IS語 3 |
放課後、俺達は職員室に呼び出された。
「部屋ですか?」
と、俺ら。もう決まったのか。一週間はかかると聞いたが
「事情が事情なので、一時的な処置として部屋割を無理やり変更したらしいです。そのあたりのことって政府に聞いてます?」
最後らへんは俺達にしか聞こえるように耳打ちした。
「いいえ。てっきり、政府から嫌われているものだと思っていますし。よかったいや悪いのかこの場合?」
と刻?。山田先生はぽかんとしているが、実際、刻?のご先祖様は家鳴将軍8代目を暗殺している。ま、俺の家も表舞台の連中から見れば大層な家ではないしな。
「ってことは荷物を一回家に取りに帰らないと、今日はもう帰っていいですか」
「あ、いえ、荷物ならー」
「私が手配してやった。ありがたく思え」
と千冬さん。
「織斑は生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があればいいだろう」
うなだれる一夏。ご愁傷さま。その時、内線が鳴った。千冬さんが取り、二言三言しゃべったあと、
「真庭、鑢、駐車場まで行ってくれ。真庭の姉が荷物を届けに来た。ああ、鑢は一旦帰って準備しろ。出迎えも頼んだからな」
「わかりました」
「寮の詳しいことは織斑に教えておくから、聞いておくように」
もう一度返事をして、刻?とともに駐車場に向かった。
side刻?
「あれか?」
駐車場に着くと、長身の真希さんと小柄の蝶次郎さんがいた。
「真希姉、それに蝶兄さん」
「お、来たか」
焔の姉の真希さんと蝶次郎さん。一度、蝶次郎さんと戦ったが、負けた。だけど、そのおかけでずいぶんましにはなれたと思う。
「荷物はこんなんでよかった?」
「十分だ。真希姉。もしかして、仕事の途中だった?」
「安心しなさい。有給よ。ところで、千冬ここで教師してるって?」
「ああ、しかも俺らの担任。だけど、違和感はなかったな」
「かもね。あ、刻?君は夕食どうするの?ここ、時間とか決まってそうだけど?」
「だったら家で食うか?」
そういえば考えてなかったな。
「いいんですか?」
「いいわよ。だけど、ちょっと帰り遅くなるけど大丈夫?」
「その辺の事は俺が伝えれば十分だろう」
「それもそうね」
「焔、たまには道場の方にも顔出せよ」
「わかってますよ、蝶兄さん」
「そんときは俺もいいですか、蝶次郎さん?」
「いいぜ、刻?」
焔の荷物を下ろし終え、俺は真希さんの車に乗り家に向かった。
side焔
荷物を受け取り、寮に向かう。番号は1026号室か。ようやく着いた途端
「なんだ、これは?」
突っ込んでしまう。見れば廊下に女子がぞろぞろと出ている。全員がラフな格好である。一部の子に至っては、目のやり位置が困る格好だ。原因は、
「何をしている一夏」
何とか通してもらい、原因である親友に問い詰める。
「焔か?なんだろうな、非常に言い難い」
「そうか」
恐らく、こいつのことだ。嬉し恥ずかしいイベントでも起きたのだろう。
「寮のことは夕食後にでも聞こう」
「そうしてくれ」
会話を終え、1026号室に入る。
「織斑君の隣が真庭君の部屋だね」
「いい情報ゲット〜!!」
聞こえなかったことにしよう。
部屋に入ると、大きめなベットが二つ目に入った。ふむ、どちらかといえば布団派なのだがな。さっそく荷物の整理にかかる。流石は真希姉。娯楽品も少しばかりは入っている。情報端末もある。あらかた片付け終わり、最後に4つ残った。一つは鳳凰の開け軸。一見アンティークに見られがちだが、これは音飛ばしの道具だ。2つ目は臙脂水晶。こいつは持ち主が死ぬと砕けるといういわくつきの真庭の家宝だ。実際砕けたらしい。掛け軸を机の前の壁にかけ、その下に水晶を置く。3つ目は、真庭語(裏)の要訳のレポートだ。ところどころ暗号染みた文章になっていたため訳が遅れたがようやく完成したものだ。そして最後に、去年の夏に見つかったISのコアらしい珠、計十個。真庭語通りにすれば残りは、鈍、?、鎧、鎚、鐚、釵、鋸、銓、鍍、銃
真庭家の方針としては、反応があった人にやろうという形になった。ただ、鐚と鍍は危険だということで消極策で鎖を巻いている。これらについては明日、千冬さんにでも相談しよう。そう思い、机の上に置き私服に着替え、焔のことを伝えるため職員室に向かった。途中、1025室から大きな音が聞こえたが、まあ、なんだという風にスルーした。
食事を終え、1025室をノックする。出てきたのは、
「箒?」
「な、何の用だ?」
剣道着姿の幼馴染だった。明らかに何かあったな。
「一夏はいるか?」
「すまない、ちょっと気絶している」
させたんだな。あえてそこには触れずにしてやろう。
「ああ、寮の規則のことを聞きたかったのだがな。知っている範囲で教えてくれないか?」
「先生たちから聞いていないのか?」
「途中で荷物が届いてな。受け取りにいっていた」
「そうか」
こうして、箒から知っている範囲で規則を聞きだした。細かな点は明日一夏に聞けばいいか。
「よくわかった。ありがとな、箒」
「う、うむ」
「何があったかは聞かないが後悔はするなよ」
「べ、別に私は…」
はいはいと受け流し、俺は屋上に向かった。一夏の奴め、美人な幼馴染に恋い慕われているのに気かつかないのは、ある意味重症か。まあ、これも青春かと思いつつ、1週間後に行われる模擬戦のため、我は鉋を出した。我は剣士ではない。剣を極めるのは無理だが、修めることはできる。そう考えながら訓練に徹した。
side刻?
「いただきまーす」
そう言って、肉じゃがを頬張る。うま
ここは焔の実家の真庭家。荷物をとった帰りにこうして御馳走になっている。ここにいるのは、家長の亀有さん、奥さんの静香さん、焔の姉さんの真希さん、その恋人の蝶次郎さん、弟の密三郎さん、焔の従兄弟の海と涼君。蝶次郎さんと密三郎さんの兄鎌太郎さんは結構多忙な人なのかここにはいない。
「それで、IS学園はどうですか、刻??」
と海が聞いてきた。皆興味深々である。
「まだ初日だからな。これからだと言いたいが、疲れた」
「そんなにハードなのか?」
と亀有さん。
「そうっす。二時間目でバタンキューです」
「それは大変ですね」
と密三郎さん。結構イケメンなのに恋人がいない。と焔が嘆いていたな。
「ま、学生の本業は勉強ってこと。頑張りなさい」
と真希さん
「あ、あの」
「どうしましたか、涼?」
「まだ、実習とかないのですか?第三世代型とか見てないですか?」
現代っ子の涼君。そう言えば、ISに興味シンシンだったか。
「まだだな。そう言えば、一週間後に模擬戦があるんだったな」
「マジでか!!」
「そうがっつかないで下さい。蝶兄さん」
「で、誰と誰がですか?」
「一夏とイギリス代表の子だ。あと、俺と焔です」
「そいつは再戦か?」
「でしょうね。言っちゃ悪いですが負けませんよ、俺は」
「どうでしょうかね?焔の忍法は、私たちの中でも種類が多いですからね。苦戦になるでしょね」
「そ・れ・に。あの後、俺がみっちり鍛えさせたからな」
「そいつは怖い」
「そう言えば、千冬ちゃんは元気そうだった?刻?君」
と静香さん。基本的におっとりしている。
「一夏の姉さんですか。そうですね、元気そうでしたよ。元気すぎるというか・・・・」
「何かあったのかい?」
「どうせ、叩かれたんだろ。こう、バシッと・・・・・・・図星?」
「どうやらそうらしいですね。刻?」
「あらあら、まあまあ」
そうこう雑談と食事を終え、再びIS学園に向かう。部屋に向かう途中、何かと女子に話しかけられた。やれやれ、弾が聞いたら羨ましがられるかな?
side一夏
「なあ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「なあって、いつまで怒ってるんだよ」
「・・・・・怒ってなどいない」
「顔が不機嫌そうじゃん」
「生まれつきだ」
にべもない。箒と同じテーブルで食べているがギスギスしている。今朝気がついて、速攻で謝ったが不機嫌なままだ。原因は俺にあるが、この様子じゃ取り付く島もない。誰か助けてください。
「おはよう、一夏、箒」
「おっす」
願いが通じたか、親友二人がやってきた。
「おはよう、焔、刻?」
「…おはよう」
焔が箒の様子に気が付き、俺に小声で話しかけた。
「一夏、何をした?」
「詳しくは言えん。助けてくれ」
「しょうがない。昼にイチゴ牛乳おごれ」
「ああ、てか糖尿なるぞ、いつか」
「その辺は計算している。それに、カルシウムだ。カルシウムさえとっておけば問題ないんだよ、この世の中」
「飛躍しすぎだろ、とにかく頼む」
「ねえ〜ねえー、ようよう。一緒に食べていい〜?」
横から、女子の声が聞こえた。
「本音さんじゃないか、いいぜ」
と刻?。本音さんとその友達二人は刻?の隣に座った。
「鑢君達、そんなに食べるの?」
「ああ、朝にがつっり食った方がいいだぜ。焔の場合、たまに甘いもの控えた方がいいんじゃないかってレベルだがな」
「計算はしているさ、刻?」
「それにしたって、宇治金時丼はやめろよな」
「何を言う。炭水化物+炭水化物は王道だぞ。あんぱんしかり。ケーキしかりだ。それにあまり間食はしないからな。問題ない」
「そういうもんか。てか、本音さんたち、そんなに少なくて平気なのか?」
「わ、私たちはねえ?」
「う、うん平気かなっ?」
何という燃費の良さだ。ISが女にしか使えない理由って実はこれなのか?
「お菓子よく食べるし!」
…間食は太るぞ。
「……織斑、私は先に行くぞ」
「ん、ああ。またあとでな。ほう…篠ノ之さん」
「俺も先に行こう、一夏、刻?。またあとでな」
「焔、頼む」
「まかされた」
side焔
「箒」
「焔か、どうした」
食堂を出るとすぐに見つかった。先ほどとは打って変わって、自己嫌悪な顔付きになっている。やれやれ
「昨日の様子だと何かあったが、喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩をしたわけではないが、その・・・・・」
「待て、あの馬鹿はそんなにまずいことしたのか?」
「い、いや事故だというのは分かっているが、その鈍いんだ、あいつは」
「なるほど、一夏の重症は今に始まったことではない。ともかく、変に意固地になると変な方向に誤解してしまう。せめて、一夏って呼んでやれ」
「善処する」
「しかし、一途なものだな。一夏にはもったいないくらいだな」
「何を言っている!?」
「悪い、悪い。俺からは一言、頑張れよ」
「ああ」
そう言って会話を終え、教室に向かった。
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