仮面ライダークロス 第九話 命知らずは誉め言葉ではない |
「あれ?」
学園に行く前のこと、僕はあることに気付いた。僕がロイヤルランナーを停めているガレージに、もう一台、バイクが停めてあったからだ。
僕は一真を連れて来た。
「一真、これ、何だかわかる?」
「これは、ブルースペイダー…俺が昔使っていたライダーマシンだ。捨てたはずなんだけど、渡が届けてくれたのかな?」
「きっとそうだよ。」
僕はブルースペイダーという、このマシンのボディーを撫でた。
「よかったなぁ、ご主人様と再会できて…」
「…久しぶりだな、これを使うのも。もう二度と使うことはないと思ってたけど」
一真も懐かしそうに目を細める。
「…さ!学園に行こう!」
「ああ!」
僕は一真と一緒に学園へ出発した。
テメンニグル学園、体育の時間。
「ランランルー!」
ドガァァァァァン!!!
「きゃあああああああああああ!!!」
「ぐああああああああああああ!!!」
……えーと、例のごとくダンテとベオウルフが喧嘩をして、なのはさんが(スイッチオンで)止めに入って、それからドナルドがまとめて吹き飛ばしました。
「危ねぇ危ねぇ。」
で、ダンテはいつの間にかこっちにいるし。っていうか、ダンテは危機回避力が異常なまでに高いな…バージルもだけど。
「なぁ光輝。これってよくあることなのか?」
一真が、かなり引き気味に訊いてきた。
「うん。日常茶飯事みたいなものかな?」
「そ、そうか…」
「心配しなくても大丈夫だよ。すぐ慣れるから。僕もそうだったし」
「…俺は慣れてしまうことの方が怖いよ。」
そう言われると苦しいけどね。
「慣れるしかないよ。いちいち気にしてたらこっちがもたない」
「…それもそうか…」
一真は納得してくれた。
…本当に、どうしてこの学園はこんなにカオスなんだろう…
「…転任する所を間違えたかな?」
西村先生、今ごろ気付いたんですか?
「誘拐事件?」
バージルがディスクに尋ねた。
「前にもこんなことあったよな。確かその時は、ヴィヴィオを連れた誘拐犯を叩きのめしてやったんだっけか…」
「倒したのは光輝だけどね。」
照山とレディがそんなやり取りをしている。
ディスクは言う。
「今回は無差別よ。まあ無差別といっても、女性ばかりだけど。」
「なおのこと悪いじゃない。」
トリッシュがツッコミを入れた。
ディスクがさらに続ける。
「ここ数週間で、もう十人以上は被害にあってるわ。」
「オイオイ、今度の誘拐犯はアレか?ハーレムでも作るつもりか?」
「…笑えんな」
思わず肩をすくめるダンテと、まともに受け止めるバージル。
「ディスクさん。ウチの生徒から被害は?」
光輝は尋ねた。
「まだ出てないわ。」
「よかった…」
光輝は胸を撫で下ろす。
「確かに、この学園は美人が多いからね。気持ちはわかるよ」
光輝の心中を察した一真が同意した。
ディスクが補足情報を伝える。
「今、鳴海探偵事務所と風都署の超常犯罪捜査課が、事件解決に向けて動いているわ。でも手掛かりが少ないから、捜査は難航してるみたい…」
「じゃあレディとトリッシュが狙われる可能性も…」
ダンテは二人を見て、
「………ないな。」
そう言ったのち、トリッシュから電撃を、レディからマシンガンの連射を受けて血まみれになった。
「ち、ちょっと!何してんだよ二人とも!ダンテが死んじゃうだろ!!」
大いに慌てる一真。光輝はそれを落ち着ける。
「大丈夫だよ一真。ダンテはこれくらいじゃ死なない。心臓を串刺しにされたって、けろっとしてるんだから。」
「そ、そうなのか?」
一真がダンテを見ると、ダンテの受けた傷はみるみるうちに修復され、元の状態に戻った。
「…不死身…なのか?」
「そういうわけじゃねぇよ。ただ、俺には半分悪魔の血が混じっててな、そのおかげで常人より頑丈だったり、自然治癒力が高かったりするんだ。」
「そ、そうなんだ?」
「ああ。にしても、レディ、トリッシュ。いきなりやるんじゃねぇよ。カズマがびっくりしてんじゃねぇか」
抗議するダンテ。しかし、二人は頬をふくらませ、そっぽを向いてしまった。
(なんか、本当にすごいんだな、この世界…)
一真は自分が今いる世界のすごさを、改めて認識した。
翌日。一真とともに登校し、いつものようにダンテ達と談笑する光輝。
だが、今日はいつもと少し違った。
「ねぇバージル。フェイトさん達がいないけど、知らない?」
「何?」
そうなのだ。今日はなのは、フェイト、はやて、シグナム、ヴィータの五人が来ていなかった。
「馬鹿な…無遅刻無欠席が取りえのあの五人が、全員そろって遅刻だと?」
どうやらバージルも知らないらしい。光輝が来た時には、いつも全員いるのだが、なぜか五人とも来ていなかった。
「ん?よく見りゃ、シャマルも来てねぇじゃねぇか。」
照山の言う通り、シャマルもいない。
「どうしたのかしら?」
レディが疑問に思っていると、銀八が入ってきた。
「お前ら席につけ〜」
言われて全員が席につく。
「えー、緊急事態だ。なのはとフェイトとはやてが、誘拐された。」
クラス全体に衝撃が走る。
「なお、シグナムとヴィータとシャマルは、現在自宅待機中だ。今日は授業を中止して緊急集会を行うから、全員廊下に並べ〜」
こんな状況であるにも関わらずいつもの調子を崩さない銀八に対し、光輝は若干の憤りを覚えたが、銀八に突っ掛かっても何にもならない。光輝は怒りを飲み込みながら、銀八の言葉に従った。
その後、一〜二時間程度の集会が行われ、結局危険だからという理由で生徒達は下校させられた。
光輝は一真を連れて、八神家を訪れた。
「光輝。それに一真か…よく来たな。」
迎えたのはシグナムだった。
以前、『闇の書』と呼ばれていた魔導書が存在した。だが、本来の名前は別にある。その名は、『夜天の魔導書』。
夜天の書は魔導師からリンカーコアという器官を奪うことによってページを埋めて、完成していく魔導書で、シグナム達はそれを行うための存在、守護騎士プログラムなのだ。
だが、それは夜天の書本来の機能ではない。
夜天の書とは、優れた魔法やその技術などを、記録していくためのものだった。
だが力を求めた愚か者達がたびたび改変を繰り返し、その結果、闇の書などと呼ばれるようになってしまった。
しかし、現在の夜天の書の主であるはやてはそれをよしとせず、シグナム達に普通の人間と同じ生活をさせた。
はやては当時、両足が麻痺していた。それは度重なる改変を受けて狂った夜天の書の防衛プログラムの影響であり、結局シグナム達は本来の活動を強要されてしまった。
その後、様々な紆余曲折を経て現在に至り、シグナム達守護騎士は、今も幸せに暮らしている。
それゆえに、彼女達は許せなかった。今回の誘拐事件を起こした犯人が。はやてから離れてしまった自分達の甘さが…
シグナム達の話によると、はやて達は部活終了後、やることがあるからと言って彼女達を先に帰らせたのだという。
「思えばそれが間違いだった。あの時、無理を言ってでも主はやてと一緒にいればよかった…」
シグナムは悔やむ。
「はやてを…」
ヴィータがぽつりと呟いた。そして、
「はやてを、なのはを、助けなくちゃ!!」
勢いよく立ち上がる。
「私は行く!!じっとなんかしてらんねぇ!!」
「ヴィータちゃん落ち着いて!!」
シャマルが慌てて抑える。
「離せシャマル!!私は、はやて達を助けに行くんだ!!」
そこへ、妖精のような小さい二人の少女が飛んでくる。
ユニゾンデバイスという特別なデバイスの、リインフォースU(ツヴァイ)とアギトである。
「ヴィータちゃん!落ち着くです〜!!」
「そうだぜ!気持ちはわかるけど、相手の居場所もわからないのに動き回ったって何にもなんねぇ!下手すりゃはやて達の二の舞だ!!」
「くっ…!!」
二人に言われ、ヴィータはどうにか思いとどまった。
八神家の番犬を務める狼、ザフィーラも言う。
「ここにいる全員が同じ思いだ。動くのは、連中の居場所を割り出してからでも遅くはあるまい。」
「…」
ヴィータは黙った。
光輝は根源的な問題を切り出す。
「それにしても、誘拐犯の目的は何なんだろう?身代金要求とかもされてないんでしょ?」
「ああ。『八神はやては預かった』、そう書かれた手紙が来ただけだ。」
一真が尋ねる。
「つまり、連中ははやてさん達を返すつもりはない、ってことかな?」
「…そうなるだろうね」
光輝も自分の考えを言った。
「じゃあ、やっぱり私達が助けないと、ってことね?」
シャマルが結論を出す。
「居場所を割り出すにしても、手掛かりがないです…」
「くそっ!どうすりゃいいんだ!!」
リインが悩み、アギトが悪態をつく。
その時、光輝のクロスフォンに電話がかかってきた。
光輝は着信の相手を確認する。
「バージルからだ。」
光輝は電話に出た。
「もしもし、バージル?どうしたの?………えっ!?……うん…うんわかった。今から行く。じゃあ」
光輝は電話を切った。
一真が尋ねる。
「どうしたんだ?」
「エヴァさんが誘拐されたって。」
「エヴァさん?」
「理事長の奥さんだよ。つまり、ダンテとバージルのお母さん。」
「なんだって!?」
一真は驚き、シグナム達も驚く。
「とにかく僕はバージル達の家に行かなきゃいけない。」
「なら俺も行く。役に立てるかもしれないから」
「わかった。ごめんねみんな。」
「構わない。」
「お前達は二人のもとに行ってやれ。」
「ありがとう!」
二人はシグナムとザフィーラに後押しされ、八神家をあとにした。
光輝と一真はバージル達の家に着いた。
バージルの話によると、彼とダンテが帰宅した時、すでにエヴァの姿はなく、テーブルの上に誘拐犯の残したものと思われる紙が残されていたという。
「『婦人は預かった』…それ以外は何も書いてない。こっちも、返すつもりはない、ってことか…」
光輝が紙を読んでいると、ダンテから連絡を受けたスパーダが帰ってきた。
「親父…」
「理事長…」
それぞれ口にする光輝とダンテ。
スパーダは光輝の手から紙を取ると、読む。
「…チッ!」
スパーダはきびすを返して玄関へ。
「親父!」
「どこ行くんだよ?」
「…風都署だ。」
スパーダはそれだけ言い、出て行った。
「待てよ親父!」
ダンテはそれを追う。
「すまん光輝、一真。俺達は親父を追わなければならない」
「じゃあ僕も行くよ。」
「俺も!」
「…すまん…」
こうして一同は風都署へ………。
「ちょっと!いくら理事長だからってやっていいことといけないことがだーっ!!」
風都署の超常犯罪捜査課に着いたスパーダは真倉刑事をはねのけ、刃野刑事に詰め寄る。
「貴様ら、この事件の解決にいつまでかかっている!!ついに我が学園からも被害が出たぞ!!」
「お、落ち着いて下さい!そろそろ情報収集に出払っている照井課長が戻ってこられるころなので!」
「理事長落ち着いて!」
「親父!落ち着け!」
刃野は慌てることしかできない。光輝とバージルも抑えにかかっている。
そこへ、照井が戻ってきた。まるで見計らったかのようなタイミングだが、そこは気にしないでいただきたい。
「照井さん!」
「白宮?お前、なぜここに「照井刑事!!」!?」
怒声を張り上げるスパーダ。今度は照井に詰め寄る。
「情報収集に出払っていたそうだな!?何か手掛かりは掴んだのか!?」
本来ならば「俺に質問するな」と言うところだが、スパーダが相手ではそれもできない。やったら殺される。
「理事長!」
「落ち着いて下さい!」
「落ち着け親父!」
「そうだぜ!」
今度は全員で抑えにかかる光輝、一真、バージル、ダンテ。
スパーダの気迫に圧されっぱなしだった照井だが、どうにか言葉を絞り出す。
「ご、ご安心を。有力な手掛かりを掴んできました」
「それは本当か!?」
驚くスパーダ。照井はその場にいる全員に、自分が得た情報を話す。
照井が手に入れた情報、それは、目撃証言だった。
今は廃墟と化している、とある発電所。そこに、不審な車両が入っていくのを、付近の住民が目撃していたらしい。
夜、光輝はシグナムとヴィータとドナルドと照山に連絡を入れ、一真、スパーダ、バージル、ダンテ、照井、翔太郎とともに発電所に来ていた。まもなくして、シグナム達が到着したわけだが…
「まさか廃墟になった発電所をアジトにしてたなんてな…盲点だったぜ。」
肩をすくめる翔太郎。
「それはいいんだけどよ…」
ダンテは到着したメンバーを見た。
「何でお前らまで来てんだ?」
光輝が呼んだのはシグナム、ヴィータ、照山、ドナルド。この四人だけである。
だが、実際に来たメンバーは、これだけではなかった。
「レディ、トリッシュ、ユーノ、ケルベロス、アグニ、ルドラ、ネヴァン、ベオウルフ。なぜお前達がいる?」
「私もいるぞ!」
バージルが尋ね、アーカムが存在をアピールした。
ケルベロスが答える。
「ドナルドに呼ばれたのだ。」
「…ドナルド。」
ドナルドに話を振るバージル。
ドナルドは笑いながら答えた。
「みんなで一緒に行った方が楽しいと思って。」
「そんな理由だったの?」
「楽しいって、遠足じゃあるまいし…」
ドナルドの発言に呆れるトリッシュとネヴァン。
「いいじゃないか。戦力は多い方が心強いぞ?」
「冗談じゃないわ!何でクソ親父なんかと…」
きれいにまとめようとするアーカムだが、レディは断固拒否の姿勢を崩さない。
「ちなみにアーカムさんは呼んでないよ〜。」
「気にしないでくれたまえ。勝手についてきただけだから」
「私はやだって言ったのに…」
そんなやり取りを無視して、光輝はユーノに尋ねた。
「本当によかったの?」
「うん。僕はなのはの彼氏なのに、なのはを守れなかった。だから、今度は僕の手で助けたいんだ。」
「ユーノ…」
「泣かせる話じゃのう、弟よ?」
「うむ。お主のためならば、我ら兄弟は惜しみなく力を貸そう。」
「ありがとう。アグニ、ルドラ。」
ユーノはアグニとルドラにお礼を言った。
「しかし、協力させちまって悪いな、ベオウルフ。」
「気にするな照山。ダンテに手は貸してやらんが、それ以外になら構わん。」
相変わらずダンテが嫌いなベオウルフ。
「まだか!?まだ駄目なのか!?」
突入を今か今かと待っているヴィータ。
シグナムと一真が落ち着ける。
「焦るなヴィータ。相手は主はやてと高町、それにテスタロッサすら易々と捕らえるほどの手練れだ。慎重にかかる必要がある」
「そうだよ。焦らなくても、必ず助けられる。」
「…くっ…!」
ヴィータは渋々納得した。
「理事長。」
「…」
照井が話しかけると、スパーダはゆっくり告げる。
「今宵この場に集ってくれたこと、感謝する。だが、ここはすでに敵地だ。そして、中に入れば命の保証はない。それでも構わぬ者のみついてこい」
スパーダの言う通り、ここはすでに危険地帯だ。死ぬ可能性は充分にある。
だが、退く者はいなかった。
「親父、それは愚問だと思うぜ?なんせ俺達は、あのハイパーショッカーに勝ったんだからな。」
「ここにいる者全てが、誘拐された者達を救いたいと願っている。」
「…フッ、そうだな。ならば行くぞ!」
スパーダはフォースエッジを手に持った。
他の者も、戦える態勢を整えていく。
「行くぜ、フィリップ、照井、光輝。」
翔太郎はダブルドライバーを装着し、
〈JOKER!〉
ジョーカーメモリを起動する。
「ああ。」
〈CYCLONE!〉
フィリップも鳴海探偵事務所からサイクロンメモリを起動し、
「「変身!」」
〈CYCLONE/JOKER!〉
二人は仮面ライダーWに変身した。
「わかった。」
〈ACCEL!〉
「変・身!」
照井もアクセルドライバーを装着してアクセルメモリを起動。
〈ACCEL!〉
照井は仮面ライダーアクセルに変身した。
「行くよ、一真!」
〈CROSS!〉
光輝もクロスドライバーを装着。クロスメモリを起動させ、
「変身」
〈CROSS!〉
仮面ライダークロスに変身した。
「ああ!」
一真はブレイバックルを装着。チェンジビートルのカードを装填し、
「変身!」
〈TURN UP〉
ターンアップハンドルを低く。
すると、オリハルコンエレメントが出現し、一真に迫る。
一真はそれをくぐり抜けて、仮面ライダーブレイドに変身した。
(渡が改修を施したと言っていたな…あの時はゆっくり確かめる暇もなかったが、これがブレイバックルの改修、か…)
以前はオリハルコンエレメントが迫って来ることはなく、こちらから走ってくぐり抜けなければならなかった。
一真は、これは便利だと思った。いちいち走ってくぐり抜ける必要がないし、前にオリハルコンエレメントを破壊されて、変身に失敗したこともある。そういった面から考えても、便利な機能だった。
ただ他の者は驚いていたが。
「お前、仮面ライダーだったのか!」
『メモリを使わずカードで変身…興味深いね…』
一番驚いたのはWだった。
「仮面ライダーブレイドです。でも込み入った話はあとで!」
ブレイドに言われ、自重するW。
それはそうとクロスが言う。
「助けよう。みんなで!」
その言葉を皮切りに、全員が突撃した。
なのは、はやて、フェイトの三人は、十人ばかりの女性達とともに、縄で縛られて発電所の地下に閉じ込められていた。当然、デバイスも奪われている。
「私達、どうなるんだろう…」
不安そうな声を漏らすなのは。そんなことはわかるはずもない。
「…売られるんかな…」
はやての言葉が、その場にいる女性達の恐怖を掻き立てた。
「はやて!」
「ごめん…」
「大丈夫よ。」
言ったのはエヴァだった。
「あの人が絶対に助けに来てくれるから」
三人を励ますエヴァ。
「…そうですよね。」
「スパーダ理事長なら、絶対来て下さりますよね。」
元気になるなのはとはやて。
(助けは必ず来る。きっと光輝だって…)
フェイトは光輝のことを想った。
と、はやてがあることに気付く。
「なぁ、上が騒がしゅうない?」
言われて耳をすますなのはとフェイト。
「…本当だ。」
「何かあったのかな?」
聞こえてくるのは、ドタバタと走り回る物音。
誰もが疑問に思う中、エヴァだけが瞳を輝かせていた。
「来たんだわ、あの人が…」
突入したクロス達を迎えたのは、大量のマスカレイドだった。
「こいつら…まさか例の組織と関係があるのか!?」
驚くクロス。ダンテは冷静に判断する。
「大方、女専用のガイアメモリでも造ってたんだろ。で、その実験動物を手に入れるために、誘拐事件を起こしてた、そんなとこだと思うぜ。」
「もしそうなら…」
「許すわけにはいかないわね。」
「女の敵…!!」
怒りをみなぎらせるレディ、トリッシュ、ネヴァンの三人。
「さっさと蹴散らして、被害者達を解放するぞ。」
バージルが言い、戦いが始まった。
マスカレイドの戦闘力はドーパントの中でも最下級。常人より少し強い程度だ。普通の拳銃でも倒せる。
対してこちらは仮面ライダーが四人に優秀な魔導師と騎士が合計三人、加えて上級悪魔やニードレスやドナルドまでいる。はっきり言って負ける要素が全くない。
ちなみにケルベロスとベオウルフは大型の悪魔なので、人化を解かずに戦っているが、それを差し引いても、やはり負ける要素はなかった。
だが数が圧倒的に多い。
「くそっ!キリがねぇ!」
Wが悪態をついた、その時、
「仮面ライダーW!俺を使え!」
ケルベロスが光に包まれ、小さな光となってWの元へ飛んで行った。
Wが慌てて光を手に取ると、光が消えて、一つの輪に三つの水晶でできた棒が鎖で繋がれているような武器、三氷棍ケルベロスが姿を現す。
「これ…ヌンチャクか!?」
『翔太郎、僕に合わせて。』
「フィリップ?」
『大丈夫。ヌンチャクの使い方は検索済みさ!』
翔太郎は言われる通りにフィリップに合わせる。すると、Wはサイクロンジョーカーのスピードとテクニックを生かした華麗なヌンチャクさばき…もとい、ケルベロスさばきで、マスカレイド達を倒していく。
それを見ていたアグニとルドラは、ユーノに向かって叫ぶ。
「ユーノよ!」
「我らを使え!」
すると、アグニとルドラは互いの剣をユーノに投げた。同時に、アグニとルドラの肉体が消滅する。
実は、あの首なしの肉体は二人が生み出した仮のものでしかなく、剣の方が二人の本体なのだ。
ユーノは剣を掴み取り、
「はあああ!!」
刀身に炎と風を纏わせた剣技を繰り出して、マスカレイド達を凪ぎ払っていく。
「刑事さん!私を使って!」
それを見ていたネヴァンもまた、光に包まれ、アクセルに向かって飛んで行った。
アクセルがそれを受け取ると、光が消え、紫のエレキギター、雷刃ネヴァンが姿を現す。
「ギターだと!?ふざけているのか!?」
その時、アクセルの背後から数体のマスカレイドが飛びかかる。
アクセルは破れかぶれとばかりにネヴァンをかき鳴らした。
ギュイーン!!
ネヴァンからギターの音とともに電撃が発生し、マスカレイド達を吹き飛ばす。
「これは…」
アクセルは再びネヴァンをかき鳴らした。
ギュイーン!!
やはり電撃が発生し、マスカレイド達を吹き飛ばす。
「…振り切るぜ!」
アクセルはネヴァンをかき鳴らしつつ、突撃していった。
「照山!俺を使え!」
今度はベオウルフが光に包まれ、照山に向かって飛んで行く。
しかし光は照山に受け取らせるのではなく、照山に宿る。
光に包まれた照山から光が消えると、その両手両足に光る籠手と具足、閃光装具ベオウルフが装備されていた。
「よっしゃあ!!」
照山は敵陣に突撃し、
「リトルボーイ+ヴォルケイノ!!」
地面を殴りつけて光と炎の衝撃波を飛ばした。
クロス、シグナム、ヴィータの三人はなのは達が閉じ込められている地下室を見つけ出し、ドアを蹴破った。
「なのは!」
「フェイトさん!」
「主はやて!」
「ヴィータちゃん!」
「光輝!」
「シグナム!」
クロス達は駆け寄って、なのは達の拘束を解く。
フェイトはクロスを見て言う。
「来てくれるって、信じてたよ。」
「フェイトさん…」
クロスは胸が熱くなるのを感じた。
「無事でよかった。」
「これ、みんなのデバイスだ!」
シグナムとヴィータは、取り返した三人のデバイスを渡した。
「君達はシグナムさん達と一緒に、ここにいる人達を避難させて。僕は残った敵を倒す!」
クロスはそれだけ言い、また敵の掃討に出た。
ブレイドはブレイラウザーのカードホルダーから二枚、カードを取り出し、まず一枚、キックローカストのカードをスラッシュリーダーにラウズする。
〈KICK〉
続けてもう一枚、サンダーディアーのカードをラウズする。
〈THUNDER〉
「うおーっ!!」
ブレイドはブレイラウザーを地面に突き立てた。
〈LIGHTNING BLAST〉
「ラァァァァイッ!!!」
ブレイドは電撃を纏った飛び蹴り、ライトニングブラストを放ってマスカレイド達を一掃した。
だが、敵はまだかなり残っている。
「なら…!」
〈FUSION JACK〉
ブレイドはジャックフォームに強化変身し、数で向かってくる敵を力で圧倒する。
ブレイドは戦いながら、クロスが言ったことを考えていた。
クロスが言ったこととは、無論敵のことである。
クロスの話だと、マスカレイドはそれほど危険な相手ではないらしい。それはわかった。だが、逆を言えば、この程度の力しか持たない敵がこれほど大規模な事件を起こすなど、あり得ないのだ。
ならばなぜこんなことが起きたか?答えは簡単だ。
マスカレイド達を指揮している、言ってみればこの事件の首謀者がいる。
(今理事長が倒しに行ってるけど、大丈夫かな?光輝は何も問題ないって言ってたけど…)
ブレイドはスパーダのことを心配していた。
彼はこの世界に来たばかりなので知らないが、それでもすぐ知ることになる。
スパーダから怒りを買うことがどれだけ命知らずな行為であるかということを…
スパーダは発電所の最奥部で、誘拐事件の首謀者と思われる男と対峙していた。
「貴様だな?この誘拐事件の首謀者は。」
「ええ、そうですよ。」
男はあっさり白状した。
「理由はあえて訊かん。今は、私の怒りを晴らすことの方が先だ。」
「できると思いますか?」
男はガイアメモリを取り出し、
「私は…」
〈HUNTER!〉
「雑魚とは違いますよ。」
自分の首筋に挿す。
男は全身に様々な銃を装備した怪人、ハンター・ドーパントに変身した。
しかし、スパーダは怯まない。
「ドーパント風情が…この私を怒らせたことを後悔させてくれる!」
「「!!」」
ダンテとバージルは魔力の膨張を感じた。
「この魔力、親父か!」
「まさかあれを!?」
そこへ、全てのマスカレイドを倒したクロス達がやってきた。なのは達も一緒だ。
「こっちは終わったよ。」
「そうか。なら、俺達についてきな。面白いモンが見られると思うぜ」
「?」
「こっちだ。」
一同は言われるまま、ダンテとバージルについて行った。
「これは…」
シグナムは呻いた。
それはそうだろう。何せスパーダがいなかったのだから。
正確に言えば、スパーダはいる。人間の姿ではないが。
湾曲した角を持つ鎧兜、背中に生えた翼、そして全身から炎のようなオーラとなって吹き出る圧倒的な魔力。
これこそ、スパーダの真の姿だった。
ドナルドは笑う。
「理事長がデビルトリガーを使ったんだね〜」
「理事長が!?」
驚く照山。
ブレイドはクロスに尋ねる。
「デビルトリガーって?」
「言ってみれば人化の解除だね。あれが理事長の本当の姿だよ」
「あれが!?」
「僕も見るのは初めてだけど。」
「な、なんちゅう魔力や!」
「なのはの、軽く五百倍はあるぜ…」
ひたすら驚くはやてとヴィータ。
「面白いモンか…確かにすげぇな…」
『理事長の本気を、この目で見られる日が来るなんて…!』
「凄まじい…」
W、アクセルは、一種の感動を覚えていた。
「ええい、ちょこざいな!!」
ハンターは全身に装備された銃の中から一丁を手に持ち、スパーダを撃った。
ただし銃口から飛び出したのは弾丸でなはなく、網だった。
網はスパーダに被さり、彼の全身を拘束した。
だが、それはほんの一瞬だった。
スパーダに絡み付いた網は突然炎上し、燃え尽きて灰になってしまった。
「な、なんだと!?」
ハンターは続けて銃を連射し、大量の網でスパーダを捕らえようとする。
だが網はそのたびに炎上し、灰になってゆく。
「こ、こんなことが…!」
うろたえるハンター。
だがスパーダはいたって冷静だった。
「なるほど、捕獲能力に突出したドーパントか。だが、私には通用せんぞ。」
スパーダは言いながら、魔剣フォースエッジを構える。しかし、その魔剣は、もはやフォースエッジではない。禍々しい形状の片刃大剣、自分と同じ名の魔剣、スパーダへと変わっていた。
「く、くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ハンターは銃をまた一丁手に持ち、麻酔弾を乱射する。
スパーダはそれを剣で弾き、一瞬でハンターに接近。
「ぐあああああああああああああ!!!!!」
横一文字に剣を振って、メモリブレイクした。
「すごい…」
ユーノはスパーダの実力を目の当たりにし、それしか言えなかった。
「これは…敵わないね…」
「うん…」
なのはとフェイトは苦笑した。
「戦おうと思うこと事態が馬鹿らしく思えるわ。」
「そうね。」
レディとトリッシュはため息をついた。
「ヒャハハハ!やっぱり強いねぇ!」
「黙れ!」
「ギャーッ!!」
ジェスターに変身していたアーカムは、レディからミサイルランチャーを食らった。
外では駆け付けた警察が、被害者達を保護していた。
「あなた!」
「エヴァ!」
スパーダはエヴァを抱き止める。
「あなた…来てくれると思ってた…」
「私はお前を見捨てない。お前の存在は、ダンテやバージルと同じくらい大切だからな…」
「あなた…」
一方、
「ユーノくん!」
「なのは!」
なのはとユーノも、抱き合っていた。
「ユーノくん…怖かった…怖かったよぉ…!」
「もう大丈夫だから。僕が君を守るから…」
涙を流してしがみつくなのはの頭を、ユーノはよしよしと撫でる。
そのころ、
「光輝!」
「フェイトさん!」
光輝もフェイトを抱き締めていた。
「はやて!」
「主はやて!」
「ヴィータ!シグナム!」
はやて、ヴィータ、シグナムも、泣きながら再会を喜ぶ。
「一件落着だな。」
「ああ、これで事件は解決だ。」
「よかった、本当に。」
翔太郎、照井、一真は、それぞれ頷き合う。
「それにしても、お前が仮面ライダーだったなんてな。」
「俺も驚いた。お前、一体何者だ?」
それに対し、一真はこう答えた。
「通りすがりの、仮面ライダーですよ。」
その後、この一件で自分が仮面ライダーであることがばれた一真は、シグナムから試合を申し込まれることになるのだった。
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次回、
仮面ライダークロス!!
一真「Wに、なれない!?」
光輝「僕がやるしかない!」
琉兵衛「エックストリィィィィィィム!!!」
フィリップ「これが、新しいW…」
第十話
風が呼ぶB/最高のコンビ
これが裁きだ!!
説明 | ||
今回あの人がキレます。 シリアスなのにギャグになった気が… |
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