超次元ゲイムネプテューヌ Original Generation Re:master 第10話 |
眼前に広がる肥沃な緑の大地。
ラステイションで鍵の欠片を入手した一行は次なる大地、リーンボックスへと足を向けていた。
雄大なる緑の大地と謳われるだけあって、やはりここは緑と自然に溢れた土地が広がっており、以前訪れたラステイションとは比べられないほどに空気は澄みきっている。
頭上では燦然と太陽が輝き、テラの額から、頭皮からうっすらと汗を覗かせる。
まあ、それは単にテラが暑苦しい格好をしている所為もあるのだが、同じような重装備に身を固めるアイエフは表情一つ変えず、平然としている。
「えーと、ここは?」
ネプテューヌの問いかけにコンパは答える。
「ここは雄大なる緑の大地『リーンボックス』ですぅ。守護女神グリーンハート様が治める緑豊かなとっても美しい場所ですぅ」
「それは確かに見てわかるけどさー……」
ネプテューヌはキョロキョロと周りを見る。
街中であるというのにまばらに群生する植物を見てネプテューヌは漏らす。
「なんか、手入れされてない街みたい」
「ねぷ子、ラステイションでのこともあるんだからもう少し控えてくれ……」
果たしてそのような口頭注意だけで押しとどまるような少女ではないのだが、最早テンション上げて突っ込むような事態でもないためにテラはげんなりとした口調で呟く。
「なんていうかね? リーンボックスはプラネテューヌやラステイションに比べて工学技術とかそういうのには手を出していないの。
自然を大事にするし、それに見合った生活スタイルを取る。だからこうやって中世って感じがするでしょ?」
確かに言われてみればゲーム等でよく見るような中世的な町並みが広がり、いかにも心の癒しのようなそんな雰囲気を醸し出している。
「確かに、他と比べてだいぶ空気が綺麗な感じがするな」
テラはすぅっと深呼吸をして、新鮮な空気を肺に溜め込む。
今までラステイションの空気が空気であったためにポイント2倍セールっぽく綺麗度が増しているような気さえする。
「だから、その点で言えばリーンボックスは他の大陸に比べて観光業なんかが盛んなの。各地からも人も沢山訪れるから国際交友なんかも広いわね」
「確かに他に比べればだいぶウェルカムな感じがするかもな」
今までは来訪人に対し、警戒とまではいかずもどこかギスギスとした雰囲気があったのだが、ここリーンボックスはそう言ったモノは一切無く、道行く人々はこちらを見ればニコリと微笑み挨拶を交わしてくるほどである。
☆ ☆ ☆
「モンスターのことはとりあえず協会に聞けばいいんだよね。えーと……すいませーん!」
ネプテューヌは協会の受付に手を掛けて奥に向かって大声を上げる。
「場所を弁えろ。迷惑だろが」
テラはパンとネプテューヌの後頭部を叩き、口をもごもごと塞ぐ。
「――ぷはっ。誰か強いモンスターがいるところ知りませんかー?」
ネプテューヌは自力で脱出して奥に向かって少々音量を小さめにして声を掛ける。
「……! えぇと、他の大陸の方がいったいどんなご用件でしょうか?」
出てきたのは年若の女性。
「ええ! なんで私達が他の大陸から来たって分かるの? そんなに浮いてるかな?」
ネプテューヌは自分と周りを何度も見直している。
その行為自体がもう浮きに浮きまくっているのだが。
「いいえ、そんなことは。私も他の大陸から移ってきたばかりでそんな気がしただけです。
私はルウィーから参りました、宣教師のコンペルサシオンです。女神様の広報活動を行っております」
ネプテューヌはコンペルサシオンの長々とした説明に「へー」と声を漏らす。
恐らく大半は右から左に受け流しているのであろうが。……つーか懐かしいな、コレ。
「それより、強いモンスターがいそうな場所教えて! 私達が纏めて倒してきてあげるから!」
「そうですか……それは、どのような目的で?」
女性がそう聞き返したところで奥から強面の中年男性が姿を現す。
「宣教師殿の手を煩わせることもありますまい……。
我が協会に御用であるならば私がお話しいたしましょう。
どうも、教院側の今日院長を務めさせていただいております、イヴォワールです」
男性、イヴォワールはペコリと恭しく一礼する。
強面に少々ビビリながらもコンパはおずおずと挙手する。
「えと……モンスターさんがいる場所を教えて貰いたいです」
「ああ、観光でございますか? モンスターの分布については詳細な地図をお渡ししておきましょう」
イヴォワールはごぞごそと棚を漁り、一枚の地図を広げる。
「こちらの色の付いた場所が大体のモンスターの分布となっておりますので……」
「へぇ、随分と詳細な地図じゃないか。ここって結構親切だな」
テラが協会の対応に感心する。
「まあ、観光が名物なだけに観光者の方々の安全を少しでもお守りするのがこちらの義務だと思いましてね……」
イヴォワールはそう言って笑う。
テラは渡された地図に簡単に目を通す。
が、何やら面倒くさいのである。
「なあ、教院長。これってモンスターは何処のが強いとかそういう類の情報はないのか?
あるなら、そっちの方が助かるんだが……」
「……と、言いますと?」
「私達、モンスター退治が目的なの。それも強いモンスターがね」
アイエフの言葉にイヴォワールは何やら訝しむような目付きになる。
「いえいえ、貴女達では危ないですよ。やめておいた方がいい」
「悪いが、これでも戦闘には慣れてるし問題ない」
イヴォワールはやれやれと言う風に肩をすくめる。
やはり大人としてか、このような子供の一団にそのようなモノを任せてよいのモノかと苦悩しているのだろうか。
「人は見かけによらない、と言いますか……。分かりました、傭兵向けの分布調査票をお渡ししましょう」
イヴォワールは別の引き出しから別の新しい地図を机に広げる。
そこには先程のモノよりもより細かい情報が明記されている。
「いずれ正式に仕事を頼むときもあるでしょう。
――やはりあの宣教師の行った通りか……?」
「……? どういう意味?」
「あ、いいえ。こちらの話ですので。それではどうぞ、お気を付けて」
イヴォワールはペコリと一礼して、奥の部屋へ消えていく。
テラはそれを少々訝しんで見る。
「やけにあっさり渡してくれたな」
「そうね。まあ、折角だし有効活用しなきゃ」
アイエフはテラから地図を受け取り、できるだけ推奨レベルが高い場所を幾つかチョイスする。
「定期的に確認する必要があるわね。目新しい情報の幾つか出るかもしれないし」
アイエフは掲示板に張り出されるクエストの申請用紙に視線を移す。
*
「如何でしたか?」
コンペルサシオンは椅子に座り、コーヒーを啜る。
「全く、あのような子供達が数多くのモンスターを退治してきた百戦錬磨の戦士とは思わなんだがね」
イヴォワールは不機嫌そうに近くの壁にもたれ掛かる。
「ラステイションで噂になっておりましたよ。それはそれは恐ろしい、鬼気迫るモノがあるとね……」
コンペルサシオンはそう言って背もたれに深く体重を掛ける。
「それに、あの娘は――」
‡
「イストワール!!」
女性の声が響く。
一帯には不気味なほどの静寂が鎮座しており、ヒールの音と女性の声のみがそこを支配している。
「貴様か! 神共を下界に呼んだのは……!」
どこからともなく女性に声が振りかかる。
「……今の私に遠くはなれた神界へ呼びかける力などありません。封印したあなたがいちばん分かっているはずです。
彼女たちは、私が呼んだのではなく自分達の意志で降りてきたのです」
女性はフンと鼻を鳴らし、腕を組む。
「神共がなんの理由もなく下界に干渉することは神界の理によって禁止とされている。下界と神界の行き来も自由ではない。
定期的な視察、もしくは不可抗力で誰かが落ちでもしない限り、下界に降りるなど認められん!!」
女性は近くの壁を拳で殴りつける。
しばらくの静寂で女性は口を開く。
「本来の神の5分の一(・・・・)程度の権限しか持たない連中にその理を曲げることなど出来ない!
つまり、貴様が招く以外に有り得んのだ!」
「……貴女は忘れています」
「何をだ」
女性はイストワールの言葉に眉を寄せる。
「遥か昔に私達がその幕を上げているのです」
「……なるほどな」
女性は溜息を吐き、壁にもたれていた身体を持ち上げる。
「それに、もし彼女たちを招いたものがあるとすれば……、
それは私にさえも左右できない運命です!」
イストワールの言葉に女性は少々気圧されつつも、すぐに憤怒を交えた表情になり、ガツンと近くを転がっていた石片を蹴りつける。
「お前に左右できないものなどあるものか! お前は世界そのもの……世界の全てだ!」
「……確かに、この世界の全ては史書に納められた記述であり、史書は世界と同一です。
しかし、だからといって決して自由になんて出来ないのです」
イストワールはそこまで言って大きく息をはき出す。
「人や神と同じ、自分自身だからと言って思い通りに出来るというわけではない……!」
女性はしばらく呆然としていたが、すぐに余裕めいた表情に戻る。
「確かにそうだ。自分ほど思い通りにならないものはない。
しかし、お前は違う。お前は……世界を変える力を持っている。世界を変える意志を持っている。私の考えていることが分かるか?」
イストワールはしばしの無言の後に力なく声を上げる。
「いいえ。史書とは事実を記述しただけであり、心の中までは記されていません」
「そうだな……、だがそうでなくともお前には分からぬさ。
それは、お前が私と同じ考えを抱く必要がないからだ。世界を滅ぼせば、この歯がゆさともお別れだ!」
女性はそう言って高笑いする。
そして、ゆっくりとその場を去り、再び静寂がそこに鎮座する――。
‡
「――っ!」
テラは目を覚ます。
悪夢。
否、これは、現実? 未来?
しかし、そう考えている場合ではない。
「イストワール……?」
『ダメー! 世界を滅ぼすなんて絶対にさせな―――い!! いだ!』
隣室から聞き覚えのある少女の声がこだます。
朝から元気だな、とテラは思ったが果たして彼が寝惚けているのかはたまたは天然に成り下がったのかは分からないが、とりあえず言えるのは私が天然を決して差別していないと言うことだけである。
テラはごそごそとベッドから這い上がり、壁掛け時計に目を移す。
時刻は既に7時を指しており、窓から若干射している太陽光も心地よい感じになっている。
「なんつー夢だ……」
テラはベッドに腰掛けてぎゅぅと額を抑える。
「コンパー?」
アイエフが扉を勢いよく開く。
「ぅえっ!?」
自分の世界に入っていたテラはその声に驚きを隠せず、変な声を上げる。
「あれ、間違えた?」
アイエフは扉の前で小首を傾げる。
「ゴメン、間違えた」
「いや、俺も起きたところだし」
テラはボリボリと後ろ頭を掻いてベッドから立ち上がる。
そのままアイエフと共に隣室へと向かう。
「コンパは一緒じゃないのか?」
「あー、なんか変に気をつかわせちゃったみたい。私、物音がすると眠れないタチでさ」
「あー……それでねぷ子の部屋にいる、と」
アイエフはネプテューヌとコンパがいると思われる部屋にドアノブをきゅっと回し、入室する。
「二人とも起きた? こんぱ、ゴメンね、変に気ィ使わせちゃって。
今日からは一緒でも大丈夫――って何コレ」
アイエフが部屋の中を見て変な顔をした。
果たして何が起こっているのか全く分からないテラはどれどれと内部をのぞき込む。
衣服を盛大に乱しに乱しまくった二人が何やらベッドの上で暴れ回ってあはんいやんで最早えっちな格闘技を見ているみたいだぜぃ状態である。
「……おあよー」
舌足らずの声でネプテューヌはそう告げる。
さっきまで暴れ回っていた形跡があるのにもうすっかりお眠りモードかいなー! とかツッコミたい気分になったのは秘密である。
「とりあえず助けて欲しいですー……」
ネプテューヌのその華奢な身体の何処にそんな力があるんだというような力で抱きしめられているコンパが悲痛な声を上げてようやく二人は正気に戻り、なんとかコンパを救出した。
「……くかー」
「起きろー」
ぺしぺしとネプテューヌの頬を軽く叩いてテラがそう声を掛けるが「うーん、もう食べれないー」とか定番の寝言を呟きながらじゅるじゅるとヨダレをたらしてなんか全体的に汚いのである。
手持ちのタオルでそれを軽く拭ってやってテラはよっこいしょーとネプテューヌの傍らに座り込む。
「……」
「……いざ、発動! スクリューパーンチ!!」
ネプテューヌがなにやら変な技名を叫んでとくにスクリューもされていないパンチを上に繰り出してそれを見ていたテラの顎にクリティカル補正で入った。
――変な朝だった。
と、テラは言っていた。
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