郎はフィリップの発言に驚く。
「マジかよ!?だとしたら、さっきまで何でペコペコ動き回ってたんだ!?」
「簡単なことですよ。犯人は人形のドーパントではなく、人形を操るドーパントだということです。」
クロスがそう言った瞬間、人形の身体に無数の糸が現れた。
「そこか!」
〈LUNA!〉
〈LUNA/TRIGGER!〉
Wはルナトリガーにハーフチェンジし、糸の元をたどって追尾弾を撃ち込む。
「ぐああああああ!!」
人形を操っていたドーパント、パペティアー・ドーパントが弾き出されてきた。
「こいつが人形使いか…」
Wは追撃をしかけようとするが、
「待て!もうやめてくれ!」
パペティアーはそう言ってメモリを抜く。
パペティアーの正体は堀之内だった。
亜樹子は人形を抱きしめる。
「よかった…リコちゃんが犯人じゃなくて…」
その時、
「お姉ちゃん。」
「!!」
「人形の声を聞いて」
人形がしゃべった。
クロスは驚く。
「翔太郎さんフィリップさん照井さん!今の声…」
だが、
「あ?何言ってんだ?」
『いきなりどうしたんだい?』
「声、だと?」
彼らの反応はこうだった。
(聞こえてなかったのか?)
クロスは錯覚かと思ったが、
「人形がしゃべってる!」
という亜樹子の発言によって、自分が正常であると知る。
(亜紀子さんには聞こえていた?)
考えている間に、亜樹子は堀之内に詰め寄る。
「どうして娘さんの人形を復讐に使うの!?」
「君に何がわかる!?」
話はどんどん過激になっていき、ついに亜樹子は決定的な言葉を口にしてしまう。
「あなた、自分の娘を愛してないんでしょ!?」
堀之内は完全にキレる。
「貴様…!」
〈PUPPETEER!〉
「いい加減にしろ!!」
堀之内はパペティアーに変身し、亜樹子に襲いかかった。
「!フォトンランサー、ファイア!」
だが、フェイトの魔法とWの追尾弾によってパペティアーはダメージを受ける。
このまま一気にとどめを、誰もがそう思った時、
〈WEATHER!〉
突然暗雲が太陽を隠し、深い霧が立ち込めてパペティアーが見えなくなる。
霧が晴れた時、パペティアーの姿はなかった。
クロスは言う。
「逃げられたか…でも今の霧は一体…」
翌日、テメンニグル学園。
「珍しいな。お前がしくじるとは」
事情を聞いたバージルが言った。
「うん…それにしても、リコちゃん大丈夫かな…」
「リコ?それって誰?」
トリッシュが尋ねる。
「堀之内の娘さんだよ。」
「あら、それは妙ね。」
「ディスクさん?」
「堀之内の娘の名前は、リコじゃなくて里香子よ。それに、彼女は一ヶ月前に亡くなっているわ。」
「えっ!?」
光輝は驚いた。ディスクはさらに続ける。
「リコというのも、確か彼女が大切にしていた人形の名前だったはず…」
「そんな…」
光輝はショックを受けた。だがすぐに考える。
「…もしかして、人形が亡くなった娘さんの姿で会いに来たのか?それなら、あの人形がしゃべったことにも説明がつくけど…」
ダンテが反応する。
「おいちょっと待て。人形がしゃべった?」
「うん。『人形の声を聞いて』って」
照山が青くなる。
「オイオイ、マジで呪いの人形かよ!?」
「仮にそうだとして、その人形は何がしたい?」
バージルが言った。
「…わからない。でも、何かを伝えようとしてるのは確かだよ。」
今日も早退命令を言い渡されたフェイトは、帰路についていた。だが、今回は光輝がいない。彼女が断ったのだ。
光輝に守ってもらえるのは嬉しい。しかし、自分のせいで光輝が危険に晒されることだけは嫌だった。
だから断った。自分の身は自分で守れると。
(ごめんね光輝…)
フェイトは心の中で光輝に謝る。
その時、
目の前をゴミ収集車と、自転車に乗った亜樹子が猛スピードで通過した。
「…えっ!?」
何事かと思ったフェイトはバルディッシュを起動し、バリアジャケットを纏って飛ぶ。
亜樹子に追いついたフェイトは尋ねる。
「どうしたんですか!?」
「あの中にリコちゃんが…私の依頼人が!」
照山は帰路についていた。と、目の前からバイクに乗った誰かが来る。
「光輝?」
それは、先に帰宅したはずの光輝だった。
照山はすれ違いざまに見た。光輝の焦燥に駆られた顔を。
光輝は照山とすれ違ったことなど頭になく、
(急げ!急げ!)
ただ急いでいた。
(嫌な予感がするんだ……!)
亜樹子とフェイトは係員の制止を振り切り、ゴミの中から人形、リコを探し出す。
亜樹子はリコを抱きしめた。
すると…
「お父さんに、泣かないでって…」
リコがしゃべった。
「うん。伝えるよ…」
亜樹子はさらにリコを抱きしめた。事情を聞いていたフェイトも、安堵の笑みを浮かべる。
その時、
「見つけたぞ!鳴海亜樹子!」
パペティアーが現れた。
〈CROSS!〉
「変身」
〈CROSS!〉
光輝はクロスに変身して、ロイヤルランナーのスピードを上げた。
亜樹子は質問する。
「どうしてこんなことを!?」
「私と私の娘を侮辱したからだ!私は、里香子との思い出を小説に書いた。そうすれば、娘は永遠に生き続ける。
そう思ったからだ!なのに奴らは小説を貶し、あろうことか私が娘を愛していないなどと言った!お前もだ!!」
フェイトはついに黙っていられなくなった。
「だからと言ってこんなことをしても、娘さんは喜びません!」
亜樹子も続く。
「そうです!リコちゃんだって…」
「その人形のことか!?」
「そうです!この子はあなたを心配してる!」
「ふざけるな!そんな物、ただの人形だ!」
怒るパペティアーは手から糸を出す。
「あうっ!」
「亜樹子さん!きゃっ!!」
糸は二人に絡み付いて自由を奪う。
「どうだ!自分が操り人形になった気分は!!」
パペティアーは糸を操り、二人を持ち上げる。
亜樹子はパペティアーに言う。
「お願い!人形の声を聞いて!」
「黙れ黙れ黙れ!!お前の声は耳障りだ!!そして金髪の女!お前も死ね!!」
パペティアーは二人をコンクリートの地面に叩きつけようと腕を振りかぶる。
(光輝!)
フェイトが目をつぶる。
次の瞬間、
パペティアーにエネルギー弾が飛んできて直撃した。
「ぐああああああ!!!」
パペティアーは吹き飛ぶ。
パペティアーがダメージを受けたことによって力を失った糸は、二人を解放する。
そして、落ちてきた二人のうち亜樹子をWが、フェイトをクロスが抱き止める。
W、アクセル、クロスの三ライダーが到着したのだ。
「こ、光輝!?」
「間に合ってよかった。大丈夫フェイトさん?」
「う、うん…/////」
フェイトは自分がお姫様抱っこされているのに気付き、顔を赤くする。しかし、いつまでもこうしているわけにはいかないので、すぐに降りた(フェイトとしては名残惜しかったが)。
「どいつもこいつも、私をコケにしやがって!」
パペティアーはラッパのようなものを取り出すと、それを吹き鳴らして超音波を発生させる。
そして、一同が苦しんでいる間に、パペティアーは再び糸を放って亜樹子を柱に縛り付けた。しかも口まで塞ぐという徹底ぶりだ。
パペティアーはさらに糸を放ち、アクセルとフェイトを絡め取って操る。
自我の消えた二人はWとクロスに攻撃をしかける。
「やめろ照井!」
「フェイトさん!やめるんだ!」
『無駄だ!パペティアーが操っている限り、二人は戦い続ける!』
「だったら!」
〈METALE!〉
〈CYCLONE/METALE!〉
Wはサイクロンメタルにハーフチェンジ。
「こっちも!」
〈REQUIEM! ALLEGRO〉
クロスはレクイエムサーベルにレクイエムメモリを装填し、高速移動を発動。それぞれパペティアーに向かう。
だが、アクセルはエンジンブレードにエンジンメモリを装填、スチーム、ジェット、エレクトリックの三機能を使い、Wをパペティアーに近付けない。
フェイトもソニックムーブでクロスに追いつき、フォトンランサーやプラズマスマッシャーなどの魔法で攻める。フェイトの場合はバルディッシュまで操られているため、魔法が使えるのだ。
クロスは全ての攻撃をレイブンクロークで防ぐ。
「さすがフェイトさん。操られてるのに隙がない!」
「感心してる場合か!どうする!?」
『翔太郎。あれを使おう。』
「あれか…」
「翔太郎さんあれって?」
「こいつだ。」
〈FROG!〉
Wは蛙型メモリガジェットフロッグポットを起動させ、放った。
パペティアーがさらに二人を操ろうとした、その時、
「やめてよ。今そんな気分じゃないし」
「!!」
亜樹子の声が聞こえた。
パペティアーは驚いて振り向くが、
「む!むーむー!」
亜樹子はしゃべっていない。では誰が…そう思った時、
「やめてよ。今そんな気分じゃないし。やめてよ。今そんな気分じゃないし」
足元から亜樹子の声が聞こえた。
見ると、フロッグポットが亜樹子の声でしゃべり続けている。
「これは!?」
驚くパペティアー。
その時、
「うおりゃああああああああああああああああ!!!」
「!!」
「リトルボーイ!!」
照山が現れ、パペティアーに燃える拳を食らわせた。
「ぐああああああ!!」
パペティアーは地を転がる。
その瞬間に糸の力が消え、糸に捕らわれていた三人は解放された。
「よくも好き勝手操ってくれたな!」
怒る照井はパペティアーに斬りかかる。
「照山!来てくれたの!?」
「ちょっと心配してな。さっさと決めちまえ!」
「ああ!」
〈REQUIEM・MAXIMUM DRIVE!〉
「『さあ、お前の罪を数えろ!』」
〈METALE・MAXIMUM DRIVE!〉
二人は必殺技を発動し、
「デスティニーグレイブ!!」
「『メタルツイスター!!』」
クロスが十字斬りを食らわせたところへWが風を纏ったメタルシャフトを回転しながら叩き込み、
「眠れ、深淵の底で」
「ぐああああああああああああ!!!!!」
メモリブレイクした。
元の姿に戻った堀之内は言った。
「お前達に私の苦しみはわからん。」
堀之内は写真を取り出す。
「全て失った…妻も…娘も…」
その写真には、亡き妻と娘が写っていた。
「もう、私を愛してくれる者はいない…」
「…リコちゃんがいます。」
堀之内は顔を上げる。
「リコちゃんが言ってました。お父さん泣かないで、って」
亜樹子はリコを手渡す。
堀之内はリコを抱きしめ、その頭をなでる。
「人は時として、十字架を背負います。」
クロスは堀之内に言う。
「それはとても重くて、苦しい。でも、とても大切なものなんです。だから…」
堀之内はクロスを見る。
「手放さないで。あなたにとっての十字架を…」
それを聞いた堀之内は涙を流しながら頷いた。
その時、
「お姉ちゃん、ありがとう。」
声が聞こえた。
亜樹子がそこを見ると、亡き里香子の姿をしたリコが立っていた。
「家族、か…」
僕は呟いた。僕にも家族がいた。とても、とても幸せだったよ。
…一年前のあの日までは。
いつか奴と、僕の両親を殺したあのドーパントと戦う日が必ず来る。
…勝ってみせるさ。
絶対に…
そういえば、僕が聞いたあの声は本当にリコちゃんの声だったのかな?
だとしたら、何で翔太郎さん達には聞こえなかったんだろう?
それから、あの時立ち込めてきた霧は何だったんだ?
もしかしてドーパントの仕業?でも何で堀之内を助けるような真似を?
…嫌な予感がする…
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次回、
仮面ライダークロス!!
ダンテ「両親の仇に会ったらどうするんだ?」
ティアナ「あれが、照井さんの両親の仇…」
アクセル「今こそ呪われた過去を、振り切るぜ!」
クロス「許さないぞ、井坂深紅郎!」
第七話
Dが見ていた/決めろ!トリプルマキシマム
これが裁きだ!!
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