《インフィニット・ストラトス》〜二人の転生者〜 |
第十二話 決着!代表決定戦!
俺はすぐにスラスターを始動させた。セシリアがビットでの攻撃を再開したからだ。
「さあ、やれるものならやってみなさい!」
「ああ、いいぜ……それよりいいのか?そろそろビットのエネルギー尽きるんじゃないのか?」
その言葉をまるで合図かのように、ビットからは薄れた光しか出ないようになった。
「くっ!ブルー・ティアーズ!」
今だ!!
俺は対物ライフルを取り出すと一瞬でビットを捕らえ、四発で四機のビット全てを破壊した。
「まずはお前の弱点はこれだ。ビット攻撃、移動の際はその操作に集中しているため、他の動作が出来なくなる。だから今の段階で集中砲火をお前にしてたらお前はかなりエネルギーシールドを削られていただろう。そして次にビットは必ずある程度の攻撃と移動をしたら本体のISに戻って燃料を充填しなければならない。逆に言えばそれさえ待っていれば破壊するのは容易いということだ。そして次――」
俺は言い終わる前にスラスター全開でセシリアに一瞬で近づいた。そしてショートソードを展開して斬りつけた。
「お前は近接戦闘は素人同然。なんせ夏との最後の戦闘に近接武器があるにもかかわらず展開しなかったもんな。多分お前は近接武器は初心者の方法である名前を読んでイメージを固め、展開する方法しかできないんだろう?」
「!!そ、そんなこと!!」
「声が裏返ってるのがいい証拠だ。ホラホラどうした?どんどん削れてくぞ?」
俺はショートソードを振り回しじわじわと、だが確実に減らしていった。
「……あなたこそ油断していませんこと?ブルー・ティアーズはあと二機ありましてよ!?」
セシリアは言い終わると同時にミサイルを前方に展開し、発射した。俺は回転斬り直後で後ろを向いていた。見事に隙を突いた……かに見えたが。
「忘れてないさ?そしてこんな至近距離で使うとは……イギリスの代表候補生も底が見えるな?」
俺はスラスターを吹かし、上昇すると同時にふわり、という感じで浮き上がり、そのままくるりと回転してセシリアの背後に回った。
「なっ!?」
「取り敢えずミサイルを装填できないように……ほっ!」
そう言うと俺はショートソードでミサイルの部分を破壊した。そして発射されたミサイルは俺を追尾し反転、俺に向かってくる。しかしその直線上にはセシリアがいるわけで……当然首を掴み、逃げれないようにしている。
「返してやる……よっ!」
「う、嘘です――」
ドゴォン!!!自分で発射したミサイルを自分で食らう……そもそもあんな近距離で俺に当たってたらそっちも無事では済まなかっただろうに?
黒煙の中から緑のビームが近付いてきたかと思うと、セシリアが構えて、発砲していた。もうセシリアのISの装甲はボロボロだ。そして俺はそのビームを余裕を持ってひょいひょいと避ける。
「くっ!何で当たりませんの!?」
セシリアは怒り狂いながら言うが、俺は冷静に対処する。
「極めつけはこれだな。お前は代表候補生だがBT((偏光制御射撃|フレキシブル))が出来ないらしいな。確か最大稼働率のときに出来るようで弧を描いて曲がったり、角度をちゃんとつけて射ったり出来るんだってな?だけどお前の場合はそれが出来ないどころか、ビットの操作にも四苦八苦だったからな……精々で稼働率35%〜40%ってところか?」
俺の言葉に堪忍袋の緒が切れたのか、スターライトmkVを乱射してくる。
「そしてライフルは……はっ!」
俺は言いながらショートブレードを投げつける。
「銃口を塞げば暴発する」
ショートブレードは見事スターライトmkVの銃口にはまり、それに気づかず引き金を引いたから暴発した。
「きゃあ!!」
「あっはっは!結構可愛い声を上げるんだな!しかし今のでシールドエネルギーは1か。しぶといな、けど……これでどうかな?」
俺はセシリアの喉元に対物ライフルの銃口を押し付ける。
「チェック・メイトだ!」
俺は引き金を引く。その瞬間、ブザーが鳴った。
《試合終了。勝者――一ノ瀬秋葉》
俺は武装を仕舞うと、辛うじてISを展開しているセシリアに向かって「ニヤリ」と笑うと言い放つ。
「五分もいらなかったな、三分で片付いた」
その後、俺はピットに戻った。
「おっ!戻ってきた!お〜い!秋!!」
「遅いぞ、秋葉!」
「おにいちゃ〜ん!!」
夏、箒、春華が三者三様の迎えをしてくれる。しかし箒さん、それはちょっと酷くないっすか?
「おう、みんなただい――まっ!?」
俺が降り立とうとした瞬間、スラスターが全開になり、ピットに突っ込んだ。
「山田先生!緊急着陸システム展開!!」
「は、はいっ!」
すかさず冬姉の指示で無傷で降り立った俺だったが、リヴァイヴは黒煙を上げた後、俺を吐き出し所々爆ぜて、バラバラになった。
「まったく……無茶をしてくれたものだ。しかしなんだ……その……無事でよかった」
冬姉は俺を助け起こし、照れくさそうにそう言う。その後山田先生にからかわれ、ヘッドロックが炸裂したのは言うまでもない。もはやお約束だ。
「さて、一ノ瀬。このコアはお前にやる。せっかくだ、専用機の新しいコアにでもしてもらったらどうだ?」
「そうします」
ここには山田先生と箒がいるので「したら」ではなく「してもらったら」で正しい。
「さてと……これで決定戦が終わるわけだが、勝者は誰にする?」
「私はいいかな〜、セシリアさん倒したので満足だし」
「秋が妥当だと思う。お前みたいな化物相手じゃ俺はむしろ殺される」
「化物て……まあいいが。じゃあ俺で」
俺達三人の意見を聞き、冬姉が口を開く。
「ふむ、わかった。では一ノ瀬、誰を代表にするか選べ」
「へ?」
「夏で!」
「ちょっ、まっ――」
「夏、俺は言ったはずだぞ?((決|・))((定|・))((権|・))((を|・))((賭|・))((け|・))((て|・))と……」
冬姉の頷きと俺のニヤニヤ笑いを交互に見ながら夏は口をパクパクさせた後「うそだぁぁぁぁーーーーーーー!!」と叫んだのは火を見るより明らかだ。そしてこれはアリーナ中に響き渡ったという。
ついでにセシリアとの戦闘だが、途中からオープンにした時に冬姉との回線を切っただけなので、スピーカーで生徒たちにセシリアの無能さが知れわたってしまった。そしてこれはすぐに全校生徒に知れ渡るだろう。明日学校はどうなっているだろうかね?
翌日、俺は日課の朝の鍛錬をした後、いつも通り夏と一緒に食堂へと行く。毎朝のことながらまだ大半の女子生徒が準備とかしているので相変わらず食堂は人が少ない。
今日のメニューは俺はTボーンステーキのライスとサラダ付である。焼き加減はミディアムレア。
「朝から重いぞ……」
「お前が言うか?効率重視したらこうなるだろうが」
「それでももうちょっとあるだろ?」
実は俺達は一日の効率を重視して朝食の量などを調節している。朝は一日の始まりだからガッツリと、夕飯はその後ほとんど動くことが無いので少なめに。というか寝ている間も消化するんだが余りに消化するものが多いと逆に疲れて意味がない。故にこういう三食のとり方だ。まあ実際は冬姉の真似だがな。
そして夏は日替わり定食、今日はエビフライ定食だ。
「さ〜て……何処に座ろうかな?……お!お〜い、簪〜」
俺は奥のほうにうどんを静かに食べてるメガネ女子――更識簪を発見して、手を振る。俺の声に反応してペコリと頭を下げる。
「よし、あそこにしよう」
「え、いいのか?」
「……あ〜、お前はどうだろう?」
「え?」
「まあいい、こい」
「お、おい!」
俺は夏を引っ張って簪のところへ行く。
「朝食一緒にいいか?」
「うん……」
許可をもらったので俺は簪の正面に座り、その隣に夏が座った。簪が座った夏を見て少しムスッと怒った表情が見えたが、すぐに平然を装ってうどんを食べ始めた。
「え〜っと…簪さん、だっけ?俺は一年一組の織斑一夏、知ってるかな?」
夏の自己紹介に簪は食べていた手を止め、反応する。
「……知ってる。一年四組……更識簪。……私にはあなたを殴る権利がある……けどやめておく」
「え?どういう意味?」
夏が質問を投げるが簪は無視してうどんを食べるのに戻った。
「……夏、実はお前の白式は倉持技研っていう所が開発したんだが、そこでは元々日本代表候補生の簪のIS打鉄弐式を作成していたんだ。だけど白式に人員を全員とられて開発されなかった。そして百式のデータ収集や解析のため未だに人員は戻ってこないというわけ。まあ俺が手伝ったからなんとか形にはなったがな」
「へ〜……それは、なんていうか…スミマセン」
夏は謝ったが簪は食べていた手を止め、一味唐辛子の瓶を取ると中身を夏の定食の白米に全てかけてしまった……悲惨だったな。しかも無言だから増し増しだ。
「ああ!!俺のご飯!……いや、これは食わねばならんだろう!」
それを夏は律儀に一気にかっこんだ……一瞬にして水取りに行ったがな。ある意味馬鹿だな。
「秋のリヴァイヴは……大丈夫?」
夏のことが無かったかのように聞いてくる簪。少しは反応してあげようぜ?夏があまりにも悲惨だ……いや、こういうのが簪のキャラなのかもな?
「いや、駄目だった。結果的に負担かけさせて死なせちまった……俺の責任だな。今は開発室で《対話》してる」
「《対話》?」
「おう、一般的にはコアを別のISに使うときは《初期化》するんだが、俺はそれが嫌なんだ、記憶を消すみたいで。まあ生まれ変わるって考えればいいのかも知れないがなんか嫌なんだ。だから俺は対話でコアを定着させる。取り敢えず昨日は自己紹介と謝罪、後は俺のISのコアになってくれって話した。考えとくだってさ」
「そう……なると……いいね」
簪がこっちを見ながら言った。食べ終わったのだが食器を片付けようとはしない。多分俺とまだ話したいのだろう。
「そうだな、しかしあのコアが偶然にも俺が作ったコアでよかった。俺が作った最初の数個はある種の人格を埋め込んであってな。それは徐々に無くなってくんだがあのリヴァイヴのは残ってた。ISと対話できる……理想的だろう?」
「……うん」
簪は考えた末、そう答えた。ISだって生きている、対話がISの起動の今の現状なら俺は更にその先に行く。より良い形で。
「でもな、俺は逆にこれでよかったのか?って考えるときもある」
「なんで……?」
「なんていうか新しい命っていうのは神様に許された権限なのにさ……俺がそれを真似るなんて、冒涜に等しい行為だろう?」
「神様……信じる?」
簪が聞いてくる。そりゃあ実際に会ったしな……寧ろ感謝してるぐらいかな。
「そりゃ信じてるさ。そしてある意味いろんな事で感謝してるさ」
「じゃあ……きっと大丈夫だよ……神様も許してくれると思う」
簪が笑いながら言う。その姿がとても可愛く見えて俺は照れる。
「そ、そうかな?……か、簪、そろそろ行ったほうがいい。俺は夏と一緒にいくからさ」
「そうする……じゃあまた」
「ああ」
簪の後ろ姿を見ながら俺はステーキを食べる。簪の表情がもっと丸くなれば十分モテると思うのだが……まあIS学園では無理か。いや、思い切って告白してみるか?いやいや、まだ俺自身が好きかどうかもわからないのに乙女の純情を弄ぶ行為は……しかし付き合いながら分かり合うものなのかね?……ええい!悩んでもわからん。さっさと食おう。そういえば夏はどうしたんだろう?戻ってこないが?
その後、箒に引きずられて戻ってくる気絶した夏がいたのはちょっとした話題になっていた。
その後毎日のように俺達四人が教室に入ると女子が並のように押し寄せてきた。もはや怖い!!
「一ノ瀬くん、昨日あの後大丈夫だった?怪我とか?」
「一ノ瀬くん、昨日かっこ良かった!よかったらISの操縦のコツとか教えてよ!」
「織斑くん、一ノ瀬くん、勝利おめでとう!ねえねえ、どうやったら一ノ瀬くんみたいに操縦できるの?寧ろどうやってあんな操縦覚えたの?」
うう、流石にそろそろ席につかないと冬姉の出席簿アタックが――はっ!背後に殺気!!
俺は背後から漂う殺気を敏感に感じ取り、腰を屈めて頭を下げた。
ヒュンッ!
その上を見慣れた出席簿と黒い服の袖に取った白い手が通った……っておい!今の音絶対出席簿じゃならないだろ!?
「全員席につけ、SHRを始める。それとも出席簿の一撃を喰らいたいか?なんならグラウンド十週コースもあるぞ?」
「「「「すぐに着きます!!」」」」
女子達が颯爽と自分の席へ着く、俺も自分の席へ着いた。ふと斜め後ろを振り向くとそこに居るはずの人物が居なかった。
「え〜まずはお知らせです。最初は代表者の件について。昨日は結果的に一ノ瀬くんのISが壊れ、続行不能となったため各人で話し合った結果、織斑くんが代表になりました。という訳で、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね」
山田教諭は教壇で嬉々として喋って、生徒たちも十分多いに盛り上がっている。が、夏が挙手をして発言。
「あの、それってどうにもなりませんか?」
まだやりたくないか、男らしくないぞ!
「はい、理由は他にもあります。まず勝ったのは一ノ瀬くんに一ノ瀬さん……秋葉くんと春華さんですね。で春華さんは元々立候補も推薦もされていないので除外、そして秋葉くんは自分のISのリヴァイヴが壊れてしまったので新しいIS、それも専用機が完成して届くまでは無理、そして織斑くんに勝ったオルコットさんは辞退、それにISのダメージレベルがCを超えていて暫くは稼働を禁止しています。辞退すると今朝電話がかかって来ました。ということで織斑くんになる訳です」
「……わかりました」
夏は諦めて着席する。
「はい、先生。オルコットさんは今日どうしたんですか?姿を見ませんが」
女子生徒が手を上げ発言。俺もそれは気になっていた。
「オルコットさんは今日は体調がすぐれないという理由で欠席です。ではこれでSHRを終わります」
山田先生が下がると生徒たちはざわざわとざわめき始めた。大方陰口とかではないだろうか?人間一皮剥けばそういうものだ。
「一ノ瀬、今日の放課後オルコットの部屋に行け。一応あいつのISを壊したのはお前だ。謝るぐらいはしておけ。あと一応お前に負けたのだ。哀れみなど敗者には必要ない、というかもしれんが見舞いという口実なら色々と話せるだろう。見舞いの品は私が寮の購買に頼んでおいた。放課後、忘れるなよ?」
「……はい」
見舞い、か……俺があいつに?あんまり気が乗らねえなあ。まあ仕方がないか。
放課後、俺は見舞いの品(フルーツ盛り合わせ、メロンが二個で林檎や蜜柑、ぶどうと苺まであるぞ……豪華すぎやしないか?)のバスケットを持って寮の一階廊下を歩いていた。
「え〜と……うん、ここだ」
コンコン……
「……誰もいませんわ」
中からそんな声が聞こえてきた。思いっきり居るじゃねえか!
「オルコット、俺だ!入っていいか?……まあ鍵を開けてくれないと入れないんだが」
「……勝者の哀れみなどいりませんわ」
う〜ん、どうする……入れなきゃ見舞いもクソもないぞ。しょうがない、あれやるか
俺は束ねた髪の中から結構丈夫な針金を数本取り出し、一つは先の方を少し湾曲させて曲げ、もう一本は中程で直角に曲げ、鍵を入れる場所に差し込み、静かに、ゆっくりと回す。
……カチャリ
よし開いた。俺はそのまますたすたと中に入っていく。シリンダー錠でよかった、まあ電子系でもハッキングして開けるがな。
「安心しろオルコット、俺は体調を気遣って見舞いに来ただけ……って、なんじゃこりゃぁあ!」
うん、某刑事ドラマの金字塔のようなセリフが出てしまったのも仕方がない。何せ天蓋付きベッドが設置されており、その他諸々がどこぞの王宮を思わせる家具で埋まっているからだ……同室の一般人、ご愁傷さまです。
そして相方の非常識人の人物――セシリアはベッドで横になっていた。が、窓のほうを向いていて顔が見えない。恐らく眼を合わせたくないのだろう。
俺は白くて装飾された椅子を引っ張ってベッドの隣に行くと、そこで椅子に座った。
「ま、取り敢えずこれ、見舞いの品な?昼飯とか食べたか?食べてないならなんか果物剥いてやろうか?林檎とか」
俺は林檎を一個手に取り、ポケットから取り出したバタフライナイフを開き、剥いていく。皿?バスケットの中に何でか入ってた。フォークもだ。
「林檎は医者を遠ざける、って言われるようにな、食物繊維やビタミンCやカリウム、ミネラルが豊富なんだ。それになんといっても瑞々しくて美味しい。俺は結構好物なんだが……オルコットは嫌いか?」
俺は優しい口調で聞いていく。朝に言われたときは乗り気じゃなかったが授業中にふと考え調べた結果、オルコットは過去に両親を無くし、ずっと一人で生きてきたらしい、そこに何故か俺は接点みたいなものを感じた。もしかするとこの傲慢な態度もそれが問題なのかも知れない、と感じた。
「……ほら、剥けたぞ、一つぐらい食べたらどうだ?」
「……そこに置いといてください」
「おい、いいから食べろって。その様子じゃどうせ昼飯も食べてないんだろう?」
そうするとセシリアは上体を起こし、林檎を一切れ口に入れた。俺も一切れ口に入れる。
「「……シャリ……シャリ……」」
林檎を噛む音以外は無音の世界。何とも不思議な感じである。傍から見ると禁断の果実を食べるアダムとイブに見えるかも知れない……いや、無いな。ベッドとかの方に目が行くだろうし。
そんなコトを考えながらセシリアの顔に目線を向けると。涙の跡が見てとれた。
「……何故あなた方……いえ、あなたは強いんですの?」
ふとセシリアの口からそんな声が聞こえた。
「強い、か……う〜ん、自分が強いって思ったことはないな。というか世界には俺より強い人物なんかごまんと居るぜ?身近にいるのは……織斑教諭とか?」
俺は「クックック」と笑いながらいう。
「いきなりでビックリしたけど……なんでそんなコトを聞くんだ?ほい、口開けろ」
俺は林檎をもう一切れ差し出す。セシリアはそれを口にする。俺も別のフォークでもう一切れ。
「……わたくしの両親は三年前に事故に合い、他界しましたわ。母は強い人で、女尊男卑の社会が出来る前から幾つもの会社を経営し、成功を収めた人。私の憧れの人で尊敬する人。父は逆でいつも母の顔色を伺う人で、そしてこのISが作った社会の中、益々父は弱くなっていき、母はそれが鬱陶しそうで拒んでいる感じがありましたの。でもあなたは違った。真っ直ぐな目で、他人に媚びる事もなく、信念を持っている眼でした。……わたくしは……あなたのことを知りたいのですわ……」
セシリアは静かに説明する。俺は少し悩んだが。本当のことは話さないことにした。その代わりといっては何だがこんな話を聞かせた。
「……昔、ある少女と少年がいた。二人は戦場から戦場へ、戦いから戦いへ、そんな生活をしていた。しかしある戦場でその二人は死んでしまう。そしてその二人は生まれ変わり、別の世界に生を受けた。しかしそこはこの世界のような女尊男卑の社会が形成された世界だった。少女の方はよかったが少年は思った、「こんな世界はおかしい」と。そこで少年は強くあろうと考えた。例え今は弱くとも将来、女性に媚を売るような人間にならないために、と。偶然か必然か、少年の身近に少年が目指すような強い人物がいた。女性だったが少年は彼女のようになりたくて教えを請う。《媚びる》のと《教えを請う》のは似て非なるものだからな。そして少年はドンドンと強くなっていき、そんな社会の中でも媚びること無く生活して行きました……」
俺はそこで一息ついて林檎を一切れ食べる。うん、瑞々しくて美味い。
俺は口の中の林檎を飲み込むとこう続ける。
「俺はな、この少年のようになりたいんだ。誰にも媚びること無く、強くあろうと。でもな、その少年には無くて俺にあるものがある。それは――守りたい人だ」
「……守りたい……人?」
「ああ、俺はそいつを守り、裏切らず、何時でも助けてやり、そいつの過ちを正してやる……そんな人物になりたいんだ。しかしその為には守りたい人物が必要となる。そしてそれは俺の目に映る人々だ。といっても全員は無理だからその中でも結構限定するがな」
俺は立ち上がり、部屋を出ていこうとする。
「それじゃお大事にな、体をしっかり休めて明日は来いよ?お前が居ないとすっぽり抜けたような感じになる。」
俺はそう言うと扉に向かい、ドアノブに手をかけようとした所で動きを止める。
「言い忘れてたけどな……もしお前がいいならお前も守ってやるよ!全力でな!」
「……お前ではありません!」
セシリアの元気な声が帰ってくる。いや、遠いから大きな声にしただけかもな。
「わたくしのことはセシリアと呼んでください。……そ、それから……その守ってくれることは……まあ、感謝しないこともなくてよ」
「……はいはい、じゃあなセシリア。困ったことあれば何時でも言えよ。まあお前の場合は自分で何でもできそうだけどな?」
俺はそう言うと扉を開け、出ていく。
「……一ノ瀬、秋葉」
非取り残されたセシリアはベッドの枕に寄りかかる。
「……強い瞳をした……私の……憧れの人?」
疑問形、わからないのだ。憧れとは違う、この胸にあふれる感情が。しかしふいに気づく。これは《恋》なのだと。違うかも知れないがそうとしか考えられなかった。
「一ノ瀬、秋葉……私の……最愛の人……」
セシリアはそう言うと頬を赤らめ、微笑んだ。
守ってやるといってくれた時、セシリアは嬉しい気持ちだった。しかし表にはそれが上手く出せず、あんな返答になってしまったが、徐々に接しながら直そうと決心した。
俺は自分の部屋に戻って、ベッドに仰向けで倒れ込む。
「……《電光石火》か。何時ぶりだっけ、使ったの」
俺はそう呟きながら、初めてその技を編み出した時のことを思い出していた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
はい、十二話です……皆まで言わないでください、戦闘シーンが少ないんですよね。でも専用機じゃないのでこれぐらいで許してくだい。
さて、次回はちょっと外伝を……まあ最後の文章からわかるように電光石火の作られた経緯というか……そんなところです。次回の話は今日数時間賭けて作ったので納得出来ないかもしれませんが、読んでいただけると嬉しいです……その外伝、今日上げたほうがいいかな?^^;最近二話更新が主流になってきてます……
さて、何度もしつこいですが絵師様募集中です!……他の人って絵とかどうしてるんだろう?はっ、もしかして絵と文章制作してるとか!?羨ましいですね……というか絵師様ってどうやって募集したらいいんでしょうか?誰か知ってたら教えてもらえると嬉しいです。
ではまた〜
説明 | ||
さて、次は十二話です。先日上げた十話と十一話……十話はアクセス数が十一話より十人少ない、その十人は話を飛ばして呼んでいるのでしょうか?^^;それよりもただ単にアクセスが少ないだけとか? とりあえずどうぞ〜 |
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