ISジャーナリスト戦記 CHAPTER12 知能疾走
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「・・・う〜む」

現在の時刻は入学式翌日の朝八時より僅かに少し前。一年生の寮内にある食堂にて俺は朝食にありついていた。勿論同室の箒も伴ってである。

耐えるとか耐えられないとかそういう問題じゃないのはわかっているが自分以外の男性がいない何処へ行っても女性だらけの環境はやはり落ち着かない。

「どうした、一夏」

「いや・・・案外生活する環境が変化すると適応するのって難しいんだなって思っただけだ」

よく『自分の枕でないと眠れないっ!』って言う人がいるけど、自分も似たようなものかと納得させられる。そんなことを考えながら俺はこんがりと焼けたトーストに熱々のベーコンエッグをのせて頬張った。

ちなみに他のおかずを先につまんだが自分で作ったものよりも段違いに美味い。腕の良い料理人でも雇っているんだろうか、金かけてんなー。

「慣れるしかないだろう。人間、同じ場所にずっといて生活しているわけではないのだからな」

「そりゃそうだけどな、『はい、そうですか』と言って慣れるもんじゃないんだよ。こちとら、わからないことだらけで一つ一つ問題を処理するのに手間がかかってしょうがない」

今までの人生がノーマル(そうとは言い難いが)だとしたら、いきなりルナティックモードに突入したもんだよ。初見殺しですか?

精神的にも肉体的にも余裕がないことに定評のある織斑一夏さん、なんて影で絶対に言われたきゃねーぞ、コノヤロー・・・などと脳内で不満を垂れ流していたら前日で若干慣れてしまった光景が再び視界に入る。

「ねえねえ、彼が噂の男子だって〜」

「千冬お姉様の弟って聞いたわよ」

「へー、姉弟揃ってIS操縦者ねぇ・・・やっぱり彼も強いのかな?」

はぁ・・・こればっかりはある程度落ち着くまで止まらないんだろうな。俺がとやかく言ったって今は止まりはしない。諦めて割り切ろう。

「鬘かつらをつけて、その上からゴスロリ服・・・・・・じゅるり」

「そして、縛られて身動きが取れない彼はされるがままに女王様気質な女の子のオモチャになるわけね」

「でも物足りないわ。どうせなら・・・・・・助手よ、例の性転換薬は?」

「開発はまだ10%にも至っていません。もう暫くお待ち下さい」

「漫研は何時でもスタンバっているわよ!」

「・・・・・・」

今のは絶対空耳です、そうであって欲しい。IS学園にド変態な女子がいるわけがない。間違っても俺に変なことをする馬鹿はいないはずだ。千冬姉にする馬鹿はいても。

必死の自己暗示で現実逃避してさっきの謎光景はなかったことにする。・・・よし、俺は何にも見なかった。それで良し。

「お、織斑くん、隣いいかなっ?」

「ん?」

と、ここでついに勇気を振り絞って声をかけてくれた第一村人・・・もとい、第一クラスメイト(箒以外の)が出現した。しかも、三名もである。朝食のトレーを持っている限りどうやら食事を共にしたいようだ。断る理由がないので俺はOKの意思を示した。

「ああ、別にいいけど」

すると途端に安堵の表情に声をかけてきた女子はなり溜息を漏らした。背後の二人はそれぞれガッツポーズをして喜びを露わにする。そしてその様子を見ていた周囲の女子達はざわざわと何やら騒ぎ始めた。

「ああっ!!私も早く声をかけておけばよかった・・・・・・」

「まだ二日目、まだ二日目よ。大丈夫、まだ焦るような段階じゃないわ」

「昨日のうちに部屋に押しかけた子もいたらしいね〜」

「な、何だって!?それは本当かい!?」

ええ、本当です。一年は一桁とそこそこ少なかったけれど二・三年生は平気で二桁突入してました。名前の方ははっきり言ってほぼ忘れましたよ、風呂上がりでそれどころじゃなかったしな。

今回は新たに三人の名前を覚える羽目にはなったがクラスメイトだからまだいいと割り切ることにする。三人は打ち合わせ済みなのか流れるような動きで空いていた席へと座った。

「うわっ、織斑くんって朝は結構食べるんだー」

「お、男の子だねっ」

「まあ育ち盛りだからな。よく食べてよく運動する、それが俺流の健康の秘訣だ」

中学時代の運動量が半端なかった故に食べまくって胃が大きくなったからという理由もある。一日を始めるにあたって朝食でのエネルギー充填は欠かせないのだ。夜に関しては千冬姉同様少食だが。

「ていうかさ、女子って本当にそれだけしか食べないで平気なのか?」

三人ともメニューは違えど「飲み物、サラダ(シーフードもしくは生ハムなど入ってる)、トースト一枚」といかにも必要最低限としか伝わってこない内容だ。

「わ、私たちは・・・ねえ?」

「う、うんっ。平気かなっ?」

疑問形をつけているようでは説得力がないぞ。それと栄養バランスには気を使ったほうがいい。ダイエットとか気にする年頃なのはわかるけれどただ減らせばいいって問題じゃないんだ。特に女の子は体が成長中の時期にカルシウムを十分摂取していないと将来骨が脆くなって困るらしいぜ。

「お菓子よく食べるし〜」

一拍遅れて袖が長すぎて手がまるで見えないのほほんとした女子が発言した。・・・適度に糖分やら取るのはいいけど間食はしすぎるなよ、後で成長しなくなったときに酷く後悔することになる。

喋っている間にもペロリと朝食を食べ終え一足先に食器を片付けると時刻は既に八時二十分近くをまわっていた。遅刻することは俺にとって許されざる行為なので席に座っていた女子に断ってから荷物を持って出口へと向かう。その時ちょうどすれ違った千冬姉は歩かずに走れと言うと間髪入れずに未だに食べていた寮の女子達へ向けて怒号を浴びせかけた。

「いつまで食べている!食事は迅速かつ効率よく取れ!遅刻すればグラウンド十周だ、わかったか!」

『は、はいっ!!』

・・・おー、走っている途中で気になって振り向いてみたら訓練されたような動きで女子たちが無言で箸やらスプーンやらを動かしている。元が少ない分すぐに食器を返している生徒も既にいるようだ。IS学園は早食いが基本などと勝手に納得した俺はクラス代表決定戦の為にも今日も一日頑張ろうと気合を入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――結論、気合は入れようによっては逆効果に繋がる。

二時間目が終わった時点で、俺は早くも虚ろな瞳をして物言わぬ只の学習マシーンと化していた。無表情で授業内容をノートに書き写す動作は自然と周りに人を寄せ付けないオーラを放つばかりである。

「・・・・・・」

別に内容を理解出来ていないわけではない。予習もしっかりしたし復習だって根気良く取り組んだ。だから単語の意味も理論も大体は理解できている。しかし、問題なのは実技で理解したそれを活かせるかだ。言葉でわかっていても行動で実行できなければまるで意味がない。

試験の時のような感覚で毛で動かすなんて出来ないのは承知だ。今は自分がどう受け止めて体に覚え込ませるかが第一の課題なのだ。

「というわけで、ISは宇宙での作業を想定して作られているので、操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアで包んでいます。また、生体機能も補助する役割があり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。これには心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量、脳内エンドルフィンなどがあげられ――――」

「先生、それって大丈夫なんですか? なんか、体の中をいじられてるみたいでちょっと怖いんですけども・・・」

山田先生が説明したISの基本知識に対してクラスメイトの一人がやや不安げな面持ちで質問する。実際、ISを動かしたときに生じる独特かつ奇妙な一体感はすぐには慣れられそうにはない。個人によっては不安を与えるのだろう。

「そんなに難しく考える必要はありませんよ。そうですね、例えばみなさんはブラジャーをしていますよね。あれはサポートこそすれ、それで人体に悪影響が出るということはないわけです。もちろん、自分にあったサイズのものを選ばないと、形崩れしてしまいますが・・・・・・あっ」

ふと、そこで山田先生と目と目が合う。話していて先生も気づいたのだろう・・・ここにはブラジャーなどしていない、そもそもする必要のない男という生き物がいるということを。胸の大きさに合ったモノを選ばないとダメだっていうのは一応ニュースとかで知ってはいましたけどもっと配慮して欲しいですな、正直朝から恥ずかしいです。

「え、えっと、いや、その、お、織斑君はしていませんよね。わ、わからないですよね、この例え。あは、あははは・・・・・・」

もう気にしていませんから早くこの微妙な空気をどうにかして授業を進めてくだされ。女子が胸を腕組みで隠して顔を赤らめているこの状況を私は覆すことなど出来ません。どさくさに紛れて胸を強調しアピールする変態が現れる前に早く対処を。

「んんっ!・・・山田先生、授業の続きを」

「は、はいっ!」

桃色の空気に包まれかけた教室を打開すべく匠は立ち上がった。すると、なんということでしょう・・・瞬く間に教室内は元のようにとはいかないものの授業に相応しい空気へと生まれ変わりました。

千冬姉に促され山田先生は教科書を落としそうになりつつも真面目に授業を再開した。

「そ、それともう一つ大事なことは、ISにも意識と似たようなものがあり、お互いの対話―――つ、つまり一緒に過ごした時間でわかり合うというか、ええと、操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします」

成程ね、ISを操縦すると段々とデータという名の経験値が溜まってカスタマイズされていくわけか。努力の積み重ねって大事だな。

「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せることになるわけです。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識してください」

パートナーと聞いて、すかさず女子は反応し挙手をする。

「先生ー、それって彼氏彼女のような感じですかー?」

「そっ、それは、その・・・どうでしょう。私には経験がないのでわかりませんが・・・・・・」

・・・へ〜、彼氏いない歴=年齢なんだ。かく言う俺もそうなんだが容姿的に山田先生は1回ぐらい恋愛経験あると思っていた。

赤面して俯く先生を尻目にクラスの女子はきゃいきゃいと男女について雑談を始める。何と言ったらいいのか・・・完全に『女子校』の空気だわ、これ。元から女子校だけどさ。

女子特有の匂いがあちこちで充満する環境で俺はまともに暮らしていけるのだろうかと今更ながら心配になってきた。耐性がなければ興奮のあまり鼻血でも吹き出しそうである。

「・・・・・・・・・」

「な、何か?」

「あっ・・・い、いえ。何でもないですよ〜?」

甘い空気に取り込まれないように進まない授業の教科書を眺めていると山田先生がじろじろと俺を見ていた。本人は隠しているようだがバレバレだ。でも、疑問なのは目が据わっている点・・・・・・ハッ、まさか噂のヤンデレアイなのか!?止めてください、夜はちゃんと寝かせてくださいお願いしますから。(某CD試聴済み)

 

 

キーンコーンカーンコーン。

 

 

かつてのトラウマが蘇りそうになる中で授業終了のベルが鳴る。

「あっ。えっと、次の時間では空中におけるISの基本制動をやりますからね」

今週一週間はまだ知識の詰め込みを中心にして授業を行うそうだ。日程的に決定戦後に基本制動を学ぶのはおかしなような気がする。せめて基本を学んでから勝負させて欲しかったなぁ。

「ねーねー、織斑くんさぁー」

「はいはーい、質問しっつもーん!」

「今日のお昼ヒマかな?放課後ヒマかな?夜ヒマかな?」

・・・などと考えていたらこれだよ。昨日までの様子見状態は何処へ行ったのだろう。もしや食堂での一件で遅れをとるまいと皆一斉に決心したのか。話しかけてくれることに喜ぶべきなのかよくわからんとです。

脱出不可能な包囲網を敷かれトイレにすら行けなくなった俺は女子が漂わせる匂いに耐えながら一人一人の質問に答えていくことにした。てか、整理券配って商売始めている奴がいるし・・・いいのかよ。

「・・・・・・・・・」

女子という名の絶対防壁から少し離れた場所には箒がおりこちらを見ていた。てっきり不機嫌顔でいるかと思えば憐れむような目で俺を見ているではないか。助けてくれよそんな顔をしてないでさ。

「織斑くんって、SとMどっちなの?」

「胸は大きい方が好き?それとも小さい方が好き?」

「取り敢えず罵ってみてくれないかな?」

俺の好みを知りたいのはよくわかりましたからいきなりド直球のエロい質問は止めてください。それと最後の女子、襟の辺りからロープのような奴が見えてるんだが。・・・もういいや、皆変態って事で次行きましょう。

「千冬お姉様って自宅ではどんな感じなの!?」

「・・・・・・」

わーい、やっとまともそうな質問だー・・・って思ったら危ない質問だったでござるの巻。話したりしたら殺されかねないのでノーコメントで行かせてもらいます。

 

バアンッ!×数回

 

「休み時間は終わりだ、さっさと散れ」

群がっていた女子たちの頭部に出席簿アタックがクリティカルヒット。非常に痛そうなんだけど一部の女子が『ありがとうございますっ!』と言うもんだから同情はやはりしなかった。この調子だとチョーク投げでも同じようなことを言いそうだから怖いな。

「・・・ところで織斑、お前のISだが準備までに時間がかかる」

「!?」

間を空けずにトンデモ発言が飛び出した。事前に知らされていたからそこまで驚きはしなかったのだが時と場所が悪すぎる。廊下やら職員室に呼び出しでもすれば落ち着いて聞くことができたというのに。ここには噂に敏感な女子という生き物がいるんですよ?

「訓練機で戦うわけにはいかなくなった・・・そういうことですか?」

「ああ、学園が直々に専用機を手配する。政府からもそう指示が出ているからな」

よくよく考えてみれば自衛手段を与えられているようなもんじゃないかと俺は思った。出来すぎている展開とか思ったりはしているがこの際それは放っておこう。騒ぎ始めた女子たちのように。

「せ、専用機!? 一年の、しかもこの時期に!?」

「つまりそれって政府からの支援が出てるってことだよね」

「はぁ〜いいなぁ・・・私も早く専用機欲しいなぁ〜」

 

ホイホイ貰えるものじゃないんだよISは、ファッションじゃないんだから。こっちには色々と人には話せない事情が存在から仕方なく貰うことになったんだ。代わってくれるのならどうぞ・・・とびきりのトラブル日和をプレゼントしてあげるよ。

「(んなことよりもだ。武装はブレードオンリー仕様だって灯夜さんは言っていたから、『近接格闘型』のISなのは間違いないか。だとすると今必要なのは――――)」

来たる戦いの時に備え対策を練っていると教科書のページに書かれた『篠ノ之束』という名前から察しられたのか箒が『あの人は関係ない!』と怒鳴り声を荒らげ教室内をシーンとさせた。

無理もない・・・箒は妹として一番振り回された挙句に嫌々転校と引越しを余儀なくされたのだから。恨むのも必然的だろう。和解とか仲直りはこの調子では無理そうに思える。当然俺も似たような感じだ。

今は姉妹の仲を心配するよりもISを如何に上手く操縦するかを優先しようと心に決め机に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――はい、手続きは完了しました。事情が事情ですので明日には使用許可が下りるようにしておきますね」

「ありがとうございます。じゃあ、これで・・・・・・」

昼に念の為に箒にISについて教えてもらえるかどうか相談しようかと思ったが、機嫌が悪そうに見えたのもあって頼るのは止めておくことにした。それと何というか・・・箒からは嫌々勉強している感があるように思えてならないのだ。勘違いならいいのだがどうもその可能性が強いのでここは誰にも頼らないという選択肢を俺は取る。その第一段階として放課後の今に訓練機の使用許可を早めに予約した。

「(訓練用プログラムで今の俺に足りない射撃系の武装に対する戦闘について検証しながらやっていくしか方法はないな)」

近接戦闘ならまだしも銃を向けられる経験は全くない。鉛玉もミサイルも自分目掛けてぶっぱなされたことは生まれてこのかた一度もないのだ。よって、まずはISを纏った状態でどのように射撃を避けるかが課題となってくる。また機動面についても並行して考えていかねばならない。

「(相手はあんな性格だけど代表候補生なんだ。その時点で経験の差は歴然としている。並の戦闘技術じゃ歯がたたないだろう)」

こればっかりはゴリ押し戦法は通用しないのはわかっている。しかし、具体的に自分と相手との差を縮める方法がまだ見つかっていない。仮に見つけても実践できるのかさえ判断できない状態だ。

教科書だけで知識を学んでいては遅いのかもしれない、そう思った俺は受付を速やかに後にして知識の宝庫とも言うべき図書室へと直行した。入ってすぐさま視線を感じるも気にせずISの機動系についての資料の捜索を開始する。

 

 

 

 

〜図書室徘徊中〜

 

 

 

 

そして、かれこれ30分ぐらい探したわけだがすぐに実践できそうなISの操縦技術を詳しくまとめた資料はまだ見つかっていない。どこもかしこも初心者には嬉しくない難しい本ばかりで一つの単語を調べるのに十冊ぐらい参考資料を必要としそうな勢いだ。

「初心者向けの基礎知識本とかないのかね・・・・・・一冊ぐらいあってもいいんだけど」

なかったら試合の難易度がハードモード確定になって困る。何も出来ないまま負けるとかは嫌だ。せめて・・・せめて、一つだけでもいいから抗うための力が欲しい。

半ば狂ったような目で引き続き本棚を見て回る。邪魔するなと言わんばかりのオーラを纏い一つ本を取っては戻しまた一つ取ってはと同じ動作を繰り返す。

「違う・・・これじゃない。これでもない」

「・・・・・・」

そんな俺のある意味奇行とも言える行動に強い視線を向ける存在が近くに立って見ていた。水色の髪に眼鏡をかけた大人しそうな感じの、リボンから察するに同級生の女の子だ。強い視線といっても入学してから感じる期待とか好奇心を含んだものではない。純粋に俺が今している行動に対しての疑問を秘めている感覚がした。

名前も知らない彼女は抱えている本を元に戻そうとしているようで空いていたスペースに本をキレイにおさめた。手放された本のタイトルは『基礎から覚える実践式IS操縦』と背表紙に書かれている。それを俺は何気ない手つきで手に取って読んでみることにした。

「・・・序盤は教科書に載っている事と同じか。けど、結構わかりやすい解説が載ってる」

飛ぶイメージは前方に角錐をイメージすればいいのか。要はドリルみたいのを思い浮かべて突き進めばいいってことだろう。ふむふむ、何となくわかった気がする。

立ったまま読んでいるのもアレなので空いていた席に座りバックから雑記用のノートを取り出して机に本と共に広げた。何だろう、受験勉強に明け暮れた日々を今になって思い出す。思い返せば自分はあれだけ努力して勉強したのにいざ成果を出そうとして出せず、成績などお構いないしに流されるまま高校を決められ入学したのだ。生殺しもいいところである。被害者面はするつもりはもうないが、このもどかしい気持ちは一体何処へ捨て去ればいいのだろうと結局は考えてしまう。未練がましいってきっとこういうのを言うんだね。

「最終的にコンバット・パターンは自分で編み出すとして、必要なスキルはっと―――――おっ?」

ページをパラパラと捲っていった先に瞳に飛び込んできたのは『瞬時加速』という単語。読み方は『イグニッション・ブースト』と読むようだ。引き込まれるように気になったので読み上げてみる。

「『IS後部スラスター翼からエネルギーを放出後、その内部に一度取り込んで圧縮し放出する。その際に得られる慣性エネルギーによって爆発的な加速が得られる。なお、瞬時加速の速度自体は使用するエネルギーに比例する。外部のエネルギーを使用することも可能』・・・か」

発動に必要なシールドエネルギーは最低でもそこそこ多いことも使用回数が有限なのも理解した。だが、ド素人の俺にとって代表候補生との差を縮める有効な手段であることには変わりない。

藁にも縋る勢いで記述に目を通しノートに書き写す。後は代表決定戦までに体に染み込ませることが出来るかに懸かっている。

閉館ギリギリまで粘って他にも覚えられる技術がないか本を読み続け俺は終いには本を借りて部屋へと持ち帰った。既に自分の中では今回の戦いは選出された義務の戦いから絶対に負けられない男としてのプライドを賭けた戦いへと移り変わっていた。

 

 

―――時は流れ、決戦の日である月曜日に至る。それが彼のもう一つのスタートラインだった。

 

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あえて言っておきますが・・・恋に正直『幼馴染』という言葉は関係ないと思うんだ。あと、怒りを暴力で体現するのは良くない、うん。

そんなわけでさり気なく簪さんに出ていただきました。ヒロイン確定とかじゃないからね、あくまで候補です。

では、次回予告タイム。

ついに来た戦いの日。一夏は歴然たる差を自らの力で乗り越えようと策略を張り巡らせる。剣を真正面から振るうことでは相手では勝てないと悟った彼が取った行動は予想も出来ない。プライドに賭けて一夏は勝利をもぎ取れるのか!?

次回、『CHAPTER13 飛翔白剣』

お楽しみに。

説明
挿絵あるよー、アイキャッチだけど。
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タグ
東方Project 更識簪 睦月灯夜 IS インフィニット・ストラトス ISジャーナリスト戦記 織斑一夏 

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