特捜戦隊デカレンジャー & 魔法少女まどか☆マギカ フルミラクル・アクション |
Episode.10 セリー・デカレンジャーロボ
デカレンジャー一同に対し、インキュベーターとの戦いに参加する上の覚悟について考える様言い渡したドギーは、警察車両に乗り、紫蘇町を目指していた。目的地はそこにある馴染みの喫茶店、『恐竜や』である。そして、そこにはドギーがこれから始まる決戦に身を投じる前に会わねばならない人物が集まっていた。
「皆、待たせた。」
恐竜やの扉を開けて入ってきたドギーを待っていたのは、店主の杉下竜之介と、複数名の男女。ドギーが店内に入ると同時に、その視線が集中する。そんな中、ドギーは客席の一つに腰かける。
「今日皆に集まってもらったのは他でもない。既に内容は知っていると思うが、俺が今預かっている事件、魔法少女事件についてだ。もう打ち止めになっている捜査だが、俺はそれを続けるつもりだ・・・所謂、命令違反を犯してな。
そして、それを解決するために皆に力を貸して貰いたい・・・俺の力だけではどうにもできない巨大な困難にぶち当たっている。皆に迷惑をかけるが、助けてもらいたい。この通りだ・・・」
深々と頭を下げて協力を依頼するドギー。打ち止めになっている捜査を行い、それに協力する形で巻き込まれれば、どんな災厄を被るかなど分かったものではない。それでも、ドギーは頼み込むしか無かった。やがてその姿を見かねた一人が、ドギーに優しく声を掛ける。
「ドギー、前に私の息子達を助けてくれたお礼も兼ねて、私達に出来る事なら力になるわ。」
「・・・すまないな、深雪。」
ドギーの隣に座る女性、深雪に対し、感謝を述べるドギー。彼女とは、この恐竜やで知り合い、その子供達とは『天空の花事件』で協力し合った関係だ。
「これは勇さんに返す。非常に役に立ったと・・・あと、また機会があったら手合わせしようと伝えておいてくれ。」
そう言ってドギーが取り出したのは、魔女化したさやかが作り出した結界を切り裂いた、番犬を象った剣――ウルサーベルだった。ドギーは魔法少女関連の事件に備え、深雪の夫である勇からこれを借りていたのだった。
「分かったわ。それで、魔法少女達の件だけど、夫と子供達には既に話を通しておいたわ。私達小津家は、ドギーに協力する姿勢よ。」
深雪は、氷の天空聖者・スノウジェルから力を授けられた魔法使いである。そして、彼女が嫁いだ実家・小津家は、地上侵略を企む地底冥府インフェルシアから世界を守る魔法使いの一族なのだ。
ドギーは魔法少女事件を捜査するために、予てより小津家には協力を依頼していたのだった。依頼の中には、SPライセンスへの対魔力仕様処置も含まれている。
「私たち以外の妖怪退治を専門としている志葉家の人たちにも協力を要請しておいたわ。侍の家系にある彼等は、“モヂカラ”っていう、私達の魔法とは異なる力で戦う戦士よ。きっと、魔女を倒す事も出来る筈。子供達を通じて、既に繋ぎを付けておいたけど、向こうも協力してくれるそうよ。」
「本当に済まない・・・お前達まで巻き込んでしまって・・・」
「何言ってるのよ。あなたに頼まれたからだけじゃない・・・私達が協力すると決めたのよ。私達がどうなるかなんて、あなたが気にする事じゃないわ。」
深々と深雪に頭を下げるドギー。深雪以外の面子も意思は同じである事は、その真剣な表情を見れば分かった。皆、法を破って咎められる事を覚悟の上で、ドギーに協力するつもりだった。
「ドギーさん、ワシ達は何をすれば良いのかな?」
「私達に出来る事なら、何でも言ってください。警察に捕まるのなんて、恐くありませんから!」
飄々とした態度で問いかける白衣の老人と、警察なんて怖くないと威勢よく言い放つ女性に、ドギーは向き直る。
「巽博士、あなたにはこれから見滝原市に襲来する巨大魔女、ワルプルギスの夜が引き起こす災害から街の人々を守るために、魔女の襲来の予測と共にレスキュー隊を動かしてもらいたい。」
「よしきた。レスキューならばワシの子供達の出番だ。あの子達もきっと協力してくれる。この巽世界、確かに引き受けた。」
巽世界とその子供達は、かつて世紀末に訪れた襲った災厄の存在から地球を守ったレスキュー兄妹とその親として知られていた。研究施設は海に沈んでしまったが、未だにレスキュー関連の機関においては非常に高い影響力を持っていた。
「これが、深雪とスワンの協力によって得られた魔女のデータです。ワルプルギスの襲来は、これで予知できる筈です。」
そう言って、一枚のディスクを渡すドギー。対する世界は真剣な表情でそれを受け取った。
「森山さん。スクープ記者であるあなたには、魔法少女の真実についての記事を、宇宙メディアを通じて流して貰いたい。これが、証拠資料だ。」
そう言ってドギーが渡したのは、一冊のファイル。その中にはこれまでの事件の中でまとめた捜査資料や、烈から知らされたインキュベーターの真実についての資料が入っていた。
「・・・本当に良いんですか?捜査資料をマスコミに渡すなんて・・・」
秘匿されるべき事件の捜査情報を外部に漏らすなどと言う行為は、警察関係者には許されない行為である。だが、ドギーはそれさえも覚悟の上で首肯する。
「最初に言ったが、俺は命令違反を犯してでもこの事件を解決するつもりだ。譬え宇宙警察を追われる身になり、咎人になったとしても、俺はこの道を譲るつもりはない。
だが、あなたは一児の母だ。危険な橋を無理して渡る事は無い筈だ。引き返すなら、今ですよ。」
ドギーの真剣な表情と向き合い、森山ホナミは受け取った捜査資料を両手で握りしめる。確かに自分には愛しい人との愛の結晶である子供が居る。今はもうその人は居なくなってしまったが、一人で立派に育て上げると心に誓った子供が。
だが、それでも自分に出来る事を必ず成し遂げようと言う決意のもとに、この道を選ぶ。
「・・・私が昔お世話になっていた雑誌編集者の編集長が言ってました。『真実は一つだが、正義は一つじゃない』と。スクープ記者の私にはその時いまいち理解できませんでしたが、きっとこの事だと思うんです。少なくとも、私はあなたの正義を信じています。そして、私も戦います。」
「・・・ありがとう、森山さん。その言葉だけでも、十分だ。」
部下でもないのに自身の正義に付いてきてくれると言ってくれた森山に対し、感謝を述べると、その場に集まっていた最後の一人に向き直る。
「三浦参謀長。あなたには、インキュベーターを確実に消滅させるために力をお借りしたい。」
「・・・我々が使ってきた力は、この地球を危機に追いやる存在を排除するために、地球自身が自浄作用として発するエネルギーです。インキュベーターと呼ばれる存在が地球に害をなすものならば有効ですが、地球人ではないあなたに扱えるものとは限りませんよ。」
「構いません。それを使うか否かは、私の部下が決める事です。インキュベーターの真実全てを受け入れた上で戦おうという意思を持つのならば、必ず彼等は使える筈です。」
サングラスを外しながら、じっとドギーの目を見つめる三浦。お互い、表情は先程と全く変わらず真剣そのものだ。そうして見つめ合う内、やがて三浦はフッと笑い、折れた。
「・・・分かりました。『UAOH』の三浦尚之、あなた達に協力しましょう。」
「よろしくお願いします。」
そう言って、立ち上がって互いに握手する二人。異なる組織の人間達が、同じ正義の旗のもと、心を一つにした。と、そこへ・・・
「それじゃあ、ドギちゃん達の団結を祝って、僕からもサービスさせてもらうよ。」
そう言って、店の奥から現れたのは、恐竜やの店主・杉下竜之介だった。手に抱えたお盆には、カレーが盛られた皿が載せられている。
「ウチの店の新商品、『ゴールドカレー』だよ。皆、遠慮なく食べてね。」
「ゴールドカレー?」
「シーフードカレーみたいですね・・・何故、ゴールドなんですか?」
ゴールドカレーと名付けられたシーフードカレーに対し、疑問を抱く一同。そんなドギー達に、杉下店主は笑って説明する。
「いやね、このカレーの材料を調達するのに、とある屋台のお寿司屋さんに口利きしてもらったんだけどね。そのお寿司屋さんの名前が、『ゴールド寿司』っていうんだよ。しかもそのお寿司屋さんの作るカレーは何故か抜群に美味しくてね。このカレーのレシピも、その人と一緒に作ってね。
それで、お店の宣伝も兼ねて、ゴールドカレーって名前を付けたんだ。」
杉下店主の説明に成程と得心する一同。
「そうだったんですか。なら今度、そのお寿司屋さんを記事にインタビューしてみますね。」
「ああ、そうしとくれ。源太君も、きっと喜ぶだろうから。」
「それじゃあ、皆でいただきましょうか。」
そうして、一同はスプーンを取りカレーを食べ始める。後にこのカレーは森山記者を通して話題となり、恐竜やはさらにチェーンを拡大する事になる。そして、カレーのレシピを作った寿司職人は、恐竜やの支店長に推挙され、寿司屋とカレー屋の二足の草鞋を履く事になるのだが、それはまた別の話。
さやかが魔女化してしまったその翌日の朝。まどかは見滝原中学へ向かっていた。隣には、親友の仁美が居る。だが、足取りは重く、気分がすぐれないのは傍目に見ても分かった。だが、魔法少女ではない、日常の世界を生きるまどかは、それら裏の事情を隠し通さねばならない。まどかにとって、通学路がこれほど酷になる日は無かった。そんな中・・・
『昨日の今日で、呑気に学校なんて行ってる場合かよ?』
まどかの意識に直接話しかける様な声。魔法少女が使う、思念通話だった。話しかけてきたのは、つい最近知り合った魔法少女・佐倉杏子。
『ちょっと話があるんだ。顔貸してくれる?』
杏子の念話に、まどかは魔法少女関連の事で自身が呼ばれているのだと気付く。仁美に学校を休むと手短に伝え、杏子の誘導に従って見滝原市の外れへと足を進めて行く。するとそこには・・・
「はい、杏子ちゃん。」
「ありがとう、サスケさん。」
猫を象ったバスのクレープ屋で、店主からクレープを受け取っている杏子。ここのクレープ屋は杏子の行きつけの店であり、店主であるサスケとも顔なじみだった。
クレープを受け取った杏子は、自分に追いついてきたまどかに近寄ると、持っていたクレープの一つをまどかに差し出す。
「あんたも食うかい?」
「え?・・・あ、うん。」
とりあえず、差し出されたクレープを受け取るまどか。すると、杏子はまどかの脇を通って歩きだす。
「もう少し人気の無い場所に行くよ。そこで話をしよう。」
そういって、まどかに付いてくるように指図する杏子。まどかはそれに従い、クレープを食べながらあとを追いかける事に。
杏子がこの様な事をし始めた原因は、昨晩、さやかが魔女になった後の時刻に遡る。
さやかを探してやってきたまどかに、事の顛末を離した後、杏子は見滝原市のホテルの一室にさやかの骸を持ち帰っていた。ベッドに寝かせ、ソウルジェムを翳して魔法を施す。死体となったさやかの身体が崩れない様にするためだ。
「そうまでして死体の鮮度を保って、一体どうするつもりだい?」
ベッドの脇の床にドサッと腰かけ、『兄貴塩』と書かれたカップラーメンを食べ始める杏子に、キュゥべえが問う。
「そいつのソウルジェムを取り戻す方法は?」
「僕の知る限りでは、無いね。」
箸を止め、キュゥべえの方を向く杏子。その瞳は真剣そのものだった。
「そいつは、お前が知らない事もあるって意味か?」
「魔法少女は条理を覆す存在だ。君達がどれほどの不条理を成し遂げたとしても、驚くには値しない。」
「出来るんだな?」
「前例は無いね。だから、僕にも方法は分からない。生憎だが、助言のしようが無いよ。」
しばし睨み合う杏子とキュゥべえ。キュゥべえは相変わらずの無表情だが、杏子の目には怒りがちらついており、キュゥべえを威嚇するように睨む様は、まるで蛇のようだった。
「いらねえよ。誰がテメエの手助けなんて借りるか・・・イライラするんだよ。お前の顔見てると・・・」
殺気を含んだ言葉に、しかしキュゥべえは怯む事などなく、その場を後にする。杏子は二つ目のカップラーメン、『弟味噌』へと手を付けていた。
キュゥべえが居なくなってから、杏子はさやかを救える可能性が微塵でもある事に希望を見出す事を決意した。キュゥべえが、果たして本当の事を言っているのかは不明だが、魔女化したさやかを助けられる可能性が少しでもあるのならば、それに賭けてみようと杏子は考えていたのだった。
「馬鹿と思うかもしれないけど・・・私はね、本当に助けられないのかどうか、それを確かめるまで、諦めたくない。」
まどかに語りかける杏子の表情には、希望と不安に揺らげど、これから途方も無い可能性のために危険を冒すだけの覚悟はあった。まどかは、その真剣な瞳をじっと見つめる。
「あいつは魔女になっちまったけど、友達の声ぐらいは覚えているかもしれない・・・呼びかけたら、人間だった頃の記憶を取り戻すかもしれない・・・それができるとしたら、多分、あんただ。」
杏子の言葉に若干の希望を、だが、すぐに不安が心に覆いかぶさる。
「・・・上手くいくかな?」
「分かんねえよ、そんなの。」
その言葉に、まどかの顔に暗い影が差す。だが、杏子はその不安を鼻で笑い、開き直る。
「分かんないからやるんだよ。もしかして、あの魔女を真っ二つにしてやったらさ・・・中からグリーフシードの代わりに、さやかのソウルジェムがポロッと落ちてくるとかさ・・・そういうもんじゃん。最後に“愛”と“勇気”が勝つストーリーってのは。」
何の根拠も保証も無い、ただ自分を満足させるためだけの希望を語る杏子。誰かが聞いたら笑い飛ばされるような話だと、自分でも分かっていた。だが、たとえ馬鹿な話だと言われようが、さやかを救えると言う、あるかどうかも分からない希望を諦めたくはなかった。
「私だって、考えてみたら、そういうのに憧れて魔法少女になったんだよね。すっかり忘れてたけど、さやかはそれを思い出させてくれた。」
「・・・・・」
「付き合い切れねえってんなら、無理強いはしない。結構、危ない橋を渡るわけだしね。私も・・・絶対何があっても守ってやる、なんて約束はできねえし。」
険しい表情で、渓谷に等しい言葉を語りかける杏子。この先へ踏みこもうものなら、命の危険は勿論、魔女の結界の中ならば、死体すら残らない。ある意味、死ぬよりも残酷な結末が待ちうけているかもしれないこの道。だが、まどかは首を横に振った。
「・・・手伝う。手伝わせてほしい。私、鹿目まどか。」
杏子に協力の意思を示して手を差し出すまどか。それに対し、杏子はフッと笑い、
「・・・ったくもう・・・調子狂うよな、ホント。」
「え?」
「佐倉杏子だ。よろしくね。」
戸惑うまどかから差し出された右手に、キャンディを差し出した。こうして、二人は互いに新しい友達となった。
時刻は夕方。デカベースのオフィスに、緊急警報が鳴り響いていた。ドギーは署長用デスクのモニターを操作し、事態の詳細について調べる。
「魔女の反応・・・しかもこれは、さやかちゃんか・・・」
デカベースのオフィスに、捜査打ち切りの命令が下った後も取り付けられたままになっていた魔力探査機器が、魔女の反応をキャッチしたのだ。しかもその反応は、昨日の魔女――さやかが魔女化したものと全く同じ物だった。
「・・・俺が行くしかないな・・・」
地球署署長である自分の役割は、飽く迄部下であるデカレンジャーのフォローにあるとドギーは考えている。地獄の番犬と呼ばれた頃と同様に戦闘に参加すれば、本来第一線で戦う筈の部下達に依存心が生まれ、精神的成長が阻害されてしまう事を恐れての事だった。
だが、今その部下達は宇宙警察としての道を歩むのに最大の壁にぶち当たっている。ここが部下達にとっての正念場ならば、今目の前で起こっている事件には、自らが出張るほかない。
「皆・・・早く答えを見つけ出してくれ。」
部下達を急かすでもなく、ドギーはそう呟いた。本来ならば、こんなに切羽詰まった状態で悩むべき問題ではない筈だとドギーは考える。だが、世界はいつも自分達の都合の良いように動いてはくれない。そしてだからこそ、自らが動かねばならない時がある。
ドギーが出撃のため、ディーソード・ベガを片手に立ち上がろうとしたその時だった。
『ドギー、大変よ!!』
「どうしたんだ、スワン?」
署長用デスクに掛けられた通信。相手はメカニックのスワンだった。自身がこれから出撃しようと言う時に、何が起こったのかと聞くと、
『魔力反応が膨大化している・・・この魔女はもう、エネルギーだけじゃなく、怪重機に匹敵する大きさと力を手に入れているわ!!』
「なんだと!?」
スワンからの報告に驚愕するドギー。これまで集めたデータから、魔女の大きさにはそれぞれ差異はあれど、怪重機並の大きさを持つものは無かったのだ。
そんな中、デカベースのオフィスへ一人の少女が現れた。
「どうするの?魔女の張った結界の中には、まどかと佐倉杏子が既に入り込んでいるわ。早く助けないと、二人とも確実に死ぬわよ。」
淡々告げるほむらに、ドギーは苦虫を噛み潰したような顔をする。デカレンジャー一同は昨夜の一件で未だに戦闘に参加できる精神状態ではない。前線で動けるのはドギーとスワンだけなのだ。ただの魔女ならばドギーだけで事足りたかもしれない。だが、相手は怪重機並の大きさである。単身で太刀打ちできる筈が無い。だが、ドギーもこの様な事態を全く予測していなかったわけではないのだが・・・
「・・・スワン、デカマシンの整備はどれだけ終わっている?」
『どのマシンも既に出動するだけなら出来るわ。でも、魔女と戦うとなると、やっぱりデカマシンロボだけね。ダップ君も尽力してくれたけど、他のマシンは未だに処置が終わってないわ。』
「・・・仕方ない。スワン、一緒に出撃してくれ。俺がパトストライカー、お前がパトジャイラーに乗り込む。残りのマシンは自動操作で行く。」
『そうね・・・丁度、4年ぐらい経ってる事だし、私も出てみても良いわ。』
オリンピックヒロインを自称しているスワンは、実は変身機能を持ったSPライセンスで、デカスワンへと変身する戦士でもあるのだ。ドギー同様、非常事態にしか動かないのだが、今がまさにその時だった。
「魔法少女事件に関して動ける人間は少ない・・・悪いが、君にも同行して、まどかちゃん達を助けてあげてもらえないか?」
「もとよりそのつもりよ。あなたに何が打開策があるのなら、それに乗っても良いわ。」
「よし、それじゃあ付いてきてくれ。」
そう言い、ほむらを同伴した状態でオフィスを後にしようとしたその時だった。
オフィスへの扉が開かれ、六人の男女が中へ入ってくる。見紛う筈も無い、ドギーの部下であり、地球を守るデカレンジャーの六人・・・バン、ホージー、セン、ジャスミン、ウメコ、テツである。
「・・・何をしに来た?」
出撃を控え、一刻の猶予も無い状態だったが、ドギーは問いかける。自身が先日、試練を与えた六人全員が揃い、真剣な迷いの無い表情をしていたからだ。インキュベーターの真実については、簡単に答えを出せる様な話ではない。だがそれでも、ドギーは自身が抱いた目の前の六人に対する期待を抱かずにはいられなかった。
「ボス。俺達は・・・」
戦います!!!
強い決意の籠った言葉だった。バンが代表して宣言した言葉に、続く残りの五人も真剣な顔で頷く。それに対し、ドギーはわざわざ詳しく聞こうとは思わない。その目を見ただけで、今の言葉がハッタリなどではない事を確信できた。そして、司令官たる彼が下す命令は、ただ一つ。
「デカレンジャー、出動!!!」
『ロジャー!!!』
魔女化したさやかの張った結界に突入したまどかと杏子は、さやか“だった”目の前の異形――人魚の魔女と相対していた。結界に踏み込む前の手筈通り、杏子が前に出てまどかを魔女の攻撃から守る障壁を張り、その後ろからまどかが“さやか”に対して呼びかけ続けるというものだった。
親友だったまどかの声をさやかの人間だった部分に届ける事が出来たならば、魔女という存在からさやかを解放できる筈。そう信じての賭けだった。だが、まどかの悲痛な嘆願も、杏子の身体を張っての防御も空しく、さやかを取り戻す事は叶わず・・・それどころか、魔女は邪念を肥大化させて、どんどん巨大化していく一方だった。
(頼むよ神様・・・こんな人生だったんだ。せめて一度ぐらい、幸せな夢を見させて・・・)
魔女の手下である使い魔が奏でる旋律が木霊する中、落下しながら杏子は思う。魔法少女としての契約をしたあの時以来、願わなかった他者の救済。叶ったところで、またすぐに絶望に代わってしまうかもしれないこの願い。それでも、杏子は願わずにはいられなかった。
やがて地面が近づき、どうにか着地に成功する杏子。まどかは気絶していたが、いつの間に結界に入り込む事に成功していたほむらによって受け止められていた。
「杏子・・・あなた・・・」
「・・・その子を頼む。あたしの馬鹿に付き合わせちまった。足手まといを連れたまま戦わない主義だろう?良いんだよ・・・それが正解さ。」
ほむらとまどかの間に障壁を挟みこむ事で、目の前の魔女との戦いからの隔離を図る杏子。それに対し、ほむらは黙ったままだった。おそらく、人魚の魔女と捨て身で刺し違えるつもりなのだろう。だが、目の前に佇む魔女巨大化し、50メートル近くにまで達していた。どう考えても無駄時にする事は目に見えている。だが、それでも杏子は揺るがなかった。
「ただ守りたい物を最後まで守り通せば良い。ハハ・・・なんだかな。私だって、今までずっとそうしてきた筈だったのに。」
「なら、これからもそうすれば良い。」
ふと、横から声が掛けられる。そこに居たのは、つい先日も見た、黒とメタリックブルーのツートンで色取られたデカスーツに身を包んだ、地獄の番犬ことデカマスターだった。
「・・・宇宙警察の説教かい?簡単に言ってくれるじゃないか・・・」
「願いは、人一人で叶えられる程簡単な物じゃない筈だ。だからこそ、一緒に戦う仲間達が居るんだ。」
「私にはそんなもの、初めから無かったよ・・・」
「なら、今から作れば良い。君の願いを叶えるために、一緒に戦ってくれる仲間を・・・」
デカマスターの言葉には、言い様の無い重みがあった。その言葉の意味を杏子が理解するよりも早く、世界は動きだす。
「来たようだな。」
「え?・・・な、なんだこれ!!?」
突如、結界内の空間が揺れた。大地震でも起きたのかと思う程の衝撃が空間全体に走る中、結界の壁が音を立てて崩れ始めたのだ。そして、そこから結界の中へと飛び込んできたのは、宇宙警察のマークが付いた五台の超巨大マシーン――デカマシンだった。
『ボス!!お待たせしました!!』
SPライセンスを通じて伝わるバンの声。デカマスターは、五台のマシンの中で中央を走る六輪パトカー型デカマシン・パトストライカーを見やる。
これこそドギーが巨大な魔女の出現に対応するために模索した手段、デカマシンの結界突入機能の搭載である。当初は、デカマシン程の巨大な質量を伴う物体に体魔力仕様を追加する事は不可能とされていた。だが、それを可能にしたのがハザード星人の魔法技術である。彼等の魔法文明は、『乗り物』に魔法を施す事に長けており、強大な質量を伴うデカマシンに対魔法処置による結界突入能力を搭載させる事に成功したのだった。だが、魔法処置を施すに当っては、スワンが設計に携わったデカマシンが優先されたため、魔法少女事件開始以来、結界突入を可能としたのはパトストライカー、パトジャイラー、パトレーラー、パトアーマー、パトシグナ―の五台に止まったのだった。
「こちらは既にまどかちゃんと杏子ちゃんを保護した。すぐにここを脱出する。」
「ちょ、ちょっと待て!!私はさやかを・・・」
これから人魚の魔女と刺し違えようとしていたと言うのに、いきなりのデカマシンの登場に、決意に水を差された気分の杏子が声を荒げる。
「大丈夫だ。俺に考えがある。さやかちゃんを救う方法もな。」
「なっ!!・・・どういう事だよ!?」
デカマスターの放った、「さやかを助けられる」という言葉に反応する杏子。一方のデカマスターは、それに答えようとはしない。それが、杏子の苛立ちを増やすと共に、諦めかけていた希望を抱かせる。
「知りたければ、今は退け。それが条件だ。」
「くっ・・・出任せだったらただじゃおかねえからな!!!」
嘘ならば殺すと言わんばかりの目で睨みつけて脅しかける杏子。それに対し、デカマスターは怯むどころか安堵していた。事件が始まって以降、全く信用されていなかった自分達が、初めて信用してもらえたのだ。その事がドギーには、暗闇に包まれた道に、光が差した様に感じられたのだった。
ドギーと杏子、ほむら、まどかの四人が結界からデカマシンの突入した箇所から脱出するのを確認して、デカマシンに乗り込んだデカレンジャー達は改めて臨戦態勢に入る。
「よっしゃぁっ!!皆、久しぶりに合体だ!!」
『ロジャー!!!』
バンの掛け声と共に、一斉にデカマシンを操作する五人。
『特捜合体!!!』
パトストライカーのストライカーアームがパトアーマー、パトシグナ―を押さえ、両サイドに連結させる。それと同時にパトジャイラー、パトレーラーが左右に並び、後方部分を立たせる。そして、パトアーマー、パトシグナ―と連結したパトストライカーが上からかぶさる形でパトジャイラー、パトレーラーと連結する。その後パトレーラーの上部が持ちあがり、頭部が顔を出し、右手にシグナルキャノンを握る事で、変形合体は完成する。
『完成・デカレンジャーロボ!!!HOLD UP!!』
5体のデカマシンが特捜合体した巨大ロボット・デカレンジャーロボ。主に怪重機対策として活躍するロボットであるが、今回は巨大魔女との戦いに参加する形で登場する事となった。人魚の魔女と相対し、シグナルキャノンを構える。
「行くぜ!!」
シグナルキャノンを人魚の魔女めがけて放つ。魔女も黙って受けているだけの筈はなく、反撃に無数の車輪をデカレンジャーロボ目掛けて放つ。
「避けろ!!」
ホージーの言葉と共に、巨大な体躯に似合わぬダイナミックかつ俊敏な動作で車輪の群れを回避するデカレンジャーロボ。回避行動の間も、シグナルキャノンを撃ち続ける。
「ウォォォォオオ!!!」
車輪が命中しない事に業を煮やした魔女が、今度はサーベル片手に近接戦を挑みにかかる。デカグリーンはそれを見るや、デカレンジャーロボのもう一つの武装を取り出す。
「ジャッジメントソード!!」
センの操作によって右足から飛び出したジャッジメントソードを右手で持って魔女のサーベルを受け止め、シグナルキャノンを左手に構えて反撃に出る。
「俺に任せろ!!」
魔法少女だった時からの武器であるサーベルを利用した近接戦は魔女の方が上の様だったが、シグナルキャノンを用いた、バンの操作によるジュウクンドーの前に圧倒され続けていた。
「今だ!!」
魔女に生じた隙を見逃さず、手に持った持つサーベルごとジャッジメントソードで切り裂く。それと同時に、シグナルキャノンを連射して魔女を引きさがらせる。
「よし!!一気に行くぜ!!!」
魔女の身体にダメージが蓄積されたところで、デカレンジャーロボは魔女に止めを刺すべく、シグナルキャノンを再び構える。
『パトエネルギー全開!!フルチャージ!!!』
パトエネルギーがシグナルキャノンの三つある銃口へ集中する。それと同時に、デカレンジャー達がそれぞれのシンボルナンバーでカウントを刻む。
「5!」
「4!」
「3!」
「2!」
「1!」
『ジャスティスフラッシャー!!!』
シグナルキャノンからフルパワーで一斉発射されるビーム、ジャスティスフラッシャーの奔流に呑まれていく魔女。やがて邪悪な断末魔と共にその存在は限界を迎え、大爆発を起こして消滅する。
『Got You!!』
シグナルキャノンを華麗な銃捌きと共に右足に収納すると、親指を立てるデカレンジャーロボ。やがて結界は消滅し、辺りの景色は見滝原市のそれへと戻る。
夕日が沈む町並みの景色を背にするデカレンジャーロボの足元には、人魚の魔女が倒された事で生じた、グリーフシードが残されていた。
説明 | ||
見滝原市にて、謎のエネルギー反応が続発する。一連の現象について調査をすべく、見滝原市へ急行するデカレンジャー。そこで出会ったのは、この世に災いをまき散らす魔女と呼ばれる存在と戦う、魔法少女と呼ばれた少女達。本来交わる事の無い物語が交差する時、その結末には何が待っているのか・・・ この小説は、特捜戦隊デカレンジャーと魔法少女まどか☆マギカのクロスオーバーです。 |
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今回の話はここからは俺達のターンだと言わんばかりの勢いの展開でした。特に、デカマシン突入のシーンからは脳内BGMはOPの曲をイメージしていて鬱展開が吹き飛んでしまいました。(超AIn12) | ||
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